究極の進化を遂げたデュエル。質量を持ったソリッドビジョンと女性にしか扱えない新型D-ホイール『IS』を駆り、乙女達はアクションデュエルで人々を魅了した。
ISで空を舞い、デュエルでそれぞれの名誉と国の誇りをかけて戦う彼女達を人々は『一夏ラバーズ』と呼んだ。
※嘘です。呼びません。いや、呼ぶか?ご覧になっている二次小説はISです。ふざけてごめんなさい。
第九話
IS学園三日目。昼休みの食堂。
ティナ・ハミルトンは昼食を食べに来ていた。カウンターで注文したハンバーガーセットを受け取った時には席が埋まり始めており、奥の席の方へ行くと、あるテーブル席の前で無表情ながらも迷惑そうにしているある少年を見つけた。
(あれは……ユースケ?)
一昨日、学園敷地内にある生協のスーパーマーケットで初めて見る日本のポテトチップスに興奮して「ヒャッハー!新鮮なポテトチップスだー!!」と狂喜しながら片っ端から買い漁り、テンションが上がっている状態で部屋に戻ったらすぐに食べてみようと急ぎ足で寮に戻ったティナとエレベータホールでぶつかった世界で二人目のISに乗ることができる男、蕪城優介。彼がテーブル席に座る二人の内、片方から声をかけられている。
(声をかけているのは……あ、織斑くんじゃん。ラッキー!)
ティナは優介に声をかけているのが一夏だとわかると自分の幸運を喜んだ。初日に偶然知り合った優介を通じ、ブリュンヒルデの弟でありISを動かせる男の一人目である一夏と知り合おうと考えていたティナは少しづつ優介と距離を縮めてから折をみて一夏と接点を持とうと考えていた。しかし、考えていたよりも早くその機会が巡ってきた。
(ここから親密な関係になれば、アメリカのIS委員会に一目置かれるのは間違いなしね)
ティナは、アメリカのIS委員会が一夏の存在を大きくと考えているという、旅立ちの日までティナのIS学園入学に反対していたはずの無表情で無口で頑固な軍で働く父が何故か教えてくれた情報のおかげで知っていた。恋人と言わずとも、友人として親密な関係を築けばアメリカIS委員会に一目置かれて代表候補生の仲間入りを果たせる。もちろん、努力して勘や技術を磨く事は必須事項だということは彼女はわかっている。けれど、目の前に自分のチャンスを大きくする可能性があれば掴んでおきたいとティナは考え、優介の方へと向かい声をかけた。
「ハーイ!ユースケ!」
「あ……」
「お、優介の知り合いか?」
一夏にも聞こえ、なおかつ好印象を与えるために元気よく優介に声をかけると、一夏が反応する。
(イエスッ!)
期待通りに一夏が自分へ興味を示したのにティナが内心喜んでいると、一夏の右隣に座っているポニーテールの日本人女子から日本刀染みた鋭い視線を向けられた。
(あれ?もしかしてガールフレンドいたの?)
使用回数が極めて少ない女の勘から、ティナはポニーテールの彼女が放った視線に嫉妬を感じ取った。滲み出る一夏に近付かないよう脅迫する威圧感に、彼女を恋人か、またはそれに近い関係者だと判断し、ティナは恋愛に興味を抱いていたこともあり、計画を変更せざる得なくなった事を残念に思った。
けれど、アメリカIS委員会に名前を売る為に一夏に近づこうとしていたティナは彼に恋愛感情を抱いておらず未練もない。恋愛はしてみたいが、ドロドロとしたいざこざが起きる前に判明してよかったと、未練なくあっさりと、恋人候補として一夏と関係構築する計画を棄却し、直ぐ様友人として関係構築する計画へシフトする。
「あ、ああ。えっと―」
「織斑くん、初めまして。私、二組のティナ・ハミルトン。よろしくね!」
ティナを紹介しようとした優介の言葉を遮り、元祖炭酸系エナジードリンクのごとく、元気ハツラツといった感じに自己紹介をすると、さらに印象を強く残そうと握手を求め、右手を差し出した。
「ああ、よろしく!」
テーブル越しにティナが差し出した手を一夏は持っていた箸を置き握り、微笑みかける。ティナはその微笑みに一瞬心臓がときめいたが、その隣にいた一夏の恋人らしきポニーテールの日本人女子がキッと一夏とティナを睨みつけた顔、ジュニアハイスクールの時に読んだ日本文化の本で見た般若のお面めいた恐ろしい顔に、そんなトキメキは微粒子すら残さず消し飛んだ。
「痛っ! 何するんだよ箒」
「ふんっ!」
すると、一夏はいきなり声を上げてティナの手を離し、彼の足をさすり始めた。ティナは箒と呼ばれた彼女が他の女に色目を使った事に対する罰を一夏にしたのだと気が付くと、先ほどの睨みつけてきた彼女の顔を思い出し、軽率なスキンシップは控えようと決めた。
「一夏、さっきも言ったけど、俺は別の席で食うから……」
「えー、なんでだよ? 久しぶりに一緒に食べようぜ。席も空いてるしさ」
ティナと一夏の会話が箒のヤキモチによって寸断された時、ずっと黙っていた優介が別の席で昼食を取る考えを述べる。しかし、一夏は駄々を捏ね、空いている席を指差して優介を招く。優介は表情を変えず、ただ悩んでいるように唸た。
(あれ? 困ってる?……なんで?)
