異世界料理人   作:孤独なバカ

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少しはやいですがアンケートの方を終了させてもらいます。
二人とも隼人のヒロインで書いていくことになりました。アンケートに答えてくれた375名のみなさん本当にありがとうございました。


一休み

「へぇ〜えっと。ユエさん……だっけ?」

「ユエでいいだろ?えっとユエ?って何語だ?」

「中国語だよ。知らないのか?」

 

サソリモドキを倒した俺達は、サソリモドキと冷凍したサイクロプスの素材やら肉やらをハジメの拠点に持ち帰った。

その巨体と相まって物凄く苦労したのだが、最上級魔法の行使により、へばったユエに再度血を飲ませると瞬く間に復活し見事な身体強化で怪力を発揮してくれたため、二人がかりでなんとか運び込むことができた。

俺と優花は働いた分休んでくれとの話だった

 

「そうすると、ユエって少なくとも三百歳以上なわけか?」

「……マナー違反」

「ハジメ。」

「お前女子の気持ちくらい少しは汲み取れよ。」

 

と俺でさえ突っ込まなかったのに堂々と地雷を踏み込むハジメに押し寄せるジト目に目をそらす

 

「そういえば俺は須藤隼人。天職は料理人だな。隼人でいいぞ。」

「私は園部優花ね。優花でいいわ。」

「隼人。優花よろしく」

 

三百年前の大規模な戦争のおり吸血鬼族は滅んだとされていたはずだ。実際、ユエも長年、物音一つしない暗闇に居たため時間の感覚はほとんどないそうだが、それくらい経っていてもおかしくないと思える程には長い間封印されていたという。二十歳の時、封印されたというから三百歳ちょいということだ。

 

「吸血鬼って、皆そんなに長生きするのか?」

「……私が特別。〝再生〞で歳もとらない……」

「不老不死ってことか。そりゃ厄介だな。」

 

聞けば十二歳の時、魔力の直接操作や〝自動再生〟の固有魔法に目覚めてから歳をとっていないらしい。普通の吸血鬼族も血を吸うことで他の種族より長く生きるらしいが、それでも二百年くらいが限度なのだそうだ。

ちなみに、人間族の平均寿命は七十歳、魔人族は百二十歳、亜人族は種族によるらしい。エルフの中には何百年も生きている者がいるとか。

ユエは先祖返りで力に目覚めてから僅か数年で当時最強の一角に数えられていたそうで、十七歳の時に吸血鬼族の王位に就いたという。

なるほど、あのサソリモドキの外殻を融解させた魔法を、ほぼノータイムで撃てるのだ。しかも、ほぼ不死身の肉体。行き着く先は〝神〟か〝化け物〟か、ということだろう。ユエは後者だったということだ。

なんというか力を持ちすぎた人の定だろう

ユエは全属性に適性があるらしい。本当に「なんだ、そのチートは……」と呆れるハジメだったが、ユエ曰く、接近戦は苦手らしく、一人だと身体強化で逃げ回りながら魔法を連射するくらいが関の山なのだそうだ。もっとも、その魔法が強力無比なのだから大したハンデになっていないのだが。

 

「それで……肝心の話だが、ユエはここがどの辺りか分かるか? 他に地上への脱出の道とか」

「……わからない。でも……」

 

 ユエにもここが迷宮のどの辺なのかはわからないらしい。申し訳なさそうにしながら、何か知っていることがあるのか話を続ける。

 

「……この迷宮は反逆者の一人が作ったと言われてる」

「反逆者?」

 聞き慣れない上に、なんとも不穏な響きに思わず錬成作業を中断してユエに視線を転じる俺たち。ハジメの作業をジッと見ていたユエも合わせて視線を上げると、コクリと頷き続きを話し出した。

 

「反逆者……神代に神に挑んだ神の眷属のこと。……世界を滅ぼそうとしたと伝わってる」

「……反逆者ね。」

 

でも世界で滅ぼそうとしているのになんでこんな迷宮を作ったのか。それがよく分からないのだけどな。

 

「……そこなら、地上への道があるかも……」

「なるほど。奈落の底からえっちらおっちら迷宮を上がってくるとは思えない。神代の魔法使いなら転移系の魔法で地上とのルートを作っていてもおかしくないってことか」

 

 見えてきた可能性に、頬が緩むハジメ。再び、視線を手元に戻し作業に戻る。ユエの視線もハジメの手元に戻る。ジーと見ている。

 

「……そんなに面白いか?」

 

 口には出さずコクコクと頷くユエ。だぶだぶの外套を着て、袖先からちょこんと小さな指を覗かせ膝を抱える姿はなんとも愛嬌があり、その途轍もなく整った容姿も相まって思わず抱き締めたくなる可愛らしさだ。

 

「ん。」

「いつぅ。優花何すんだよ。」

「別に!」

 

いやどう見ても拗ねているんだけど。思いっきり頰を引っ張られたし

 

