ありふれない生まれで、世界観光   作:ぴんころ

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『トータスキャラ魔改造』のタグを入れるべきか否か……


第五話

 解放者、あるいは反逆者。

 本来の世界でそう呼ばれる存在は”エヒトに対して逆らい、人類を邪神であるエヒトから解放しようとした”ことによって後の歴史に伝わることになった。

 それはわかりやすく言うのならば”他の誰もやらなかったことをやろうとした”ことが、後の歴史に伝わる原因だった、ということ。

 ならば、この世界における解放者……こちらの世界で言うところの協力者とは、一体どうして歴史に残ることになったのか。

 ”人類側に立った神とともに異世界から侵略して来た神とそれを信奉する存在を相手に戦う”という、人類全体がやっていることと同じことをして、どうして彼らだけが後世(いま)になるまでその存在を伝えられたのか。

 

 その答えは、そこまで難しいものではなかった。

 

「やほ〜、久しぶりだね、のんたん。それにそっちの君ははじめまして。ミレディ・ライセンだよ〜」

 

 ミレディ・ライセンは、本来ならばゴーレムである。

 より正確に言うのならば、ゴーレムに魂魄魔法を使用することで自分の魂を移し替えたことで今の今まで生き永らえて来た存在である。

 とは言っても、迷宮におけるトラップの数々、ゴーレムによる侵入者の排除、それらを全て一人で担っているだけでも、その実力は察して余りあるだろう。

 しかし、それも原作においては、の話。こちらの世界ではミレディ・ライセンはそんな人物ではない。

 

「ええ、久しぶりですね、みーたん。今回は私が訓練をつけているこの子に、重力魔法を……ひいては他の神代魔法にもつながる、神代魔法の理屈を教えてあげて欲しいのです。我々では、その辺りは生まれつきの感覚で使えてしまうので」

 

「ほいほい。これがいきなりだったならともかく、ちゃんと先にアポを取ってる上に、今もここに来てくれる得難い友人の頼みだからね〜。それぐらいならお安い御用だよ」

 

 友人、何度聞いても神の使徒と解放者の間柄で使われると違和感しかない。

 それでもこの世界ではそれが現実なのだから、どうにかそういうものなのだと納得するしかないのだ。

 友人と呼べるほどの間柄を築ける程度には長い関係性。

 それは何よりも単純に、彼女たちが友人として同じ戦場に立てる程度には強いという事実を示している。

 本来ならば、未熟なれども神代魔法の担い手三人がかりでようやく使徒一人に圧倒されていたと言うのに。

 

 要するに、この世界において解放者たちがその名を後世に残すことができたのは、その戦闘能力がこの世界の人類の全てと隔絶した、神に近しいだけの実力を持っていたから。

 先に述べた、どうして彼ら彼女らがその存在を伝説とともに伝えられているのか、という問いに対する答えであり、その証拠はエヒトが干渉することが難しい状況で敗北しかけていた人類、彼らが百年かけて奪われた人類生存圏の七割を七人だけで取り戻した、という偉業が、その実力の裏打ちである。

 

「ん〜ん〜。……そうだね、だいたい一週間ぐらいあれば大丈夫かな。体にしっかりと重力魔法の真髄を叩き込んであげるから、安心していいよ」

 

「ええ、マルドゥクはあなたに任せました。私は私で、彼の仲間となるであろう人物たちについての報告を姉妹から受け取る必要がありますので」

 

 そう言って、ノイントが帰っていくのを見送りながらミレディがばいばーい、と口にした。

 空間魔法による転移を座標の判断、魔力結合の分解などなど、この場でかかる制限も、普段使用する時にも気をつけなければならないことも、まるでないかのように行ったノイントは、それだけで完全な上位存在だということを見せつけている。

 こちらは、目に見える範囲に転移するのが関の山だというのに。

 

「うーん、のんたんは完全に離れたみたいだね。これなら、何も問題なく叩き込めそうだよ」

 

 そして、ミレディも上位存在だということを、通常の会話の節々から見せつけてくる。

 この状況で、魔力結合が分解されるこの大迷宮の奥深くから、範囲はわからずとも最低限『大迷宮の周囲のライセン大峡谷』にはいないということを知覚できる程度には、彼女も異常な存在なのだ、ということを。

 

