獣のような知能からフレンズ化ばりに人間の知能を手に入れたレ級(弱体化)が自分の存在を探るために鎮守府に潜入したり、艦娘と触れ合ったり、深海棲艦であることにSAN値チェックしたりする話。



久しぶりの執筆に対するリハビリ兼レ級prprの為に書きました。
リハビリが主に目的なので投稿頻度は気分です。

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久しぶりに行う執筆のリハビリと生存報告の為に書きました。
一応続きはありますが投稿するかどうかは未定です。


やっぱりレ級ちゃんは可愛い(確信)、異論は認めない


打ち上げられたハグレ級(弱体化)

無限に広がる蒼穹の空。

美しく何処かに引き込まれてしまいそうな鮮やかな青空は、不規則に流れる海とは違い一変の揺らぎも無く、ただそこに在り続けている。

そんな青空は現在曇天となっており、美しい青空は暗がりの灰色に変化して、青空が好きな『彼女』は少し憂鬱になった。

もっとも憂鬱といっても『彼女』の感情の振れ幅は一切振れることは無く、一向に平坦なままだったが。憂鬱という言葉もその意味も知らない『彼女』にそれをいうのは酷というものだ。

 

風に乗って飛ぶ煤と焦げ付いた火薬の独特な匂い、周囲には四方八方に当然のごとく音を切り裂いて弾丸が飛び交う。外れた弾丸が水面に着弾するたびに水柱を立ち上げ、曇天の空では無数の戦闘機同士がぶつかっている。

 

ここは戦場。

灰と煤と炎で彩られた海上で行われるコントラスト。

周りを見れば『彼女』の他にも海を駆けて、『彼女』の同類とそれに相対する『敵対者』が自身の艤装を掲げ火を噴かせる。

既にこの戦闘は数時間経っており、既にどれほどの同類が沈み、どれほどの『敵対者』が沈んでいったのだろうか?『彼女』には分からなかったし興味もなかった。

 

『彼女』を睨みつけ、主砲や副砲を向ける六人一隊の『敵対者』に対して此方は『彼女』一人。一見明らかに『彼女』が不利だとわかるだろう。

 

だが、優勢なのは『彼女』だった。

 

六人一隊の『敵対者』が平均的に中破に近い中、対して『彼女』は小破に満たない損傷。その光景は本来ありえないことであり、異常なことであるのは言うまでもないことだろう。

『敵対者』達の主砲、副砲の砲口が火を噴いた。襲いかかるのは音速の弾達、視認できるはずがなく、撃たれる前に行動しなければ避けられない。当然、『敵対者』は避けられることを承知の上で回避方向を予測して撃っているため避けたとしても必ず当たるように狙撃しているだろう。

 

「……………キヒッ!」

 

しかし、『彼女』には当たらない。

まるで弾道があらかじめ見えているかのように海上を舞い、少女の持っている艤装が海上に魚雷を発射し、それを主砲で撃ち抜くことで炸裂させ、その衝撃で無理矢理方向を変えながら砲弾の雨を通り抜ける。

 

驚愕の表情を露わにする『敵対者』達を尻目に『彼女』は自分の艤装の口に手を突っ込んだ。海面に再度足から着水すると同時に艤装から引っ張り出した戦闘機『飛び魚艦爆』を『敵対者』へと蹴り飛ばす。

『敵対者』達は驚愕に包まれながらも落ち着いて対空迎撃を行い『敵対者』達へと向かった『飛び魚艦爆』悉く撃ち落とされるが構わない。『彼女』にとって接近することができればそれで満足だった。

 

「ヒヒッ!」

 

『彼女』が接近したことに『敵対者』の一人が気づくがもう遅い。驚愕の表情を浮かべた『敵対者』へと『彼女』の艤装が牙を剥く。至近距離で『敵対者』の一人へと打ち出された主砲は無慈悲に『敵対者』の艤装に着弾し、轟音と共に黒煙と火花が立ち昇る。悲鳴と共に吹き飛ばされ、数メートル先に着水した。

仲間の『敵対者』達からも吹き飛ばした『敵対者』の名前らしき羅列を叫ぶが『彼女』には興味がない。艤装を周囲を薙ぎ払うように振り回して近くにいた二人の『敵対者』を吹き飛ばす。

