みなさん、こんにちは。誰も待っていないと個人的に思っているゲッス野郎の時間です。今日もまた、ベッドの上で正座をしているゲッスイ男を観察してみましょう(拒絶反応)。さて、ゲッス―こと矢井りとねですが、なにやら催眠装置を左手に持ち、右手には冊子のようなものを見ておりますね。一体なんでしょうか、嫌な予感しかありません。
皆さんは説明書をちゃんと読んでいますか?あと、ちゃんと保管していますか?こういったものは、ちゃんと保管しておきませんと、もしもの時に大慌てをしてしまいます。ちゃんと説明書を読み、正しく扱うことで、その製品や物を長く使うことが出来ます。私の場合は、基本操作と緊急時の対応ページでしょうか。
さて、現実逃避をするのは止めましょう。一体製作者は何を考えて催眠装置に説明書を付けたのでしょうか?そしてなぜこういったゲッスイアイテムは、ピンポイントで渡してはいけない奴の手元に届いてしまうのでしょうか、コレガワカラナイ。もしかして、こういった物を作る人って馬鹿なんですか?いいえ、絶対に大馬鹿です。正直、これは『神の見えざる手』と感じてしまいます。
そんなことを言ってますと、りとねは冊子をパタンと閉じた。どうやら説明書を読み終えたようで、口元をニヤツかせながら、冊子を入っていたビニール袋へ戻し、机の引き出しに入れる。丁寧に、鍵付きの方に入れる辺り、徹底してますね。そりゃ催眠装置なんていう超危険物を所持している訳ですからね。ばれたら牢屋域確定です。そう、今すぐにぶち込まれてこいこのゲス野郎。
「クヒヒ、今日はどうしてやろうかな」
あいっっっっかわらずゲッスイことを考えておりますね。しかも今回、説明書を読んだことで新しい機能を使おうと考えていることが丸分かりです。そして雑に現れました、時空の裂け目です。いや、なんで毎回こいつの部屋に出てくるんですかね?ツッコミをしても意味がないですし、行きましょうか(死んだ魚の目)。
というわけで、今回の犠牲者は金髪コロネです。あ、ゴメンなさい間違えました。朝ご飯とティータイムだけは素晴らしいとジョークで言われている国出身のメシマズ金髪カールヘアーのお嬢様です。色々と酷いことを言いましたね、すみませんでした。ちなみにこの金髪お嬢様は名門出身ですので、本当に貴族です。そしてお嬢様というテンプレートなイメージの体現者でもあります。そう、『プライドがめっちゃ高い』んです。それこそ、貴族様=プライドという位にこびり付いてしまったほどのお決まり貴族です。
それにしても、どうして貴族=プライド高い、ってイメージなんでしょうか。もしかして、マリーアントワネットがイメージ例になっているのでしょうかね?ちなみに色々と言われていマリーアントワネットですが、ギャンブル好きだったのは確かなようですね。ですが家族から『お仕置き』された後は質素生活(山羊を育てる)をしてたみたいです。歴史は色々と分かると、簡単にイメージが変わる物ですね。暴君の代名詞である人も、今は歴史人物として像が立てられる位に見直されてるようです。
はい、では瞳ハイライトオフで色々と危ない姿の彼女をみながら、カタカタとキーボードを入力していきましょう。ちなみにタッチパネル式が広まったせいなのか、キーボード入力が苦手な人が多いみたいですね。っと、入力完了したみたいですね。なに満足げに頷いているんですか、ウロヤスゲ。
コンコンと扉の叩く音が響いた。どうやらお付のメイドが来たらしい。りとねはカチリと催眠装置の別のスイッチを押す。と同時に、ガチャリと扉が開いたのだった。
扉が叩く音が聞こえた。
「失礼します、お嬢様」
私が一声、入室するように促すと、扉から入ってきたのは、昔から私の家族に仕えている執事だった。見た目は少女のように幼げな印象を抱かせるのだけど、彼はれっきとした男性だ。私が小さい頃に仕え始め、今では私にとって兄のような存在だ。彼は足音を立てずに私の傍に歩み寄ると、恭しく礼をする。
「ありがとうございます、お嬢様。お忙しい中、貴重な時間を割いていただいて…」
執事然とした姿に、私は彼の相変わらずな姿に苦笑してしまう。それで、一体何の用かしら?と尋ねると彼は申し訳なさそうに口を開く。私がこれから入学する学園へ、資料を渡すために必要な私の写真が欲しいとか。私は溜息を吐いてしまう。何事かと思いきや、ただの写真ということに、私は心配して損をしてしまった気分になってしまった。仕方ありませんわね、と許可を与える。一瞬、光で目が眩んでしまいましたが、どうやら終わったみたいですわね。
「では失礼します」
と部屋を出ていく彼の姿に、少しは男らしくなってほしいですわね、と思ってしまうのは、父親の姿を思い出すからでしょうか。お父様も、あまり威張らない人でしたが、それでも私にとっては……。
「お嬢様、今大丈夫ですか?」
入れ替わる様に入ってきたメイドの声に、私は我に返るのだった。
さて、帰ってきましたゲッスの部屋に。そしてゲッスイりとねは、写真を一枚、写真集の中に収める。っと、おやぁ?なにやら機械を弄っておりますね。え、お前何してん?いつもならこれで終わりジャン。え、今から説明書に書いてあった新機能を使う?
