異世界料理人   作:孤独なバカ

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うさ耳少女の想い

「ってことでユエがシアってお前ら大丈夫か?」

「大丈夫、少し寝てないだけだから」

 

 あれから9日、その間、食事や休養を除くほとんどの間、隼人と優花は書斎にこもっていた。この世界の情報とオルクス大迷宮で見た常識を比べるのと、神や解放者に関する情報を得るためである。

 成果は結構多く、獣人族と森人族(隼人が命名。亜人という差別用語をなくすため)の歴史や交流を機に子供達にお菓子を作ったり、再現できる限り地球の料理を再現して全員に振舞ったりした。

 

「そっちはどうだ?」

「まぁ、初日は色々あったけどな。順調だよ」

 

ハジメとユエは今はハウリアに戦闘訓練をしているらしい。

まぁ、俺が戦闘を教えろって言っても無茶だと思うけど。

料理や魔法については教えられるが他については完全に感覚派であり、特にガンランスなんかはほぼゲームの真似である。

 

「ん〜シアは?」

「さぁな、なんかユエがかなり張り切ってる。何かを賭けて戦っているらしいが」

「ふ〜ん、それで話したいことがあったんだろ?」

「熊人族とドワーフ族の動きが怪しいんだって」

「……あ〜お前が要チェック人物に挙げた奴か?」

「あぁ、明日にも襲ってくるんじゃね?元々ハウリアの領地を熊人族とドワーフで分ける予定だったらしいし」

「それは結構まずいな」

 

内部で相当ごちゃごちゃしているんだよなぁ、

結構ひどかったんだよ、ぎゃあぎゃあ言っている奴をゴム弾で黙らせたりしてたし。

 

「まぁ順調だったらいいけどな、さすがに寝る。ちょっと3徹はきちぃ」

「私も」

 

と隼人は寝ぼけ眼をこすり大きく口を開ける

 

「……とりあえず明日は顔出すわ、というよりもおそらくここの迷宮は今は攻略できないし」

「そうだな」

「ん?なんでだ?」

「それは明日迷宮ついたら話すわ、ごめんなさい。少し調べ物が長引いたから」

「それだけの収穫はあったということか?」

「あったな、一番はここから3日くらい歩いたところに街があることが分かった。さすがに調味料とか色々買っておきたいしな、それとアルフレリックの言っていることが正しいと証明する文献が見つかったことが収穫だな、伝言ゲームみたいに言い伝えが屈折してしまうことならけっこうあるしな」

「とりあえず寝るわ、詳しい話はまた明日」

「おやすみ」

「あぁ、おやすみ」

 

そう言って隼人と優花は寝室へ向かっていった。

 

 

「……ここだったよな?」

「えぇ」

 

エルフ族の弓師に送ってもらったところは霧が濃い場所の一つであるのだが気配がやっぱり掴みづらい。

 

「隼人さん!!」

 

とすると大きな声で俺を呼ぶ声が聞こえる

 

「ん?」

「隼人さん!隼人さん! 聞いて下さい! 私、遂にユエさんに勝ちましたよ! 大勝利ですよ! いや~、隼人さんにもお見せしたかったですよぉ~、私の華麗な戦いぶりを! 負けたと知った時のユエさんったらも…へぶっ!?」

 

身振り手振り大はしゃぎという様相で戦いの顛末を語るシア。調子に乗りすぎて、ユエのジャンピングビンタを食らい錐揉みしながら吹き飛びドシャと音を立てて地面に倒れ込んだ。よほど強烈だったのかピクピクとして起き上がる気配がない。

 

「あ〜まぁどうだった?」

「……魔法の適性はハジメと変わらない、でも隼人の言う通り身体強化に特化してる。正直、化物レベル」

「……へぇ、俺達と比べると?」

 

隼人は少し聞くと

 

「ハジメ達の半分くらい」

「……マジで。あいつ俺の予想では俺の3割程度の身体強化ができればマシだと思っていたんだが」

「鍛錬次第でまだ上がるかも」

 

