そして時間は少々さかのぼる・・・・
《・・・・ カツン、カツン、カツン、カツン・・・・》
『....あ〜あ! こんな時にサワちゃんどこにもいな〜いなんてー!!』
『....おい、もうやめろ! こんなコト....!』
『....アハっ! 校内を聴き取りながらの人探しってなんか事件の捜査みた〜い!! あした捜すときは! アンパンと瓶牛乳を用意して...! ウフフ!』
『....おい! おっさんかー....』
『....とにかく! 先ずは部員勧誘だ! 顧問の依頼はそれからだって!!』
『....だってえ〜! ダレも来ないんだも〜〜ん!!』
『....まあまあ! まだ諦めるのって早いんじゃなーい? 事件の捜査に行き詰ったら! 現場に戻る!
って言うでしょ〜!!』
『....事件って! ここは犯罪の現場か! たくムギまで....て、ん?』
『....どおした? ミオ?』
『....ヒっ!....部室の中で....なにか騒ぎ声が聴こえるぞ....!』
『....キャっ! じゃあ! 本当に事件が現場で....! わああ....!!』
『....んじゃ、そ〜とあけるぞー....《ソ〜〜〜〜、、、》」
『....おいリツぅ....ん? 物置の中からじゃないのか....? あの声....山中先生??』
『....もうひとりいるんじゃん? なんか争ってないかー?』
『....キャー....! もうひとりの子も女子!? じゃオンナノコ同士で....うわあああ....!!!』
『....おーいムギー....じゃ、あけるぞー....!』
『『『....いっせーのーで....!!!』』』《ガチャっ!!》
「「「「「・・・・・・・・《・・・・カシャっ! カシャカシャっ!!!》・・・・」」」」」
「・・・・ このアルバムの写真で〜サワちゃんを脅してーウチらの顧問になってもらうつもりだったのにぃ〜向こうの方から飛びこんで来るなんて〜こりゃラッキー!!! キャハハハハ〜!!!!」
「・・・・ リツ! でも、どうして山中先生がここに? ここは私たち以外はあまり近寄りたがら
ない場所なのに....」
「・・・・ そうです〜! それに〜! この子! カワイ〜っ!! メイド服が似合ってます〜〜!!!」
「・・・・ え・・・・ ええ・・・・ それほどでもお・・・・」
「・・・・ あああ・・・・ こんなコトになるなんてー・・・・ 来るんじゃなかったわー・・・・ ハア・・・・」
先ほどのシュラバが一転、今は『現場』の『参考人』たちが四つの机のテーブルを挟んで和やかなお茶会と洒落込んでいる。テーブルの周囲には五人がとり囲んでその前には紅茶専用であろう高そうなカップとソーサの組合せが人数分に行き渡っている。その中に注がれた紅茶はその香りを周囲に漂わせており、となりに添えられたお茶請けのモンブランへの食欲をそそらんとしている。さらにはクッキービスケットのたぐいをお皿に盛り付けて置いていて....なに? この高級感....? ゆったりとした高尚な空気感は....! あの想像していたヤンキーの姉チャンたちはドコへ行っちゃったんだ!....
「・・・・ はあ、わかったわ・・・・ 顧問を引き受けてあげる! どうせここのOGなんだし・・・・ これで吹奏楽部と兼任ねー・・・・ ブラックだわ」
「....やった! やったあ!! これでもうここも『軽音部!』として認められるのね〜!!」
「おいムギ、部の認定は四人からだ。あと一人! あと一人なんだ!....」
「そーだよな〜! あとひとり、なんだよ....なー....」
「「「「・・・・ ジーーーーっ・・・・」」」」
....紅茶を啜りながらメイド服で佇んでいるこのオレに『・・・・ 』な視線が集まっている....結局、あの混乱の中でもマンマとこのセンセにこの服に着せ替えられてしまった....それに俺は....! ただの代理人だし? まだ入る! とは決めていないんだし?? でもお茶もお菓子も頂いちゃったし??? おい....オレ何か詰んでないか....?
「そう! 襲われてる写真も撮られちまったしー! こりゃ入部しかないだろー!! カハハっ!!
これからヨロシ....《ガツンっ!!》オイ! ミオ〜〜!!」
「リツ! それは脅迫だろう!! いや、済まなかった! その、気にしないで....てー、
何々さん??」
「あら! じゃあ私も! 脅迫されてる訳だから! この辺で....!」
「いえ、先生は加害者ですので。却下」
「んもお〜!!」
「おう! ミオ! ナイスフォロー!!」
「うふふふふ! でも、その....メイドさん? 貴女のお名前は? 何て仰るんですー?」
ん! そおだ....オレ、まだこんな格好だし、物置で制服に着替えたとしても....おい!! どおすりゃいいのさ〜〜〜!!??
「んー? この子? この子はねー、貴女たちと同じ一年の〜、ひらさわ....」
「!・・・・ ユイっ! 平沢 『唯!』ですぅ!! ・・・・ ど、どーぞお見知りおきをぉ!!!・・・・」
・・・・ あぁあ言ってしまった....どおしよお....まあ、今はこれで乗り切ったし、あとは入部をおことわりするかホンモノをここへよこすか....
「・・・・ へ? あっ? そ、そう!! コノ子『ユイさんっ?』 てゆうのっ!! よ、ヨロシクね〜!!!」
先生もとっさに合わせてくれてるし! よし、いけるか....!