「……ハジメ、変なこと考えた?」

「いや、なにも?」

 

ハジメも少し冷や汗をかいている。男子がとことん女子に弱いのは当たり前のことだろうか。

 

「そういや、どうしてみんなはここにいる?」

「あ〜。んじゃここは俺だな。恐らく俺が全部把握しているから。」

 

と俺は説明を始める。それにハジメや優花も付け足してほぼ全部告げ終えると

 

いつの間にかユエの方からグスッと鼻を啜るような音が聞こえ出した。

「なんだ?」と再び視線を上げてユエを見ると、ハラハラと涙をこぼしている。ギョッとして、ハジメは思わず手を伸ばし、流れ落ちるユエの涙を拭きながら尋ねた。

「いきなりどうした?」

「……ぐす……みんな……つらい……私もつらい……」

 

どうやら俺たちのために泣いてくれているらしい。ハジメは少し驚くと、表情を苦笑いに変えてユエの頭を撫でる。

 

「気にするなよ。もう檜山のことは割りかしどうでもいいんだ。そんな些事にこだわっても仕方無いしな。ここから出て復讐しに行って、それでどうすんだって話だよ。そんなことより、生き残る術を磨くこと、故郷に帰る方法を探すこと、それに全力を注がねぇとな」

「んお前白崎はどうするんだ?お前助けてくれるって言っていたんだろ?あいつ変なところで真面目だから恐らく今もハジメのこと探しているんじゃないのか?」

「……」

「お前が檜山の件を聞いてお前が会いたがっていたのは白崎じゃないのかって思っていたんだけど。」

「よく見てんな、お前。」

「目片方見えないけどな。さすがに迷宮でずっと一緒にいるダチのことくらいなら分かるんだけど。」

 

隼人の予測は当たっていた。別の世界線ではハジメは壊れてしまっていた。しかし、隼人の料理と気を使う性格と的確かつ度胸のある優花により、ハジメは今まで感じていた孤独感が消え失せ幸福感を感じていたのだ。それは隼人や優花もそうだった。

急いで地上に向かうよりも全員が生きて地上に帰る。

そしてみんなで地球に帰る。

それがいつの間にか三人の中の共通認識になっていたのだ。

 

「……帰るの?」

「うん? 元の世界にか? そりゃあ帰るさ。帰りたいよ。……色々変わっちまったけど……故郷に……家に帰りたい……それに、俺をずっと待ってくれている奴がいる。」

「……そう」

「私もナナとタエに会いたいし。」

「俺も八重樫にたまごうどん作る約束してたからな。谷口や先生も少し溜め込む性格だしなぁ。あいつら大丈夫かな。遠藤とも話したいなぁ。あいつの話面白いし。」

 

誰もが思い通りの友達を思い描く。

少し優花が不機嫌になっていたのだが……それぞれに思うことがあるらあしい

ユエは沈んだ表情で顔を俯かせる。そして、ポツリと呟いた。

 

「……私にはもう、帰る場所……ない……」

「……」

 

そんなユエの様子に彼女の頭を撫でていた手を引っ込めると、ハジメは、カリカリと自分の頭を掻いた。

 

 別に、ハジメは鈍感というわけではない。なので、ユエが自分に新たな居場所を見ているということも薄々察していた。新しい名前を求めたのもそういうことだろう。だからこそ、ハジメが元の世界に戻るということは、再び居場所を失うということだとユエは悲しんでいるのだろう。

 

「あ~、なんならユエも来るか?」

「え?」

 

 ハジメの言葉に驚愕をあらわにして目を見開くユエ。涙で潤んだ紅い瞳にマジマジと見つめられ、なんとなく落ち着かない気持ちになったハジメは、若干、早口になりながら告げる。

 

「いや、だからさ、俺たちの故郷にだよ。まぁ、普通の人間しかいない世界だし、戸籍やらなんやら人外には色々窮屈な世界かもしれないけど……今や俺も似たようなもんだしな。どうとでもなると思うし……あくまでユエが望むなら、だけど?」

 

しばらく呆然としていたユエだが、理解が追いついたのか、おずおずと「いいの?」と遠慮がちに尋ねる。しかし、その瞳には隠しようもない期待の色が宿っていた。

 

「いいに決まっているだろ。俺も賛成、住民票とかは厳しいかもしれないけどユエさんにも俺たちの作った料理食べてほしいし。」

「えぇ。私と隼人が作ったオムライスやトンカツ美味しいわよ。」

「……隼人。優花。」

「あぁ。ここまできたら一緒に日本に帰ろう。みんなで。」

「当然。」

「えぇ。」

 

目線に気づいたのか優花も乗ってくれて全員の意思を確かにしたところだった

 

 

なお、食事についてなのだがユエ曰くハジメの血でいいって言っていた。しかし、香草を使った魔物肉の鍋にあっさり陥落してしまい。ハジメの血の次に、毒抜きした魔物肉が好物なったのは別の話。

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