 ミレディは本来ならば、ただゴーレムに魂魄魔法で取り付いただけの存在である。

 複数のゴーレムを同時に操り、本体となる小さなゴーレムの中から他のゴーレムに意識を移すことで挑戦者を選定する試練を行う解放者。

 そして、戦闘用のゴーレムが会話をできる以上、ミレディは己の魂をゴーレム間で行き来できるはずなのだ。

 それはつまり、原作の彼女は多少なりとも魂魄魔法を扱えたということであり。

 

 この世界の、()()使()()()()()()()()()()()()()ミレディが、全ての神代魔法への適性のある肉体へと移ったミレディが、本来以上に魂魄魔法を扱えることは何もおかしなことではない。

 

 一目見た時点ではわからなかったが、それでもずっと会話をしているのを見ていたのだから、彼女の肉体が生前のそれと全く同じ見た目の、神の使徒と同じ肉体だということはわかった。

 そして、元が人間(弱者)である以上、小手先の技術も当然磨かれているはずで、そんな彼女の実力は、考えただけでも身震いしかねないほどだ。

 

「さて、と、マルドゥクくんだったよね」

 

「う、うっす!」

 

「何があるかわかんないから、急式で叩き込むからね。寝る時間とか、ご飯とか、そういう休憩はほとんどないと思ってよね」

 

「え」

 

「大丈夫大丈夫。死んでも再生魔法で肉体を修復して、魂魄魔法で蘇生させるから。疲れたとかの泣き言も、空間魔法で疲労の有無の境界を弄って消してあげるから安心していいよ」

 

「え」

 

「この体になって迷宮を作ってから、ほとんど誰もやってこないから暇で暇でしょうがなかったからね〜。それぐらいの児戯ならちょちょいのちょいだよ」

 

 なんだか、とんでもない人に教えてもらうことになった気がする。

 冷や汗を流して引きつったような笑みを浮かべているのが自分でもわかる。

 生きて帰れるのだろうか……いや、死んでも蘇らせると言っている以上は絶対に生きた状態で帰還させられるのだろうが、その時までに死にすぎて廃人になっていたりしないか不安になってきた。

 

「ま、こんな程度じゃあいつには勝てないからね……」

 

 だから、ミレディが漏らしたそんな言葉を、聞き逃してしまった。

 

 

 

 

 ミレディは恐ろしい発言をしたが、いきなり戦闘ということにはさすがにならなかった。

 そもそも”神代魔法のコツをつかませる”という指導のために連れてこられたのに、それを教えて実戦でつかませるならばともかく、最初から実戦形式で自分で見つけ出せ、ということになったら、それこそ阿呆である。

 さすが”解放者”のリーダーと言うべきか、そういうところは基本うざい性格の割にしっかりとしていた。

 

「神代魔法って、他の魔法とは違うところが多いんだよ。一番わかりやすいのは魔法陣も詠唱も必要ないってところかな」

 

 そもそも神代魔法は特殊すぎる。

 身につけられる人が限られているというのはつまり、当然のことだが”使える人物が限られている”ということ。

 原作の主人公である南雲ハジメは奈落に落ちた直後、巨大な魔法陣を描いて火種を生み出していたが、適性がないから巨大な魔法陣を描いて使用する、という現代の魔法の常識が神代魔法においては通用しない。

 試練を行なっていた時のミレディが重力魔法を使用するのに詠唱をしていなかったことからも、それは十分わかる。

 

 そしてこれは同時に、一つの優位性を生み出すことにもつながる。

 魔法陣も詠唱もないために、その存在を知る者ならば”神代魔法を使っている”ということまではすぐにわかるのだが、それがどの種類の神代魔法なのかは、実際に食らってみるまでわからない、という奇襲性。

 肉体を強化したのか、あるいは空間転移をしたのか、事象が発生し終えるまでは決してその技を理解することができない。

 

「そしてもう一つが、炎を生み出したり、水を生み出したり、っていうわかりやすい魔法じゃないこと。これに関しては特に重要なことだよ」

 

「重要……ですか?」

 

「そうだよ。さっきの”魔法陣がない”ってことにもつながるけど、他の魔法なら”火を生み出す魔法!”とか”雷を落とす魔法!”とか、イメージで補える適性部分はあるけど、これらに関しては言われてもイメージなんてできないでしょ?」

 

「それは、まあ……」

 

