なぁんにも考えずに、お楽しみください
「ぐぅ……っ! ぐぅあぁぁぁぁ……っ!!!」
雨に打たれ、力も萎み、筋肉が萎縮し地に膝を落として大地をその力のない腕で叩きつける。
この世のありとあらゆるものに打ちのめされたかのように立ち上がれなくなった俺は、魂からの咆哮を搾り出すように咽を涸らした。
「ぁぁぁぁあああっ! ――飽きたッ!!!」ドンッ!!!
「……そんな全力で訴えるようなことですか」
傘を差し庭先でこちらを静観する小猫ちゃんから、呆れたようなツッコミが入る。
ONEPEICEの演出のように雨に打たれた俺をバックに、効果音のようなものまで用意してもらって恐縮なのだが、訴えるようなことですよ?
一日一万回、感謝のドラゴン波!を初めて今日で半日――。
――これハッキリ言って意味無いっつーか無理ゲーっつーか! 一日一万なんて時空を越えない限り不可能だし! そもそも俺ドラゴン波出すには先ず神器を出現させないと無理だからそれだけで体力使うし! そもそもの持久力というか神器の連続使用をずっと続けてないと前提が覆るっていうかね!?
……最大の理由は飽きたからやりたくなーい、……なんだけど、やっぱりほら、先ずは出来る課題から片付けないとそもそも人間成長できないってよく言うじゃん?
「……先輩は悪魔でドラゴンですけどね」
小猫ちゃん揚げ足取らないでッ!?
「ていうか、小猫ちゃんのほうはもういいの? バニーで唸っていた気がするんだけど……」
「………………ほっといてください」
若干赤くなってそっぽを向く小猫ちゃん。
向こうの世界の小猫ちゃんがあの格好だったからなぁ、その格好をしたら強くなれるかもってことで悩んでいたのかな。
……はっ!まさかもう着てみたのか!?そ、それは是非とも見てみたかっt
「……不埒な想像禁止です」
謝るので腹パン(足蹴)は止めて……!
悪魔の力で痛む鳩尾を撫でつつ起き上がる。orzの格好のままでも問題は無さそうだったのだけど、それだと小猫ちゃんのぱんつが見えて更に追撃を貰うので渋々立ち上がる。一緒に住んでるんだからもうちょっとデレてくれてもいいんじゃないかなーとは贅沢なのでしょーか。
そんな俺の現状を、少々腕組み思考した。
閑話休題。とりあえずは原点回帰と行こう。
確かに俺は強くなりたい。
タンニーンのおっさんに鍛えてもらって、後一歩のところまで己を鍛えぬいた。後一歩だったんだ、本当に。後一歩で禁手に移行することができたらしいんだ。
その見せ場を作る前にアーシアさんの無双で流れていったわけだけど。
しかし俺の強くなりたいという願いは、当初の形に何かの上書きがされたような感じが今現在しないでもない。理由はよくわかっている。向こうの『俺』だ。
あの圧倒的過ぎる実力を前にして、俺は自分自身が曇っていることを見詰め直してしまったんだ。
俺は元々何のために強くなりたかった? あの『俺』に感化されて、ただ目的のない強化を目指してしまっている。それが今の俺なんじゃないか?
思い出せ。
俺はただ、守りたいものを守るために強くなりたかったんじゃなかったのか?
