IS 一夏も自分も嫌い   作:ヌタ夫

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第三話 浅ましい自分に自己嫌悪

(まさか一夏め……)

 

 IS学園一年一組担任。織斑一夏の姉ある織斑千冬。副担任である山田真耶の授業を補佐、指導するのが彼女の役割。しかし、今は教室の端で弟に疑惑の眼差しを向けていた。

 

 一夏は先程から5冊ある教科書のいずれかをパラパラと捲っては真耶の授業を聞き、周囲の生徒の様子を頻りに覗っている。その様子から授業の内容が理解できていないのは火を見るよりも明らかであった。

 

(読んでいる……とは信じたいが……)

 

ISの教育は学校によって差がある。そのため、授業を理解できないことがないように入学者の知識レベルを一定にするために入学前には参考書が送られる。初の男子学生二名も例外ではない。読み覚えれば最低限度の基本は覚えられ、授業に取り残されることはない。

 

 に、あるにも関わらず、授業に追いつけていないところを見ると、一夏は覚えきれていないのか、読み終えていないのか。それとも読んですらいないのか。一応真面目の部類に入るであろう自分の弟が読んでいないとは思いたくない千冬であったが、その様子はそれを完全に否定できるものではなかった。

 

「織斑くん、何かわからないところがありますか?」

 

 一夏が周りの女子の様子を覗っていたのと、千冬の視線が彼の方へと向いていたのに気付いたのか、真耶が問いかける。

 

「あ、え、えっと……」

 

 一夏が手元の教科書に視線を落とす。その様子を真耶は彼が遠慮しているものだと思い、自分は教師だからなんでも訊いてくれていいと胸を張って言う。

 

「先生!」

 

「はい、織斑くん!」

 

「ほとんど全部わかりません」

 

「え……ぜ、全部ですか……?」

 

 一夏の爆弾発言は真耶を呆気にとらせ、千冬は恥ずかしさで本来、顔を赤くするために上った血が顔を通り越して頭まで到達させた。

 

 真耶は生徒たちの様子に気を配り、授業を進めてきた。説明不足な点がいくつかはあったが、調べればわかるような些細な物。千冬が及第点以上を付ける内容であった。普通のIS学園の生徒であれば理解できる。なのでまさか、一夏が全てわからないと言うとは予想しないであろう。

 

「み、みなさんの中で現段階で授業が理解出来ていないという人はどれぐらいいますか?」

 

 その言葉で手を上げる者は一人もいなかった。それは一夏の後の席に座る優介も例外ではない。

 

「え!優介も?!」

 

 振り返り、どれぐらいの人間が手を上げているのか確認した一夏は誰も手を挙げていない事に愕然とする。そして、優介までもが手を挙げていないことに気がついた一夏はまるで、成績最下位だった同級生がなんも努力もせずに名門難関私立学校に合格したのを見たときのような目で、優介を見る。

 

「う、嘘だろ?!」

 

「一応、予習はしたからわかる」

 

一夏の言い方にムッとしたのか、優介は額に皺を寄せてノートを一夏に見せた。彼が見せたノートを一夏はページ捲り確認する。

 

(嘘ではなさそうだな)

 

 千冬の見た限り、優介は真耶が注意点として教えた部分を予習したノートに書き込んだり、訂正している。授業態度も一夏を除く周りの生徒と同じで問題は無い。おそらくほかの生徒同様予習もしているだろう。他の生徒と同じようなものだ。普通だ。今、尋常でないのはページを捲るごとに顔色が悪くなっていく一夏だけである。千冬は優介が普通に理解していた事に安心した一方、一夏がそんな普通のこともしていない事に情けなさを感じた。

 

「……」

 

 一夏は読み終えたのか、そっと優介のノートを閉じるとそれを返した。

 

「いいのか?! わからないところがあるんならあるって言わないと、最初で躓いたままだと絶対、後から後悔することになるぞ!」

 

 そう言って一夏は優介を肩を掴み前後にガクガクと揺さぶり始めた。 

 

「……理解できないところはある」  

 