無表情な父親の表情を読み取ることに慣れている為、優介がさっさとこの場から離れたいという困り顔をしていることがティナにはわかったが、なぜ困っているのかがわからなかった。
そして、サンアドレアスに住む従兄弟から教えられた場の雰囲気を的確に察する日本人必須のニンジャスキル『空気を読む』を思い出した。
ティナが優介に声をかけた時、既に一夏のガールフレンド、箒の表情は既に険しく、不機嫌であった。そこから推察されるのは恋人とのランチを邪魔されたくないと言う独占欲。少しでも二人っきりで過ごしたいという一途な思いである。優介は一夏と二人っきりになりたいという箒の気持ちを汲んで、空気を読んで、この場から離れようとした。しかし、一夏はそんなん箒の乙女心を察せず、一緒にランチをしたいと優介を誘った。『空気を読む』という行動が重要とされる現代日本社会ではそれを阻害する行動は甚だ迷惑である。だから優介は困った顔をしていたのだとティナは推理した。
(なら、ここは優介を助けたほうがいいかな?)
優介の『空気を読む』手伝いをすることで彼と箒に好印象を与えることが、後々本格的に一夏と知り合う時に役に立つのではないかと思ったティナは、早速優介を援護することにした。
「あ! そうだ、ユースケに話があるんだけど、いい?」
「え?」
優介には言葉の意図がわからなかったらしく、疑問の声を上げて考え込む。ティナは『空気を読む』のを手伝う意思を伝えるべく、優介の目をティナが「気付け、気付け」と、まるで呪詛でも書けるように見る。
「あ、あぁ……」
すると、頬を紅潮させた優介は赤らめた顔をティナから背け、気恥ずかしそうに小さめの声で了承した。
「よかった。じゃあ、あっちでランチ食べながら話しましょう」
優介が顔を赤くしたのを気にも止めず、自分の『空気を読む』意思に気が付いてのだとティナは思い込んだ。
「え、なんだそうなのか……」
別の席へ行こうとする二人に一夏は残念そうな表情を浮かべる。
「す、すまん一夏……」
「じゃあ、またね。織斑くん。ガールフレンドとのランチ楽しんでね」
「……な、ななな、ガガガ、ガール、ガールフレンド?!」
まるでレベル合わせの効果を持つモンスターの名前のような叫びを上げながら狼狽する箒をよそに、優介とティナはさらに奥の方の空いている席へ向かい、10mほど離れたところで空いている席を見つけた。
「助かった、ありがとうティナ」
「どういたしまして。ガールフレンドがいるんだから織斑くんも察して二人っきりで食べてくれればいいのにね」
料理の乗ったトレイをテーブルの上へ置きつつ礼を述べ、椅子に座る優介。ティナは彼から感謝の言葉を受けると、一夏の気の利かなさに愚痴を漏らす。
「……あ、あぁ……」
ティナの愚痴に相槌を打った優介は少し考えてから、何かに気がついたような顔になった。
「そっちか……」
(あれ?理由違った?)
