「・・・・ じゃあね〜〜〜っ!! メイーーっ!! ざみじくなっだら! いづでもオネ〜〜ぢゃんがあぞびにいぐからね〜〜〜っ!!!・・・・ メ〜〜イーーーっ!!!・・・・」
「・・・・ ほら、ユイ! なにもそんなに!! これで最後! て訳じゃないんだから!!」
「・・・・ 姉ちゃん....時間が合えば一緒に帰れるんだしー・・・・」
「おお! これが姉弟の今生の別れ! の名シーンなのか??」
「うわ〜〜! ユイったらホントにブラコ〜ン〜〜っ!!」
「キャハっ! もうグチャグチャっ!」
「これはこれは、両者共ご愁傷様」
そして放課後の教室....新しい部活先へと赴こうとする俺にユイがこんなに泣きじゃくるなんて思いもよらなかった....しかしっ! このオレはそんな姉ちゃんを振り切り! 新たなる我が居場所へと旅立たんとしている....! でもこれじゃ後ろ髪引かれる....どこじゃないな....ハア....
《・・・・ カツン、カツン、カツン・・・・》
本棟から少なからず離れているこの旧校舎の、さらに最上階の三階まで階段を昇ってゆく....ひょっとして、ここの部活に人が来たがらないのは単に面倒なだけなんじゃない? 俺のこれまで巡った他の部室は入り組んでても渡り廊下なんかでつながってたし。はあ、慣れなんだろうけどしばらくはしんどい....
《・・・・ カチャ・・・・!》
「・・・・ 失礼しま〜すぅ....! んー、まだ誰もいないの....」
「・・・・ ぅ....ワッっ....!!! ・・・・」
「・・・・ ヒャっ!!!」
「・・・・ やったー! やったあ〜〜〜っ!! 驚いてくれた〜〜っ!!!」
「....ムギさんっ!?!?」
「わ〜〜〜! ユイちゃん! おはよ〜!! ユイちゃんいちばんのり〜〜!!」
オレ....ワタシが音楽準備室のドアを開けたとたん! ドア越しに隠れていた『ムギ!』さんが掛け声をあげた....! ワタシの驚いた様子にムギさんは素直に足を弾ませながら喜んでる....
「わ〜〜! ユイちゃんが初めて驚いてくれた〜!! わたし! いつもこうやってみんなを驚かそうとしてるのに〜、なんかいつも失敗しちゃうのーー!」
「あはは〜! よかったねー! ムギさん!! ・・・・」
....なんて素朴な子なんだろう....なんてノドカな部活なんだろう....! どうしてこんな子たちが不良呼ばわりされてたんだか! まあいいや....じゃ、ワタシは今日ここでやることは....?
「あら、ユイちゃん、今日は制服じゃなくてジャージなのね? どうしたの??」
「え? ....ええ〜と! ちょっ! ....とよごしちゃったから〜! あはははは〜〜・・・・!!」
はあ....ホントはまだ替わりの制服が調達されてないだけなんだけど....それに、ムギさんに驚かされてユイの口まね忘れるとこだった...コレずっとしないといけないワケなのか....地声がばれたらヤバいし....
「で、他の部員さんたちわあ....?」
「んー? もうそろそろかしらー? ミオちゃん! とリッちゃん! は同じクラスだから来るのはいっしょなの!! もう少しかかるならー・・・・」
「え〜と・・・・ 練習・・・・ なのお?」
「・・・・ お茶にしましょう!! ユイちゃん! いま淹れますからね〜〜!!・・・・」
「・・・・ はあ〜〜〜い・・・・」
いきなり休憩タイム! になった....よかったあ....この口調....思った以上につかれる....ワタシい....だいじょうぶなのかしらぁ....
「うふふふふ!! ユ〜〜イちゃん!! うふふふふ〜〜〜っ!!!」
「えええええ〜〜〜と! あははははー・・・・!!」
例のテーブルの上には、例のティーカップに紅茶にお茶請け....ちなみに今日はロールケーキ....
コンビニで売ってるようなのじゃなくてホールごとのケーキを二カットづつお皿に載せた豪華版....
