異世界料理人   作:孤独なバカ

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クリアの先に

解体をした後にホルモンだけを食べ終え、少し休憩していた。

久しぶりに成長の痛みを全員が体験した。ユエは解毒してあるものしか食べていなかった為、初めて見る現象に心配そうだったが、ハジメが先に説明していたので、その間看病をしてくれていたのだ。

 

「あいつどれだけ強かったんだよ」

 

ハジメが痛みが抜けたらしく苦笑している。

 

「まぁラスボスだと思うしな。ここだけは明らかに材質が違うし」

「改めて見るけど綺麗だよね」

「綺麗っていうよりもこれ建築の継ぎ目がないんだよなぁ。どうやって作ったんだろう」

「継ぎ目がない?」

「ほら、柱もこれ明らかに人工物だろ。それなのに、どこにも一から作ったように見えないんだよ。見てみ」

 

と柱の根元の部分がまるで生えているようになっているのにハジメも少し目を見開く。

ユエと優花は首を傾げていたがハジメも少し考えハッとしたようにしていた。

どうやら俺と意見が一致したらしいな。

 

「この迷宮を作ったのは俺と同じ錬成師ってことか?」

「多分な。それでこれだけの難易度があるんだ。この迷宮を作った本人が何を残したのかちょっと気になるな」

 

俺は少し楽しげに笑う。なんというかこういうことはやっぱり楽しいって思うけどな。

 

「……なんかお前って時々子供っぽいところあるよな」

「自覚あるからほっとけ」

 

料理のことや面白そうなことを見つけると俺は少し暴走するのは分かっている。

一度白崎の家に行った時、白崎の母親が料理研究家と分かると、夜になっても白崎の母親と10時間くらい料理の話題で盛り上がったことは今でも黒歴史として残っている。

途中から白崎や八重樫も真剣に聞いていたことから二人のためにもなったのであろう。

そう剥れながらも進んで、扉を開けた途端

俺たちは驚愕した。

 

中は広大な空間に住み心地の良さそうな住居があったのだ。念のため、住居に危険がないことを確認し、危険がない事が分かってから俺たちは外に出る。

まず、目に入ったのは太陽だ。もちろんここは地下迷宮であり本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず〝太陽〟と称したのである。

注目するのは耳に心地良い水の音。扉の奥のこの部屋はちょっとした球場くらいの大きさがあるのだが、その部屋の奥の壁は一面が滝になっていた。天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいく。滝の傍特有のマイナスイオン溢れる清涼な風が心地いい。よく見れば魚も泳いでいるようだ。もしかすると地上の川から魚も一緒に流れ込んでいるのかもしれない。

川から少し離れたところには大きな畑もあるようである。今は何も植えられていないようだが……その周囲に広がっているのは、もしかしなくても家畜小屋である。動物の気配はしないのだが、水、魚、肉、野菜と素があれば、ここだけでなんでも自炊できそうだ。緑も豊かで、あちこちに様々な種類の樹が生えている。

 

「す、すごいわね」

「……まじかよこれ」

「どうやってこの空間ができたんだ?」

「……反逆者のすみか」

 

とユエの言葉に俺たちはハッとする。とりあえず警戒しながら

 

建築物の方へ歩を進めた。建築したというより岩壁をそのまま加工して住居にした感じだ。

「……少し調べたけど、開かない部屋も多かった……」

「そうか……ユエ、油断せずに行くぞ」

「ん……」

 石造りの住居は全体的に白く石灰のような手触りだ。全体的に清潔感があり、エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。薄暗いところに長くいたハジメ達には少し眩しいくらいだ。どうやら三階建てらしく、上まで吹き抜けになっている。

 取り敢えず一階から見て回る。暖炉や柔らかな絨毯、ソファのあるリビングらしき場所、台所、トイレを発見した。どれも長年放置されていたような気配はない。人の気配は感じないのだが……言ってみれば旅行から帰った時の家の様と言えばわかるだろうか。しばらく人が使っていなかったんだなと分かる、あの空気だ。まるで、人は住んでいないが管理維持だけはしているみたいな……

より警戒しながら進む。更に奥へ行くと再び外に出た。そこには大きな円状の穴があり、その淵にはライオンぽい動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座している。彫刻の隣には魔法陣が刻まれている。試しに魔力を注いでみると、ライオンモドキの口から勢いよく温水が飛び出した。どこの世界でも水を吐くのはライオンというのがお約束らしい。

 

「うわぁ〜〜大きいお風呂」

「今までは錬成で作った即席のお風呂に俺がお湯を入れていたからな。久しぶりにゆっくりできるんじゃないか?」

 

日本人である俺たちは目を輝かす。どうやら洗剤もあるらしく自作の石鹸は少し獣くさかったのでさらに嬉しい限りだ。

 

「優花と隼人。私とハジメ?」

「ちょ、ユエ」

「さすがにお風呂ではゆっくりさせてくれ」

「男女別でいいんじゃないか?」

「むぅ」

 

それから、二階で書斎や工房らしき部屋を発見した。しかし、書棚も工房の中の扉も封印がされているらしく開けることはできなかった。仕方なく諦め、探索を続ける。

二人は三階の奥の部屋に向かった。三階は一部屋しかないようだ。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。いっそ一つの芸術といってもいいほど見事な幾何学模様である。

しかし、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影である。人影は骸だった。既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。薄汚れた印象はなく、お化け屋敷などにあるそういうオブジェと言われれば納得してしまいそうだ。

 

 その骸は椅子にもたれかかりながら俯いている。その姿勢のまま朽ちて白骨化したのだろう。魔法陣しかないこの部屋で骸は何を思っていたのか。寝室やリビングではなく、この場所を選んで果てた意図はなんなのか……

 

「……怪しい……どうする?」

 

ユエもこの骸に疑問を抱いたようだ。おそらく反逆者と言われる者達の一人なのだろうが、苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿は、まるで誰かを待っているようである。

と俺はあることに気づく。

 

「あれ?この魔法陣。レシピと構造が似ているな」

「ん?どういうことだ?」

「俺のレシピっていうのは魔法陣を書いて情報を伝えるタイプがあるだろ?ハジメも体験したやつ」

 

レシピ作成。これは料理の技能だけではなく技能の使い方を情報で教えることも可能で、ハジメも適正はないのだが火種や簡単な初球魔法なら無詠唱で唱えられるようになっていた。

特に纏火を全員が覚えられたことはかなり戦力アップになっており、今はユエに時間があったら技能を覚えさせることにしている。

なおレシピ作成はコピーできなかったことから。恐らく俺専用の固有技能なのだろう。

 

「あれとほぼ魔法陣が同じなんだよ。ちょっと複雑になっているけど。それでも無害であることは違いはねぇよ」

「……なるほどな。一応のため俺と隼人が先にのってみるか」

「二人とも気をつけて」

「ん……気を付けて」

 

隼人とハジメは魔法陣へ向けて踏み出した。そして、ハジメが魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。

 

まぶしさに目を閉じる。直後、何かが頭の中に侵入し、まるで走馬灯のように奈落に落ちてからのことが駆け巡ってやがて光が収まり、目を開けた俺たちの目の前には、黒衣の青年が立っていた。

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