『ひ、ひどいのじゃ悪魔の実をそのまま食べさせるなんて。』
「こんなところで魔法をかけられているにも関わらず爆睡している方が悪いだろ。精神汚染もステータスを見る限り消えているな。」
「精神汚染が消えるだけの果実ってどんだけあの果実は辛いんだよ。」
涙目の竜に隼人が突っ込むと悪魔の実の威力を知ったハジメもさすがにいつも食べている実ながらそこまでからかったのか軽く恐怖を覚えている。
「つーか竜人族が生きているとはな。」
『そういえばお主ら妾が竜人族じゃといつ気づいたのじゃ?妾を起こしたということになると話せることを確信しておったのじゃろ?』
「俺の目だよ。神眼っていう技能が入っていてありとあらゆる情報を俺は目にすることができるからな。鑑定技能みたいなものだと思ってくれていい。」
隼人が眼帯をとり義眼を見せると竜は少し興味深かそうにしている
「そういえばこの辺りに冒険者が通らなかったか?五人組の冒険者なんだが。」
『いや。この辺りには来ていないと思うのじゃが。……そういえば魔人族が冒険者四人を殺したって言っておったかのう。一人は川に流せれて逃げられたと言っていたのじゃ。』
「……一人だけか。生存の可能性があるのは。」
隼人はとりあえず一人だけ生存の可能性があることをホッと息を吐き、ハジメも少し安心したようだ。
「そういえば竜人族って絶滅してなかったか?数百年前に。」
「あぁだからなんでここに竜人族がいるのか分からないが。」
『うむ。それはのう。』
と竜はここに来た経緯を話し始める。
この黒竜は、ある目的のために竜人族の隠れ里を飛び出して来たらしい。その目的とは、異世界からの来訪者について調べるというものだ。詳細は省かれたが、竜人族の中には魔力感知に優れた者がおり、数ヶ月前に大魔力の放出と何かがこの世界にやって来たことを感知したらしい。
竜人族は表舞台には関わらないという種族の掟があるらしいのだが、流石に、この未知の来訪者の件を何も知らないまま放置するのは、自分達にとっても不味いのではないかと、議論の末、遂に調査の決定がなされたそうだ。
目の前の黒竜は、その調査の目的で集落から出てきたらしい。本来なら、山脈を越えた後は人型で市井に紛れ込み、竜人族であることを秘匿して情報収集に励むつもりだったのだが、その前に一度しっかり休息をと思い、この一つ目の山脈と二つ目の山脈の中間辺りで休んでいたらしい。当然、周囲には魔物もいるので竜人族の代名詞たる固有魔法〝竜化〟により黒竜状態になって。
すなわち勇者という人間を探していたんだろう
「……つまり敵対することはないと。」
『うむ。今のところそのつもりじゃ。』
「なるほどな。」
まぁ嘘はついてなさそうだし放置でもいいかもな。と隼人は少し考える
「まぁそれならいいか。ハジメ戻ろうぜ。一応竜人族の立場的に知られたらまずそうだしな。」
「……ん?何にもしないのか?」
「わざわざ面倒ごとに巻き込まれる可能性を危惧しないといけないんだよ。敵対する可能性があったからこっちに来ただけだしな。収穫があっただけマシだろう。それに……なんとなく嫌な予感がする。魔人族の動きが活発すぎる。……明らかに愛ちゃんを殺しにきていると思っているからできるだけ早めにウルに戻って防衛対策を行いたい。」
隼人の胸騒ぎは恐らく当たっているだろう。ハジメ自身確かに大掛かりな作戦であることは確かだし、地球では何度もお世話になりずっと諦めずに探してくれた先生だ。愛子を見捨てるって判断はなかった。
「たく。了解。……川に流されたって言っていたよな。近く川ってあったか?」
「ある。ドローンが見つけているしちょうど優花たちもそこにいるらしい。ついでに弁当食っている。」
「遠足みたいだな。」
「まぁいいんじゃないのか?今は殺されかけているって気づかれない方が都合がいい。……多分生徒のためなら自分を犠牲にするって考えに行き着く可能性が愛ちゃんは高いから。」
隼人の言葉に否定はできないと思ったハジメは軽く苦笑し頷く。
『ほう。急ぎの用なら妾も手伝おうかのう。』
「……は?」
『お主らには洗脳をといてもらった恩があるからのう。助けてもらった恩に背いてしまえば竜人族の誇りを傷つけることと同義じゃ。』
隼人はまた考え始めそして決断する
「それなら背に乗っけてもらっていいか?空から隠れられそうな洞穴を探すから。」
『うむ。よかろう。』
「いいのか?」
