異世界料理人   作:孤独なバカ

41 / 54
ブルッグとの別れ

あれから一週間が経ち

 

「んじゃ約束もあるからもうそろそろ行くぞ。」

「は〜い。」

「そういえば次に行く街はどこだ?」

「とりあえずウルに行くつもりなんだけど先にフューレンに寄ろうかなって思っている。」

「フューレンは分かるけどなんで何でウルの街にいくんだ?」

 

そのことなんだけど

 

「いや。愛ちゃんに会いに行こうかなって。」

「えっ?愛ちゃんウルにいるの?」

「豊穣の女神って街の聞き込みをしたらウルの街に愛ちゃんがいるらしい。一応日本語で書いた手紙は書いたけどちゃんと届くか。それを読んでいるか分からないからな。」

「あぁ。確かに手紙が読まれる可能性は低いよな。」

「「どういうこと(ですか)?」」

 

ハジメは頷くと優花とシアが首を傾げる

隼人が苦笑すると変わりにハジメが答えた

 

「閲覧される可能性があるってこと。お前日本語で書いたのならばこの世界の人間は読まれないはずだ。何かの暗号かもしれない物を協会側が見過ごす可能性は低いっていうことだ。」

「そういうこと。つまり実際会って話そうってこと。まぁ色々話したいことがあるから手紙にも会いに行くって書いたし。」

「お前、先生のことけっこう好きだよな?」

「まぁ、あの先生を嫌いな人はそういないだろ。」

 

少し納得してしまったハジメ。

まぁ隼人の置き土産についても話しておきたいところだったのでちょうどタイミングはよかったのだろう。

そして迷惑をかけたと思われる人々に挨拶しに行くことになった。

 

「おや、今日は五人一緒かい?」

 

隼人たちが近づくといつも通り、おばちゃんがおり、先に声をかけた。おばちゃんの声音に意外さが含まれているのは、この一週間でギルドにやって来たのは大抵、ハジメの一人かシアとユエの二人組だからだ。

ついでに優花と隼人が来ないのは暇さえあれば屋台を開き商売をしているからであり、シアやユエにちょっかい出したら飯を出さないと告げたところ二人のストーカー混じりの付き人はいなくなったのだが旅館にお姉様親衛隊と隼人の恋人になりたい女子とモテたいがごとく女性や男性が料理を習いに宿に殺到したことは記憶に新しい

 

「ああ。明日にでも町を出るんで、あんたには色々世話になったし、一応挨拶をとな。ついでに、目的地関連で依頼があれば受けておこうと思ってな」

 

 世話になったというのは、ハジメがギルドの一室を無償で借りていたことだ。せっかくの重力魔法なので生成魔法と組み合わせを試行錯誤するのに、それなりに広い部屋が欲しかったのである。キャサリンに心当たりを聞いたところ、それならギルドの部屋を使っていいと無償で提供してくれたのだ。

 

「そうかい。行っちまうのかい。そりゃあ、寂しくなるねぇ。あんた達が戻ってから賑やかで良かったんだけどねぇ~」

「勘弁してくれよ。宿屋の変態といい、服飾店の変態といい、ユエとシアに踏まれたいとか言って町中で突然土下座してくる変態どもといい、〝お姉さま〟とか連呼しながら二人をストーキングする変態どもといい、決闘を申し込んでくる阿呆共といい……碌なヤツいねぇじゃねぇか。出会ったヤツの七割が変態で二割が阿呆とか……どうなってんだよこの町」

「ん?俺は結構面白いやつと出会えたから結構充実していたけど。」

「……お前すげぇよ。普通にクリスタベルとも話しているしな。」

 

まぁ地球に戻ったら少し色々商談をする予定になったことくらいか。

 

「まぁまぁ、何だかんで活気があったのは事実さね」

「やな、活気だな」

「で、何処に行くんだい?」

「フューレンですね。」

 

そんな風に雑談しながらも、仕事はきっちりこなすキャサリン。早速、フューレン関連の依頼がないかを探し始める。

「う~ん、おや。ちょうどいいのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。ちょうど空きが後三人分あるよ……どうだい? 受けるかい?」