吹き飛ばされた二人を含めて既に大破しているのは三人、六対一の状況で『彼女』の方が優勢だったのに三人も大破したこの状況で『彼女』に勝てるわけがない。

故にこのまま『彼女』が『敵対者』を全滅させるのは当然のことだった。

 

が、しかし。

 

「――――ルァ!?」

 

次の獲物へと飛びかかろうと体勢を低くした『彼女』の近くに砲弾が着弾し水柱が生まれた。『彼女』は咄嗟に腕で顔を庇ってしまう。何処から撃ってきたのか『彼女』は血眼になって辺りを探すと明後日の方向に幾つかの人影が見えた。おそらく援軍だろう。

 

そう認識した『彼女』の頭には既に先程までの『敵対者』など頭から抜けていた。新たな獲物へと意識を向けてしまっている。背後で『彼女』から離れていく気配を感じるが知ったことかと断じた。

もともと『彼女』にとって『敵対者』は別に轟沈させなければならない存在ではない。あくまで戦う相手、生まれ持った強大な力を振るう対象という認識でしかない。攻撃されれば反撃するが、轟沈しようがしなかろうが興味がないのだ。

 

『敵対者』はよく群れて現れる。基本的には4~6人、今のような時では六人一隊が何十個も集まって行動してくる。それを見て、『彼女』はいつも一瞬疑問を抱くのだ。

 

何故、集まって戦うのだろうか?と。

 

そのような疑問を持つのは『彼女』が『敵対者』とは種類が違うが故のものだった。

 

航空機を飛ばし航空戦を行う『敵対者』がいた。

威力の高い主砲を撃ち放ち砲撃戦を行う『敵対者』がいた。

魚雷や爆雷を発射し、雷撃戦を行う『敵対者』がいた。

 

だが、それらは全て『彼女』一人で出来るものだった。

 

『彼女』にとって航空戦も砲撃戦も雷撃戦も片手間にできる方法の手段に過ぎず、そして全てにおいて圧倒してしまう。故に充分、故に孤独。

『彼女』が『敵対者』と一対六で戦った理由もそこに収束する、『彼女』の同類は確かに『彼女』の周りにいただろう。だが、『彼女』はそれを認識していなかった。

 

何故なら一人で充分だから。

同類など必要なかったから。

 

それが彼女という存在だ。

一人で満たされてしまっている彼女の在り方だ。

 

真っ黒なレインコートを纏い、胸元をはだけリュックサックらしき物を背負った人影。一瞬人に見えるだろうが足首から先が無く足の構造に奥行きがなく、腰の後ろには『艤装』である大蛇のように太い尻尾のようなものが生えており、その先端にはまるで機会と生き物が混ざったような頭部が顔の周囲に主砲と副砲を装着していた。

白い髪に白い肌、首には白黒で彩られたアフガンストールを巻いた異様さ、異質さ、そして存在感のある不気味さを醸し出した血のように紅く彩られた瞳に全身から発せられる同じ紅の威圧感(オーラ)を持つ少女。

 

『深海棲艦』の『戦艦レ級エリート』

 

それが『敵対者』いや『艦娘』に呼ばれる彼女の呼称だった。

 

レ級は知らない。

自分が敵になんと呼ばれているのかも。

 

レ級は知らない。

敵の名前も、戦う理由も。

 

知らず、分からず、見ず、聞こえず。

ただ一匹の獣と也て、敵の喉元に牙を突き立て続ける。

 

口元を裂けたような笑みを浮かべ、次なる獲物見定めて、この身尽きるまで襲いかかる。

それしか彼女は知らないのだから。

 

「キヒ、キヒヒヒッ!キヒヒッアハハハハハハハッ!!」

 

哀しそうに、嬉しそうに、泣きそうに、嘲い、嗤い、笑って。

レ級は新たな獲物へと突撃した。

 

 

どれほど戦っただろう。どれほど撃っただろう。どれほど砲弾を受けただろう。

 

戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦い続けて、既にレ級の全身にはいくつもの大火傷が存在しており、艤装である尻尾も既に装甲が破損し、魚雷も戦闘機もとうの昔に尽きてしまっている。

 

それでもレ級は止まらない。

魚雷が無いのなら副砲で、副砲が使えないのなら主砲で、主砲が使えないのなら艤装である尻尾を武器として叩きつけて、艤装が壊れたなら拳で、と。

いっさい停滞も、躊躇もなく、更なる戦いへと狂気の笑みを浮かべて突入していく。

 

「なんなんだ……なんなんだ、お前はッ!?」

 

十数回目となる会敵にレ級は既に限界に近い身体に鞭を撃ち、此方へと次々と火を噴く主砲を紙一重で避け、お返しとばかりにレ級は主砲『16inch三連装砲』で撃ち返していると、ふとレ級の聴覚にそんな言葉が聞こえてきた。声の発生源に目を向けると恐怖と畏怖の混じった視線を此方に向けるレ級よりも背の高い銀髪に褐色の肌の少女がいた。

 

自分とは、何か?