「ほ、本当か?!」

 

 精神的な揺さぶりよりも物理的な揺さぶりに脳が揺さぶられ、耐えかねた優介。その吐いた言葉に一夏は歓喜した。

 

「蕪城くん、どこがわからなかったの?」

 

「えっと、……ISがえっと……PIC?で慣性を制御して―」

 

 未だに頭がクラクラ、目がチカチカする様子の優介は真耶の不安そうな声でゆっくりと自分の疑問点を上げる。

 

「あ、それは次のページの脚注1に書いてある『オートの場合は機体にかかる慣性エネルギーを設定された出力でブレーキを―』って部分の通りー」

 

(なるほど、あの部分は説明が省かれていたからな)

 

 優介と真耶のやり取りに耳を澄ませている千冬。よくある授業での光景。なんとも普通であり、安心する。 

 

「……ぴーあいしー?、え?……」

 

 ただし、自分の弟がポカーンと口を開け唖然とし、全く理解していない様子を見ると、千冬はこれから先が不安になった。

 

「PICに関わらず、全てマニュアル操作だと出力が変化できるんですか?」

 

「はい。ただ、マニュアルでの操作は制御に慣れてからにしてくださいね。失敗して怪我するかもしれませんから」

 

「はい、分かりました。ありがとうございます」

 

 ピサの斜塔のように傾き始めていた真耶の自信は優介の質問に答えることで、元通りまっすぐになった。そして、優介がわからない部分があると告げた時、顔色が元に戻った一夏であったが、真耶と優介の会話で再び悪くなった。

 

「な、なんでわかるんだよ? 優介」

 

「事前学習」

 

 再び動揺し始めた一夏に優介は呆気からんと言い放つ。 

 

「そうだけどさ、教科書読んでも単語はわからないしチンプンカンプンだったろ?」

 

「学校から貰った参考書にだいたい書いてあったろ」

 

 教科書を開き、優介にその中のびっしり印字された文章を指差す一夏に対し、優介は机の下に置いてある自分の通学カバンから電話帳と遜色ないほどの厚さの本を一冊取り出して、一夏の目の前に突き出した。

 

「え?……学校からもらった参考書?」

 

 電話帳サイズの参考書をわざわざ通学カバンに入れて持ってきたのかという疑問もあるが、優介が取り出した参考書に対し一夏は首を傾げる。それに対して優介は怪訝そうな顔になった。

 

「学校からこの本もらってないのか? 分厚いから直ぐに目に付いたろう」

 

「……あ……」

 

 その一言でクラスメイトは千冬の弟が、優介は眼前にいる今にも殴ってやりたい同級生が。千冬は自分の手のかかる弟、一夏が参考書に何かしでかしたことを悟った。 

 

「……織斑、入学前に送られてきた教科書類は届いているな」

 

 何をしでかしたのか、はっきりとさせるために千冬は一夏に問い詰める。

 

「……はい……」

 

「なら、その中に事前学習用の参考書が入っていたな」

 

「は、入ってました」

 

 千冬は万が一、配送ミスがあったときのことを考えていたが、そんなことはなかったようだ。

 

「では、その参考書は読んだか?」

 

 千冬の問いに一夏は口を閉ざした。

 

「……すみません!古い電話帳と間違えて捨てました」

 

「必読と書いてあったろうが」

 

 意を決した様子で閉ざしていた口を開き、頭を下げた一夏。その頭へ間髪入れず、千冬は持っていた出席簿の背で殴りつけた。

 

「あとで再発行してやる。一週間で覚えろ」

 

「いや、あの量を一週間でやるのは……」

 

 一夏が言葉を続ける前に千冬は教師として生徒の学力を向上させるために、姉として弟の不出来を治すために、まるで圧倒的暴力で世紀末の世界を統一する覇王がするような威圧にまみれた睨みを彼へ放った。

 

「……はい。やります」

 

 睨みを効かせられた一夏は「無理です」とは言えなかった。

 

 千冬は、自分の威圧感から観念して返事をした一夏にため息をついた。一夏はISについて理解していない。何故ここまで厳しくされるのかも。それは彼だけでなく、ただ、憧れで入学した他の生徒にも言える事。

