異世界料理人   作:孤独なバカ

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大学の試験があるので更新ペース下がります


想いの強さ

「やったじゃねぇかシア。最後のは凄い気迫だった。見直したぞ?」

「……ん、頑張った」

「えへへ、有難うございます。」

「シア。お疲れ様。」

「あぁ今回のMVPは間違えなくシアだな。」

 

最後の場面で、どうしてもシアの止めが必要という訳ではなかった。パイルバンカーが威力不足だろうことは予想がついていたし、それを押し込む手段もあった。だが、温厚で争いごとが苦手な兎人族であり、つい最近まで戦う術を持たなかったシアが一度も「帰りたい」などと弱音を吐かず、恐怖も不安も動揺も押しのけて大迷宮の深部までやって来たのだ。最後を任せるというのもありだろうと隼人は考えに念話石で曖昧にだけど伝えた。

まぁ隼人自身が最大火力の魔法を放ったため魔力を奪われたからでもあるのだが

結果は上々。凄まじい気迫と共に繰り出された最後の一撃は正直、隼人が数秒見惚れるほど見事なものだった。シアの想いの強さが衝撃波となって届き、隼人自身が照れ臭くなるほどに

 

「えへへ、有難うございます。でも隼人さん、そこは、〝惚れ直した〟でもいいんですよ?」

「……たく。それならそこの残念なところをなんとかしろ。」

「ちょっとひどいですよ〜!!」

 

隼人は苦笑する。ポカポカシアが不満げに叩いているが、照れ隠しってことはシア以外の全員が分かっていた。頰が真っ赤に染まり少し恥ずかしげに目を逸らしていたからだ

 

 

未だ頬を抓っているシアのもとへユエがトコトコと歩み寄っていく。そして、服を引っ張り屈ませると、おもむろにシアの頭を撫でた。乱れた髪を直すように、ゆっくり丁寧に。

 

「え、えっと、ユエさん?」

「……隼人は撫でないだろうから、残念だろうけど代わりに。よく頑張りました」

「ユ、ユエさぁ~ん。うぅ、あれ、何だろ? 何だか泣けてぎまじだぁ、ふぇええ」

「……よしよし。」

 

最初はユエの突然の行動に戸惑っていたシアも、褒められていると理解すると、緊張の糸が切れたのかポロポロと涙を流しながらユエにヒシッと抱きつき泣き出してしまった。やはり、初めての旅でいきなり七大迷宮というのは相当堪えていたのだろう。

 

「あのぉ~、いい雰囲気で悪いんだけどぉ~、そろそろヤバイんで、ちょっといいかなぁ~?」

 

 物凄く聞き覚えのある声。ハジメ達がハッとしてミレディ・ゴーレムを見ると、消えたはずの眼の光がいつの間にか戻っていることに気がついた。咄嗟に、飛び退り距離を置くハジメ達。

 

「いや。敵意はないだろ。迷宮はあの時にクリアしたはずだ。多分オスカーの時にあった最後の言葉ってことじゃないか。」

 

隼人がいうと迷宮攻略組はあぁと頷く

 

ハジメが、少し警戒心を解きミレディ・ゴーレムに話しかける。

 

「で? 何の話だ? 死にぞこない。死してなお空気も読めんとは……残念さでは随一の解放者ってことで後世に伝えてやろうか」

「ちょっ、やめてよぉ~、何その地味な嫌がらせ。ジワジワきそうなところが凄く嫌らしい」

「んで何か話したいことがあるのかよ。」

 

ハジメの機先を制するような言葉に、何となく苦笑いめいた雰囲気を出すミレディ・ゴーレム。

 

「話したい……というより忠告だね。訪れた迷宮で目当ての神代魔法がなくても、必ず私達全員の神代魔法を手に入れること……君の望みのために必要だから……」

「全部ね……なら他の迷宮の場所を教えろ。失伝していて、ほとんどわかってねぇんだよ」

「あぁ、そうなんだ……そっか、迷宮の場所がわからなくなるほど……長い時が経ったんだね……うん、場所……場所はね……」

 

ポツリポツリとミレディは残りの七大迷宮の所在を語る

 

「以上だよ……頑張ってね」

「……随分としおらしいじゃねぇの。あのウザったい口調やらセリフはどうした?」

 

