捏造設定などが酷いですがご容赦ください
訓練学校で有名人が一人いる。いつでもどこにも有名人は居るものだが彼女は異質だった。話さず、表情を変えない彼女は雰囲気も相まってまるでロボットのような人間だった。
彼女は訓練中もそのスタイルを貫き、無言で訓練相手たちを叩き落とす。実技、学力、全ての科目でダントツのトップを貫いた彼女を見た同期があだ名を着けた。命じられるままに敵を追い回し、撃ち落とす。まるで《
それから同期も教官までもが彼女をトリガーというあだ名で呼ぶようになった。そうして彼女自身もトリガーだと名乗るようになった。
(本当に大丈夫なのか、こいつ?)
およそ人間離れしている彼女を心配したのはブラウニーであった。彼女は総合成績二位の座に君臨していたがトリガーとの差は圧倒的だった。
そう思い至ったのは彼女が一人で勉学に励んでいるとき。おそらく目の錯覚だろう、彼女が酷く寂しがっているように見えたのだった。
(しょうがねぇ…)
そんな姿にどうしても放って置けなかった彼女はこうしてストーカーまがいの事を始めてしまったのだった。だがしばらく付き合っているとトリガーは逃げるのを止めてブラウニーが側に居てもなにも言わなくなった。
一方的にブラウニーが話しているのは変わりないがこの状況の好転に彼女は密かに喜んだのだった。
ーーーー
そんなくだらないような日々が続いていつかはトリガーと仲良くなれる。そんな事を思っていたブラウニーだったが長い平和が続くはずもなかった。なんの因果か知らないが実戦が始まってしまったのだった。
「諸君らは国際停戦監視軍として今日までこのユージア大陸の平和を維持してきた。今回までは…」
突然、召集をかけられた一同は隊長であるノッカーの言葉に耳を傾ける。
「先程、我が国際停戦監視軍のレーダーサイトが接近する所属不明郡を通報してきた。直後、当該レーダーサイトからの通信が一切途絶えた。所属不明機による攻撃を受けたものと判断する」
重い雰囲気の中。ノッカーの言葉は明瞭に聞こえてくる。そして現在の状況が最悪だという事も。それを察したブラウニーは戦慄する。実戦など経験したことがない、それどころかスクランブルすらかからなかった昨今の平和的な状況のおかげで訓練以外で空を駆けるのも初めて。自分達は考えうる限り、最悪な状況に置かれていた。
「任務を伝える。このユージア大陸における停戦協定が10数年ぶりに破られた可能性がある」
そんな状況でもトリガーは眉ひとつ動かさずにブリーフィングに耳を傾ける。そこからは焦燥も不安も一切感じられなかった。
「国際停戦監視軍フォートグレイス基地飛行隊は本日を持って重警戒序列に移行」
「……?」
「トリガー?」
そんなトリガーを見ていたブラウニーは急に首を動かす彼女を見て疑問を口にする。
「なんだ、爆発か?」
「おい、煙が上がっているぞ」
「攻撃を受けています。複数の所属不明機を確認!」
「北部のタンクファームが爆撃を受けました!」
直後の被害報告にブラウニーは戦慄する。まさか、この事を察知して反応したのか?
