それでもいいという人だけよろしくお願いします。
魔法陣が淡く輝き、部屋を神秘的な光で満たす。
中央に立つハジメの眼前に立つ青年は、よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。
「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」
話し始めた彼はオスカー・オルクスというらしい。【オルクス大迷宮】の創造者のようだ。驚きながら彼の話を聞く。
「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」
そうして始まったオスカーの話は、ハジメが聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚愕すべきものだった。
簡潔にまとめると。この世界の争いは初めから神の遊戯として作られたものであり、反逆者と呼ばれる人達はそんな神を殺そうとしていたがその神の策略により真実を知らない周りの人間達を巧みに煽動し、逆に反逆者を追い詰めた。
七人の反逆者いわゆる“解放者”は散り散りとなりながらも各地で迷宮を作り上げ、その攻略者に自身の神代の魔法を授けるという手段を取ったとの事。
「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」
そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいたためと理解できたので大人しく耐えた。
「ハジメ、隼人……大丈夫?」
「二人とも平気?」
「ああ、平気だ……にしても、何かどえらいこと聞いちまったな」
「何かあると思ったけどな」
「……ん……どうするの?」
ユエがオスカーの話を聞いてどうするのかと尋ねる。
「うん?今は別にどうもしないぞ?元々、勝手に召喚して戦争しろとかいう神なんて迷惑としか思ってないからな。この世界がどうなろうと知ったことじゃないしな。地上に出て帰る方法探して、故郷に帰る。それが最優先だろ?」
「まぁ帰れないことには話は始まらないしな。とりあえず帰還の方法を見つけるのが先決だな?」
でもいつかは神と戦う。と俺もハジメも口外に言っていた。
俺もハジメも結構この世界のことを気に入っているらしい。
そのことを二人も理解したのだろう。
「私の居場所はここ……他は知らない」
「私も隼人やハジメと一緒に帰ってついていくわ。」
と二人も賛成する
そう言って、ハジメに寄り添いその手を取る。ギュッと握られた手が本心であることを如実に語る。ユエは、過去、自分の国のために己の全てを捧げてきた。それを信頼していた者たちに裏切られ、誰も助けてはくれなかった。ユエにとって、長い幽閉の中で既にこの世界は牢獄だったのだ
その牢獄から救い出してくれたのはハジメだ。だからこそハジメの隣こそがユエの全てなのである。
「……そうかい」
若干、照れくさそうなハジメ。それを誤魔化すためか咳払いを一つして、ハジメが衝撃の事実をさらりと告げる。
「あ~、あと何か新しい魔法……神代魔法っての覚えたみたいだ」
「……ホント?」
「あ〜俺も。鉱石に干渉できる生成魔法ってやつ。魔法を鉱物に付加して、特殊な性質を持った鉱物を生成出来る魔法らしい。」
それを俺が告げる
するとユエはその言葉に驚くようにして
「……アーティファクト作れる?」
「ああ、そういうことだな」
そう、生成魔法は神代においてアーティファクトを作るための魔法だったのだ。まさに〝錬成師〟のためにある魔法である。実を言うとオスカーの天職も〝錬成師〟だったりする。
「優花もユエも覚えたらどうだ? 何か、魔法陣に入ると記憶を探られるみたいなんだ。オスカーも試練がどうのって言ってたし、試練を突破したと判断されれば覚えられるんじゃないか?」
「錬成使わないのだけど」
「まぁ、そうだろうけど……せっかくの神代の魔法だぞ。覚えておいて損はないんじゃないか?」
「……ん……二人が言うなら」
ハジメの勧めに魔法陣の中央に入るユエ。魔法陣が輝きユエの記憶を探る。そして、試練をクリアしたものと判断されたのか……
「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスry……」
またオスカーが現れた。何かいろいろ台無しな感じだった。ハジメとユエはペラペラと同じことを話すオスカーを無視して会話を続ける。
「どうだ? 修得したか?」
「ん……した。でも……アーティファクトは難しい」
