IS 一夏も自分も嫌い   作:ヌタ夫

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第一話 自己嫌悪は突然

 

 第一話 

 

 

 

 彼の今年に起こった四大不幸。

 

 一つ目は事故。志望校に合格して学校に報告して家に帰る途中、最寄駅構内の階段を踏み外し全治一週間の怪我を負い入院。

 

 出席日数は足りるので卒業には支障はなかった。彼は痛い思いをしたけど公然と学校を休めたからラッキーと思っていた。

 

 二つ目は医療ミス。彼は医者か、看護師か、誰のせいかわからないが、投薬をミスされて死の淵を彷徨った。

 

 人間だから間違いは起こすだろうが、勘弁して欲しい。治療用ナノマシンの処方ミスは最悪死に至る。彼は、拒否反応で発熱し、体は余計に痛くなり「死にそう」の意味を自分の体をもって理解した。

 

 三つ目、悪夢。退院後、学校へ行くと検査と称してISに接触。見事合格。

 

 彼はあれはおかしいと疑っていた。男がIS動かせられはずがない。あれはきっと策略だ。いや、策略であってくれ。策略であって欲しかった。女性の特権であるISを動かしたら一般人である自分には対処できないことが起きる可能性もある。将来の選択肢は広がっただろうが、彼の夢は平々凡々の生活。しかし、こうなってはこの先に人並みの生活という最高の将来を求めることはできなくなった。

 

 四つ目は今までで一番の不幸。訃報。悲報。

 

 ISを動かせたため、保護と監視(観察)のため織斑一夏と一緒の学校、IS学園へ通うことになった。なお、拒否権はなく強制であるため不可避である。

 

 

 

 

(あー……テンション駄々落ちだ……)

 

 人工島にあるIS学園へと向かうモノレールに揺られながら、隣に座る人間から気を逸らすために色々と考えていた彼はこれまでの経緯を思い出してしまい、更に気が沈んだ。

 

「すっげぇ!!おい、優介!海だ!海の上走ってるぜ!!」

 

「あぁ、すごいな。本当に。」

 

(うっせぇんだよ。いちいち、叫ぶな。話しかけてくんじゃねぇ。俺に寄るな。近づくな)

 

 彼、蕪城優介は表面上は普通にしているが、昨日から「うっせぇ」などと彼は心で唱えている。1年前に徐々に距離が空けて付き合っていたため隣に座る少年、織斑一夏を心で罵倒する回数は少なくなっていたが、 一夏から駅に集合して一緒に行こうという連絡が来た際に30回。駅で会った時に10回。改札を通り構内に行くまでに2回。電車の中で17回。乗り換えの時に4回。モノレールに乗ってから今までに7回。昨日からのトータルで今までに70回ほど心で罵声を浴びせている。

 

 はっきりと言ってやりたいと思っていた。

 

 お前は友達じゃない。俺はお前と話したくない。顔を見たくもない。お前は俺の勇気を何度も踏みにじってきた悪魔だ。お前が居ると俺は惨めになる。お前が俺を傷つける。今すぐ消えろ。そして二度と現れるな。

 

 しかし、言えなかった。自分の本音を吐露して一夏だけでなく、周囲の人間も自分から離れてしまうのが怖い。それはいつも。だから、いつも本音を隠して、相手と話す。一つの事を成すために周囲の目を気にする臆病な性質。彼はその弱さを疎ましく感じていた。日頃から変えたいと願っている自分自身の弱い心。強制的に入学が決められたIS学園に行く理由も自分や親族に対する周囲の目を考えて決めたものだった。ダメだと分かりつつも、自分が行くと決めた学校以外に断固として行かないとダメ元の宣言すらできなかった。いつも彼はこの弱い心のせいで後悔してきた。

 

「なぁ、優介……気分でも悪いのか?」

 

「えっ、いや、大丈夫だけど。なんで?」

 

「いやぁ、なんだか口数が少ないような気がしてさ」

 

「そうか?」

 

(そりゃ、お前のせいだよ)

 

 彼は1年と半年前に告白した相手に一夏が好きだと言われてフラれたことを根に持っていた。今も告白した相手のことが好きかというと、そうでもない。普通の友達として好きというレベルであるため、優介の中に愛憎はない。

 しかし、その当時はたまらなく好きだった。フラれても彼女が意中の相手に告白させるのを手伝えば、もしかしたら自分を好きになってくれるのではないかという淡い期待をして、色々と手伝った。それがいけなかった。期待は消えて行き、代わりに鈴に思いを向けられる羨ましさと、ありもしない幻想の期待にすがっていた自分の惨めさ。そして、その対象、原因である一夏を憎く思うようになった。抱くのは間違いだとわかりつつも。

 

(しかも俺の努力を無駄に……くそっ。違うだろ)

 

 受験のために勉強し、やっとのことで第一志望に合格した。なのに消えた。IS学園に入学させるために、すべての合格先を消された。あとが無い状況にしてIS学園に入学させるために。今までの時間を、努力をもみ消された。その原因は一夏、織斑一夏が受験会場を間違え、ISを動かしたせいにほかならない。

 

 しかし、強制的に入学させられたのは自分だけでなく、一夏も同じ。就職率の高い藍越学園を受験しようとして、2年の後半からどこが就職率が高く、高校のサポートがしっかりしているか調べて、勉強して、模試受けて、凹んで。また勉強してやっと合格判定を貰った事。IS学園へ強制されて入学させられたこと。たまに会った時や五反田弾と会った時に疎ましく思いつつも聞いていた。自分も同じように苦労し、努力した。

 

 だからこそ、わかる、悔しいと。だが、心に残った恨みが、間違った解釈をさせてしまう。

 

(いつまでも引きずって……最低だ)

 

 ネチネチといつまでも引きずる癖と周囲を恐れて本音を言えない心。

 

(変わりたいな……いや、変わらなきゃいけないよな)

 

 

 

 

 

 

 

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