「竜人族とも仲よくありたいからな。別に危険だとは思わないし別にいいだろ。」
と隼人はあっけらかんに答えるとその竜の背にのる。ハジメもそれに続くとあっ。っと隼人何か思い出したようにしていた
「ついでに俺は須藤隼人。そっちは南雲ハジメ。お前らがいう召喚されたものの一人だ。」
『ほう。妾はティオ・クラルス。最後の竜人族クラルス族の一人じゃ』
「悪いハジメ。ティオさん。気配感知をこの山全域にするからしばらく動けない。さっさと蹴りをつけるから優花たちを見にいってくれないか?北東の川にいるはずだから。」
「了解。」
『うむ。わかったのじゃ。』
と自己紹介が終わると隼人は気配感知を全開にしこの山全体を気配感知の範囲対象内にする。
するとしばらくたち気配感知が鮮明になると、反対の南西、川の下流地点で少し弱々しい気配が感じる。
確定だな。
ティオと呼ばれた竜人族は嘘をついていなかった。それならまだ生存している。
そうしながら確実に位置を判明させるためドローンを操作していると
「ドラゴン?なんでこんなところに。」
「敵襲ですか?」
「……あ〜。おい隼人。これ説明どうするんだよ。」
「あっ!そういえばこうなるよな」
すっかり迎えにいくとはいえ竜に乗った隼人は少しだけ苦笑してしまう。
その後隼人とハジメが顔を出したことで優花たちを安心させ、ティオの説明に時間を取られたことは言うまでもなかった。
「……まったくもう。念話石があるんだから先に連絡してくれないと。」
「マジで悪い。完全に忘れてた。」
と隼人たちは重力魔法で空中飛行をしながらシアとハジメの気配感知の元川辺の探索をしていた。
『ふむ。その魔法妾は見たことないのじゃが。風魔法の応用かのう?』
「風魔法でも同じことはできるけど。こっちは重力魔法っていうんだよ。神代魔法の一つだ。」
「……いいの?」
ユエがキョトンと聞いてくる。恐らく話してもいいのと聞きたいのだろうと思ったので隼人は頷く。
「いい。ここで竜人族が邪魔をしてくる方が俺たちにとって帰還できる可能性が下がるんだよ。いっとくけど防御力最大ほぼ8000あるんだぞ。ティオさん自体。それが大群で来られてみろ。迷宮よりもしんどい可能性があるしどれほどの損失があるかも分からない。」
「なるほど。確かに敵対するのは得策ではないな。」
『お主思ったよりも頭がキレるのう。』
「元々こういったことは好きだからな。作戦とか考えるのは。」
「お前が得意なのは暗躍だろ?教会の権力をたった二週間で崩したのは隼人だろう。中村の時だってお前が裏で手を引いて、俺を使ったこと未だに借りを返してもらってないんだけど。」
「……事実だからなんもいえねぇ〜。」
隼人が目をそらす。暗躍していることは誰の目からも明らかで隼人自身に黒いものがあることは全員が気づいている。
ただ誰も触れない。
隼人の怒りは誰もが一度は体験し、そして徹底的に追い込むことを全員が知っているのだから。
そうしながら歩く先には立派な滝に出くわした。ハジメ達は、軽快に滝横の崖をひょいひょいと降りていき滝壺付近に着地する。滝の傍特有の清涼な風が一日中行っていた探索に疲れた心身を優しく癒してくれる。と、そこでハジメの〝気配感知〟に反応が出た。
「! これは……」
「……ハジメ?」
ユエが直ぐ様反応し問いかける。ハジメはしばらく、目を閉じて集中した。そして、おもむろに目を開けると、驚いたような声を上げた。
「おいおい、マジかよ。本当に気配感知に掛かった。感じから言って人間だと思う。場所は……あの滝壺の奥だ」
「生きてる人がいるってことですか!」
シアの驚きを含んだ確認の言葉にハジメは頷いた。人数を問うユエに「一人だ」と答える。愛子達も一様に驚いているようだ。それも当然だろう。隼人が感知していたとはいえ、生存の可能性はゼロではないとは言え、実際には期待などしていなかった。本当に奇跡的といっていいだろう
「ユエ、頼む」
「……ん」
ハジメは滝壺を見ながら、ユエに声をかける。ユエは、それだけでハジメの意図を察し、魔法のトリガーと共に右手を振り払った。
「〝波城〟 〝風壁〟」
すると、滝と滝壺の水が、紅海におけるモーセの伝説のように真っ二つに割れ始め、更に、飛び散る水滴は風の壁によって完璧に払われた。高圧縮した水の壁を作る水系魔法の〝波城〟と風系魔法の〝風壁〟である。ティオ自身少し目を開いたが、何も言わずにずっと我慢していた。