そう、それは即ち――、
「――おっぱいだ」
「死になさい」
「コブゥッ!?」
ズドンッッッ!!!と、脱力して足腰の力だけでの突きが俺の腹部へと突き刺さる。全身の筋肉を全体重に掛けて放たれた一撃は、重く、速く、鋭く、抉る。
内臓がひっくり返りそうな一撃に俺は再び大地へと鬱屈する羽目へと陥ったのだった。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「こ、小猫ひゃん……っ、とりあへずなぐるのはひゃめてくだひゃい……っ」
「目の前で真面目な顔をして『おっぱいだ(キリッ』などと言われた私の気持ちくらい考えてくれませんか? どうしても殴りたくなっちゃうのはおかしいことではないでしょうが?」
静寂キャラは何処へやったの。
三点リーダーが消失したマジギレ小猫ちゃんにマウントでぼっこぼこと殴られた俺は命辛々懇願する。
個人的には小猫ちゃんの慎ましやかなちっぱいも大好きでおっぱいに優劣なんてないよ!と絶叫したいけれども、今の俺にその選択をする余裕はない。というかそんなことを今の好感度で声高に言い放った暁にはかわいそうな死体が一つこの場に出来上がるだけでしかないと思われるわけで。
「私ならまだこれくらいで許されますけどね、アーシアさんに今の発言が届いていたらこれじゃ済まなかったと思いますよ」
「……そうっすね」
起こり得なかったIFを空想しかけ、そのあまりの惨劇っぷりに身震いする。なんだかひぐらしの鳴き声が響いているのは、夏がそろそろ終わりそうだからというだけの理由じゃないのだろう。多分。
ちなみに件のアーシアさんは現在自室にて、付録についていたペルソナカードだかを眺めつつ「うぇへへへへ」とヒロインがやっちゃいけないようなすんげぇ蕩けた表情でニヤついていたりするのだがそれはまあ置いておこう。好きな人に心配されたみたいな名目でプレゼントをされたら女の子は誰だって嬉しいものなんだって、昔何かで読んだ気がする。
「……で? いったいなんでまたあんなトチ狂ったようなことを呟いたんですか?」
「と、トチ狂ったとは心外な! 至極大真面目ですよ俺はっ!」
「……それが一般基準の真面目だとするなら、私は今から駒王の男子生徒をひとりひとり粛清しに行かなくてはなりませんね」
なにそれ怖い。
「いや、そういうことじゃなくってね、俺の力の源泉ってそもそもがそういう方向性だったじゃん?」
「……ドライグ涙目待ったナシ」
「知ってるけど言わないであげて。でも俺自身がやっぱり元々そうだから! そこから今更別方向へ人格シフトしようとすること自体がおかしいんですーぅ!」
「……頭が?」
失礼だよ小猫ちゃんっ!?
さっきから小猫ちゃんのツッコミがナイフみたいだけども! 此処は一先ず言い切ることが先決だと声高に続けてみせるっ!
「要するにドレスブレイクに続く俺の特殊能力第二弾をそろそろ構築するときが来たのかな、ってねっ! 純粋な実力を上げるのも確かに必要だけども、先ずは勝てなくっちゃ意味がない! レーティングゲームだってそうだろっ! 結局俺たちはまだ勝ち星を確実に得たというわけじゃないんだっ! 禁手を目指すのはその後だ! そっちの方向で練習するぞドライグっ!」
『………………これほど賛同したくない熱気は初めてだろうか』
「そこは頷いておいてくれよっ! 俺たち運命共同体だろっ? 相棒っ!」
『こういうときばかり持ち上げおって……っ!』
「……熱気はまあわかりましたけど、もう私部屋に戻っていいですか?」
ああっ、呆れられてる!?
いやいやいやいや、小猫ちゃんにはしっかりとお願いしたいこともあるんだよなー。
「待って待って、技開発の兆しはもう見えてるからさ、ちょっと相手してもらいたいんだけど」
「……それ以上近づいたらこの防犯ブザーを鳴らします」
「本当にちょっと待ってくださいマジで」
イカン、警戒されてる。
ジト目、ではなく、真顔でハイライトの消えた瞳でこちらを見上げる小猫ちゃんは、防犯ブザーを見せたその姿勢のままに続けた。
「……以前に先輩が私とアーシア先輩にやらかしたこと、忘れてませんよね……?」
「いや、あれは事故です。申し訳なく思っておりますがマジで事故なんで反省してるので許してくださいませんか」
ゼノヴィアとイリナとで戦ったときのことか。ドレスブレイクを間違って二人に咬ましてしまってぱんつ一丁にしたのを未だ根に持っているらしい。――あっ、これ恨まれるのも無理も無いわ。
「こ、今度の技は大丈夫! 今イメージしている技はそういう系統と違うから!」
「……じゃあどういう技ですか……」
若干呆れ顔の小猫ちゃんに、俺は囁くように尋ねてみた。
「小猫ちゃん、巨乳になってみたいと、思わない?」
☆ ★ ☆ ★ ☆
「……1ミリでも触れたらその指を圧し折りますからね」
「わかってる、わかってるって」
ぜんぜん信用してない、っていうか良い方向への結果を欠片も期待していなさそうな小猫ちゃんから、ドライに念を推される。
土下座を繰り返してなんとか承諾してもらったのだけれど、彼女の根底には俺の新必殺技に対する期待が少しは燻っているのだ。と信じたいものだ。
密室にて二人っきり。薄手のキャミソールに白のミニスカートを履いただけの私服姿の小猫ちゃんと相対し、俺は正面に正座してブーステッドギアを顕現して目を瞑る。
対峙する小猫ちゃんは一見すると無表情なのだろう。しかし、瞑想してイメージを高める今の俺には、恥ずかしげにほんの少しだけ顔を赤らめている彼女の姿が脳裏に写るっ!
目を見開くとしかし無表情で、表情の天秤こそ傾かないものの、内心どう思っているのかは窺い知れない。が、それでも承諾してくれたのならばその期待に応えるのが漢というものだ……っ!
