「ちょ、ちょっと隼人くん。」
「体力ない先生はこうしておいた方がいいだろ?」
「……お前なんちゅう魔法使っているんだよ。」
「…重力魔法の扱いがすごい。私はこの人数を自由に浮かせるなんて不可能」
隼人はクラスメイトを重力魔法で浮かせながら探索を行っていた。
「そんなに凄いの?」
「少し間違えたら普通なら潰れる。自分を操作するのなら難易度が下がるけど。……今の私では無理」
「ユエは敵を殺す魔法しか覚えてないだろ。こういう風に他人を助ける魔法を身につけておいた方がいいぞ。俺たちの世界に来るんだったら平和な世界だから殺傷力がある魔法なんか論外だからな」
「…そうなんだ」
「せめてユエは家事が少しできないと厳しいかもね。全部私たち任せでしょ?」
「ハジメの家は共働きだからな。俺も家事は基本的にやっているけど」
「……俺も帰ったら、母さんの手伝いくらいはやろうかな。」
「いや。お前は両親の仕事を手伝う方が両親にとっての親孝行になるんじゃないか?俺も仕事はしてたけど自由な時間もあったし。」
地球に戻った時の話をし始める三人。その時の姿はすでにシアやユエは自分じゃ入り込めないことを分かっていた。
ユエもシアも気づいているのだ。
この三人はおそらく私たちよりも三人のことを優先する。
奈落で過ごしてきた絆はおそらくこの先変わることがない。
それが三人にとって本物と呼べるものだと思うから。
ユエもシアもその三人のことは好きだから分かるし、それに自分たちにとって恩人の三人だ。
少し羨ましいと思うがそれでも二人は仕方がないと思ってしまう
「……てか気づいているか?」
「あぁ。さっきから魔物の戦闘後は残っているのに全くっていうほど死体がないな。」
「えぇ。……それも結構大規模な戦闘跡が見られるんだけど……。それに魔物の気配が一体もいないことが少し気になるわね。」
隼人は無人偵察機で空中を見るが全く反応はない
ハジメが〝無人偵察機〟と呼んだ鳥型の模型は、ライセンの大迷宮で遠隔操作されていたゴーレム騎士達を参考に、貰った材料から作り出したものだ。生成魔法により、そのままでは適性がないために使い物にならない重力魔法を鉱物に付与して、重力を中和して浮く鉱物:重力石を生成した。それに、ゴーレム騎士を操る元になっていた感応石を組み込み、更に、遠透石を頭部に組み込んだのだ。遠透石とは、ゴーレム騎士達の目の部分に使われていた鉱物で、感応石と同じように、同質の魔力を注ぐと遠隔にあっても片割れの鉱物に映る景色をもう片方の鉱物に映すことができるというものだ。ミレディは、これでハジメ達の細かい位置を把握していたらしい。ハジメは、魔眼石に、この遠透石を組み込み、〝無人偵察機〟の映す光景を魔眼で見ることが出来るようになったのである。
もっとも、人の脳の処理能力には限界があるので、単純に上空を旋回させるという用途でも四機の同時操作が限界である。神眼を持った隼人でさえ10体が限界である。一体、ミレディがどうやって五十騎ものゴーレムを操作していたのか全くもって不思議だ。
そんなやりとりをしている中ふと奈々は呟いた
「……隼人くん本当にこの世界に入ってからずっと頼もしいね。」
おそらくクラスの総意であろうこの世界の隼人についての見解を告げる。
そのことに否定することもなく幸利も頷く。ただ少し不思議に思っていることもあったのだ。
「弱さを普段から見せないからな。隼人以上にリーダーに向いている人は俺たちのクラスにはいないだろうけど……。」
「どうしたんですか?」
「……なんか隼人らしくないんだよなぁ。弱みを見せるって俺の前ではよくやってたし愚痴も吐くことも多かったんだけど。隼人自身弱みを隠すって俺から見たら隼人らしくないんだよ。どちらかというなら隼人って子供っぽいし。」
「子供っぽい?」
「あぁ。あいつ精神的に成長した子供みたいな奴なんだよ。あいつが料理をしている時なんかいつもあどけない笑顔で笑うだろ?」
「そうですね。私も子供っぽいっていう点では清水くんと同じ意見です。隼人くんって結構甘えん坊ですし。」
と愛子も同じ意見なのか頷くと奈々はキョトンとしてしまう。
隼人が子供っぽいって思うことは学校ではまずありえないことだ。
「……ダメだ全く見つからない。」
「……そっか。」
「私の方も引っかかりませんね。」
「やっぱり隼人の言っていた魔物の使役化だろう。」
そんな話をしているとは知らない隼人たちは一つの結論に達していた
と隼人たちは魔人族の仕業であると断言できていた。
王宮の話は基本的に真実であること、また神代魔法に魔物を変化させる魔法があることにより魔物の使役化は魔人族の仕業であることがほぼ確定的だ。
そしてしばらく歩いていたらようやく気配を掴んだのと同時に気になるものがあった。
「……ちょっと待って。これって。幸利。お前闇魔法について詳しかったよな?」
「あぁ。一応魔物を操れる程度にはできるけど。」
「お前死んだ魔物を操ることは可能か?」
「……いや。そうなると死霊術師か降霊術師がその本職だと思うが。」
「……なるほどな。……ちょっとまずいかもな。」
「どうした?」
隼人の不安げな顔にハジメは苦い顔をする。
「いや。……この気配なんだ?多分魔物なんだけど……明らかに強さのレベルが俺たち並みなんだが。」
「何?」
「えっ?」
「だから俺とハジメがちょっと偵察に行ってくる。」
「ちょ、ちょっと隼人!!」
「さすがにあの相手を対してさすがに守りながらは無理。優花たちは見張りしといてくれ。敵対するんだったら殺してくるから。」