 キャサリンにより差し出された依頼書を受け取り内容を確認するハジメと隼人と優花。確かに、依頼内容は、商隊の護衛依頼のようだ。中規模な商隊のようで、20人程の護衛を求めているらしい。ユエとシアは冒険者登録をしていないので、隼人たちの分でちょうどだ。

「連れを同伴するのはOKなのか?」

「ああ、問題ないよ。あんまり大人数だと苦情も出るだろうけど、荷物持ちを個人で雇ったり、奴隷を連れている冒険者もいるからね。まして、ユエちゃん、シアちゃんも結構な実力者だ。三人分の料金でもう二人優秀な冒険者を雇えるようなもんだ。断る理由もないさね」

「そうか、ん~、どうすっかな?」

「別にいいだろ。俺たち冒険者らしい仕事未だにやってないしせっかくだしやっていかないか?」

「私は別にいいわよ。金銭的には料理で結構余裕はあるけど。」

 

実はこの一週間で隼人と優花は空いている時間でぴったりミニレストラン的なものを開いていたのだが、結構高めに値段を設定したにも関わらず隼人の作った料理はほぼ3時間程度で全て完売。途中からはシアやユエもウエートレスとして雇い俺と優花の二人で捌いていたのだ。

 

「……急ぐ旅じゃない」

「そうですねぇ~、たまには他の冒険者方と一緒というのもいいかもしれません。ベテラン冒険者のノウハウというのもあるかもしれませんよ?」

「……そうだな、急いても仕方ないしたまにはいいか……」

 ハジメは他のメンバーの意見に「ふむ」と頷くとキャサリンに依頼を受けることを伝える。ユエの言う通り、七大迷宮の攻略にはまだまだ時間がかかるだろう。急いて事を仕損じては元も子もないというし、シアの言うように冒険者独自のノウハウがあれば今後の旅でも何か役に立つことがあるかもしれないと思ったのだろう。

 

「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面門に行っとくれ」

「了解した」

 ハジメが依頼書を受け取るのを確認すると、キャサリンがハジメの後ろのユエとシアと優花に目を向けた。

 

「あんた達も体に気をつけて元気でおやりよ? この子たちに泣かされたら何時でも家においで。あたしがぶん殴ってやるからね」

「……ん、お世話になった。ありがとう」

「はい、キャサリンさん。良くしてくれて有難うございました!」

「えぇ。でもその時は私が隼人をぶん殴るから安心してよ。」

 

 キャサリンの人情味あふれる言葉にユエとシアと優花の頬も緩む。特にシアは嬉しそうだ。この町はシアを亜人族という点で差別的扱いをしない。土地柄かそれともそう言う人達が自然と流れ着く町なのか、それはわからないが、いずれにしろシアにとっては故郷の樹海に近いくらい温かい場所であった。

 

「あんたら、こんないい子達泣かせんじゃないよ? 精一杯大事にしないと罰が当たるからね?」

「……ったく、世話焼きな人だな。言われなくても承知してるよ」

「まぁ。迷惑はかけると思うけどな。」

 

少し隼人は苦笑しながらも少し笑顔になるとそんな隼人にキャサリンが一通の手紙を差し出す。

 

「ん?これは?」

「あんた達、色々厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びのようなものだよ。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね」

「……助かります。」

「おや、詮索はなしだよ? いい女に秘密はつきものさね」

「……はぁ、わーたよ。これは有り難く貰っとく」

「素直でよろしい! 色々あるだろうけど、死なないようにね」

 

どうやらハジメは詮索をしていたのだが実はここの村長からキャサリンのことを聞いた隼人と優花は苦笑してしまう。

元王都で働いていただけあってそりゃ優秀だよなっと思いながら二人の会話を聞いていた

 

 

 

 そんな愉快? なブルックの町民達を思い出にしながら、正面門にやって来たハジメ達を迎えたのは商隊のまとめ役と他の護衛依頼を受けた冒険者達だった。どうやらハジメ達が最後のようで、まとめ役らしき人物と十四人の冒険者が、やって来た隼人達を見て一斉にざわついた。

 