(いや、あり得ない…)
流石に馬鹿げた発想だとブラウニーは少し前の自分を笑うのだった。
ーー
今までに感じた事のないざわざわした感覚にふと視線を上げた。あるのは天井だけだだがその上に何か居ることは分かった。本能的な知覚であったが。
「スクランブルだ!各機は直ちに離陸し当基地に攻撃を行う所属不明機を排除せよ!」
あぁ、また空に行けるんだ。それは嬉しいことだ。そんな考えがあたまに過り席を立つ、それと同時に他の人たちも急いで準備を開始する。
そんな中、トリガーの中には本当に焦燥も不安も一切無かったのだった。
「ハンガーが!?」
吹き飛んだアラートハンガーにはメイジ4の戦闘機があり、彼は発進準備の最中であった。彼は見事に発信準備中を狙われそのまま吹き飛んだ。
「くっ、メイジ4…」
メイジ3とクラウンが吹き飛んだメイジ4を悔しそうに見つめる中、トリガーは黙々と作業を続ける。
「ラダー、フラップ、スラット、全ての計器異常なし」
待機していたガロン隊は真っ先に上がり敵機の迎撃に当たっているが護衛機に邪魔され本命の爆撃機に迫れずにいた。それに加え、残り一機と数を減らし絶体絶命に陥っていた。
「レーダーサイトは依然沈黙!」
「スクランブルだ、早く空に上がれ狙い撃ちにされるぞ!」
メイジ1のクラウンに続いて滑走路に向かうメイジ3も同様にトリガーに続いて向かう。
「なにが起きた!」
「爆撃機が飛来。機数は不明」
「出るぞ、滑走路を開けろ」
「メイジ隊、滑走路に向かえ」
「ゴーレム隊テイクオフ。スカイキーパーとのリンクは完了。メイジ隊の離陸を急げ」
基地のレーダー、タンクファーム、停泊中の空母までもが損傷し基地に大きな被害が広がる。
「トリガー。君のコールサインはメイジ2だ、確認し復唱せよ」
「こちらメイジ2。了解」
「メイジ2、離陸を許可する。事態は逼迫している。着任したばかりですまないが、君の確かな腕が必要だ、頼んだぞ」
「管制塔、悪いがさっさとそいつを上げてくれ」
ノッカーの言葉が無線越しに流れてくるのを待たずにトリガーは離陸する。控えめにいって完璧な離陸だった。訓練の時と変わらない機動にノッカーも感嘆する。
「良い度胸だ」
「メイジ2、高度制限を解除。グッドラック」
離陸の瞬間を狙っていたかのように所属不明機が背後に迫る。
「メイジ2、ミサイルだ!」
「……」
ミサイル警報がコックピット内で鳴り響くがトリガーが一切の表情を変えることなく着弾の寸前で宙返りそのままの機動で敵機の背後に回る。
「なんだと!?」
「……」
敵のパイロットが驚き、回避行動を取る前にミサイルを一発当てると機関銃で蜂の巣にする。無駄のない徹底した動きに援護に来たクラウンは言葉を失う。
「隊長、メイジ2は…」
「あぁ、もしかするかもな…」
環太平洋戦争のブレイズ、伝説と化したメビウス1。いつの時代も戦争は英雄を産み出してきた。
「だがまだひょっこなのは変わりない。俺たちがケツを護るぞ」
「了解です」
目標を捉えたらミサイルを撃ち込む。可能であれば機関銃を使う。より長く、多く空に居られるための努力は惜しまない。
ただ空に居るために空に居る敵を落とす。それがここに居るための条件なら喜んで叩き落とそう。
「……」
最後の爆撃機を落とす。これが最後だ…だがこれで地上に戻らなければならないのだと思うと少し気が重い。
「メイジ2、お手柄だ。編隊長、トリガーは使えますよ」
「たった一度の出撃で実力など分からん。それに手柄などと考えるな。ただ生きて帰れば良いんだ」
「隊長の意見に賛成です」
トリガーの訓練と全く変わらない動きに戦慄したのはメイジ隊だけではない。ブラウニーもノッカーも同じであった。
(もしかしたらとんだ暴れ馬かもしれんな)
ノッカーは改めて気を引き締めると無線から声が聞こえてくる。
「南の海、ガンター湾のエメラルドの水を乱したその上に」
「なんだ?」
「声?」
どこからか混線してきた声が全員の耳に届く。
「エルジア王国王女、ローザ・コゼット・ド・エルーゼです」
「……」
「国民のみなさん」
途切れ途切れ聞こえてくる声にトリガーは静かに耳を傾ける。心なしか安心を感じる純粋無垢な声、トリガーはそれをただ聞き入るだけであった。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
ではみなさん、よいお年を!