 ハジメの言う通り、今のミレディは、迷宮内のウザイ文を用意したり、あの人の神経を逆なでする口調とは無縁の誠実さや真面目さを感じさせた。戦闘前にハジメの目的を聞いたときに垣間見せた、おそらく彼女の素顔が出ているのだろう。消滅を前にして取り繕う必要がなくなったということなのかもしれない。

 

「あはは、ごめんね~。でもさ……あのクソ野郎共って……ホントに嫌なヤツらでさ……嫌らしいことばっかりしてくるんだよね……だから、少しでも……慣れておいて欲しくてね……そこのお嬢ちゃんの為に神と戦うんでしょ?」

「あぁ。一応な。本当なら戦いたくはないんだけど。」

「まぁこっちにも話せない事情があるんだよ。それにオスカー曰く俺たちは駒だ。それなら自分の不都合なことならばまず排除しにかかるのが神だろう。」

「うん。……そっか。」

 

ミレディは、その様子に楽しげな笑い声を漏らす。

 

「ふふ……それでいい……君たちは君たちの思った通りに生きればいい…………君の選択が……きっと…………この世界にとっての……最良だから……」

 

いつしか、ミレディ・ゴーレムの体は燐光のような青白い光に包まれていた。その光が蛍火の如く、淡い小さな光となって天へと登っていく。死した魂が天へと召されていくようだ。とても、とても神秘的な光景である。

 

 その時、おもむろにユエがミレディ・ゴーレムの傍へと寄って行った。既に、ほとんど光を失っている眼をジッと見つめる。

 

「何かな?」

 

囁くようなミレディの声。それに同じく、囁くようにユエが一言、消えゆく偉大な〝解放者〟に言葉を贈った。

 

「……お疲れ様。よく頑張りました」

「……」

 

それは労いの言葉。たった一人、深い闇の底で希望を待ち続けた偉大な存在への、今を生きる者からのささやかな贈り物。本来なら、遥かに年下の者からの言葉としては不適切かもしれない。だが、やはり、これ以外の言葉を、ユエは思いつかなかった。

 

 ミレディにとっても意外な言葉だったのだろう。言葉もなく呆然とした雰囲気を漂わせている。やがて、穏やかな声でミレディがポツリと呟く。

 

「……ありがとね」

「……ん」

 

 ちなみに、ユエとミレディが最後の言葉をかわすその後ろで、知った風な口を聞かれてイラっとしたハジメが「もういいから、さっさと逝けよ」と口にしそうになり、それを敏感に察したシアに「空気読めてないのはどっちですか! ちょっと黙ってて下さい!」と後ろから羽交い絞めにされて口を塞がれモゴモゴさせていたのだが、幸いなことに二人は気がついておらず、厳かな雰囲気は保たれていた。

 

「……さて、時間の……ようだね……君達のこれからが……自由な意志の下に……あらんことを……」

 

 オスカーと同じ言葉をハジメ達に贈り、〝解放者〟の一人、ミレディは淡い光となって天へと消えていった。

辺りを静寂が包み、余韻に浸るようにユエとシアが光の軌跡を追って天を見上げる。

 

「……最初は、性根が捻じ曲がった最悪の人だと思っていたんですけどね。ただ、一生懸命なだけだったんですね」

「……ん」

「そうね。」

 

 どこかしんみりとした雰囲気で言葉を交わすユエとシアと優花。だが、ミレディに対して思うところが皆無の男、ハジメはうんざりした様子で二人に話しかけた。

 

「はぁ、もういいだろ? さっさと先に行くぞ。それと、断言するがアイツの根性の悪さも素だと思うぞ? あの意地の悪さは、演技ってレベルじゃねぇよ」

「ちょっと、ハジメさん。そんな死人にムチ打つようなことを。ヒドイですよ。まったく空気読めないのはハジメさんの方ですよ」

「……ハジメ、KY?」

「ユエ、お前まで……はぁ、まぁ、いいけどよ。念の為言っておくが、俺は空気が読めないんじゃないぞ。読まないだけだ」

「……それにミレディが本当に性格が悪いってことが理解できたしな。」

「……どういうこと?」

 

そんな雑談をしていると、いつの間にか壁の一角が光を放っていることに気がついたハジメ達。気を取り直して、その場所に向かう。上方の壁にあるので浮遊ブロックを足場に跳んでいこうと、ブロックの一つに三人で跳び乗った。と、その途端、足場の浮遊ブロックがスィーと動き出し、光る壁までハジメ達を運んでいく。

 

「……」

「わわっ、勝手に動いてますよ、これ。便利ですねぇ」

「……サービス?」

 