ぼそっと呟いた優介の言葉に自分が考え違いをしているのかと疑ったティナは、食堂に来た時に既に迷惑そうな表情をしていたのを思い出した。てっきり、邪魔者なく二人っきりで昼食を摂りたいと言う一夏のガールフレンドからの圧力から、空気を読んで立ち去ろうとしていたの優介を一夏が引き止めたから早くその場を立ち去りたいという思いから、迷惑そうな顔をしていたと思っていた。しかし、一夏の右側に座っていた娘、箒がガールフレンドだと気が付いていなかったことを考えると、別の理由で辟易していたと言うことになる。何が原因か。そう考えると一つの可能性にぶち当たった。
「ねぇ、ユースケ?」
「ん? なんだ?」
幸せそうな顔をして味噌汁をすすっていた優介が名前を呼ばれて彼女を見る。
「織斑くんの事苦手なの?」
「……ソ、ソンナコトハナイ……」
(あ、この表情は苦手だって顔だ)
彼女がそう問いかけると、優介は驚いたのか、目を見開いた。瞳が盤上で跳ね返りまくるピンボールかと思うほど、挙動不審に動きまくる。
「まぁ、色々あるよね」
「ご、ごめん」
「別に謝らなくていいよ」
きっとなにか理由があるのだろうと、深くは詮索せずにティナはハンバーガーにかぶりついた。パティに挟まれたジューシーなビーフハンバーグと溶けたチーズ、シャッキリとしたレタスとピクルス、みじん切りの玉ねぎがケチャップとマスタードと口の中で合わさり、旨さを作り出す。
(作戦失敗ね。まさか、優介が織斑くんの事苦手だったなんて……)
時折フライドポテトをつまみながら、目の前でご飯を頬張る優介を見ながら小さく溜息をつく。苦手な相手を好き好む人は少ないだろう。きっと優介もそうだ。一夏と交友関係を持てる確率が減ったことに、こんなことならば先程は『空気を読む』手伝いなどせず、空気を読まずに、優介の心情も理解せずに一緒に食事を摂ればよかったとティナは後悔した。
「あ、あのさぁ、ティナ……」
「ん?」
「あ、いや、そのぉ……これ、気になるの?」
優介を恨めしく思いながら、食事を摂っていると、優介がカラッと上がった茶色い衣がついた肉片のようなものを箸で挟んで持ち上げた。向かい合っているので勘違いしたのだろうと思い、ティナは違うと言おうとしたが、優介が箸で持ち上げた物の正体が気になってしまい、身を乗り出して見てしまった。
「え、なにそれ?」
「ト、トンカツだよ。豚のロース肉をパン粉をつけて揚げた料理」
「トンカツって言うんだ」
顔を赤らめて、照れ気味に料理の説明をする優介の目線が、時折自分の顔よりも胸部へ向けられていることになど気がつかないティナはアメリカでは一度も見たことがないそれを観察する。
「良ければ食べるか?」
「えっ! いいの?!」
優介はどうぞと言って黒茶色のソースがかかったトンカツの一切れをさらに置く。ティナはサラダを食べるためについてきたフォークを指して、トンカツへかぶりつく。
「なにこれ!超美味しい!!」
パンの香りがする衣が閉じ込めていた、胡椒で下味をつけられた豚肉の旨さが噛むと口の中に解放される。日本食など味が薄くて少ないだけのダイエットメニューだと思っていたティナは動画投稿サイトに投稿されている日本食を食べて旨いと叫んでいる人の気持ちが初めてわかった。
(今日はよしとしましょ。織斑くんの事は地道に頑張ろう)
トンカツの旨さからか、元々ポジティブな思考をしていたからか、また明日から一夏との関係構築に励もうと、ティナは前向きな考えになり、あまりの旨さに優介の皿からトンカツを取り始めた。
「おい!ちょっと待て!残り全部食うな!!」
「大丈夫! この千切り野菜は残しておいてあげるから!」
「残すのキャベツだけかよ!」
この日、ティナの好物リストとオススメ日本料理リストにトンカツが加わったのは言うまでなく、優介の昼食がトンカツ二切れと千切りキャベツとその他をおかずに食べると言う可哀想な食卓となったのも言うまでもなかった。
今回もまた短いし話が進まなかった。最近、頭がごちゃごちゃで集中できない。投稿したにマイページを開くのがすごく怖いです。だが、これからもよろしくお願いします。
前書きでふざけてすみません。反省してます。後悔はしてません(キリっ