もはや、『けいおん!』のあとかたもありません・・・・
「はあ、けっこう歩くなー・・・・」
俺は今、正体不明のとある部活へとむかっている。生徒会でも、この部活をリストアップしてくれたあの奉仕部の雪ノ下先輩でさえも全体像の把握が不可能と言っていた部活の部室へとあゆみを進めているのだ。でもここって一応高校の敷地内なんだよねー? いつまでたっても部室にたどり着けないんだけど....この道だって校内通路じゃなくて密林の小径みたいだし....野生の肉食動物が出て来たっておかしくないじゃん!! 部活の名前だって『フライング・パンツァー部?』だし....なんか異次元断層に潜り込んでんじゃない?? 引き返えそおかなー....ん? 森が途切れてきた。この先か? ふう....森を抜け出たはいいけど....なに? ここ??
「ただっ広いなー・・・・ 地面は....アスファルト....かな? ずぅーと一直線に先に伸びているし....で、部室はドコなの?? 連絡先に掛けてみるか....」
俺がケータイを取り出して見学先の部員に連絡を取ろうとする。どういうわけかあの密林の中では圏外だから森を抜けてから、て話だったし。
「....はい、平沢です! いま森を抜ました。ここは....」
『ああ、君の居場所は既に把握している。今迎えを行かせたからそこで待機していてくれ。以上』
把握? 通話も切れちゃったし....ん? 広場の向こうから何やら車の音がする? ここの部活ってハイヤーで出迎えなの? ....え、ジープっぽいのが見えてきた....うわ....これまたクラシックなのだなー! そのテの映画によく出てるのじゃない? フロントにはタイヤも乗せてるしカッコいい!
《・・・・ キュー!》「ええと、貴女が奉仕部から見学希望の依頼をした、平沢、ユイ殿ですね!」
「いえ、その代理の弟のメイです....」
車から身長は俺ぐらいで髪の毛モシャの女子が降りてきた....このやりとり何回やったんだろう? 最初から代理のオレが訪問すると連絡しとけばよかったのに....
「いや、これは失礼しました! 平沢、メイ殿ですね! 自分、名前を秋山! と申すものであります! 以後お見知り置きを! では平沢殿、乗って下さい!」
《キィ....ゴンゴンゴンゴン・・・・ スルスル〜!!》
おお! オープンカーに乗るのはじめて! 見た目は無骨だけどシートは心地いいし! ただ....ドアが付いてないんでこれはコワい....これはどこのメーカーのジープ?
「平沢殿、これは『ジープ』ではござりません! でもいま平沢殿が言われていたのは商標登録名としてのジープではなく一般名としてでありますね? まあ広い意味ではこの車両もジープと呼ばれるものでありましょう! これはフォルクスワーゲン社の『キューベル・ワーゲンTyp82』であります! キューベルと呼ばれるこの種のタイプの車両では大戦中最も多く製造された物でありまして、今でもレストアされながらもホラ! この様に現役の車体もあるのですよ! どうです? 乗り心地も宜しいでしょう!!」
そうだ....ジープって某複合自動車メーカーグループ内のブランド名だった....この秋山さんてひともすごいねー! これを自分で運転するんだから! 四月に免許を取った3年の先輩なのかなー?
「いえいえ! 自分はまだ2年生であります! でもこのぐらいの車両なら教官殿に運転を叩き込まれたので普通に運転できます! ま、ここは公道では無いので見付からなければ、ですけれどね? ハハっ!!」
オイ....その一言で不安になってきたじゃん....
「・・・・ 着きました! 平沢殿! ささっ! この奥の事務室に!」
まああっという間に着いたんだけど....この建物デカいねー! ここナニ? 格納庫?こんなに広いアスファルトの大地の隅にでっかい平屋でアーチ型の倉庫みたいのがデーン! としてるんだけど....! こんなのうちの高校にあったの? 俺んちだってこの高校から歩いて10分ほどなのにこの学校がこんな広い敷地を持ってるなんて気がつかなかったし。
「いったい何があるんです?」
「まあ入ってくだされ! シャッターもこの様に開けてありますし、御自由に、てことでしょう! ささ!」
秋山さんと一緒にこの倉庫に入ってみたけど....中もデカい....! いろいろとなんらかの重機めいたものが置いてあるけどいくつかのものはシートに包まれてて見ることができないなー。で、このドアの向うが事務室?