 勝手にハジメ達を運んでくれる浮遊ブロックにシアは驚き、ユエは首をかしげる。ハジメは嫌そうな表情。優花も何か気づいたようだ。

 

そして運んできた先には

 

「やっほー、さっきぶり! ミレディちゃんだよ!」

 

 ちっこいミレディ・ゴーレムがいた。

 

「「……」」

「やっぱり。」

「ほれ、みろ。こんなこったろうと思ったよ」

「……ぷっ。」

 

その後シリアスな雰囲気をバカにされたユエとシアによる一方的な虐殺を終えた後

 

魔法陣の中に入る俺達。今回は、試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているので、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無く、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。

 

「これは……やっぱり重力操作の魔法か」

「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は一応重力魔法。上手く使ってね…って言いたいところだけど、君とウサギちゃんたちは適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」

「やかましいわ。それくらい想定済みだ」

「ウサギちゃんたちは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。君は……生成魔法使えるんだから、それで何とかしなよ。他の三人は適性ばっちりだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ」

 

なぜかシアが落ち込んでいるが

 

「おい、ミレディ。さっさと攻略の証を渡せ。それから、お前が持っている便利そうなアーティファクト類と感応石みたいな珍しい鉱物類も全部よこせ」

「……君、セリフが完全に強盗と同じだからね? 自覚ある?」

 

否定できない。隼人はため息を吐くと 歪んだニコちゃんマークの仮面が、どことなくジト目をしている気がするが、ハジメは気にしない。ミニ・ミレディは、ごそごそと懐を探ると一つの指輪を取り出し、それをハジメに向かって放り投げた。パシッと音をさせて受け取るハジメ。ライセンの指輪は、上下の楕円を一本の杭が貫いているデザインだ。

ミニ・ミレディは、更に虚空に大量の鉱石類を出現させる。おそらく〝宝物庫〟を持っているのだろう。そこから保管していた鉱石類を取り出したようだ。やけに素直に取り出したところを見ると、元々渡す気だったのかもしれない。何故か、ミレディはハジメが狂った神連中と戦うことを確信しているようであるし、このくらいの協力は惜しまないつもりだったのだろう。

 

「おい、それ〝宝物庫〟だろう? だったら、それごと渡せよ。どうせ中にアーティファクト入ってんだろうが」

「あ、あのねぇ~。これ以上渡すものはないよ。〝宝物庫〟も他のアーティファクトも迷宮の修繕とか維持管理とかに必要なものなんだから」

「知るか。寄越せ」

「あっ、こらダメだったら!」

「ハジメやめとけ。」

 

隼人はハジメを止める

 

「ミレディ曰くここは迷宮なんだろ?勝利報酬的にはかなりの報酬だし、利益も十分だからな。それよりも本か」

「……ちっ。俺はただ、攻略報酬として身ぐるみを置いていけと言ってるだけじゃないか。至って正当な要求だろうに」

「それを正当と言える君の価値観はどうかしてるよ! うぅ、いつもオーちゃんに言われてた事を私が言う様になるなんて……」

「ちなみに、そのオーちゃんとやらの迷宮で培った価値観なんだけどな。」

「オーちゃぁーーん!!」

 

なんかかわいそうだなミレディ。

 

「はぁ~、初めての攻略者がこんなキワモノだなんて……もぅ、いいや。君達を強制的に外に出すからねぇ! 戻ってきちゃダメよぉ!」

 

 今にも飛びかからんとしていたハジメ達の目の前で、ミニ・ミレディは、いつの間にか天井からぶら下がっていた紐を掴みグイっと下に引っ張った。

 

「「「?」」」

 

まぁさすがに今回はやりすぎだからな。止める気はない。

 

「てめぇ! これはっ!」

 

ハジメは何かに気がついたように一瞬硬直すると、直ぐに屈辱に顔を歪めた。

白い部屋、窪んだ中央の穴、そこに流れ込む渦巻く大量の水に押し流される

 

「嫌なものは、水に流すに限るね☆」

 

 ウインクするミニ・ミレディ。ユエが咄嗟に魔法で全員を飛び上がらせようとする。この部屋の中は神代魔法の陣があるせいか分解作用がない。そのため、ユエに残された魔力は少ないが全員を激流から脱出させる程度のことは可能だろうけど

 

「〝来…〟」

「させなぁ~い!」

 

