というわけで出来るだけ毎日投稿したいと思います
基本は一〜三話ほど。来月は考査があるので
「私の家族も助けて下さい!」
峡谷にウサミミ少女改めシア・ハウリアの声が響く。どうやらこのウサギ一人ではないらしい、仲間も同じ様な窮地にあるようだ。
「……その前に離してくれないか?」
「嫌です。離したら逃げるじゃないですか?」
「いや逃げないから、てか色々聞きたいことがあるし」
「聞きたいことですか?」
「あぁ」
するとキョトンとするシアと名乗るうさ耳少女。
「聞きたいこと?お前何か気になることでもあるのか?」
「あぁ。こいつ魔力持ちだ、しかも技能に魔力操作を持ってやがる」
「「「えっ?」」」
シア、ユエ、ハジメが驚いたように声を上げる、優花は分からないのか首を傾げる。
「優花、亜人族と呼ばれている種族は魔力を持たないせいで人間族から迫害されているんだよ。兎人族はそれでも気配遮断を持っていて温厚な種族、それなのに身体強化をもって魔力量と魔耐が2000オーバー、それに何よりも未来視を持っているんだ」
「……えっと、なんで私のことを」
「技能に鑑定持っているんだよ。ついでに俺たちも」
俺も軽くだけど魔力を流す。
「魔力操作を持っているからな」
「……私と同じ魔力操作を」
するとまた涙目になるシア。優花がそういえばと思い出したように告げる。
「そういえば、未来視って?」
「あっはい。この技能は仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか? みたいな……あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど……そ、そうです。私、役に立ちますよ! 〝未来視〟があれば危険とかも分かりやすいですし! 少し前に見たんです! 貴方が私達を助けてくれている姿が! 実際、ちゃんと貴方に会えて助けられました!」
シアの説明する〝未来視〟は、彼女の説明通り任意で発動する場合は仮定した選択の結果としての未来が見えるというものだ。これには莫大な魔力を消費する。一回で枯渇寸前になるほどである。また、自動で発動する場合もあり、これは直接・間接を問わずシアにとって危険と思える状況が急迫している場合に発動する、これも多大な魔力を消費するが任意発動程ではなく三分の一程消費するらしい。
「なるほどな。つまり俺たちに会えばその問題が解決されるってことか。その問題って?」
「と、とりあえず改めまして、私は兎人族ハウリアの長の娘シア・ハウリアと言います。実は……」
語り始めたシアの話を要約するとこうだ。
シア達、ハウリアと名乗る兎人族達は【ハルツィナ樹海】にて数十人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。兎人族は聴覚や隠密行動に優れているものの、他の亜人族に比べればスペックは低いらしく突出したものがないので亜人族の中でも格下と見られる傾向が強いらしい。性格は総じて温厚で争いを嫌い、一つの集落全体を家族として扱う仲間同士の絆が深い種族だ。また、総じて容姿に優れており、帝国などに捕まり奴隷にされたときは愛玩用として人気の商品となる。
そんな兎人族の一つハウリア族にある日、異常な女の子が生まれた。兎人族は基本的に濃紺の髪をしているのだが、その子の髪は青みがかった白髪だったのだ。しかも、亜人族には無いはずの魔力まで有しており、直接魔力を操るすべととある固有魔法まで使えたのだ。
当然、一族は大いに困惑した。兎人族として、いや、亜人族として有り得ない子が生まれたのだ。魔物と同様の力を持っているなど、普通なら迫害の対象となるだろう。しかし、彼女が生まれたのは亜人族一、家族の情が深い種族である兎人族だ。数十人全員を一つの家族と称する種族なのだ。ハウリア族は女の子を見捨てるという選択肢を持たなかった。
し、樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】に女の子の存在がばれれば間違いなく処刑される。魔物とはそれだけ忌み嫌われており、不倶戴天の敵なのである。国の規律にも魔物を見つけ次第、できる限り殲滅しなければならないと有り、過去にわざと魔物を逃がした人物が追放処分を受けたという記録もある。