 

「いいか! ISの機動力、攻撃力、防御力、制圧力はIS登場以前の兵器を凌駕する。そして、様々な点で今までの兵器と異なる。そんな強大な兵器をよく知らずに使用すれば大小に関わらず、必ず事故が起こる。それを予防するための基礎知識と訓練、規則だ。事故が起きた時に覚えてなかった、理解していなかったは通用しない。いいか、必ず覚えて守れ」

 

 今教えておかねばならないと思い教壇に立ち、言い終わると一番伝えなければならない相手、一夏を見るとふてくされた表情をしていた。

 

「……貴様、自分は望んでここにいるわけではないと思っているな」

 

 千冬は一夏に向けたつもりだったが、その言葉には一夏だけでなく後ろの優介も反応した。一夏はなんでわかったんだという感じで。優介は眉間に皺を寄せて不機嫌そうに。

 

「望む、望まざるに関わらず人は集団の中で生きなければならない。それを放棄するなら人間を辞めろ」

 

 一夏は何かの決心を付けたかのように表情が強く引き締まったのに対し、優介の顔へ余計に皺が刻まれる。千冬はなぜ優介が不機嫌になったかはわからなかったが、予習をしてきた事などから自分の弟よりは現実を見えている為、さほど対した理由ではないと思い、話を終わりにして真耶に授業の再開を促した。

 

 その後、真耶と一夏の放課後特別授業が決まった時に見せた彼女の妄想癖に千冬は頭を痛めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、優介。ISの勉強見てくれないか?」

 

 椅子の背もたれを前にするように座り後ろに向かって手を合わせて一夏は、机の中から次の授業で使う教科書とノートを用意する優介に頼み込む。

 

「うーん、勉強見てくれって言われても……俺も勉強中で詳しくないからなぁ」

 

(けっ、死んでもテメェと勉強するかよ)

 

 一夏の不勉強加減がクラス中に露呈し、千冬が喝を入れISの危険性と熟知する事の必要性をクラスに論じた。優介はそれをみんな当たり前だと思いつつ聞いていた。だが、その後に千冬が言った「自分は望んでここにいるわけではないと思っているな」という言葉が少し頭にきた。それは強制入学をさせられたが、どうしようもない現実を受け入れこの場所で頑張ろうとしている心情を知りもせず、自分を蔑んでいるように聞こえたからである。続いて放たれた「望む、望まざるに関わらず人は集団の中で生きなければならない。それを放棄するなら人間を辞めろ」という言葉も自分の心情を無視し、見下している印象を受けた。それらが自分ではなく、一夏のみに向けて投げかけられた言葉であることに気が付かず、優介はそれから悶々としながら授業を受け、今もそれは続いている。

 

「というか、山田先生と放課後に特別授業するって約束してたろ。それで事足りるだろ」

 

「約束はしたけどさ、流石に頼りっぱなしは迷惑だろ」

 

「そりゃそうだけど……」

 

(俺には迷惑をかけてもいいってか……このクソ野郎)

 

 先ほどの授業で一夏が入学直前事前学習用参考書を電話帳と間違え捨ていた事実が発覚し、千冬から再発行したものを一週間で覚えるように命じられた。身から出た錆とは言え、いささか可哀想だと真耶が助け舟として放課後特別授業を申し出た。一夏は喜んでこれを承諾した。

 

 それに、優介は心底イラついた。

 

 授業の最中、一夏に何故、教科書の内容を理解できるのか聞かれた時に優介は参考書を使った事前学習のおかげだと言った。

 

 しかし、本当は卒業式後に政府の人間に拉致され、国が保有するISの訓練施設へ連行されたおかげである。解剖と実験以外の身体調査、ISについての基礎知識と簡単な訓練を受けさせられた。まるで、以前優介がニュースの特集で見た大手警備企業の新入社員研修合宿のようであった。

 

