本年も孤独のバカをよろしくお願いします
ってわけなんですけどここら辺は変更点はないのでさらさらいきます。
おそらく次は雫達サイドになると思います
ネタバレになるとは思いますけど香織の成長がすごいです
明らかに動きが違うハウリア族と熊人族と土人族、戦場で隼人達は黙って戦闘をみていた。
「暗殺術だな。気配感知と気配遮断を使った戦い方をしろと言ったのは確かに俺だけど、あれ完全に目がいっているんだけど」
「……怖い」
「ハジメ、少しやりすぎだよ。完全に堕ちる寸前だよ」
「悪い、さすがにやりすぎた」
と隼人達の一斉非難による集中砲火によりさすがに悪いと思ったのだろう、いつもよりも低い姿勢のハジメがいた。
「ん、まぁ訓練の内容を聞いてたらまぁ確かにハウリアも悪いところはあるし、俺たちは書物庫にこもりっぱなしだったから言えることではないんだけど」
「ちくしょう! 何なんだよ! 誰だよ、お前等!!」
「こんなの兎人族じゃないだろっ!」
「うわぁああ! 来るなっ! 来るなぁあ!」
大惨事だよなぁ、奇襲っていうのは見抜かれた時点でもはや負けである。
「どうした〝ピッー〟野郎共! この程度か! この根性なしが!」
「最強種が聞いて呆れるぞ! この〝ピッー〟共が! それでも〝ピッー〟付いてるのか!」
「さっさと武器を構えろ! 貴様ら足腰の弱った〝ピッー〟か!」
どうするんだよこれ。
隼人は少し考えすぐに決断する
「シア、お前が止めろ」
「えっ?」
「家族の言葉が一番効きやすいだろ?生憎俺たちはよそもんだ。俺たちが鍛えても殺すのを楽しむのはダメだろう。同じ体験をしていたお前が一番止めやすいだろ」
「……」
シアは小さく頷く、おそらくわかっているってことだろう。
「んじゃ俺たちは土人族の逃げ場を防ぐから」
「了解、俺らは熊人族をやる」
隼人たちはそうやって動き始めようとした時。シアが後ろに背負ってあった大槌を振るい落とした。
「いい加減にしなさぁ~い!!!」
「「「「は?」」」」
思わず間抜けな声を出してしまうレギン。だが、無理もないだろう。何せ、死を覚悟した直後、青白い髪を靡かせたウサミミ少女が、巨大な鉄槌と共に天より降ってきた挙句、地面に槌を叩きつけ、その際に発生した衝撃波で飛んでくる矢や石をまとめて吹き飛ばしたのだから。目が点になるとはこのことだ。周りの熊人族もポカンとしている。
「シア、何のつもりか知らんが、そこを退きなさい。後ろの奴等を殺せないだろう?」
「いいえ、退きません。これ以上はダメです!」
シアの言葉に、カム達の目が細められる。
「ダメ? まさかシア、我らの敵に与するつもりか? 返答によっては……」
「いえ、この人達は別に死んでも構わないです」
「「「「いいのかよっ!?」」」」
「当たり前です。殺意を向けて来る相手に手心を加えるなんて心構えでは、ユエさんの特訓には耐えられません。私だって、もう甘い考えは持っていませんよ」
「ふむ、では何故止めたのだ?」
カムが尋ねる。ハウリア族達も怪訝な表情だ。
「そんなの決まってます! 父様達が、壊れてしまうからです! 堕ちてしまうからです!」
「壊れる? 堕ちる?」
訳がわからないという表情のカムにシアは言葉を重ねる。
「そうです! 思い出して下さい。ハジメさんは敵に容赦しませんし、問答無用だし、無慈悲ではありますが、魔物でも人でも殺しを楽しんだことはなかったはずです! 訓練でも、敵は殺せと言われても楽しめとは言われなかったはずです!」
「い、いや、我らは楽しんでなど……」
「今、父様達がどんな顔しているかわかりますか?」
「顔? いや、どんなと言われても……」
「……まるで、私達を襲ってきた帝国兵みたいです」
「ッ!?」
すると全員が頭をガツンと叩かれたようにしている。
そして目線にはこの隙逃げようとしている熊人族と土人族がいたところを蒼天の魔法が目の前の大地を焼け野原と為す
「なにドサクサに紛れて逃げ出そうとしてんだ? 話が終わるまで正座でもしとけ」
「どこに行く気だ?」