「私もよ。」
「う~ん、やっぱり神代魔法も相性とか適性とかあるのかもな」
「……?」
それなら俺はなんで生成魔法を覚えられたんだ。
そう考えながらも隣でオスカーは何もない空間に微笑みながら話している。すごくシュールだった。後ろの骸が心なし悲しそうに見えたのは気のせいではないかもしれない。
「……ちゃんと供養してあげましょう。」
優花の意見に全員が頷く。それほど解放者のオスカーのことを偉大に思っていた
オスカーの骸を畑の端に埋め、一応、墓石も立てた。
埋葬が終わると、隼人たちは封印されていた場所へ向かった。次いでにオスカーが嵌めていたと思われる指輪も頂いておいた。その指輪には十字に円が重った文様が刻まれており、それが書斎や工房にあった封印の文様と同じだったのだ。
まずは書斎だ。
一番の目的である地上への道を探らなければならない。ハジメとユエは書棚にかけられた封印を解き、めぼしいものを調べていく。すると、この住居の施設設計図らしきものを発見した。通常の青写真ほどしっかりしたものではないが、どこに何を作るのか、どのような構造にするのかということがメモのように綴られたものだ。
「ビンゴ! あったぞ、みんな!」
「んっ」
ハジメから歓喜の声が上がる。ユエも嬉しそうだ。設計図によれば、どうやら先ほどの三階にある魔法陣がそのまま地上に施した魔法陣と繋がっているらしい。オルクスの指輪を持っていないと起動しないようだ。貰っておいてよかった。
「隼人これ。」
「ん?」
優花の他の資料を探っていたが一冊の本を持ってきた。どうやらオスカーの手記のようだ。かつての仲間、特に中心の七人との何気ない日常について書いたもののようである。
その内の一節に、他の六人の迷宮に関することが書かれていた。
「……つまり、他の迷宮も攻略すると、創設者の神代魔法が手に入るということ?」
「そうじゃないの?」
手記によれば、オスカーと同様に六人の〝解放者〟達も迷宮の最深部で攻略者に神代魔法を教授する用意をしているようだ。生憎とどんな魔法かまでは書かれていなかったが……
「……帰る方法見つかるかも」
「あぁ。」
隼人と優花は目を輝かせる。そしてハジメとユエにも伝えると、ハジメたちの成果も報告する。設計図を調べていると、どうやら一定期間ごとに清掃をする自律型ゴーレムが工房の小部屋の一つにあったり、天上の球体が太陽光と同じ性質を持ち作物の育成が可能などということもわかった。人の気配がないのに清潔感があったのは清掃ゴーレムのおかげだったようだ。
工房には、生前オスカーが作成したアーティファクトや素材類が保管されているらしい。
「これで今後の指針ができた。地上に出たら七大迷宮攻略を目指そう」
「んっ」
「あぁ。」
「えぇ。」
明確な指針ができて頬が緩む俺たち。
それからしばらく探したが、正確な迷宮の場所を示すような資料は発見できなかった。現在、確認されている【グリューエン大砂漠の大火山】【ハルツィナ樹海】、目星をつけられている【ライセン大峡谷】【シュネー雪原の氷雪洞窟】辺りから調べていくしかないだろう。
しばらくして書斎あさりに満足した後に、工房へと移動した。
工房には小部屋が幾つもあり、その全てをオルクスの指輪で開くことができた。中には、様々な鉱石や見たこともない作業道具、理論書などが所狭しと保管されており、錬成師にとっては楽園かと見紛うほどでありハジメが少しはしゃいでしまったほど。
俺は少し考え
「なぁやっぱりここに少し留まらないか?」
俺はそう告げるとユエは少し不思議に思ったらしい。
でも二人はちゃんと理解したらしい。
「さっさと地上に出たいのは俺も山々なんだが……せっかく学べるものも多いし、ここは拠点としては最高だ。他の迷宮攻略のことを考えても、ここで可能な限り準備しておきたい。」
「そうね。焦る旅ではないし。ちょっと疲れたから少しゆっくり疲労を取っておきたいわ。」
「俺はもう一回神水を取りに行こうと思っているな。ちょっと量が少なくなっているし。」
するとユエも納得したらしい。そうして俺たちはここに留まることになったのだった。
次回で原作一巻が終了します。
これからは原作との変更点を書いていこうかと。
なんといっても神と戦うことになっていることですね。
この世界に来て奈落に落ちて踏んだり蹴ったりの隼人たちですが、最初に適切な処置を行ったために心が壊れておらず、解放者に敬意を持っているので無下にはしない模様
それと人数が多いのでなくなりかけていた神水を取りに行くとのことですね。
次回もお楽しみに。