 いや、国が選別した元IS操縦者のトレーナーとほか数名との訓練であったが、度々施設を利用しに来た訓練生や代表候補生らしき人に笑われたり、野次を飛ばせられたり、訓練で度々格の違いを見せつけられ事を踏まえると、優介が受けた研修の方がは精神的苦痛は大きいだろう。

 

 解放されたのはIS学園入学一週間前。それから両親が政府に保護されて優介一人だけになった家での生活をした一週間。その間、一夏は参考書を捨て勉強せず、遊びほうけていたのだ。それで今頃になって焦って山田先生に甘えて教えてもらおうとしている。それに加え優介にも迷惑をかけようとしている。

 

(……って、違うだろ)

 

 確かに一夏は参考書を捨てたが、それは電話帳と間違えて。故意ではない。優介が強制合宿で扱かれている間、一夏が遊びほうけていたのかと言うとそれは違う。いろいろ新生活に向けて準備をしていて忙しかったはずだ。

 

 優介は自分勝手な妄想で一夏が楽をしていると思った。卑しい自分。最低な自分。

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

 そうして一夏への返答に困りつつ、自分をさらに嫌いになった優介と一夏の二人へ誰かが声をかけた。

 

「へ?」

 

「あ、こんにちわ」

 

(ほわあぁ?!このお嬢様風金髪ロールがなんで来た?! さっきの休み時間にも来ただろ! なんなの?!)

 

 先ほどの休み時間に優介を言葉の限り罵倒し女尊男卑の優越感に浸った欧米系入学生の娘。高飛車で女尊男卑の現代社会に染まりきった今時女子。優介が苦手とし、一夏が絶対に対立するという厄介な化学反応を起こす性質を持った物質、今時女子。優介の自己嫌悪を一気に吹き飛ばした彼女は一夏から返事がないことに不満を感じ目を吊り上げて不満を顕にした。

 

「聞いてますの?お返事は?」

 

「あ、ああ。聞いてるけど……どういう要件だ?」

 

「まあ!なんなのですの。私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度をとるのが常識でしょう?」

 

「…………」

 

 金髪ロール今時女子が優介にしたのと同じように一夏へ高圧的な態度を取る。

 

「そちらの方は分をわきまえていたと言うのに……」

 

「ん? 優介の知り合いか?」

 

「い、いや……その、えーっと……」

 

(こっちに話を振るんじゃねぇ一夏!)

 

 金髪ロールが分をわきまえていた方として優介を指したので、一夏は彼の知り合いだと思った。それに対し、優介は係わり合いになりたくない一心と、実際名前は知らなかったこともあり、彼女から目を背け、言いにくそうにする。

 

「……あなた、わたくしを知らなかったのですの? このセシリア・オルコットを? イギリスの国家代表候補生であり、入試主席であるわたくしを?」

 

 既に釣り上がっていた目を細め、冷たい口調でお嬢様風金髪ロール、セシリア・オルコットは優介に問いかけた。

 

「え、ええっと……纏っているオーラが凄かったので、すごい人なんだろうとは思いましたが……」

 

(んなこと知るかよ)

 

「ふーん……そうですの……」

 

 腰が低い態度であった為、自分を当然知っているものと思っていたセシリアはなんとも微妙そうな表情で優介を見た。

 

「あ、質問良いか?」

 

 優介とセシリアの間に流れる空気を察したのか。それとも空気を読まなかったのか。一夏がセシリアに話しかけた。

 

「ふん。下々の要求に応えるのは貴族として当然の務めですわ。よろしくってよ」

 

「代表候補生って何?」

 

(こいつ、今すぐ窓から飛び降りてくれないかな……)

 

 その発言にセシリアと優介、三人の会話へ聞き耳を立てていた周りのクラスメイトが唖然とした。

 

「あ、あ、あなた本気でおっしゃってますの?!」

 

「オ、オルコットさん、落ち着い―」

 

「おう、知らん」

 

(火に油注いでるんじゃねぇ!)