遠回りしていた隼人とハジメ、優花とユエがいた。
二人の言葉を受けても尚、逃げ出そうと油断なく周囲の様子を確認している熊人族に、ハジメは〝威圧〟を仕掛けて黙らせた。ガクブルしている彼等を尻目に、シア達の方へ歩み寄る隼人達。
ハジメはカム達を見ると、若干、気まずそうに視線を彷徨わせ、しかし直ぐに観念したようにカム達に向き合うと謝罪の言葉を口にした。
「あ~、まぁ、何だ、悪かったな。自分が平気だったもんで、すっかり殺人の衝撃ってのを失念してた。俺のミスだ。うん、ホントすまん」
ポカンと口を開けて目を点にするシアとカム達。まさか素直に謝罪の言葉を口にするとは予想外にも程があった。
「ボ、ボス!? 正気ですか!? 頭打ったんじゃ!?」
「メディーック! メディーーク! 重傷者一名!」
「ボス! しっかりして下さい!」
故にこういう反応になる。青筋を浮かべ、口元をヒクヒクさせるハジメ。
今回のことは、ハジメ自身、本心から自分のミスだと思っていた。自分が殺人に特になんの感慨も抱かなかったことから、その精神的衝動というものに意識が及ばなかったのだ。いくらハジメが強くなったとはいえ、教導の経験などあるはずもなく、その結果、危うくハウリア族達の精神を壊してしまうところだった。流石にまずかったと思い、だからこそ謝罪の言葉を口にしたというのに……帰ってきた反応は正気を疑われるというものだった。ハジメとしてはキレるべきか、日頃の態度を振り返るべきか若干迷うところである。
「日頃の態度を見直せよ」
隼人の言葉は余計だったが、
ハジメは取り敢えずこの件は脇に置いておいて、レギンのもとへ歩み寄ると、その額にドンナーの銃口をゴリッと押し当てた。
「さて、潔く死ぬのと、生き恥晒しても生き残るのとどっちがいい?」
ハジメの言葉に、熊人族や土人族よりもむしろハウリア族が驚きの目を向ける。今のセリフでは場合によっては熊人族を見逃してもいいと聞こえるからだ。敵対者に遠慮も容赦もしないハジメにあるまじき提案だ。カム達は「やはり頭を……」と悲痛そうな目でハジメを見ている。ハジメの額に青筋が増えるが、話が進まないので取り敢えずスルーする。
レギンも意外そうな表情でハジメを見返した。ハウリア族をここまで豹変させたのは間違いなく眼前の男だと確信していたので、その男が情けをかけるとは思えなかったのだ。
「……どういう意味だ。我らを生かして帰すというのか?」
「ああ、望むなら帰っていいぞ? 但し、条件があるがな」
「条件?」
あっさり帰っていいと言われ、レギンのみならず周囲の者達が一斉にざわめく。後ろで「頭を殴れば未だ間に合うのでは……」とシアが割かしマジな表情で自分の大槌とハジメの頭部を交互に見やり、カム達が賛同している声が聞こえる。
そろそろ、マジでキツイ仕置が必要かもしれないと更に青筋を増やすハジメ。しかし、頑張ってスルーする。
「ああ、条件だ。土人族と熊人族の長に帰ったらこう言え」
「……伝言か?」
条件と言われて何を言われるのかと戦々恐々としていたのに、ただのメッセンジャーだったことに拍子抜けするレギン。しかし、言伝の内容に凍りついた。
「〝貸一つ〟」
「……ッ!? それはっ!」
「で? どうする? 引き受けるか?」
言伝の意味を察して、思わず怒鳴りそうになるレギン。ハジメはどこ吹く風でレギンの選択を待っている。〝貸一つ〟それは、襲撃者達の命を救うことの見返りに何時か借りを返せということだ。
客観的に見ればジンの場合もレギンの場合も、一方的に仕掛けておいて返り討ちにあっただけであり、その上、命は見逃してもらったということになるので長老会議の威信にかけて無下にはできないだろう。無視してしまえば唯の無法者だ。それに、今度こそハジメたちが牙を向くかもしれない。
つまり、レギン達が生き残るということは、自国に不利な要素を持ち帰るということでもあるのだ。長老会議の決定を無視した挙句、負債を背負わせる、しかも最強種と豪語しておきながら半数以上を討ち取られての帰還……ハジメの言う通りまさに生き恥だ。