「さて、それじゃあ、いくぞ?」『Boost!』
赤龍帝の篭手を発動させ、倍化のエネルギーの奔流を掌へと集中・維持させる。
全てはイメージだ。この神器の本質である倍化と譲渡を自在に扱うためのイメージの一端。
俺はこの倍化の能力で、――小猫ちゃんの胸を巨乳にする!
「さあ巻き起これ……っ、BustRevolutionの嵐よ……っ!」『BoostBoostBoostBoostBoost!!!』
ん? 今無いものを倍にしても所詮微々たる物だって誰か言ったか?
甘いな……。
俺が倍にするのは一部じゃない。俺が倍にするのは平原じゃない。俺が倍にするのはただの現象じゃない!
俺が干渉するのは……数値だっ!!!
「……んぅっ……!」
胸囲の特にトップの数値を倍化! 胸部の脂肪量を倍化! 重量を倍化ァッ!
伝達してゆく倍化のエネルギーが、小猫ちゃんの胸を見る見る膨らませてゆくっ!
形を造形(イメージ)しろ! 縦に横に斜めに奥行きにっ! 倍化のエネルギーを行き届かせろ! 膨らみの柔らかさも倍化しろッ!
小猫ちゃんの『遠く果て無き地平線(小っぱい)』であった小学生かと錯覚してしまいそうなロリロリな記号(貧乳)が、饅頭か肉饅かのようにふっくらまあるく膨れ上がり、遂には垂れることも可能になりそうな双玉小玉スイカへと変貌する様を幻視しろォォォッ!!!
「――お、おぉ、おおおおぉぉぉぉ……っ!?」
そんな妄想(イメージ)を反芻しエネルギーを与え続けた俺が目を見開くと、そこには――!
――己の身体の著しい成長っぷりに身悶えていた小猫ちゃんが、ぽよんぽよんと自らのきょぬーを抱えて弄ぶ姿があった……――っ!
………………ふぅ。
喜んでくれているようで何よりだぜ!
「こ、これはなんという弾力……、水風船のような張りとプリンのような柔らかさが同時に内包しているような………………くせになりそうです」
………………喜んでくれているようで何よりだぜっ!
「………………イッセー先輩」
だぷんだぷんと自らの、Kカップには届きそうなおっぱいを弾ませつつ、小猫ちゃんは感極まったような声を上げた。
俺はそれに対峙しているので、自然とそちらへと目が向いてしまうのは当然のことだと思われますが如何か。……すげぇ触りたいです。
「……ありがとうございます。正直半信半疑でしたが、こんな夢みたいな感覚を得ることが出来るとは……最早、感無量です……」
それは良かった。変貌し、未だにむにむにと変形(自力)を続ける小猫ちゃんの胸から目線を外せないままに、彼女の感謝の言葉に嬉しさがこみ上げる。
「……ここまでしていただいたからには、何かしらのお礼をするべきなのでしょうけど……正直、今の私には返せるだけのものがあるわけではないので………………ひ、ひとつだけなら要求を呑みます、よ?」
………………ん? 今、なんでもするって言った?(難聴)
「そ、それならば是非ともそのおっぱいを揉みしだかせていただければと! いやいやいやらしい気持ちじゃないよ!? 俺が創り上げたんだし出来上がった完成度を確かめたいというかそんな芸術家みたいな感覚で言っているだけの要求なんだからねっ!?」
「……どれだけ必死なんですか。………………ん、どうぞ」
マジでいいのっ!?
口ではツッコミを入れつつも、たぷん、と両手で抱えれば重そうに持ち上がる小猫っパイ。小猫ちゃん自らのご提供のうえに、少しだけ恥ずかしげなご本人の仕草がマジでグットですねっ!
「――では」
思わず正座の姿勢となり、心持ちテイスティングを始めるソムリエみたいな心境で、あくまで紳士的に正面に座す。
伸ばす手のひらに、だんだんと近づいてゆく男子必垂の夢の象徴に、思わず生唾をゴクリと飲み込む。
あと10センチ、あと5センチ、あと1センチ、あと数ミリ、となったところで――、
「ホーーールドアーーーーップ!!! そこまでだニャ赤龍帝のボウヤっ!! 白音に狼藉を働くことはグレモリーが許してもこのお姉さんが許さないのニャーーーッ!!!」
――と、ドガッシャアアアアアンと窓ガラスを蹴破って突入してきた猫耳和装のお姉さんが乱入したことにより、俺の至福の時間は儚く消え去ったのであった………………グスン。
……で、白音って誰?
アーシアさんの霊圧が……消えた……!?