 

そう問いかけられた質問にレ級は一瞬思考が回る。戦闘に向けていた意識が僅かに逸れ、先程のかけられた質問の内容へと向ける。

が、それは一瞬のこと。質問の意味もその質問に対する回答をも出す前にレ級は獰猛に笑いながら獲物を仕留める為行動を移す。

 

「キャハッ!!」

「クッ――ハァ!!」

 

褐色の艦娘が彼女へと一直線に突撃するレ級へと背負うように装備している巨大な艤装の全砲門を向ける。瞬間――轟音と共にいくつもの音速の弾丸がレ級の身体を抉るべく、宙を暴力の塊が駆け抜ける。

 

しかしレ級には当たらない。

 

艤装である大蛇のように太い尻尾に装着された副砲『12.5inch連装副砲』を褐色の艦娘の全砲門が火を噴く前に足元へと撃ち放ち、小さくは無い水柱を生み視界を奪う。そして、全砲門から火を噴くと同時に自ら水面へと倒れ、()()()()()()()()()|。

先程までレ級がいた場所を砲弾が貫くがそこには既に彼女はいない。

 

「なっ!?」

 

水柱が消えると文字通り消え失せたレ級の姿、褐色の艦娘はその現象に驚愕する。そしてその隙を逃すまいとレ級は水中から褐色の――の目の前へと浮上した。再度驚愕に見舞われる褐色の艦娘。そんな彼女へとレ級は尻尾の艤装を勢いよく振るった。

振り下ろされる巨大な艤装は生半可な装甲では防げない、仮に防いだとしてもそのまま至近距離で主砲を撃たれて仕舞えば大破は免れないだろう。そう意図して振り下ろした艤装は――

 

「武蔵――ッ!!」

「大和ッ!?」

 

――褐色の艦娘とレ級の間を割り込むように現れた新たな艦娘が身を盾にすることで防がれた。

 

褐色の艦娘から名前の羅列が叫ばれるがレ級は褐色の少女が叫ぶ言葉を意識からつい外してしまっていた。

 

何故、助けた?

 

レ級の思考に埋め尽くすのはその一言。

褐色の艦娘を助ける間に主砲をレ級の背後から撃てばいいと言うのに何故、撃たずそのまま防いだのだろうか?何故――?

 

孤独であるが故に理解ができない光景にレ級は僅かに、ほんの僅かに意識とも言えない思考が逸れ、ゼロ距離からの主砲射撃を遅れてしまう。刹那――レ級の艤装を防いでいた艦娘の艤装、主砲がレ級へと狙いを定めた。

 

アッ――という言葉をレ級が紡ぐ暇も無い。咄嗟に防御しようと艤装である尻尾を己の盾にしようとして――

 

「ハァッ!」

 

――その音は、ブチッッ!!?というような引き絞られていた糸が突如切れたような音が聞こえた気がした。

痛みは無い、しかし何かが突如消え失せたような喪失感がレ級の胸に溜まっていく。

 

 

轟音、

 

 

衝撃、

 

 

そして爆散。

 

 

碌に受け身を取ることもできずにレ級は吹き飛ばされ海面に着水した。

揺らぐ視界、ぶれる思考。何とか海面から顔を上げるとそこには視界いっぱいに広がる敵対者。

先程戦っていた褐色の艦娘や彼女を守った新たな艦娘、その周りにも決して小さくは無い損傷をしているレ級が傷つけた艦娘達がいた。空を見れば数えるのが馬鹿らしい戦闘機の中から数十機が此方へと向かってきている。

自分の背中を振り向けば既に長年の付き合いである艤装の尻尾は根元から綺麗に千切れてしまっている。

 

そして、漸くレ級は自分が最早勝てないことを理解して――

 