表情を歪めるレギンにハジメが追い討ちをかける。
「それと、あんたの部下の死の責任はあんた自身にあることもしっかり周知しておけ。ハウリアに惨敗した事実と一緒にな」
「ぐっう」
ハジメが、このような条件を出して敵を見逃すのには理由がある。もちろん、慈悲などではない。神と戦う以上手駒は何個あっても使い道があるからだ
「五秒で決めろ。オーバーする毎に一人ずつ殺していく、〝判断は迅速に〟、基本だぞ?」
そう言ってイーチ、ニーと数え始めるハジメにレギンは慌てて、しかし意を決して返答する。
「わ、わかった。我らは帰還を望む!」
「そうかい。じゃあ、さっさと帰れ。伝言はしっかりな。もし、取立てに行ったとき惚けでもしたら……」
「その時はてめえらの最後だと思えよ。」
どこからどう見ても、タチの悪い借金取り、いやテロリストの類にしか見えなかった。後ろから、「あぁ~よかった。何時ものハジメさんですぅ」とか「ボスが正気に戻られたぞ!」とか妙に安堵の混じった声が聞こえるが、取り敢えずスルーだ。せっかく作った雰囲気がぶち壊しになってしまう。もっとも、キツイお仕置きは確定だと思うが。
霧の向こうへ熊人族達が消えていった。それを見届け、ハジメはくるりとシアやカム達の方を向く。もっとも、俯いていて表情は見えない。なんだか異様な雰囲気だ。カム達は、狂気に堕ちてしまった未熟を恥じてハジメに色々話しかけるのに夢中で、その雰囲気に気がついていない。シアだけが、「あれ? ヤバクないですか?」と冷や汗を流している。
ハジメがユラリと揺れながら顔を上げた。その表情は満面の笑みだ。だが、細められた眼の奥は全く笑っていなかった。ようやく、何だかハジメの様子がおかしいと感じたカムが恐る恐る声をかける
「ボ、ボス?」
「うん、ホントにな? 今回は俺の失敗だと思っているんだ。短期間である程度仕上げるためとは言え、歯止めは考えておくべきだった」
「い、いえ、そのような……我々が未熟で……」
「いやいや、いいんだよ? 俺自身が認めているんだから。だから、だからさ、素直に謝ったというのに……随分な反応だな? いや、わかってる。日頃の態度がそうさせたのだと……しかし、しかしだ……このやり場のない気持ち、発散せずにはいれないんだ……わかるだろ?」
「い、いえ。我らにはちょっと……」
カムも「あっ、これヤバイ。キレていらっしゃる」と冷や汗を滝のように流しながら、ジリジリと後退る。ハウリアの何人かが訓練を思い出したのか、既にガクブルしながら泣きべそを掻いていた。とその時、「今ですぅ!」と、シアが一瞬の隙をついて踵を返し逃亡を図った。傍にいた男のハウリアを盾にすることも忘れない。
しかし……
ドパンッ!!
一発の銃弾が男の股下を通り、地面にせり出していた樹の根に跳弾してシアのお尻に突き刺さった。
「はきゅん!」
ハジメの銃技の一つ〝多角撃ち〟である。それで、シアのケツを狙い撃ったのだ。無駄に洗練された無駄のない無駄な銃技だった。銃撃の衝撃に悲鳴を上げながらピョンと跳ねて地面に倒れるシア。お尻を突き出した格好だ。シュウーとお尻から煙が上がっている。シアは痛みにビクンビクンしている。
痙攣するシアの様子とハジメの銃技に戦慄の表情を浮かべるカム達。股通しをされた男が股間を両手で抑えて涙目になっている。銃弾の発する衝撃波が、股間をこう、ふわっと撫でたのだ
何事もなかったようにドンナーをホルスターにしまったハジメは、笑顔を般若に変えた。そして、怒声と共に飛び出した。
「取り敢えず、全員一発殴らせろ!」
わぁああああーー!!
ハウリア達が蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出す。一人も逃がさんと後を追うハジメ。しばらくの間、樹海の中に悲鳴と怒号が響き渡った。
後に残ったのは、ケツから煙を出しているシアと、
「……何時になったら大樹に行くの?」
「まぁ、あいつらが悪い」
「ストレス発散だと思うし思いっきりやらせましょう」
と蚊帳の外の隼人達だった。