雫のステータスが明らかになります
雫は自分のステータスを見て今王都へと向かう馬車の中でで頭を抱えていた
というのも今の雫のステータスは
八重樫雫 17歳 女 レベル:1
天職:剣姫
筋力:1000
体力:1000
耐性:800
敏捷:1500
魔力:800
魔耐:800
技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+無拍子]・縮地[+爆縮地][+重縮地][+震脚][+無拍子]・先読[+投影]・気配感知・隠業[+幻撃]・恋姫・不屈・恋する乙女・言語理解
となっている。レベルが1になったとかステータスが三倍近く上昇とか様々なツッコミどころがあるのだがそれも全部にその答えがあった
恋姫 特定の異性に対する想いが強いほど成長限界およびステータスが増加。また対象相手のステータス上昇。
不屈 二度と折れない心を持つ。
恋する乙女 愛する人のため奮闘する。私の全てはあなたのために。
雫自身重すぎる気がするが、優花がいても諦めないと思っている時点で既に心が決まっていたのだろう。
実際香織でさえ雫の強さの理由が隼人だと気づいて私も負けられないとお互いに鍛錬を組んでいたのだ。
今は勇者一行は、一時迷宮攻略を中断しハイリヒ王国に戻っていた。
道順のわかっている今までの階層と異なり、完全な探索攻略であることから、その攻略速度は一気に落ちたこと、また、魔物の強さも一筋縄では行かなくなって来た為、メンバーの疲労が激しいことから一度中断して休養を取るべきという結論に至ったのだ。
もっとも、休養だけなら宿場町ホルアドでもよかった。王宮まで戻る必要があったのは、迎えが来たからである。何でも、ヘルシャー帝国から勇者一行に会いに使者が来るのだという。
何故、このタイミングなのか。
元々、エヒト神による〝神託〟がなされてから光輝達が召喚されるまでほとんど間がなかった。そのため、同盟国である帝国に知らせが行く前に勇者召喚が行われてしまい、召喚直後の顔合わせができなかったのだ。
もっとも、仮に勇者召喚の知らせがあっても帝国は動かなかったと考えられる。なぜなら、帝国は三百年前にとある名を馳せた傭兵が建国した国であり、冒険者や傭兵の聖地とも言うべき完全実力主義の国だからである。
突然現れ、人間族を率いる勇者と言われても納得はできないだろう。聖教教会は帝国にもあり、帝国民も例外なく信徒であるが、王国民に比べれば信仰度は低い。大多数の民が傭兵か傭兵業からの成り上がり者で占められていることから信仰よりも実益を取りたがる者が多いのだ。もっとも、あくまでどちらかといえばという話であり、熱心な信者であることに変わりはないのだが。
そんな訳で、召喚されたばかりの頃の光輝達と顔合わせをしても軽んじられる可能性があった。もちろん、教会を前に、神の使徒に対してあからさまな態度は取らないだろうが。王国が顔合わせを引き伸ばすのを幸いに、帝国側、特に皇帝陛下は興味を持っていなかったので、今まで関わることがなかったのである。
しかし、今回の【オルクス大迷宮】攻略で、歴史上の最高記録である六十五層が突破されたという事実をもって帝国側も光輝達に興味を持つに至った。帝国側から是非会ってみたいという知らせが来たのだ。王国側も聖教教会も、いい時期だと了承したのである。
そんな話を帰りの馬車の中でツラツラと教えられながら、光輝達は王宮に到着した。
馬車が王宮に入り、全員が降車すると王宮の方から一人の少年が駆けて来るのが見えた。十歳位の金髪碧眼の美少年である。光輝と似た雰囲気を持つが、ずっとやんちゃそうだ。その正体はハイリヒ王国王子ランデル・S・B・ハイリヒである。
「香織! よく帰った! 待ちわびたぞ!」
「ランデル殿下。お久しぶりです」
もちろんこの場には、香織だけでなく他にも帰還を果たした生徒達が勢ぞろいしている。その中で、香織以外見えないという様子のランデル殿下の態度を見ればどういう感情を持っているかは容易に想像つくだろう。
「ああ、本当に久しぶりだな。お前が迷宮に行ってる間は生きた心地がしなかったぞ。怪我はしてないか? 余がもっと強ければお前にこんなことさせないのに……」