「――キヒ、ヒヒヒ……」

 

呆れたような、疲れたような、様々な感情が込められた疲れた笑いを零し――

 

「全砲門ッ!一斉斉射ッ!!」

 

――瞬間、レ級は一斉に降り注ぐ砲弾の雨に包まれた。

 

 

ザザーンという、どこか穏やかな音が聞こえる。

何処かで聞いたことがあるような、心地の良い懐かしい音だ。

この音は一体何の音だったか?と疑問に思ったが、すぐさま眠気と共にどうでも良くなってしまう。あぁ、そういえば自分はどうしてここに――

 

「……………………アァ?」

 

――というところでレ級は目蓋を開いた。差し込まれた光が眩しくて、つい目を細めてしまう。漸く光に目が慣れると、視界には細かい砂浜の上にカサカサと動く小さな蟹の姿が見えた。下半身は直接見えないが流れてくる冷たいの波にうたれているようだ。

 

「……アレ?私は……」

 

あの時、砲弾の雨に呑まれて撃沈したのではなかったのだろうか?

レ級はそう考え、ひとまず上体を上げようとすると、激痛が奔り悶えたのでゆっくり、少しずつ上体を起き上がらせ、膝立ちになった。

すると視界に広がるのは砂と石に彩られた砂浜、堤防の先には街が見えるものの人影は特には見えない。

 

「……ドコだここ?」

 

此処は?何が?どうして?どうなって?何で生きてる?

思考に埋め尽くすように溢れ出す疑問の数々にレ級の思考は混乱する。こんなことは今までなかった。レ級にとって疑問に埋め尽くされることも、混乱することも、初体験だったから。

空を見上げ、ただただボウッと眺める時も、海上で激しく敵と戦う時もレ級には疑問が生まれることなどなかった。思考も、意識も、考えも、ふと思いつくだけですぐさま霞のように消えていき、数瞬後にはどうでも良くなっていた。

レ級は敵を殺す牙として、戦うことしか行動できなかったのだから。

例えるならば今のレ級は獣が突然人間と同じレベルの脳を持ってしまったようなものだ。

 

では何故、今はこんな状況になっている?

 

(………尻尾がヤラレたから、か?)

 

レ級は根元から綺麗に無くなっている艤装であった尻尾が着いてあった腰部分をサスサスと撫でる。無くなった尻尾には喪失感は未だ存在するも痛みは特に感じなかった。

恐らく今レ級の身に起こっている自体は尻尾が無くなったことが原因だろう。レ級はとりあえずそう結論づけた。

 

(……だガこの知識はナンだ?こんなノ私は知ラないゾ?)

 

問題は今のレ級の脳内に存在する知識だ。

今のレ級は知っている。今、自分がいる場所は海岸という名前の場所だということや、目の前でカサカサと動いている挟みのような腕を持った生き物が蟹だということも。

 

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これに関しては全くの謎だ。

何しろ原因が全くわからないのだから。

というよりも突如知らない知識が脳内に浮かぶのは不気味極まりないのではないか。

 

「とリアえず、周囲ノ状況を――ッ!!?」

 

レ級は未だに混乱する頭をどうにか回転させ、激痛で痛む身体を動かして海上の時と同じく立ち上がった――いや、立ち上がろうとした。

 

「れぎゅっ!!?」

 

瞬間――レ級はドサッと頭から砂浜に倒れ込んだ。打ちつけられる衝撃に再度身体に激痛が奔り悶絶してしまう。

 

「な、なんデ……?」

 

一体何がと言わんばかりレ級は振り向き、己の足を見てアッ、と致命的な事実に気がついた。レ級の姿は基本的に人間の子供と同じ姿をしているが唯一足は足首から先が無く足の構造は奥行きが存在しない。つまりまぁ、何が言いたいかというと……

 

「タ、立てナイ……!?」

 

レ級は地上では()()()()()()()()()()()()()()()()()

人間の足とは違いあの奥行きのない足では立つことなど以ての外であり、せいぜい這うことが限界である。海では圧倒的な火力で脅威となっていたレ級も陸ではただの役立たずというわけだ。

それを理解したレ級は落ち込んだ、もうこのまま波に攫われてしまおうかと思ったが今のレ級は艤装である尻尾が無い、いうならば現在のレ級は丸腰状態である。流石に尻尾があった時のレ級の思考ならば出たかもしれないが今のレ級は丸腰で海に出る度胸はなかった。