故に、ハウリア族は女の子を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった。その為、ハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出たのだ。
行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。未開地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだ。
「でもその帝国に見つかってここに逃げてきたと。」
「……気がつけば、六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」
悲痛そうな顔をしているシア。そしてそれを見て俺たちは決意する
「……どうする?思っていたよりも面倒臭いぞ。」
「とりあえず問題なのはハウリア族が自衛する方法を持たないこととその【フェアベルゲン】ってところに住めない可能性があるってことね?」
「……ん。私達の旅に連れて行くわけにもいかない。」
「だろうな。あまりにも危険すぎるしな。つまりハウリア族にちゃんと自衛できるようにしてもらうしかないか。それと居住区をちゃんと与えるってことか」
「へ?あの。」
驚いたように隼人達を見るシア。
「なんだよ。」
「いえ。助けてくれるんですか?」
するとキョトンとしてしまう。おそらく見えていたのだろう未来だがそこまであっさりと思ってはいなかったんだろう。
でも、ここにいる隼人達はお人好しが三人が集まっているのだ。
苦しく、困っている人を見逃せない。敵なら容赦はしないがそれでも敵意がない者を見過ごせるほど落ちぶれていない。寧ろ裏切られた経験があり苦悩を乗り越え迷宮を攻略した。さらに恋人がいてハジメは白崎に、隼人と優花は愛ちゃんやいつも一緒にいた友人達と会いたい人達がいる。特にハジメは香織に優しい人間だと、心が強い人間だと奈落に落ちる前に、夜中の会合で言われたのだ。それを捨てるわけにはいかないと心のなかでの支えになっていたのだ。
「さすがにあんな話を聞いてほっとけるわけではないしな。まぁ出来るだけ協力はするけど、俺たちの目的は大迷宮の攻略だ。だから樹海の案内を約束してくれるならその話を受ける。」
「……」
ハジメは隼人に感心する。相手を助けることの条件に樹海の案内を出したのだ。樹海は亜人族以外では必ず迷うと言われているため、兎人族の案内があれば心強い。樹海を迷わず進むための対策も一応考えていたのだが、若干、乱暴なやり方であるし確実ではない。最悪、現地で亜人族を捕虜にして道を聞き出そうと考えていたので、自ら進んで案内してくれる亜人がいるのは正直言って有り難い。
なによりも若干ハジメは獣人族の兎人族を本物に会えて内心かなり歓喜しているのを隼人だけは見抜いていたのだが。それは男同士何も言わないお約束だと理解しており、ハジメと隼人の絆はより深まったのは言うまでもないことだろう。
隼人としても亜人族となるべく争いたくないと思っていた。というのも解放者の文書にエヒトと同じような神を魔人族は信仰しているとのことだった。優花曰く同じ神なんじゃないかということなので、いつかは神と戦う以上、教会に属さない亜人族とできるだけ敵対はしたくなかったのだ。
「あ、ありがとうございます!うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~」
「お、おい抱きつくなって、優花も、お前ももらい泣きするなよ。」
「だって。」
少し涙腺の弱い優花はシアにもらい泣きして俺の服はすでに抱きついでくる二人でもう涙や鼻水でベタベタになっていた。
しばらく泣き終えるまで待ってから、俺は上だけ宝物庫から服を取り出し着替えると二人がものすごい勢いで謝罪してきた。
「あ、あの、宜しくお願いします! そ、それで皆さんのことは何と呼べば……」
「ん? そう言えば名乗ってなかったか……俺はハジメ。南雲ハジメだ」
「俺は須藤隼人。気軽に隼人でいいぞ。」
「私は園部優花です。」
「……ユエ」