「お、おい、まさか残りの三人って〝スマ・ラヴ〟なのか!?」

「マジかよ! 嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど!」

「見ろよ、俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」

「いや、それはお前がアル中だからだろ?」

「それよりも食神様が乗っているぜ。」

「食の女神様も一緒だ。」

 

ユエとシアの登場に喜びを表にする者、股間を両手で隠し涙目になる者、手の震えをハジメ達のせいにして仲間にツッコミを入れられる者、隼人たちが知らせてないのにいつのまにか食神と食の女神という渾名で崇めたりなどいっぱいだ。……優花も隼人も黒歴史的なあだ名で恥ずかしくて顔を隠してしまう。なのでハジメが、嫌そうな表情をしながら近寄ると、商隊のまとめ役らしき人物が声をかけた。

 

「君達が最後の護衛かね?」

「ああ、これが依頼書だ」

 

 ハジメは、懐から取り出した依頼書を見せる。それを確認して、まとめ役の男は納得したように頷き、自己紹介を始めた。

 

「私の名はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」

「……もっとユンケル? ……商隊のリーダーって大変なんだな……」

「……ってユンケルさん?」

 

隼人は聞き覚えがあった。なので隼人は不意にそっちを見る。するとユンケルと名乗った人もこっちを見る

 

「おや、隼人さんじゃないですか。乾麺と缶詰の時以来ですね。」

「お久しぶりです。三ヶ月ぶりですかね。」

「月日は早いものですな。また料理の件について儲け話があれば。」

 

「知り合い?」と優花が聞いてそれに「王都で少しな」と隼人は苦笑する。

 

「まぁ、期待は裏切らないと思うぞ。俺はハジメだ。こっちはユエとシア」

「それは頼もしいな……ところで、この兎人族……売るつもりはないかね? それなりの値段を付けさせてもらうが」

「あっ。そいつ俺の連れだから。てかその奴隷紋もフェイクだし。」

 

するとユンケルは少し驚いたように隼人を見る。

 

「……そうなんですか?」

「あぁ。面倒ごとを減らすための応急処置だ。俺は元々この世界の人間じゃないからな。こっちのルールも俺たちには通用しないし。」

 

隼人たちが違う世界からやってきたことはユンケルも知っている

 

「それに俺とってはこいつは既に仲間だ。優花やユエの友達でもあるし奴隷扱いするなら神でさえ容赦はしないけど。」

「「「!!!!」」」」

 

と軽く威圧を出すと全員がその言葉に嘘がないということがわかったのだろう

やれやれといったハジメやユエが苦笑しながら隼人を見る。

隼人の仲間に対する思いやりはすでに見てきただけあったのだが、純粋に神に喧嘩を売ってまでシアと敵対すると宣言したのだった。

それは聖教教会すらも。

 

いわゆる脅し。関わらないならなにもしない。ただ敵対するならば潰す。ハジメであればここは敵対するのを避けるべくどこぞの神と発言していたのであろう。

しかし隼人は逆にこの世界の歴史も文化も知らない。ただ自分が正しいと思ったことをすると発言しているのだ。

実は王国では聖教教会の勢力がかなり落ちていることを隼人は知っていた。

それは隼人がたった一人で教会を欺いたことがかなり効いていて、隼人の方が勇者よりも役に立ったと噂をするほどだった。

いわゆる王国と民衆を操る力は既に教会にはないってことを既に知っていての発言。

ユンケルは確かオルクスの迷宮で事故死した三人の行方不明者の名前を思い出す。

 

……なるほど。それが答えですか。

 

「えぇ。それはもう。仕方ありませんな。ここは引き下がりましょう。ですが、その気になったときは是非、我がユンケル商会を例え神が敵になろうともご贔屓に願いますよ。それと、もう間も無く出発です。護衛の詳細は、そちらのリーダーとお願いします」

 

とユンケルの言葉にいっぱい食わされてしまい、隼人は驚きを隠せないでいた。そしてその魂胆を見抜き苦笑する

 

「えぇ。忘れないでいます。」

 

と全員が首をかしげる中でユンケルと隼人だけが意味が分かったらしく他は首を傾げている。

これから地球に戻ったとしてもユンケルとの取引が続いていく事になることを未だに隼人もユンケルも思いもしてなかった。

またユンケルが今後取り組んでいくことも

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。