 

「最低デモ、護衛用の武器が無イと……………オッ!」

 

そう思い辺りを見回してみると、視界の端に同じく波にうたれている千切れてしまったレ級の尻尾があるではないか。もしかして自分と一緒に此処の海岸に流れ着いたのかもしれない。そう思ったレ級は匍匐前進で身体を引きづるように這っていく、此処が砂浜である為レ級はあまり痛みを感じなかったがそれ以外ならば腕を出す度に激痛に苛まれていただろう。もっとも砂浜の上であったとしてもレ級の身体にはあの戦いでのダメージは残っているので辛いことには変わりがないが。

 

5分後、漸く尻尾である艤装に辿り着いたレ級は己の尻尾である艤装を見て、がっかりしたようにため息を吐いた。

 

「ヤっぱリ、無理かー……ハァ……」

 

膝立ちになったレ級はいくら叩いてもうんともすんとも言わない尻尾の艤装にため息を吐く。まぁでも仕方がないかー、とレ級は吹っ切れたように空を見上げた。元々千切れてしまったものが元と同じように動かせるわけがない。人間の腕が離れたら元に戻らないのと一緒だ、という知識がレ級の脳内に浮かび上がったのでレ級はコンッと小さく頭を叩いた。

しかし艤装が動かなかったとしても見つけただけで充分レ級には価値があった。

 

「戦闘機ト魚雷は全滅……副砲も砲身が曲がッテル。唯一無事ナノは主砲だけ……マァ、悪くハないカァ……」

 

動かない艤装から罅割れた装甲の残骸や武器を取り出して、解体していく。艤装である尻尾にはいくつかの武器や装甲で覆われている為、艤装を解体することで幾らかの武器や資材を手に入れるだろうとレ級は予想していたのだ。

その目論見は成功した、解体に数十分程度時間を掛けたものの武器といくつかの資材を手に入れることが出来た。

 

武器は殆どがあの戦闘で駄目になっており、戦闘機『飛び魚艦爆』や魚雷『深海烏賊魚雷』は使い切れで一つもなく、副砲『12.5inch連装副砲』もあの砲弾の雨で砲身が歪み暴発の可能性がある以上使い物にならない。唯一無事だったのは主砲である『16inch三連装砲』だけだった。しかも弾薬もせいぜい約25発しかない。

資材に関してはあの戦闘でレ級が使用していた燃料の少量の残り物に比較的多い装甲であった鋼材、そして燃料よりも少量の『ボーキサイト』という赤灰色の鉱石である。

『ボーキサイト』とは『すいさんかあるみにうむ』鉱物の『こんごうぶつ』の岩石らしく、『あるみにうむ』の原材料になるらしい。

という知識がレ級の脳内に浮かび上がったがレ級には『すいさんかあるみにうむ』『こうぶつ』『こんごうぶつ』『がんせき』『あるみにうむ』という訳の分からない単語が出てきて混乱し、結局なんなのかよくわからなかった。

 

「……マァいいカ、後は……」

 

武器があるだけ十分だ、とレ級は呟くように分解した黒光りする主砲『16inch三連装砲』へと手を伸ばし――

 

「ア、レ……?」

 

――気がつくと主砲の艤装の上に手を置いた状態で倒れ伏していた。

眩暈がする。視界が回る。息が荒くなり呼吸が出来ない。

 

「ナニ、ガ……」

 

理解が出来ず混乱するレ級だが、これは実に当然のことだった。

レ級の身体は戦闘でボロボロに疲労しており、既に限界に近かった。突如冴え渡る思考の所為で疲れを忘れてしまっていたが肉体的疲労の限界は存在している。それなのに初めての解体作業によって更に体力を消耗してしまったのだ。故に今この瞬間、レ級はあまりの疲労に意識を失いかけているというわけである。

 

「こんな……トコろ…で………」

 

水底に引きずり込まれるかのような眠気の波にあっという間にさらわれて攫われて。

 

レ級は数秒後、規則正しい寝息と共に寝た。

 

 

規則正しい寝息を立てる白髪の少女、レ級が寝ている中、レ級が手を置いた主砲から小さな人影が現れる。ゆっくりと主砲の影から覗き込むように現れたソレは周囲を確認した後、トテトテと主砲の影から現れる。