詠唱をせず陣もなしに、二つの属性の魔法を同時に、応用して行使したことに愛子達は、もう何度目かわからない驚愕に口をポカンと開けていた。そういえば同時発動は未だに見せていなかったと隼人は思いながらくしょうしていたら今度はティオが急に変化し始める。黒色の魔力で繭のように包み完全に体を覆うと、その大きさをスルスルと小さくしていく。そして、ちょうど人が一人入るくらいの大きさになると、一気に魔力が霧散すると、その場にうっとりと頬を染める黒髪金眼の美女がいた。腰まである長く艶やかなストレートの黒髪見た目は二十代前半くらいで、身長は百七十センチ近くあるだろう。見事なプロポーションを誇っており、衣服から覗く二つの双丘が激しく自己主張し、今にもこぼれ落ちそうになっている。
「すっげ。美人」
「どうでもいいから行くぞ」
「その反応はひどいのじゃ!!」
幸利がこうつぶやいたのも仕方がないことだろう。だけど人命救命を優先しようとしていた隼人はそれを無視し洞窟内に入っていく。
洞窟は入って直ぐに上方へ曲がっており、そこを抜けるとそれなりの広さがある空洞が出来ていた。天井からは水と光が降り注いでおり、落ちた水は下方の水溜りに流れ込んでいる。溢れないことから、きっと奥へと続いているのだろう。
その空間の一番奥に横倒しになっている男を発見した。傍に寄って確認すると、二十歳くらいの青年とわかった。端正で育ちが良さそうな顔立ちだが、今は青ざめて死人のような顔色をしている。だが、大きな怪我はないし、鞄の中には未だ少量の食料も残っているので、単純に眠っているだけのようだ。
やっぱり貴族関係だったか。
隼人の予想が当たっていたのだ。恐らくギルドから貴族との繋がりを持たせてくれる後ろ身の安全を守るために使ったものだと考えられる。
気づかわしげに愛子が容態を見ているが、ハジメは手っ取り早く青年の正体を確認したいのでギリギリと力を込めた義手デコピンを眠る青年の額にぶち当てた。
バチコンッ!!
「ぐわっ!!」
悲鳴を上げて目を覚まし、額を両手で抑えながらのたうつ青年。愛子達が、あまりに強力なデコピンと容赦のなさに戦慄の表情を浮かべた。ハジメは、そんな愛子達をスルーして、涙目になっている青年に近づくと端的に名前を確認する。
「お前が、ウィル・クデタか?」
「いっっ、えっ、君たちは一体、どうして」
状況を把握出来ていないようで目を白黒させる青年に、ハジメは再びデコピンの形を作って額にゆっくり照準を定めていく。
「質問に答えろ。答え以外の言葉を話す度に威力を二割増で上げていくからな」
「えっ、えっ!?」
「お前は、ウィル・クデタか?」
「えっと、うわっ、はい! そうです! 私がウィル・クデタです! はい!」
一瞬、青年が答えに詰まると、ハジメの眼がギラリと剣呑な光を帯び、ぬっと左手が掲げられ、それに慌てた青年が自らの名を名乗った。どうやら、本当に本人のようだ。奇跡的に生きていたらしい。
「そうか。俺はハジメだ。南雲ハジメ。フューレンのギルド支部長イルワ・チャングからの依頼で捜索に来た。生きていてよかった」
「イルワさんが!? そうですか。あの人が……また借りができてしまったようだ……あの、あなたも有難うございます。イルワさんから依頼を受けるなんてよほどの凄腕なのですね」
尊敬を含んだ眼差しと共に礼を言うウィル。先程、有り得ない威力のデコピンを受けたことは気にしていないらしい。それから、自己紹介を簡潔に済ませると、何があったのかをウィルから聞いた。
要約するとこうだ。
ウィル達は五日前、隼人達と同じ山道に入り五合目の少し上辺りで、突然、十体のブルタールと遭遇したらしい。流石に、その数のブルタールと遭遇戦は勘弁だと、ウィル達は撤退に移ったらしいのだが、襲い来るブルタールを捌いているうちに数がどんどん増えていき、気がつけば六合目の川にいた。そこで、ブルタールの群れに囲まれ、包囲網を脱出するために、盾役と軽戦士の二人が犠牲になったのだという。それから、追い立てられながら大きな川に出たところで、前方に絶望が現れた。
数十人はいるだろう魔人族がそこにいたのだ。そして逃がすためにゲイルさんと呼ばれていた冒険者たちはウィルを滝壺に流したのだと答えた。
ウィルは、流されるまま滝壺に落ち、偶然見つけた洞窟に進み空洞に身を隠していたらしい。