「....わあ! 平沢さん!『ユイ!』 さん! ていうのね〜! 初めまして〜! わたし、
『つむぎ!』ていうの!! みんなからは『ムギー!!』て呼ばれてるの!! よろしくねー!!!」
うん、『ムギ』さん。俺よりちょっと背が高くて淡い薄茶色のロングヘアー。おっとりとして
ものごしも柔らかく、どこか育ちのいいお嬢さんタイプ....
「おーう! で、わたしは『リツっ!』
とかー!『田井中チャン!!』とか『リツ様!!』とか!! まっ! どれでも好きな呼び方で....
《ゴツンっ!!》....ミ〜オ〜!! 冗談だろ〜〜〜!!!」
隣の黒髪美人にゲンコで殴られてるこの『リツ』っあん! てヒト、アゴあたりまでの髪で
おでこをばっ! と出していて身長も俺ぐらい。まあ、ツッコミ待ちのお祭り要員....かな?
「....気持悪いってーーのっ!! ....ああ! え〜〜と、その....わたし、わ〜〜....その....」
「おーい! どおしたー? さっきのいきおいわ〜!!」
「....るさいっ!! ....ヒャっ!? ....その、平沢....さん、ご、めんなさい....《....グスっ....!....》」
「「「お〜〜〜!!!....」」」
ん〜、その、この長身長髪美人さん....先ほどとはうって変わってしおらしい....いや内気な仕草を
見せるこのお方、この姿もなんとも愛おしい....
「....わ、たし....
「....ミオちゃん! よく出来ました〜! 《パチパチっ!!》」
「....おう! 初対面の相手によくやった!! ほめてつかわすっ!!」
「....るさいっ!!」
おお、ここにも『秋山殿!』が!この子たちが....この校舎で呑んで喰らってどんちゃんやってて....
なのか....うわさってのはどこでどう変わってくのか....いい手本なのかなー....
「あとは! この平沢....『ユイ!』ちゃん!! が、入部してくれるかどうかなのよねー! どう?
『ユイ!』ちゃん!! あ・な・た・わっ?!」
山中先生....いきなりハードルを高くしてくれちゃって....もう本性がみんなにバレちゃったから
こわいモン無しなんですかい??
「え、えええ〜〜とぉ....! わ! わたしぃ....! そのぉ〜! なにも楽器やったことなくってぇ〜〜!!」
「....ブッっ....! ....えっ? なになに!! なんでもないの....ブフフっ!!....」
せんせい....飲んでるお茶を吹き出そう! なんて身構えてたのかい!! オレがせっかくユイの
口まねして正体をゴマかしているっていうのに〜〜!!
「ユイちゃん! 楽器わね〜、ここで憶えればいいの! ウン! みんながユイちゃんのこと教えて
くれるから! ね? せんせい!」
「....え? え、ええ〜〜!! そうよ! ドーンとまかせておきなさい!! ....掛け持ちがぁ....」
「おうそうだぞユイ! みんな手取り足取り....」
「....お前はドラムを叩く事以外なにも出来ないだろう!」
「そんな〜ミオ〜〜! お前だってぇ〜〜〜!!」
「ドラム....! やっぱりここって....こんな風にして『悪魔が〜〜!』!『地獄ガーー!!』!
なんて叫ぶ部活....なんですかあ???」《ピラっ》
ここで先ほどの写真をみんなに見せた。だってほら....もしそおだったらこわいじゃん....
「「「・・・・ おおおお〜〜〜〜っ!!!!」」」
「ブハっ....!! ちちちちょっとっ!! アナタまだそんなの持っていたのーーーっ!!!」
「ぅわ〜〜〜! こりゃイタイわーーー!!」
「ええ!!? カッコいいじゃな〜い!!」
「!....ヒッっ!!! コココココレは....えぇえ〜〜〜っ!!!....」
ああ....この写真、まだこのセンセのだとは気づかれてなかったのかー....この写真の感想も三つに
分かれてるし....ヨシ! これで少しは溜飲? も落ちたかなー?
「そおか....! この中の誰かとは踏んでいたんだが....サワちゃんやるわ〜〜!!」
「そ! そお!! そおよね〜〜〜っ!! ....わたしイケてたから〜〜っ!!!」
「でもやっぱイタイわ〜〜〜!!」
「ズコーーーっ!!!」
・・・・ なんてことやってる内に時間が過ぎてきてしまった・・・・ どおしよう・・・・
でもいごこちもいいし・・・・ ゆったりとした時間を過ごせそうだし・・・・ みんな愉快で
楽しい人たちだ・・・・ユイなら・・・・ ここでもやっていけるかな・・・・でも・・・・
「わたしね! ユイちゃんとなら、きっと楽しくやっていけると思うの! だって、こんなに
いい子だから!!」
「うん、そうだな....私も平沢さんとならうまくやってけそうだ。私からも....私たちと一緒に、
『軽音部!』で『音楽!』をやってくれないか? 頼む!!」
「おーう! これで決まったーっ! じゃ! この入部希望書にサイン! と!!《ボカっ!!》
....お〜い〜、ぜんはいそげ〜! てゆ〜じゃん〜!!」
「ばかリツ!! 平沢さんの意志を尊重しろ! 入部届はそのあとだっ!」
なんだろう・・・・ ここまで部活めぐりをしてきて・・・・ こんなにこころがおどりはじめるって初めてかもしれない・・・・ 姉ちゃんにはわるいけど・・・・ この部活には・・・・!!
「・・・・ はいります・・・・!」
「「「え?」」」
「わたし・・・・ 平沢ユイ! は・・・・ この・・・・ 『軽音部!』に・・・・ 入部したいと
おもいます!!・・・・」