そしてソレは寝息を立てるレ級とその側に積まれた資材の集まりを交互に何度も見て。

 

「さぁー、始めるですー」

 

トテトテと砂浜に積まれた資材へと動き出した。

 

 

「……ウ、ウん………アレ……?私は………」

 

水底から浮上するかのような感覚と共に目を覚ましたレ級は気持ちの良い感覚と共に目を覚ました。空を見上げればさっきまで傾いていた日が現在はちょうど真上に動いており、レ級の身体を照らしている。

 

「――ッて、アレ?身体が痛く無イ?」

 

そしてレ級は寝る前まで体を動かすだけで痛みが奔っていた自分の身体が痛くなくなっていることに気づいた。両手をプラプラと動かしても痛みが奔ることはなく、寧ろ身体は快調とでも言うように力が漲っている。

飛び上がるように上体を起こし、己の身体に刻まれた傷がどうなったかを舐めるかのように見回して――気づく。

 

「――ナ、ナンだ……コレは…!?」

 

あれ程大火傷していた肌が治っていたこと――()()()()、重要なのはその傷が治っている肌の色だ。

色が、変わっていた。深海棲艦独特の青よりの白い、白過ぎる肌が白いものの僅かに肌色に染まった色へと変化してしまっていた。

 

「な、ナンで……!?」

「改修成功ですー」

「――ッ、誰だ!?」

 

驚きを隠せないレ級の耳は突如、近くで発せられた声を拾った。咄嗟に主砲を持ち手が無いので両手で抱え、その場から離れるように転がり、()()()()()()声の主へと向ける。

そしてその声の主の姿を見て、レ級は再度驚きの声を零すこととなった。

 

「な、なンダお前!?」

「私ですかー?私は、妖精ですー。みっちゃんと呼んでくださーい」

「よう、セい?」

 

レ級の視線の先、正確にはレ級が艤装を解体することで手に入っていた資材の塊がまるで夢だったかのように消え去っておりに代わりにその場所に桃色の髪留めを付けた白髪の短髪に紫色の瞳、黒塗りの軍服の上にフード付きのジャケットを着ているまるで尻尾のないレ級を二頭身の姿に押し込めたような姿をした小人が汗を拭うような仕草をして立っていた。

 

レ級はその妖精の言葉の意味が分からず繰り返すように呟くと、再度頭に情報が浮かび上がってきた。

妖精とは『かんむす』が装備している艤装や『かんむす』の補給や建造のための工廠に現れる謎の生命体(?)のこと、『かんむす』の味方として支援を行なっている。

 

何とも曖昧な情報だろうか、どうやらレ級の頭に浮かぶこの情報は何でもわかるというわけではないらしい。『かんむす』とは何だろう?『敵対者』のことだろうか?というかそもそも――

 

「――なゼ、妖精がココにいる。私はお前ら『かんむす』の敵ダロう。とイウか、私の資材は何処に隠シタ!」

「資材ですかー?資材なら改修にさっき貴女に使いましたよ〜」

「は?何言って……」

 

ほらっ、とでも言うかのようにビシッとレ級の足元へ指を差す妖精にレ級は疑問の言葉を上げながら釣られるように自分の足元へと目を移していく。

そして、気づく。今、自分がどんな体勢だったのかというのかを。本来ならばありえない体勢になっているということに。

 

立てていた。

 

レ級が己の力のみで、二の足だけで立つことが出来ていた。

そして足元を見ると奥行きのない足が変化し、両足が人と同じような五本指の足へと変貌してしまっていた。

 

「な、な……」

「頑張りました~、褒めてくださーい」

 

勝手にせっかく集めた資材を使っておいてそんなことを抜かす妖精にレ級はあまりの驚きに返答することすら叶わず。

 

「ナンじゃこリャぁあああああああああああッ!!?」

 

無情に満ちた絶叫を晴天に叫ぶこととなったのだった。

 

 

数分後、ようやく落ち着いたレ級は妖精、もといみっちゃんの首根っこを掴みガクンガクンと揺さぶって説明させてもらった。

曰く、みっちゃんはレ級の艤装に眠っていた妖精らしい。深海棲艦には妖精などいないはずなのだが何故眠っていたのかは答えてくれず「内緒ですー」とふざけたことをいい、海岸に全力投球したもののむしろ喜ばせるだけで効果がなかった、情報を吐き出させることはできなかったもののレ級はみっちゃんは艤装の中で唯一無事だった主砲『16inch三連装砲』の妖精だろうと目星をつけている。