 無機的な物質に干渉する生成魔法。

 星のエネルギーに干渉する重力魔法。

 境界に干渉する空間魔法。

 時に干渉する再生魔法。

 生物の持つ非物質に干渉する魂魄魔法。

 情報に干渉する昇華魔法。

 有機的な物質に干渉する変性魔法。

 

 これらは全て、あまりにもふんわりとした説明だ。

 なまじ、下手に知識があるせいでうまく扱えない。

 原作での基本的な使われ方に関しては、似たような能力を前世の漫画などから探せば見つけられるだろうから、何と無く想像が補強できるが、その真髄とも言える部分に関してはほとんど使えない。

 

 特に、わかりやすく力を発揮できていないのは空間魔法と昇華魔法、それと変成魔法あたりだろうか。

 

「そういう意味では”魔法そのものをイメージする”よりは、”魔法で起きた結果をイメージする”っていうのが普通に使う上でのコツってことかな。……でも、それはもうわかってるでしょ?」

 

「はい」

 

 特に、重力魔法で魔法で起きた出来事をイメージする、というのはやっている。

 重力魔法も苦手といえば苦手だが、”相手の生み出した強大な重力によって地面に這い蹲ることになる主人公”みたいなイメージがあるので、それをイメージすることで、彼女の言ったことはできた。

 

 だが、問題はそれ以外。

 空間転移はAとBをそのまま繋ぐ、みたいな感じのイメージなので、異動先についてもイメージしないとできない。

 それが上手く行かないので目に見えている範囲にしか移動できないし、そもそも幻と実態の境界とか、言われてもイメージできない。

 昇華魔法も、自分の情報を書き換えることで強化、という仕組みなのだろうが”情報”と言われると前世の知識も相まって0と1の塊なイメージがあるので、それを思った通りに操作できず、けれどある程度は”この部分は腕だな”とか程度がわかってしまうので強化の倍率などがバラバラになってしまう。

 変成魔法も、昇華魔法とまた同様に、自分の肉体の組成式はなんだったか、なんてことを考えてしまうので上手く行かない。

 おそらく、この辺りは体が持つ適性と精神があっていないのだろう、と思う。

 多分、真髄を知らない状態だったならば、普通に使えた……はずだ。

 

 そして何よりも、真髄を知っていなかったとしても、根源部分がふんわりとしているので、どうしても上手くイメージができない。

 概念魔法を使う予定はないが、使えるのに使わないのと、そもそも使い方がわからないのでは雲泥の差なので、せめて使えるように根源部分を利用しての魔法行使へのコツも知って起きたいのだけれど……。

 

「だから、私が君に対して行う訓練はとっても簡単」

 

 だが、こちらのそんな気持ちなどミレディには関係ない。

 もう始めるよ、と無言の宣言をしたミレディが手を掲げると、迷宮が形を変えていく。

 こちらをいともたやすく圧し潰すだけの重量を誇るブロックたちが、こちらの逃げ場を奪うように周囲を取り囲んだ。

 

「君には、神代魔法以外の方法での迎撃ができない状況で、このブロックの群れをどうにかしてもらいま〜す」

 

 あまりにもいい笑顔で、完璧な死刑宣告が行われた。

 引きつった笑みは、二重の意味で。

 気がつけば足首から下だけがどこか知らない異界らしき空間へと囚われて動けなくなっている。

 足首から下だけが別の世界に移動させられ囚われているにもかかわらず、動けないようにしながらも肉体の連続性だけは保たれている。

 ついでに、腰から吊り下げていた、大量の鉱石を取り込んだせいで本来の重さの二倍近くになっている双剣状態のアーティファクトもミレディに取られて、どこかの異界に放り込まれた。

 さらには、自分たちもすでに異界に……魔法の行使の邪魔にならないように制限が取り払われた空間に放り込まれていた。

 一瞬で、四重の空間魔法の行使。

 国が誇る大魔術師が見たとしても白目をむいて発狂しそうなレベルでの行使は、ただこちらを鍛えるためだけに使われている。

 そして、それで作られたこの状況はつまり、この場から動けない状況でこちらを潰しに来る岩塊の群れを神代魔法だけでどうにかしろということで。

 

「じゃあ、始めるね!」

 

 そう言って、ミレディが手を振り下ろしたのと同時に、空中に浮遊していただけのブロックの群れはこちらへと迫ってきた。

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