ミニ・ミレディが右手を突き出し、同時に途轍もない負荷がハジメ達を襲った。上から巨大な何かに押さえつけられるように激流へと沈められる。重力魔法で上から数倍の重力を掛けられたのだろう。

 

「それじゃあねぇ~、迷宮攻略頑張りなよぉ~」

「ごぽっ……てめぇ、俺たちゃ汚物か! いつか絶対破壊してやるからなぁ!」

「ケホッ……許さない」

「殺ってやるですぅ! ふがっ」

「……どう見てもこっちが悪役でしょ。」

「自業自得。」

 

隼人と優花は呆れたように三人を見る。その言葉の通り最後にハジメがばっちり手榴弾を投げていたことを二人は見逃さなかった。

その後迷宮の最奥に、「ひにゃああー!!」という女の悲鳴が響き渡った。その後、修繕が更に大変になり泣きべそを掻く小さなゴーレムがいたとかいないとか……

 

激流で満たされた地下トンネルのような場所を猛スピードで流されていた。息継ぎができるような場所もなく、ひたすら水中を進む。何とか、壁に激突して意識を失うような下手だけは打たないように必死に体をコントロールした。

と、その時、俺達の視界が自分達を追い越していく幾つもの影を捉えた。それは、魚だった。どうやら流された場所は、他の川や湖とも繋がっている地下水脈らしい。ただ、流される俺達と違って魚達は激流の中を逞しく泳いでいるので、追い越して行く。

しばらくたつと光が見えそして

 

「ゲホッ、ガホッ、~~っ、ひでぇ目にあった。あいつ何時か絶対に破壊してやる。みんな。無事か?」

「ケホッケホッ……ん、大丈夫」

「ゲホっ。ごほっ。お前ら少しは自重しろ。」

「ゲホッ本当よ!!少しはハジメ考えて行動してよ」

「ってシアは?」

 

隼人が聞くとみんなが探し出す

 

「シア? おい、シア! どこだ!」

「シア……どこ?」

「シア?」

 

 呼びかけるが周囲に気配はない。隼人は、急いで水中に潜り目を凝らす。すると、案の定、シアが底の方に沈んでいくところだった。意識を失っている事と、ドリュッケンの重さのせいで浮くことができないのだ。

 

「ちょっと助けてくる。」

 

隼人はハジメに縄を投げた後息を吸い一気に潜る。そしてシアを担ぐと固定をし縄を引く。するとハジメが引っ張ったのか分からないがすぐに地上へと上げられる

 

シアを引きずりながら岸に上がる。仰向けにして寝かせたシアは、顔面蒼白で白目をむいていた。

 

「ゲホっゲホ。容態は?」

「心臓と呼吸が止まっているな。ユエ、人工呼吸を!」

「……じん…何?」

「あ~、だから、気道を確保して…」

「???」

「あ〜もういい俺がやる。」

 

ハジメの説明に首を傾げるユエ。もしかして心肺蘇生というものがないのかもしれない。怪我をしているわけでもないし、水を飲んでいるところに更に水分を取らせる訳にもいかないので神水は役に立たない。

いつから意識を失っていたのかわからないが、一刻を争うことは確かだ。

本当に締まらないな。

隼人は、意を決してシアに心肺蘇生を行った。そうすると人工呼吸を試みるしかない。

 

「……」

 

ユエが驚いたように、優花は少し苦笑しながらも仕方ないかと隼人に任せることにした。

何度目かの人工呼吸のあと、遂にシアが水を吐き出した。水が気管を塞がないように顔を横に向けてやる

 

「ケホッケホッ……隼人さん?」

「おう。やっと目覚めたか。」

 

 むせながら横たわるシアに至近から呆れた表情を見せつつも、どこかホッとした様子を見せる隼人。そんな隼人を、ボーと見つめていたシアは、突如、ガバチョ! と抱きつきそのままキスをした。まさかの反応と、距離の近さに避け損なう。

 

「んっ!? んー!!」

「あむっ、んちゅ」

 

シアは、両手で隼人の頭を抱え込み、両足を腰に回して完全に体を固定すると遠慮容赦なく舌を口内に侵入させた。シアの剛力と自身の体勢的に咄嗟に振りほどけない。

 

「わっわっ、何!? 何ですか、この状況!? す、すごい……濡れ濡れで、あんなに絡みついて……は、激しい……お外なのに! ア、アブノーマルだわっ!」

 