隼人もさすがに驚く。おそらく必死でやっても6000くらいが限界だと思っていたのだ。

想像とかなり違う結果にさすがに驚愕してしまう。

 

「隼人、何かした?」

「いや何もしてないはずって、そういえば身体強化のレシピは渡したな。それくらい」

「……そう」

「つまり、シアもそれくらい隼人のことを想っているってことよ」

「……何がいいたい?」

「隼人の負けってこと、ちゃんとシアのこと認めてあげたら」

 

優花が苦笑しながら隼人を見る。優花自身隼人の予想を上回ると推測していた。

優花は隼人を自分だけが射止めることができないと確信していた。

隼人は自分でも気づいているがモテるのだ。自分ではモテなくてもいいと思っているぶん複雑ではあるのだけど。

おそらく、隼人の特別が優花であることは変わりはないし譲る気はない。

隼人も同じく優花だけを見ていたいと思っているのだろう。

それでも、優花は自分だけで隼人を独占できる自信がない。

優花はこう見えても自己評価が低く、自分じゃ隼人と釣り合わないと思っているのだ。特に同性から見ても魅力的な鈴や雫も、おそらく隼人のことを気にしている。

世間からみたら優花も十分美人の分類に入る。それにしっかりしていて、洗濯、料理、掃除など家事も完璧にこなすことができ、さらに優しい。普通のクラスでは明らかに男子の人気者であるだろう。しかし、隼人達のクラスには雫や鈴、香織という、さらに一段上がいるのだ。不安を覚えても仕方ない。

それに優花はシアも友達だと思っている。一途で家族のために涙を流す。隼人といっしょに心が動かされた一人なのだ。そして一歳年下ということもあり、どこかほっとけない妹みたいに思っていたのだ。

だから複雑だけどシアならいいと思っていた。

 

「よっ、二人共、勝負とやらは終わったのか?それと隼人と優花はお疲れ様」

 

とハジメがやってくるとすぐにシアが起き上がる。

 

「ハジメさん、私をあなたの旅に連れて行って下さい。お願いします!」

「断る」

「即答!?」

 


まさか今の雰囲気で、悩む素振りも見せず即行で断られるとは思っていなかったシアは、驚愕の面持ちで目を見開いた。その瞳には、「いきなり何言ってんだ、こいつ?」という残念な人を見る目でシアを見つめるハジメの姿が映っている。

 

 シアは憤慨した。もうちょっと真剣に取り合ってくれてもいいでしょ! と。

 

「ひ、酷いですよ、ハジメさん。こんなに真剣に頼み込んでいるのに、それをあっさり……」

「いや、こんなにって言われても知らんがな。大体、カム達どうすんだよ? まさか、全員連れて行くって意味じゃないだろうな?」

「ち、違いますよ! 今のは私だけの話です! 父様達には修行が始まる前に話をしました。一族の迷惑になるからってだけじゃ認めないけど……その……」

「その? なんだ?」

 

何やら急にモジモジし始めるシア。指先をツンツンしながら頬を染めて隼人をチラチラと見る。あざとい。実にあざとい仕草だ。ハジメが不審者を見る目でシアを見る。

 

「その……私自身が、付いて行きたいと本気で思っているなら構わないって……」

「はぁ? 何で付いて来たいんだ? 今なら一族の迷惑にもならないだろ?それだけの実力があれば大抵の敵はどうとでもなるだろうし」

「で、ですからぁ、それは、そのぉ……」

「……」

モジモジしたまま中々答えないシアにいい加減我慢の限界だと、ハジメはドンナーを抜きかける。それを察したのかどうかは分からないが、シアが女は度胸! と言わんばかりに声を張り上げた。思いの丈を乗せて。

「隼人さんの傍に居たいからですぅ! しゅきなのでぇ!」

「……は?あぁ、なるほど」

「おいこら、どんな反応だよ」

 

我関せずというハジメに俺は軽くどつく

 