りとねは催眠装置の動かすと、画面になにやら映像が流れている。え、とうとう映像まで流れるようになったの?これが新機能?期待外れなんですけどぉ!!
失礼、取り乱しました。さて映像に目を向けますと、なにやらどこかの教室みたいですね。そして男女の映像です。これはもしや……プライバシーの侵害では?まあ、今更ですか。
りとねはただ無言でその映像に目を落とした。少女が少年と向き合い、その口を開く姿。
「私、父のことを忘れていたのですわ。母と較べて頼りなかった父を、ただただ情けない人と思っていたのです。それからですわ、父を、男は情けない存在だと思うようになったのは…」
その時の私は、父のことを見ていなかった。ただ母の後ろを着いていく父の姿しか見ていなかった。情けない。その時の私は、父をそうとしか見ていなかった。
「でも、思い出したんです。父は、不思議と人を惹き付ける人だったと」
父は頼りなかった反面、なぜか周りに頼られていた。誰もが父を慕っていた。そう、私の母も、そして……幼かった私も…。
「どうして忘れてしまっていたのでしょうか。父が、私のお父様が、私たちを守ってくれていたことを。私を愛していたことを……」
幼い頃、頭を撫でてくれたお父様の姿。お母様や私と一緒に、外へと出かけた思い出。どうして忘れていたのでしょうか。私はただ、お父様に酷いことを言ったことに、もう謝ることが出来ないことに只々後悔しかない。
「大好き、だったんだな」
私の言葉に、彼はそう言った。
「ええ」
彼の言葉に押されるように、私は笑った。
…重いんですけど。え、なにこれめっちゃ重いんですけど。いや、まじで何も言えないです。え、まだ映像が流れるって?えっと次のは、日の当たる屋外のような場所で少年少女が何かを食べている映像ですね。そこには色々と食べ物が置かれてます。おにぎり、酢豚、空揚げに………重箱………だと………?まあ美味しそうに食べてる辺り、実際美味しいんでしょうね。
っと、金髪カール美少女(催眠済み)が、バスケットから何かを取りだしました。お、サンドイッチですか。見た目は美味しそうですね。ですが騙されてはいけません、最初に説明しましたが、彼女はヤバいメシマズです。それこそ、食べた相手が倒れるレベルです。っと、どうやら見た目に騙された少年がサンドイッチを口に運び、ぱくりと一口。あ、死んだな…。
「これおいしいな!」
なん……だと……?
ぱくぱくとサンドイッチを食べるイケメン少年の姿に促されるように、周りの少女たちも口に運ぶ。そして少年と同じように美味しいと言う姿。その姿を見て、金髪の少女は嬉しそうに笑っている。
なんと言いますか、幸せそうですね。彼女はこれから、色々と幸せになって貰いたいです。
りとねは何も言わず、一枚の写真を写真集の本に入れる。それは大人びた彼女と男性が、どこかの広場でサンドイッチを食べている姿が写っていた。りとねは、その欄に『セシリア・オルコット』という名前を記入するのだった。