ありふれない生まれで、世界観光   作:ぴんころ

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第四話

 ライセン大迷宮に行く。

 それを告げられたのは、連携訓練を始めてからだいたい二週間程度が過ぎた頃だった。

 いつ行くのかまではまだ告げられていない。

 それでも、大迷宮と、そこに向かうまでの道程には当然のごとく魔物が存在するために、そこは戦場と呼んでもいい。

 なので、未だにどんな武器を使うのかが決まらずにずっと木製の武器を使っていた自分に対しても、武器が支給されることとなった。

 それが与えられてから、慣れるまでの時間をとって向かうのだ、と。

 極論、こちらの技能が”武器戦闘”である以上は、”ありとあらゆる武器を使うことが可能である”ということが答えなのだが、それ故に武器は固定のものがなかったのだが、それに対する答えを一つ、現実的に不可能だと断じていたそれをノイントは持ってきていたのだ。

 

 手の中にあるのは冷たい鋼鉄の双剣。

 見た目はシンプルなそれは、柄の部分に秘められた鉱石以外には装飾など何もなく、そこに込められたのは相対した者を絶殺するという意思のみ。

 鉱石に対して生成魔法で刻まれたものは単純に簡略化されたものではない、複雑にして過多とも言える派生効果が十重二十重に課せられた錬成の魔法陣。

 周囲の鉱物を強制的に錬成の材料として巻き込みながら、必要とした武器へと錬成で姿を変える武器、というのがノイントの持ってきた武器。

 高速錬成、圧縮錬成、イメージ力最大補強、自動錬成、それらの派生技能をつけたことで”戦闘時の武器の高速切り替え”、”密度上昇による破壊力増加”、”イメージがしっかりとしていなくてもある程度の形にはなる”、”一度錬成を開始したら自動でやってくれるので行動を阻害されない”という、この世界の人間が見たら発狂すること間違いなしの能力の数々がついている。

 ただし、錬成で『周囲の鉱石を取り込んで形を変える』という関係で、大型のそれへと変化させていくたびに重量は当然増加することになる。

 そのため、ステータスが高くないと使えない武器、らしい。

 

 はめ込まれた錬成の魔法陣が刻まれた鉱石へと魔力を注げば、双剣がその姿を変えていく。

 ノイントがこの武器とともに持ってきた多量の鉱石が取り込まれたことで、この双剣を構成していた分の鉱石では作ることができないはずの武器へと変えることすら可能となった。

 最初に作られたのは二つの武器がそのまま変化した双斧(ダブルアックス)、次にその柄の部分を叩きつけることで繋げて薙刀へと、さらにそこから細長い剣を二つくっつけたようなダブルセイバーへと姿を変化させ、柄の部分をくるりと回す。

 そこから両端についた巨刃の片方へと手を伸ばせば、それを掴む頃にはすでに刃は柄へと変化し巨大な槍へと変貌していた。

 変化の速度は上々だが、両の手に持った武器を一つに合わせて巨大な武器へと変貌させるプロセスは一瞬相手への抑えがなくなるので使い所は難しいだろう。

 

 さらに、この武器は結局のところ素材はただの鉱石でしかないので、ビットのようにして援護させるのは不可能。

 そういうのはまた別に生成魔法で鉱石に刻むことで作らないといけない。

 そして、銃に関しても、そもそも構造を知らないので作れないし、作れたとしても筒と弾だけで、弾を筒の中で起こした爆発で一気に撃ち出すくらいの簡単なものになるだろう。

 

 と、いうわけで、俺は今このアーティファクトを”近接武器として使う”ことにのみ特化して訓練している。

 セレネの方も、何某かのアーティファクトは与えられているはずで、そのアーティファクトを扱う訓練をしているはずである。

 まあ、さすがに大迷宮に入る前にはともに訓練をさせてもらえるとは思うので、その辺りに関しては今考えても仕方がない。

 

 武器の変化の速度そのものは錬成系の技能を持たない俺ではここに刻まれた以上の速度でやることは不可能。

 なので、今の俺にできることは武器に対するイメージを強めることと、使う武器の種類を定めておくことだけ。

 

「そのアーティファクトの調子はどうですか?」

 

 そんなところに、ノイントがやってきた。

 神の使徒……それも神の下で構築され、神の下で育てられた、純粋な存在。

 そんな彼女は、普段は教会関係者に話しかけられたり、あるいは自分から彼らの様子を見に行ったり、そうして常日頃から忙しなく動いていた。

 ちなみに声をかけられる中にはイシュタル・ランゴバルドも入っていて、その度に歓喜で昇天しそうになっているとかなんとか。

 

「今の所は問題ないですね。錬成速度が一律なのはちょっと怖いですけど、俺は錬成とか使えませんから錬成速度には干渉するのは難しいですし」

 

 昇華魔法で錬成の魔法陣に干渉することは不可能ではないのだろうが、一歩間違えれば魔法陣そのものが機能しなくなる。

 それをどうにかするのであれば、俺が錬成について勉強するか、あるいは昇華魔法と錬成を両方扱える傑物がいればいいのだが、錬成師はそもそも戦闘系の天職ではないので大迷宮を攻略して昇華魔法を手に入れるのはほぼ不可能であり、俺が勉強しようにも時間がない。

 そういうわけで、この問題は大迷宮を攻略し終えるまではずっとついてまわることになるのだ。

 