 

 驚きのあまり取り乱し、一夏に詰め寄ろうとするセシリアをクラス内の空気が悪くなるのを止めようと、優介が二人の間に入る事でなだめようとするも、一夏が空気を読まずに代表候補生について知らないと話す。

 

「信じられません。信じられませんわ。極東の島国とはいえ、ここまでとは……」

 

「で、代表候補生って何?」

 

「国家代表IS操縦者の候補生のことだ一夏。かなりの適性の高さと才能がないと成れないエリートだぞ」

 

(単語から想像したらわかるだろうが、この馬鹿一夏が!)

 

 優介が間に入った事で少しだけ冷静さを取り戻したセシリアであるが、また一夏が不用意な質問をすれば怒りが再発する。そう考えた優介はセシリアを持ち上げるようにエリートという言葉を一際強調して言って、機嫌をとる。

 

「そうですわ。そんな数少ないエリートの私とクラスを共に出来るだけでも奇跡、幸運なのですわ。この現実をもう少し理解していただけるかしら?」

 

 願いが通じたようでセシリアは今にも笑いだしそうな程にご満悦な表情となり、優介はほっと一息付いた。

 

「そうか、それはラッキーだ」

 

 どうでもいいといった感じで自分の前髪をいじりつつ、一夏は嫌味にしか聞こえない言い方で言う。どうやら彼は火に油ではなくガソリンを注ぐのが趣味らしい。

 

「あ、あなた馬鹿にしてますの?」

 

「オルコットさん、すみません。お、おい一夏。そういう態度は失礼だぞ」

 

(この○○○野郎。さっさとお前が謝れ)

 

 馬鹿にされ他と感じ、顔を真っ赤にしたセシリアが今にも怒りを爆発させてしまいそうになる。優介は一先ず代わりに謝り、一夏本人にも謝るように促す。さらに、一夏に心の中で倫理的に表示してはいけないような表現で罵倒する。

 

「けど、そいつが幸運だって言ったんだろう」

 

 しかし、一夏は彼女の傲慢な態度に虫の意心が悪いようで一向に謝ろうとしない。

 

「な、なんですって?!」

 

「って?!オルコットさん落ち着いて」

 

 優介をどかして一夏に詰め寄ろうとする彼女を優介は必死に止める。

 

「あなた、なんなんですの?! さっきから!」

 

「えっ、俺?!」

 

 優介は一夏に心の中で悪態をつくことも忘れ、必死に止めに入った自分へ怒りの矛先が向いたことに驚く。

 

「一体どっちの味方ですの?」

 

「い、いや、どっちの味方って……ただ、俺は二人が喧嘩しないようにとしてるだけで……」

 

 クラスの空気が悪くならないようにとやっていた。

 

 ただそれだけだったはずなのにどうして、自分がこんな目にあうのか。真っ当な理由で普通のことをしているだけなのに。

 

 いや、本当にそうだろうか。理由はそれだけだろうか。

 

 後の学校生活を考えると同じ男性操縦者である一夏が何か揉め事を起こせば、一夏だけでなく同じ男性操縦者として一括りにされている自分への風当たりが強くなる。いや、一夏はあのルックスと性格から絶対に安全だ。ましてや、千冬がいる。そうなると危険に晒されるのは優介である。なんの後ろ盾もない一般人ならばと、憂さ晴らしの対象になるのは目に見えている。

 

 全ては自分のためだけにしたこと。自己中心的な理由。

 

「つまり、どっちつかずということですわね。まるで、風見鶏ですわね!」

 

「おい! そういう言い方無いだろ?!」

 

「あら、失礼。風見鶏よりも人の顔色を伺う卑怯なコウモリと言えばよろしかったですわね」

 

「な?!この―」

 

「一夏、落ち着けって」

 

 セシリアの優介に対する罵倒に我慢できなくなった一夏が立ち上がり彼女に詰め寄ろうとするのを優介が肩を掴み押しとどめる。

 

(……俺……)

 

 二人の言い合いはチャイムが鳴るまで続いた。

 

 優介は結局は自分の保身のためだけに浅ましい行動をした自分を憎む。

 

 もし、自分が本当にクラスや二人のことを思って行動していればこんなことにはならなかったのではないかと。

 

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