ココア味なのかな? 軽くパウダーまでふりかけてあるみたい....こんなのタダでもらっていいの
かなー....? 食べちゃったけど....
「ユイちゃんって! 美味しそうに食べてくれるのね〜!お茶の淹れ甲斐があるわあ〜! おかわりは? ウン! 淹れてくるね〜!! ・・・・」
「あはは....ありがと〜〜!! はあ....」
おい....オレお菓子を食べてるあいだは緊張ほぐれてるんかい!!でも喋るときわ...ああ.....顔まで引きつれてきた....! がんばれ! くじけるな! わが顔筋〜〜!!
《ガチャっ!!》「おーう! きたぜー! ムギー! ユイーーっ!! いるかーー!」
「ああ! 遅くなった! すまないムギ! 平沢さんは....来ているか....?」
「ああ〜! おはよう! リッちゃん! ミオちゃん!! ユイちゃんなら....!」
「....あ、おはよ〜〜!! 田井中さん! 秋山さん....!!」
「キテター!! よかった〜〜! ユメじゃナカトじゃ〜〜〜っ!!!」
「おい....どこのおバサンだ....! そうか、来てくれてたのか....! ありがとう! 平沢さん! じゃあ! 昨日できなかった演奏の....」
「うおーーう! 今日はロールケーキか〜〜! ムギー! いつもすまね〜〜っ!!!」
「さ! ミオちゃん! お茶が冷めちゃうわよ〜〜!!」
「おいっ!!」
こうして、部員四人が集まったところで改めてお茶会が催された。そうか....部活ってこんなもんだったんだー....これなら帰宅部なんてもったいない!! でもタダで食べた分はカラダで払ってもらうとか?? で、ワタシは何の楽器を担当するんだろう....カスタネット! じゃあダメだろうなー....
「私はベース、ムギはキーボード、リツはドラム。あと欲しいパートといえば....」
「アレ! よね〜!!」
「ああ、アレだな」
「....アレってナンですかぁ??」
「アレ! といえば! アレなんだよ〜〜っユイ〜〜!!《ガバっ! グリグリ!!》」
となりのリっあん! が後ろから抱きつきワタシの頭をグリグリし始めた....ああ....女子同士の
愛嬌あるスキンシップだろうに罪悪感がハンパない....
「え、え〜とぉ....わたしぃい!・・・・こうゆうことってぇ〜・・・・・!
・・・・よくわからないからぁあ〜〜!!・・・・」
「!・・・・ そうよね〜〜! わたしもここにくる前までこういう編成の音楽なんてあまり
知らなかったし〜!!」
「? ....ああ! でも慣れだ。この手の音楽は普通にそこらで流れているから楽器の構成を憶えて
しまえばあとはその組合せで鳴らすだけだ。私たちのバンドは....四人ギリギリだからドラム、
ベース、キーボード、そして、」
「ギターだっ! ユイっ! おまえ!『ギター!』をやれっ!それしかおまえの生きる道はーっ!!
《ゴツンっ!!》....ミ〜オー!!」
「....オーバーなんだ! 平沢さんも驚いてるだろう!! それに平沢さんにも楽器を自由に選ぶ
権利がある!!」
「....ギター?? あのぉ!? でもぉ....わたしぃ....! ギタアなんてぇ〜!! ・・・・」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
なんか....あやしい流れになってないかなー....なんだろう? ワタシ、唯の仕草や口調を忠実に
マネしてるだけなのにー??
「・・・・ ま、まあ! そうよねー、ここはユイちゃんのやりたい楽器をさせてあげるのがこの
部活のいいところなのよね〜!」
「....あ、ああ....でも、リツの言う通り、ギターを演ってくれたならここでのバンドのバランスが
取れるんだが....」
「そう! ユイっ? アナタはここでギターをやる運命だったのっ!! だからっ! ここはワタシタチの言うコトをきかないとっ! やまなかセンセーにオシオキされちゃうのよーっ! ウフっ!!!《デコピンっ!!》イッターっ!! ナニよーっ! ミオの....バ....カっ!!《シナリクネリ....》」
「....気色悪いんだっ! 平沢さん? こんなのに関係なく自由に....な!」
「....え〜とぉ、ハイ! じゃあぁ〜、わたしぃー! あははははぁ〜〜〜・・・・!!!・・・・」
なんだ・・・・ ますますマズくなってない?? ・・・・ みんなだまっちゃったし・・・・
まさか! オレがオトコってコトが・・・・? おいっ!こんなにがんばったのにー・・・・
これでここの部活も・・・・ いやだっ!!・・・・ オレ・・・・・・・・!