「ふむ……そうですか。我が主は今、完全な支援特化型の使徒を生み出すことを考えていますが、それが完成するまでにも時間はかかります。今回に関しては諦めてもらうしかありませんね」

 

「うっす」

 

 まあ、言ったところで今すぐにどうにかなる問題ではない。

 それでも、どうにかなる目処がたっただけでも十分なことだと考えるべきである。

 

「それと、ライセン大迷宮への出立は明日ですので、準備は整えておいてください」

 

「うっす」

 

 そんな通達にもっと早く伝えろ、と思わないわけがないのだが、まあこの人に何を言っても無駄か、と諦めることにした。

 

「ところで、どうしてライセン大迷宮に?」

 

 オルクス大迷宮ならばまだわかる。

 あそこは原作と同じように魔物が階層ごとに強くなっていくという特性があるため、今の実力を測りやすいのだ。

 だが、ライセン大迷宮はそういう訳でもない。

 あそこにあるのは原作では罠とミレディ・ライセン本人ぐらいであり、罠に関しても見分け方も解除方法も一切教えてもらっていないので、そこに行っても罠にかかるぐらいのことしかできない。

 そして何よりも、罠があると知っている今の俺からしたらそれを気をつけることは可能なので、そこまで効果的ではないのだ。

 無論、俺がライセン大迷宮のことを知っているということをノイントが知らないために罠について教えるためにそれを選んだという可能性もある。

 

「あなたに神代魔法について学んでもらうためです」

 

「もう技能としては持ってますけど……?」

 

 ノイントの言葉に困惑する。

 すでに技能として持っているそれを、今更手にするために向かうのだろうか。

 

「あなたのそれは感覚で使用しているだけです。しっかりと理屈を理解した上で魔法を使っている訳ではない。そして、あなたが神代魔法を戦術に組み込む以上は、神代魔法について学ぶ他ありません。それに最適なのがライセン大迷宮、ということです」

 

「……なるほど?」

 

「あそこにはみーたん……ミレディ・ライセンがいますから」

 

 今、とんでもない言葉が聞こえた気がする。

 突っ込んでいいものか、それともスルーしたほうがいいのか、それすらわからないまま、何もおかしなことはないと言わんばかりに話を続けるノイントの言葉が耳には入らなかった。

 

 

 

 

「それじゃ、また後でね」

 

「ん、また今度」

 

 翌日、永遠の別れ、という訳でもないのであっさりとした別れをセレネと行う。

 セレネは今現在持っている魔法技術はしっかりと扱うことができるので、すぐにでも実戦訓練に向かうことができる、とのことでオルクス大迷宮へと向かうらしい。

 一応、あそこは公的な機関なので吸血鬼族のお姫様がきたとなれば騒ぎになると見越して目立たないような服を着ているのだが、そもそもが美少女なので普通に目立つ。

 本気で目立たないようにするならそれこそフードをかぶって顔を隠すぐらいはしないといけないだろうが、セレネはそれに気がついていないらしい。

 ……まあ、指摘するようなものではないので、そこは監督役に任せるとしよう。

 

「では、私たちもライセン大迷宮へ向かうとしましょう」

 

 向かう最中の話は、やはりどうしてライセン大迷宮へと向かうのか、以外にありはしなかった。

 

「この世界で彼女以上に神代魔法を使うのに熟した存在はいません。”そうあれかし”と作られた我々とは違って、彼女は神代魔法についての知識は何一つない状態から我々に並べるほどに習熟したのですから」

 

「確か、七人の”協力者”の一人なんでしたっけ」

 

「ええ。我が主と共に戦い、一時的とはいえ魔人族という存在に恐れられた七人の人間。ミレディは他の面々とは違って今もまだこの世界に残るにあたり魂魄魔法で今はゴーレムに取り憑いているらしいですが、それでもかつて学んだものが消え失せたわけではないですから」

 

 曰く、神代魔法は一歩扱いを間違えれば自分にすら牙を剥きかねない、とのこと。

 それは実際に昇華魔法の強化失敗で理解している。

 そして、だからこそ”新しい人物に神代魔法を授けられる”程度にはその知識を持つミレディから、魔法について習うのは当然為になる、そういう話だ。

 

 道中現れる魔物達はライセン大峡谷という魔法が使えない環境下である為に、武器による殺戮を選ぶしかない。

 魔法はその気になれば使用できないわけではないのだが、それでも基本的には使用できないと考えても問題はない。

 ノイントは基本的には手を出さないつもりらしく、双剣で魔物の首を一太刀。

 命を奪うことに抵抗があったりするか、と思ったけれど、実際にはそんなことはなく、そのことに逆に少し驚いた。

 

 樹海も近く、けれど今回は亜人族へ用があるわけではないのでそちらには向かうこともなく。

 

 結果として、数日の徒歩を終えて、ライセン大迷宮の入口へとたどり着いていた。




次回の内容……? わかるだろ……原作では絶対にありえない、仲のいい神の使徒とミレディって状況だよ。今から考えるだけでもどう書けばいいのかわからねぇ。
 みーたん呼びはミレディがしれっと寝てるノイントの耳元で囁き続けて仕込みました。

あ、ちなみにラスボスはとんでもない奴になりました。何が酷いって、原作で設定されてる範囲でやったのにとんでもない能力持ちのラスボスになったことだよ。
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