妖精は『かんむす』の艤装に付いてたりするらしいのでみっちゃんもその部類なのだろう。

 

 

みっちゃんはどうやらレ級についてくる気満々らしく、最初は追っ払おうとしたもののみっちゃんは艤装の修理などが可能だということを説明されたので仕方なく着いてくることを許したのだった。

 

そして現在。

 

「こんな寂れた漁港で何するんですかー」

「アァ、使えるモノを物色してイるンだ」

 

レ級は自分が目覚めた海岸の目の前にあった完全に人気がなく寂れた漁港に足を踏み入れ、使えそうなものを片っ端から物色していた。

特に明確なものが欲しいというわけではない、とにかく使えそうなものを片っ端から持ち出し、一番最初に見つけた大型のリュックサックへと詰め込んでいく。

 

「服も既にボロボロですしねー。露出度が高く過ぎてハレンチですー」

 

何故、レ級がこんなことをしなくてはならなくなったかと言えばあの戦闘が原因だ。幾ら傷がみっちゃんによって傷が治ったからといってもそれはあくまで傷の話、服は治せるわけではなく、もし治すというのならば入渠をするための設備が必要になってしまうらしい。黒いレインコートはボロ布に、背中に背負っていたリュックサック擬きは原型を残さず背負う為の紐以外残っておらず、水着のような黒いブラ千切れ、無事だった衣服は縞々模様のネックウォーマーぐらいである

流石のレ級も既にボロ布となっている服を着続けるのは嫌なので代わりの服を漁っているというわけである。ちなみに解体した艤装の尻尾は既に主砲で跡形も残らないように廃棄している、レ級の存在が明るみにならないように念のためだ。

 

「とは言っテモ、まさカココまで人がイないとは……何でダ?」

「おそらく『深海棲艦』を恐れて避難したんでしょうねー」

 

あまりにもいない人気のなさに思わずレ級は疑問を抱いてしまうと肩に乗っているみっちゃんが『しんかいせいかん』という謎の単語を使って答えてくれた。

 

「トいうか、さっきカラ言ってる『しんかいせいかん』って何ダ?食いモノか?」

「『深海棲艦』はですねー、『艦娘』の敵ですー。私達を食べようとしてきますー。バリバリー」

 

体を震わせながらそう言うみっちゃんにレ級はふーんと相槌を打ちながらあの戦闘のことを思い出す。

 

『……なんなんだ、お前はッ!?』

 

あの時、敵対者であった褐色の少女も恐らく『艦娘』なのだろう。それに敵対する自分は『深海棲艦』の筈だ。

ならば何故、あの時彼女はあんなことを言ったのだろう?

 

彼女はレ級が『深海棲艦』だと言うことを知っている筈だ、元より敵である以上レ級のことをある程度知っていなければおかしい。

ならば、彼女が言っていたのは『深海棲艦』のことではなく、『自分(レ級)』のことだったのだろうか?

わからない。答えが出ない。

 

何しろレ級は自分のことを知らないのだから。

レ級がレ級と呼ばれていることも、何のために襲っていたのかも、自分はどんな存在なのかも何一つ知らないのだから。

 

(…………知りタイ)

 

自分が何なのか?

なぜ生まれてきたのか?

 

レ級は初めて疑問から明確な興味が生まれた。

初めてレ級には『好奇心』という感情が生まれた。

 

知りたいと。

知ってみたいと。

あの褐色の少女の質問に対する解答を答えたいと。

レ級はその時初めて思――「大丈夫ー?」

 

「ウわっ!?」

 

突如顔面に現れたみっちゃんの姿に手にとっていた懐中電灯を取り落としそうになってしまう。慌ててキャッチすることが出来たものの少々冷や汗が出た。

 

「……なんだヨ……いきなり現レテ……」

「アレ?もしかしてビビりましたかー?」

「………………………」

「い、いひゃいでしゅーッ!ほおをひっぱりゃないでくだしゃいー!!」

 

ケラケラと無邪気に煽ってくるみっちゃんにレ級は初めて生まれた怒りの感情に任せて無言でみっちゃんの頰を引っ張るのだった。

 

 

