はぐれ悪魔と二匹の旅絵巻 作:エイセイゼア-
「おぉ……虹色の虹彩を持つ魔眼……《虹》の魔眼となると……」
「俺の目……返せ……」
「おぉん?あー、脳と連動してないとダメな魔眼タイプ……なるほど彼が使用して初めて《虹》のランクを持つ魔眼に……」
「返せ……」
白衣の男が液体が詰まった筒に浮かべられてる俺の眼球を光悦とした表情で見る。
「あぁ、いいですよ。いい加減にうるさかった頃合ですからね。ただ……」
男がそう言うと俺の眼球が2つとも液体に溶けるかのように消え去った。
「あ……あぁ……」
「もう少し傀儡として調整してからね」
※※※
あの日、俺が誘拐されてから一年が経った。
両目には作り直された眼球が埋め込まれセイクリッド・ギアとやらの機能を十全に活かすために体のあちこちを弄られた。
眼球を失ってからは殺意に耐え従順なモルモットを演じ続けた。
だけど、それも今日で終わる。
俺の中に眠っていた力。
この力は俺の体を作りかえ他人を演じることが出来るのが本来の用途。だが、あいつらは俺の魔眼、『全能の魔眼』を作り替えることで他の魔眼、それも最高クラスの『虹』の出力のものを再現した。ただ、魔眼として特化した眼球にされたため何も見えない。魔眼の力を発現させた時のみ視界が開ける。
そしてようやく制御が自由自在になるようになった。
これで歪曲全振りの虹魔眼でクソったれの首を凶げるだけで俺は解放される。
心残りは未だに雪羽と遭遇してないことだが正直今すぐにでもここから飛び出したい。
だから、俺は躊躇なく。
邸ごと俺を転生させた悪魔を凶げた。
「ふふっ……アハハ!!なんだ!この程度かよ!飼い主に首を噛まれた気分はどうだ?あ、もう死んでるか。あはは!」
とてつもなく簡単に凶げることができた。
ひとしきり笑い、そして複数名の悪魔が向かってくるのがわかった。魔法の才能を索敵特化にしておいて助かった。
「さすがに領主の邸がいきなり全壊したらそうなるか……とりあえず、逃げるか」
目には一瞬間に束縛の魔眼に切り替えれば済む話ではあるが……
ここで余分な時間をくうよりも追って来れないように歪曲で道を凶げた方が……いや、俺の駒はたしか
いざとなれば視界に入れて対応すればいいし。
「命を懸けた逃亡劇の始まり始まりっと」
※※※
面倒くせぇ……殺すタイミングもう少し見計らったほうがよかったか?
よくよくかんがえたらどこに何があるかわからない冥界で逃亡劇もくそもない。
だって右に何があるかどっちに町があるか、どの生物が食べられるかとか全然わからん。
というか腹が減った。よくよくかんがえたらこんなにハードなことを一応小学三年生の俺がやろうとしていること自体がおかしいのだろう。
それに魔力もそれほど残ってないから何も見えない暗闇同然のところを敵襲が来た時だけ適時凶げているだけだ。
うーん、いよいよ木の枝にでもかぶりついてやろうか。
そんな時だった。
逃亡劇を開始して初めて敵意以外の感情を感じさせる
「姉さま、だれか倒れてます」
「そうね。かなり衰弱してる……男の子?」
別に弱っているわけじゃない。ただ腹がすいてたまらないだけだ。
うん、そうに違いない。
だからさっきから鳴っているこのグーグーという腹の音も幻聴に違いないのだ。
……どっちにしろやばかったか。
「おなかすいてるんですか?」
「そう……なるかな」
「仕方にゃいからごはん分けてあげるにゃ」
※※※
「ふぃー、ごちそうさま。おかげで生き返ったよ」
「さすがに年が近い子が空腹で倒れそうになってたらさすがに助けるかにゃ」
髪が黒いほうの女の子がそういう。
「助けてもらったところ悪いけど、そういえば俺、指名手配とかされてないの?」
「指名手配?」
「いやまあ、されてないはずはないんだけど……」
今の俺ははぐれ悪魔という立ち位置にいる。本来の主を殺して逃亡しているわけだしな。
そうでなくとも十数人は殺しているだろうから人間世界なら凶悪殺人犯ってところだ。
現時点でも追っ手をかなりの数殺してるからフツーに指名手配されてると思う。
「というかさっきからどこ見て話してるんですか?」
「あー……うん、俺は目が不自由だからな」
「そんな子が一人でなにしてたのかにゃ?」
「逃亡生活」
「家出?」
「いや、文字通りの逃亡生活」
やっぱり。というべきか。
追ってがやって来る気配がする。
「……君たちは逃げた方がいい。俺の同類だと思われるぞ?」
といい気配のする方に向き直る。
……まだ視界には入らない。
環境をあんまり破壊したくはないから炎焼は使えない。
……この場なら歪曲を使ったとしたら視界がふさがるかもしれない。
なら……
掠取だな。
一目見るだけで対象の概念的エネルギー全てを掠め取る魔眼。
勝てるかじゃない。
一方的な蹂躙を始め……
と考えているところでグイと首を引っ張られる。
「こっちくるにゃ!」
「え?なに!?」
これが俺の人生のターニングポイント。
目が見えない
男の子の首根っこをつかむというありえない行為によって生まれた。
俺の新しい繋がり。
黒歌と白音。
無限の名を冠する龍神の少女(?)に拾われるまで
俺たちは三人ボッチで逃げ続けた。
あてもなく。
ただ生き残るために。