「ハジメさんと隼人さんと優花さんにユエちゃんですね。」
「さんをつけろ残念うさぎ。」
「へ?」
「あ〜吸血族の生き残りなんだよ。まぁ見た目からはどう見ても年下にしか見えないからな。」
「隼人!?」
裏切られたとばかりに俺を見るユエ。でもさすがに年下にしか見えないって。
「……す、すいませんユエさん。」
「ん。」
「とりあえず詳しい話は後だ。」
と俺は乗り物を入れ替えスポーツカー型の魔力駆動四輪を取り出す。後キャンピングカー型の四輪があるのだがそれはハジメのところにしまってある。
「あ、あの。助けてもらうのに必死で、つい流してしまったのですが……この乗り物? 何なのでしょう?それに、隼人さんは魔法使いましたよね? ここでは使えないはずなのに……」
「あ~、それは道中でな。後ろに乗り込め。」
「は、はい。」
と隼人は二人を乗せたのでエンジンを踏み込む。魔力の消費が四輪は多いのだがそれでも、俺にとっては魔力の調節ができるので願ったり叶ったりだった。一気に加速させ出発した。悪路をものともせず爆走する乗り物に、シアが「きゃぁああ~!」と悲鳴を上げた。地面も壁も流れるように後ろへ飛んでいく。
谷底では有り得ない速度に目を瞑ってギュッとシートにしがみついていたシアも、しばらくして慣れてきたのか、次第に興奮して来たようだ。隼人がカーブを曲がったり、大きめの岩を避けたりする度にきゃっきゃっと騒いでいる。
道中、魔力駆動四輪の事や隼人が魔法を使える理由、隼人たちの武器がアーティファクトみたいなものだと簡潔に説明した。すると、シアは目を見開いて驚愕を表にした。
「それじゃあ本当に皆さんは、お二人も魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」
「そういうことよ。」
しばらく呆然としていたシアだったが、突然、何かを堪える様にシートに顔を埋めた。そして、何故か泣きべそをかき始めた。
ハジメとユエが怪訝な様子でシアを見る。
「……いきなり何だ? 騒いだり落ち込んだり泣きべそかいたり……情緒不安定なヤツだな」
「……手遅れ?」
「手遅れって何ですか! 手遅れって! 私は至って正常です! ……ただ、一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」
「「「「……」」」」
どうやら魔物と同じ性質や能力を有するという事、この世界で自分があまりに特異な存在である事に孤独を感じていたようだ。家族だと言って十六年もの間危険を背負ってくれた一族、シアのために故郷である樹海までも捨てて共にいてくれる家族、きっと多くの愛情を感じていたはずだ。それでも、いや、だからこそ、〝他とは異なる自分〟に余計孤独を感じていたのかもしれない。
シアの言葉に、ユエは思うところがあるのか考え込むように押し黙ってしまった。いつもの無表情がより色を失っている様に見える。ハジメには何となく、今ユエが感じているものが分かった。おそらく、ユエは自分とシアの境遇を重ねているのではないだろうか。共に、魔力の直接操作や固有魔法という異質な力を持ち、その時代において〝同胞〟というべき存在は居なかった。
だが、ユエとシアでは決定的な違いがある。ユエには愛してくれる家族が居なかったのに対して、シアにはいるということだ。それがユエに、嫉妬とまではいかないまでも複雑な心情を抱かせているのだろう。しかも、シアは結局、その〝同胞〟と出会うことができたのだ。中々に恵まれた境遇とも言える。
「今は一人じゃないだろ。」
やっぱりハジメはそれに気づいてユエに語り出す。
「隼人や優花だってそうだし、何よりも俺がいるだろ?お前はその体のおかげで俺たちと出会えたんだ。」
「ん。」
「大丈夫だ。何があっても俺たちはお前を裏切ったりはしねぇよ。」
「ハジメ。」
とハジメとユエが甘ったるい空気を出しているが隼人と優花は鍛えられたスルースキルで無視をする。二人とは違いTPOをわきまえる隼人と優花はシアを慰めていた。
これ白崎が混じったらどうなるんだろうか。
そんなことを思いながら隼人と優花は少しため息を吐くのだった
変更点
隼人もハジメもシアを助ける気でいる
四輪にスポーツカー型の追加
ハジメが兎人族を見て喜んでいる