漁村の家を全て調べ、使えそうな物を片っ端から集め終わると今度は必要なものを選別していく。いくらか漁村といっても此処は既に放棄された場所だ、使えそうな物など一つの家に1、2個程度あればいい方だろう。特に食料は電気が通っていないので冷蔵庫に入っている物は全て全滅、かつ賞味期限切れの物が多く、無事だったものなど缶詰や、炊かれていない米ぐらいのものだ。よってレ級は賞味期限が切れていない缶詰とご飯少量を小さな包みに入れて持っていくことにした。

 

何より最も重要なココ周辺の地図を手に入れることが出来たのは何よりも大きかった。何故なら今後、暫くはレ級は地上で行動するつもりだからだ。

今のレ級は燃料が実に心許ない状況だ、現在位置を知らない状況で無闇に広大な海上で動くのは危険過ぎる。今のレ級は艤装の消失やしんちゃんの改装の所為で人と同じ姿になっている為、ある程度はバレることはない筈だ。もっとも、地上で行動する一番の理由は自分のことを知る手掛かりが地上にある可能性があるからだが。

 

肝心の衣服は動きやすそうなモノを選んでいく。運動用のブラに身の丈にあった紺と白で彩られた衣服を着て、首元には唯一無事だったアフガンストールを被り、最後に背丈より少し大きい亜麻色のロングコートで覆う。衣服はある程度動いても破れたりしないように強度を確かめているため、そう簡単に破けるようなことはない筈だ。まぁ、砲弾が直撃すれば一瞬でボロ布と化すだろうが。

 

レ級は衣服に身を包み、替えの衣服に食料、数個の懐中電灯、漁村に残っていた『かね』という数十枚の紙幣と硬貨、此処周辺の地図、etc……を詰め込んだ大型リュックサックを背負い、腰回りには主砲『16inch三連装砲』をいつでも引き抜ける様にかつ、武器を持っていることがバレないように布地の袋に入れ黒塗りのベルトで幾重にも括り背負ったリュックサックの下、腰回りに固定させる。

主砲はみっちゃんによってなけなしの鋼材と見つけた革布を再利用する形で握り手を造ってもらい即座に布袋から引き抜いて射撃することが可能となっている。

 

最後に動きやすい靴を履けば、どこでもいるような少女の完成であり、ましてや深海棲艦などとは誰も思わないだろう。

 

「……ヨシっと、じゃア行くカ」

「出発進行ですー、パチパチー」

 

レ級はこんこんと靴の調子を確かめるように靴を履いた足で何度か地面を蹴ると、納得したように小さく頷いて、漁村の家のドアノブへと手を伸ばし、日の照る太陽の下へと足を踏み出した。

かつてのような海の上ではなく、人が住む陸の地で。

 

この日何かが動きだす。

 

まるで何かが決めた理屈が崩れ始めるかのように。

一体の深海棲艦によって世界がズレて回りだす。

 

これはそんな物語。

一体の深海棲艦と一匹の妖精を中心に広がる、広大でちっぽけな物語。

 

これは己を知りたい一体の深海棲艦が世界を変える物語である。




・戦艦レ級エリート
主人公ポジション。
とある艦娘に艤装の尻尾をブッチされてしまい、そのせいか知能が獣から人間にランクアップしてしまった深海棲艦。
現在は自分の正体を探るために日本で活動中、鎮守府に潜入するのはまだ先。
知能が獣だった頃は次々と艦娘相手に無双していったヤベー奴、流石超弩級重雷雷装航空巡洋戦艦。
当然知能が急激に上がったせいで感情がとても疎い、今は好奇心に駆られている。
容姿は艤装の尻尾を失って弱体化してしまっているせいかエリートの象徴である赤いオーラは消え、紅眼と尻尾の以外は普通の戦艦レ級とあまり変わらない。

現在の装備

レ級エリート┬『16inch三連装砲』
      ├空きスロット
      ├空きスロット
      └空きスロット

・みっちゃん

レ級の相棒兼サポート兼依存予定ポジション。
気がつくと現れていた正体不明の妖精。
レ級に歩ける足と人間と変わらない肌色を改修した凄い子。ただし資材は消え失せた。
口調が基本的に間延びしていて、たまにウザイ。
最近は菓子類に心が奪われている。
容姿はレ級とあまり変わらないデフォルメした姿だが髪に小さな髪留めが付けられている。

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