と隼人はクラスメイトを地上に降ろした後、ハジメと共に少しだけ早足で向かう。というのもこの人選は仕方ない。この二人が気配遮断は圧倒的に優れているので的確な判断だといえる。
「……もう。勝手なんだから。」
「あはは。いつものことですね。」
「……ん。」
もはや、当たり前となった隼人の先行に苦笑してしまう優花たち。
そして隼人たちを信頼して待つことに決めたのであった
一方隼人たちは高速で気配をする方へ向かっていた。
ハンドサインで合図を送りながらも高速で進んでいく二人は軍人や暗殺者と言っても過言ではない。
そうした先で隼人たちが進むと大きな黒い竜が眠っていてそれを大勢の耳の尖った人が囲んでいる。
神眼で竜の解析をしていた隼人はつい声が漏れそうになった
ティオ・クラルス 563歳 女 レベル:89 竜人族の姫
状態 精神汚染40%
天職:守護者
筋力:770 [+竜化状態4620]
体力:1100 [+竜化状態6600]
耐性:1100 [+竜化状態6600]
敏捷:580 [+竜化状態3480]
魔力:4590
魔耐:4220
技能:竜化[+竜鱗硬化][+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮][+風纏][+痛覚変換]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・火属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法
『どうした?』
『竜人族だ。あの竜。」
『なっ!!』
ハジメに伝えるとハジメ自身驚いたらしく声を抑えていることはわかった。
竜人族はすでに数百年前に全滅した種族であることは文献からの情報ではそう記されていたのだが
……もしかしてユエみたいな隠れる方法を所持しているってことか?
しかし今はそんなことよりも魔人族と接していて精神汚染を受けているところをどうするかだ。
精神汚染が40%か。
隼人はその瞬間にリスクとリターンを考え決断する。
「……よし。ちょうどいいか。殺すか。」
「は?」
隼人自身から聞こえた言葉にハジメは訳が分からないみたいな顔をしているがすぐに何をしようとしているのかわかった
ライトニングを唱えていることから魔法で狙撃をするつもりなんだと判断する
そして無数の魔法を放つと高速でまっすぐにライトニングは魔人族を蹂躙していく。
「相変わらずエゲツないな。」
「エゲツないってこれでも初級魔法くらいのさじ加減なんだけど。」
「……魔法チートウゼェ。」
「一番料理がチートなんだけどなぁ。」
と軽口を叩きあう二人。
実際隼人にとってこれくらいの魔法は初級レベルなのだが複雑性や無詠唱など多くの複合技術で構成されており命中率や正確性を合わせると上級の蒼天以上であることはユエが真似できないことから明らかになっている
隼人の魔法における成長力はユエさえ驚かす。
しかもこいつはこの世界に来てまだ3ヶ月くらいしか経っていないはずなのに魔法適正はあるものの魔法の腕は今やユエ以上であること、また魔法の教師としたら誰よりも優れていることには変わりはなかった。
「……気配感知に引っかからないし。魔人族のレベルは低かったから全員殺しただろうな。恐らくあいつらは捨て駒。多分できればラッキーくらいの感じだろう。」
「……つーか。この竜どうする?」
「……とりあえず色々聞きたいことがあるし起こすか。あんまり使いたくない方法だけど。」
と隼人は宝物庫からとある小さな赤い果実を取り出す。
「なんだそれ。」
「カレーの時も使っていた香辛料の一つで悪魔の実って呼ばれるもの。俺は平気だけど普通の人ならば触っただけで刺激があって俺が使っているのもちゃんとした調理法を守って使っているもの。一度ユエが優花に正座で半日ずっと怒られていたことあっただろ?これが原因。」
「えっ?おまっ!」
その実の正体を知ったハジメは冷や汗が垂れる。
実はこの悪魔の実はこの世界でも調理をできる人は限られており、隼人によって調理されたものは辛いもの好きのハジメには欠かせないものであるのだが、辛いものが好きである優花が食べれないほどに辛いのだ。
一度料理を一緒に作っていた優花がガチで悪魔の実をちゃんとした調理法を行わずその料理を口にして3日間はずっとガラガラごえ&涙と鼻水でぐじゃぐじゃになったほか皮膚の炎症で隼人に顔を見られるのが嫌だと迷宮で引きこもってしまう事件が発生したことはハジメにも印象が残っている
「それって調理は?」
「してる訳ないだろ。でも魔法をかけられているにも関わらず熟睡しているこの竜を覚ますには味覚という刺激を与えるしかないだろ?」
鬼だと思いながらも他に方法が思い出せないのでハジメは少し黙ってしまう。
そして隼人は竜の口に悪魔の実を加えさらに咀嚼を手伝ってやる。
すると竜人族の竜は急に金色の目を開けると
『ギャー、い、痛い。く、口の中がものすごく痛いのじゃ!!」
と大きな声で悲鳴をあげる。
目論見は成功しただが竜がおとなしくなるまで時間がかかったのはいうまででもなかった。
ティオのヒロイン
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隼人
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ハジメ