「ところでどんなところが好きなんだ?」

「状況が全く関係ないとは言いません。窮地を何度も救われて、同じ体質で……長老方に啖呵切って私との約束を守ってくれたときは本当に嬉しかったですし……それに私のことを魅力的な女って言ってくれましたし」

「……そういえば言ったな」

 

隼人は少し俯いてしまう。それをジト目で返すハジメが呆れたようにする

 

「と、とにかくだ。お前がどう思っていようと連れて行くつもりはない」

「そんな!」

「あのなぁ、お前の気持ちは本当だとして、隼人には優花がいるって分かっているだろう? というか、よく本人目の前にして堂々と告白なんざ出来るよな……前から思っていたが、お前の一番の恐ろしさは身体強化云々より、その図太さなんじゃないか? お前の心臓って絶対アザンチウム製だと思うんだ」

「誰が、世界最高硬度の心臓の持ち主ですか! うぅ~、やっぱりこうなりましたか……ええ、わかってましたよ。ハジメさんのことです。一筋縄ではいかないと思ってました」

 

突然、フフフと怪しげに笑い出すシアに胡乱な眼差しを向けるハジメ。

「こんなこともあろうかと! 命懸けで外堀を埋めておいたのです! ささっ、ユエ先生! お願いします!」

「は? ユエ?」

「……あぅ」

 

逃げ場が塞がれつつ追い詰められている

ユエは、やはり苦虫を百匹くらい噛み潰したような表情で、心底不本意そうにハジメに告げた。

 


「……………………………………ハジメ、連れて行こう」

「いやいやいや、なにその間。明らかに嫌そう……もしかして勝負の賭けって……」

「……無念」

「ついでに優花さんにも許可をもらっています」

「……まぁ頑張ったからね」

「なんでお前が許可してるんだよ!!」

 

明らかに逃げ場をなくした隼人。ハジメは、ガリガリと頭を掻いた。別に、ユエが渋々とはいえ認めたからといって、シアを連れて行かなければならない理由はない。結局のところ、ハジメの気持ち次第なのだから。

 

 ユエは、不本意そうではあるが仕方ないという様に肩を竦めている。この十日間のシアの頑張りを誰よりも近くで見ていたからこそ、そして、その上で自分が課した障碍を打ち破ったからこそ、旅の同行は認めるつもりのようだ。元々、シアに対しては、隼人と優花がシアにつきっきりになっていて話す機会が少なくなって軽くいじけていたのだ。隼人や優花の事を抜きにすれば、其処まで嫌いというわけではないという事もあるのだろう。

 一方、シアの方は、ユエに頼んだときの得意顔が一転し不安そうでありながら覚悟を決めたという表情だ。シアとしては、まさに人事を尽くして天命を待つ状態なのだろう。

 

「隼人次第だな、俺はいい」

 

すると隼人の方に視線を向けられる

シアも、ユエもまぁそうだろうと全員が隼人の方を向いた。

 

「……はぁ、俺にとっての特別は優花だ。だから付いてきても気持ちには答えてやれないぞ?」

「知らないんですか? 未来は絶対じゃあないんですよ?」


それは、未来を垣間見れるシアだからこその言葉。未来は覚悟と行動で変えられると信じている。

 

「それに迷宮攻略だって神と戦うことになるかもしれない、命が何個あっても足りないぞ」

「化物でよかったです、御蔭で貴方について行けます」

「俺たちの望みは故郷に帰ることだぞ。もう家族とは会えないかもしれない?」

「話し合いました。〝それでも〟です。父様達もわかってくれました」

 

そんなシアを見て、さすがにこれは折れるしかない。

あ〜これは負けだな、完敗だ。

 

「たく、勝手にしろ」

 

とぶっきらぼうに俺が答える、溜息をつきながら事実上の敗北宣言をした。

 樹海の中に一つの歓声が響く。その様子に、隼人は、これからは少し女性への態度を改めようと決心したが3日も保たなかったことは言うまでもないだろう。

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