 そこへやって来たのは妄想過多な宿の看板娘ソーナちゃん。そして「あら? あなたたち確か……」と体をくねらせながらくるおかまに。そして、嫉妬の炎を瞳に宿し、自然と剣にかかる手を必死に抑えている男の冒険者達とそんな男連中を冷めた目で見ている女冒険者だった。

 

「あんっ!」

 

 思わず喘ぐシア。一瞬、緩んだ隙を逃さず、隼人はペイッ! とシアを引き剥がすとそのまま泉に放り込んだ。

 

「うきゃぁああ!」

「はぁ、はぁ。こいつマジかよ。蘇生直後に襲いかかるとか流石に読めねぇ。」

 

思いっきり新鮮な空気を取り込む隼人、結構苦しかったのか息も若干荒れている

 

「うぅ~酷いですよぉ~隼人さんの方からしてくれたんじゃないですかぁ~」

「はぁ? あれは歴とした救命措置でやったんだぞ。ってか、お前、意識あったのか?」

「う~ん、なかったと思うんですけど……何となく分かりました。隼人さんにキスされているって、うへへ」

「……はぁ。シア。」

「はい。なんです。」

 

シアが振り向いた時隼人はそっとキスをする。

シアがギョッと驚きハジメとユエ、優花すら軽くニヤニヤしている。

たった数秒程度であるが隼人が離れるとシアがキョトンと、顔を真っ赤にしてそして口をポカーンと開けている

 

「は、隼人さん?」

「あんな。あんなの見せられて流石に気持ちが動かないとか無理だからな。」

「えっ?」

 

正直隼人はシアのことを一人の妹のように扱う予定だった。今もこの先も隼人は優花を一生特別であり続けるだろう。そんな中でシアと付き合うのは不誠実だったのだ。

しかし、優花に言われてから真剣に隼人はシアのことを考えていた。隼人自身がシアを嫌いかと問われるとそれは違う。隼人自身シアはこの世界でできた数少ない親しい人物であることは明らかだった。

だから愛しいと思うかと思っていたかと言われるとそれは話が別だった。元々隼人自身付いていかないようにユエに協力を頼んだのも身内に甘いことか隼人自身は断りきれないからであった。

……しかし、隼人自身近くで、そして隼人の想像以上にシアは真剣だった。

ユエに隼人の想像以上に身体強化を極めユエに決闘で勝った。

不安で、初めての迷宮でも泣き言一つ言わずにきちんと攻略し、神代魔法を獲得した

明るく、少し残念なところもあるがそれもまた彼女の魅力なんだろう

すなわち。隼人はシアに惹かれていたのだ。いつからかわ分からないが。それでも素直でまっすぐな心を持ったシアに。

 

「……言っとくけどお前の特別にはなれない。俺にとっての特別は優花だし、それは変わることは絶対にない。そこだけは未来は絶対に変えられない。」

「はい。わかってます。」

「……はぁ。負けだよ。俺の負け。無理。あんだけの好意をユエや迷宮のボスまで倒されたら流石に認める。というよりもさすがに俺がこれ以上耐えられそうにない。」

 

隼人は小さく苦笑しそして事実上の敗北宣言をする

 

「シア。俺の隣に一生いてくれないか?絶対に逃さねぇし渡さない。家族思いで優しく明るい、お前のことが好きだ。誰にも渡したくない。」

「……えっ?あの。えっ?いいんですか?」

「いいって。まぁ色々向こうに行ったら言われることはあるだろうけど、それでも俺に付いて来てくれると嬉しい。俺ってかなり不器用だし、二人曰くすぐに女を引っ掛ける最低野郎かもしれないけど。」

「……あの、優花さんは?」

「いいわよ。恐らく後10人近くは増えることを覚悟しているからね。」

「お前何言っているの?てかそんなに増えるわけないだろうが。」

「フラグにしか聞こえないんだが。」

「……隼人は絶対にこの後も女を引っ掛ける。」

 

すると二人から辛辣な声をかけられる

 

「……俺ってそこまで女落としているの?」

「俺が知っている限りは四人はいるな。」

「私はクラスの中では四人は隼人のことが好きな人を知っているわよ。」

 

……なんか本当にナイフで後ろから刺されてもおかしくないと思うんだけど

 

「……まぁそんな最低な奴だけど。付いてきてくれるか?」

「……はい。」

 

するともう一度唇を重ねる隼人。シアはただ幸せそうにうっとりしている。

そんな甘い雰囲気な隼人たちをただ優しげに見つめている優花の姿があった。

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