ウィルは、話している内に、感情が高ぶったようですすり泣きを始めた。無理を言って同行したのに、冒険者のノウハウを嫌な顔一つせず教えてくれた面倒見のいい先輩冒険者達、そんな彼等の安否を確認することもせず、恐怖に震えてただ助けが来るのを待つことしか出来なかった情けない自分、救助が来たことで仲間が死んだのに安堵している最低な自分、様々な思いが駆け巡り涙となって溢れ出す。
「わ、わだじはさいでいだ。うぅ、みんなじんでしまったのに、何のやぐにもただない、ひっく、わたじだけ生き残っで……それを、ぐす……よろごんでる……わたじはっ!」
洞窟の中にウィルの慟哭が木霊する。誰も何も言えなかった。顔をぐしゃぐしゃにして、自分を責めるウィルに、どう声をかければいいのか見当がつかなかった。生徒達は悲痛そうな表情でウィルを見つめ、愛子はウィルの背中を優しくさする。ユエは何時もの無表情、シアは困ったような表情だ。優花やハジメは思うことがあったがどう話していいか分からない様子だった
だから隼人がまず反応するのは明らかだった
「……それが当たり前なんだよ」
「……えっ?」
「……俺にだって妹がいるんだよ。元々俺たちはこの世界の人間ではない。…戦争もなく魔物もいない。そんな平和な世界で暮らしてきた。俺の妹はなアルビノ個体っていう普通の人間とは少し違う。、肌の色や髪の毛が白い、瞳の色がグレーやモスグリーンなどになる、視力が弱い、まぶしい、紫外線に弱いなどの症状がある。また、水平眼振といって眼球が揺れてしまう症状が出るそんな体質。だから普通の学生とは違ったことによって虐められていたんだよ」
「……隼人くん」
「家族にも誰にも告げられなかったんだろうな。でも、ある日限界が来てしまったんだ。……美穂は遺書を残して……学校の屋上から飛び降りた」
「っ!」
奈々やハジメ、そしてシアやユエにとって始めて聞く話だった。
ハジメも隼人の妹のことは知っていた。とある事故下半身不全になっていることも。でも事故としか教えられてなくて、ひたすらにその出来事はずっと伏せていたのだ。
「俺も病院に駆けつけて数日間ずっと泊まりきりだった。学校を二週間ぐらいサボって。目が覚めるのが奇跡と言われていた美穂の手を握りしめていた。……ずっと目がさめることを祈り続けていた。……奇跡的に目が覚めた時。美穂がこういったんだよ。怖かったって」
その一言で隼人が少し苦々しく笑う。今にも泣き出しそうな笑顔に誰もがそのことが事実だと思っていた
「……死ぬっていうのは怖いものだよ。他の人を蹴落としてさえ生きようとする。人間ってそういう生き物なんだよ」
「だ、だが……私は……」
「それでも、死んだ奴らのことが気になるなら……生き続けばいい。これから先も足掻いて足掻いて死ぬ気で生き続けて、その人の分までずっと生き続ければいい。……苦しくても死にたいなんて思うな。生きることを望むのなら生き続けろ。それが逃した冒険者の願いだろう」
「……生き続ける」
涙を流しながらも、隼人の言葉を呆然と繰り返すウィル。
ずっと隼人はその様子をずっと見ているだけ。
ただ少しだけ目を瞑りとりあえず生存の記録を取ろうとした時に
優花に隼人は抱きしめられた。ぎゅっと暖かい体に包まれながら隼人の目が軽く見開く。
「どうしたんだよ。優花。急に」
「大丈夫だから」
「へ?」
「……私はどこにもいかないから。絶対に隼人を一人にさせないから」
「……」
その一言に隼人は少しどうしたらいいのか分からなくなる。
体が少し冷たくなっていることが分かっていた。無茶なこともほとんどは隼人が行い、危険を遠ざけていた。
分かっていた。自分の闇が、自分の身近な人がいなくなることだと
「……みんなで日本に帰るんでしょ。美穂ちゃんに会いに」
「……そうだな」
隼人は少しだけ体を優花に預ける。少し優花自身キョトンとしていたが体を支え少しだけ頭を撫でる。
隼人なりの甘え方なのだろう。時々隼人が体を預けてくることがあり基本的に体を預けている翌日は隼人は基本的に寝坊することが多い。
それに少しシアは迷ったが隼人の方に近づき頭を撫でる。
そんな甘々な雰囲気の中隼人たちはウィルが声をかけるまでずっと体を優花にずっと預けていた。
ティオのヒロイン
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隼人
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ハジメ