『!!・・・・ わーーーーっ!!!!・・・・』・・・・・・・・・・・・へっ!!??
「....うわ〜〜〜っ! もうっ! ムズムズする〜〜!! ユイっ!! ここじゃそんな取り澄まなく
たっていーーーっての!!!《ムギュ〜〜ンっ!!》もっと自然でいいんだーーー!!!」
・・・・ いきなりとなりのリッっあん! に大声で驚かされた!! だけでなく両手で俺の両頬を
引っ張りあげだした!! ・・・・ なに?? どおしちゃったの???
「おい! リツ!! ....でも、そうだよな。平沢さん、まだ緊張してるのかも知れないけど、
そんなに取り作らなくてもいいんだ! 私たちも、ほら!!」
「そう! ユイちゃん! ユイちゃんはそのままでも素敵な子のはずだから! もっとリラックス
してくれてもいいのよ! わたしたちみたいに!!」
・・・・・・・・・・・・ みんな・・・・・・・・・・・・《グスっ!》・・・・ ・・・・
「え? なに??」
「おいっ! ユイ!!」
「....すまない! きつく言いすぎたか? ごめん! あやまる!! おいリツも!!」
「あ! ....いや〜〜! わるかった! いたかったかあ? じゃ! わたしのほっぺも!!」
「ううん....ちがう。ごめん....みんな....わたしがわるかったの....。ちょっと....浮ついてたのかも....」
「ううん! ユイちゃんはわるくない!! 初めてのことばかりでよくわからなかったのよね?
それに、わたし....ユイちゃんの本当の声、聞いてみたいの....! いい?」
「わたし、のこえ....?」
なんか....無理してたのがばれていたのか....ここでの俺は『ユイ』....唯になりきらなくちゃ
いけないと思ってたから....それに....涙まで出てくるなんて....
「....うん、これが....わたしの....ほんとうの....こえ....おかしい?」
....俺のほんとうの声は唯よりトーンが低い。普通の男子よりは高いみたいだけど....
どうだろう....女の子としては不自然かな....
「....わあーー・・・・! 素敵っ! いいっ! なんかボーイッシュで〜〜っ!!」
「ああ....そうだな...! この声なら....私たちの出ない音域のボーカルも出来るかもしれないし....!」
「コレ! サワちゃんがいってた女性声優の少年ボイス! てんじゃないか? これイイわ〜〜!
おーうユイ! おまえこれからこの声なー!!」
《ボカっ!!》
「強制するなっ!!」
「してないだろー....自然にしろー! てんのに....! ミオ〜〜〜!!!」
「ハハっ!!」
なんだ、普通で....自然でいいのか....そうだな....うん! じゃあ....!
「....わたし、こんな声だけど、歌を歌え! ていうならうたえるかも....! でも、音痴かもしれない....いい? 」
「おお....! 平沢さん! そうか? そうだよな〜! うん!! リツ! これでボーカルは決まった!! これでもう私が歌うことは....!」
「おー! ツインボーカルバンド! になるのかー!! これで曲のレパートリーもふえるなー
ムギーっ!!」
「ええ! 作曲の意欲も増すわ〜!! ユイちゃん! ありがと! ミオちゃん! これからもよろしくね〜!!」
「えぇえ・・・・私もぉ・・・・」
こんなこんなで今日の部活は過ぎていった。結局昨日約束していたバンドでの演奏もすっかり
忘れて、部活終了時間まで好きな音楽やバンドの心得、おすすめ曲などの話でもりあがった。
....楽しかったー! 部活ってこんなだったんだー。もう声や仕草でうそをつく必要はないんだ。
そう、あのことは別としてだけど....