「お気づかい下さりありがとうございます。ですが、私なら大丈夫ですよ? 自分で望んでやっていることですから」
「いや、香織に戦いは似合わない。そ、その、ほら、もっとこう安全な仕事もあるだろう?」
「安全な仕事ですか?」
ランデル殿下の言葉に首を傾げる香織。ランデル殿下の顔は更に赤みを増す。となりで面白そうに成り行きを見ている雫は察しがついて、少年の健気なアプローチに思わず苦笑いする。
「う、うむ。例えば、侍女とかどうだ? その、今なら余の専属にしてやってもいいぞ」
「侍女ですか? いえ、すみません。私は治癒師ですから……」
「な、なら医療院に入ればいい。迷宮なんて危険な場所や前線なんて行く必要ないだろう?」
王宮の直ぐ傍にある。要するに、ランデル殿下は香織と離れるのが嫌なのだ。しかし、そんな少年の気持ちは鈍感な香織には届かない。
「いえ、前線でなければ直ぐに癒せませんから。心配して下さりありがとうございます」
「うぅ」
ランデル殿下は、どうあっても香織の気持ちを動かすことができないと悟り小さく唸る。そこへ空気を読まない厄介な善意の塊、勇者光輝がにこやかに参戦する。
「ランデル殿下、香織は俺の大切な幼馴染です。俺がいる限り、絶対に守り抜きますよ」
光輝としては、年下の少年を安心させるつもりで善意全開に言ったのだが、この場においては不適切な発言だった。
意訳するならば〝俺の女に手ぇ出してんじゃねぇよ。俺がいる限り香織は誰にも渡さねぇ! 絶対にな!〟
「香織を危険な場所に行かせることに何とも思っていないお前が何を言う! 絶対に負けぬぞ! 香織は余といる方がいいに決まっているのだからな!」
「え~と……」
ランデル殿下の敵意むき出しの言葉に、香織はどうしたものかと苦笑いし、光輝はキョトンとしている。雫はそんな光輝を見て溜息だ。
ガルルと吠えるランデル殿下に何か機嫌を損ねることをしてしまったのかと、光輝が更に煽りそうなセリフを吐く前に、涼やかだが、少し厳しさを含んだ声が響いた。
「ランデル。いい加減にしなさい。香織が困っているでしょう? 光輝さんにもご迷惑ですよ」
「あ、姉上!? ……し、しかし」
「しかしではありません。皆さんお疲れなのに、こんな場所に引き止めて……相手のことを考えていないのは誰ですか?」
「うっ……で、ですが……」
「ランデル?」
「よ、用事を思い出しました! 失礼します!」
ランデル殿下はどうしても自分の非を認めたくなかったのか、いきなり踵を返し駆けていってしまった。その背を見送りながら、王女リリアーナは溜息を吐く。
「香織、光輝さん、弟が失礼しました。代わってお詫び致しますわ」
リリアーナはそう言って頭を下げた。美しいストレートの金髪がさらりと流れる。
「ううん、気にしてないよ、リリィ。ランデル殿下は気を使ってくれただけだよ」
「そうだな。なぜ、怒っていたのかわからないけど……何か失礼なことをしたんなら俺の方こそ謝らないと」
するとリリアーナは雫の方を見て苦笑する
「雫さんもお元気でしたか?」
「えぇ。大丈夫よ。」
「……隼人さんは多くの物を私たちに残してくれました。隼人さんが早く見つかればいいのですが。」
リリアーナと隼人は結構付き合いがあり、いつもクラスメイトのことを心配してくれる王宮側として隼人自身油断はできないが結構素を見せていたのがリリアーナである。リリアーナ自身も隼人と話す時は王女という立場も忘れて一人の女の子として扱われていた。時々雑な扱いや少し王女らしくない扱いをしていたのだがそれでも王女という仮面ではなく素で話せる隼人に惹かれていた一人なのだ。
「えぇ。隼人は絶対一回は殴らないと気が済まないわ。……本当遺言書なんか書いて。最初から隼人が死ぬ気でいたこととか……色々言いたいことはあるけどね」
リリアーナは少し安心そうにほっとしている。心配を掛けてしまったかしらと雫はリリアーナに少し微笑む。
その後光輝達が迷宮での疲れを癒しつつ、居残り組にベヒモスの討伐を伝え歓声が上がったり、これにより戦線復帰するメンバーが増えたり、愛子先生が一部で〝豊穣の女神〟と呼ばれ始めていることが話題になり彼女を身悶えさせたりと色々あったが光輝達はゆっくり迷宮攻略で疲弊した体を癒した。
香織と雫は内心、迷宮攻略に戻りたくてそわそわしていたが。