《コンコンコン!》『入れ』
《カチャっ!》「秋山です! 見学者を一名連れてただいま戻りました!」
「ん、ご苦労」
「ささっ! どうぞ!」
「えーと、失礼しまーす....」
俺じゃなくて秋山さんがノックをしてドアまで開けてくれました....ここってなに部? 受け応えが
体育系を超えてるんですけど....
この部屋は普通の教室ぐらいの広さで、ドアの正面の奥に執務机があり、その向うに部長と思しき女子生徒がこちらを向いて座っている。
他には5人ほど女子部員が壁側のソファーとテーブルでおのおのくつろいでる。バーみたいなカウンターもしつらえてあるなー....対面型のテーブルではオセロをしてる二人組もいればホットケーキを旨そうに頬張るヒトも....
「ん? 君が奉仕部から連絡のあった平沢、メイ君だな?」
「ええ? ハイ!」
あれ、メイで通っちゃった....あのおー....
「君は姉の代理、という事でこの部活へ、だね?」
「あ、はい。そうです」
俺への面接をしているのは....いや尋問みたいだけど....体格のいい、でも女性的なラインもキッチリとしているポニー髪の先輩だ。貫禄もあるし(綺麗だし....)高校生て感じじゃないなー。
「本当は当人に来て貰いたい処だがまあいいだろう。これから演習がある。君も参加してくれ。以上だ」
「はい? 演習....ですか?」
「いやー平沢殿も! いきなりですねー! これは整備のしがいがあります!」
演習? 何それ? ぜんぜん聞いてないんだけど??
「えーもう出るの〜! すごいねーキミ!! 入部初日から出撃なんてメッタにないよー! ねえねえ
「....ちょッ
「ナニよーっ! チョッ!
「ナニさ〜っ! 桐絵の命令ムシムシ猪突猛進自爆ムスメ〜っ!!」
「ナニよ〜〜っ!」「ナニさ〜〜っ!!」
「「なによーーっ!! バ〜カ馬鹿っ!! バァっかバーカッっ!!!」」
壁側の奥のテーブルでくつろいでいた内の二人が何やら騒ぎはじめた。どちらも口の減らないセリフ回しだなー!
「お前達! 静かにしろ! 見学者の前ではした無い遣り取りなどするな!
よし、今日お前達はチームを組め! 先鋒か後方かはお前達が決めろ」
「「エエなんで〜〜〜っ!!!」」
どちらも部長さんに叱られ仲良く連帯責任を取らされる様でした....それにこのやりとりの中には....演習? 出撃? 修理? チーム??? て単語も....オイ....これってまさか....かつては茶道や華道と並ぶほどの女子の嗜みとして全国の高校に部活として広まっていたけど、近年では入部する女子も少なくなって一部強豪校のみで対校試合を行っているというアレ?? あと数年後のこの国での国際大会のために文部科学省が全国の高校に部の設立や復興を勧めているともいわれているアノ競技のこと?? まさかこの高校も? そんな話も聞いてないんだけど....??? そういや部の名前も....
「あらあら! いきなり新人さんに無謀な事させるのね? 鬼の隊長さん?」
「ねえ部長、判っていらして? そんな素人を行き成りで乗せても演習中に大泣きされるのがオチですわよ。フン」
「ん。誰もが一度は通る道。泣き腫らし涙の涸れるその日こそ熟達への第一里塚」
他の皆さんもなんか大仰なこと仰ってますけど....おい、俺はアレに乗るのか? だってアレって女の子の嗜みでしょ?? そんな清楚なものにオレのようなオトコが乗っちゃっていいものなの? ここの人たちも俺のこと姉ちゃんと勘違いしてないみたいだし....代理だからいいのかな? 俺もオトコノコだからいろんな意味で興味もあるけれど....ウムム。
この章『のりもの!』ではミリタリー要素が強いお話しとなります。苦手な方はスルーをお勧めします・・・