メイくんのぼうけん。   作:ばなナイン

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おしごと!!!

 

 

 

 

 

「・・・・ お昼時も過ぎましたのでしばらく休憩にします。ユイさん、ミオさんお疲れです」

 

「・・・・ わ〜! まかない賄いご飯っ!!」

「・・・・ あああ・・・・ 慣れない・・・・ トホ・・・・」

「・・・・ ミオさんもゆっくりしていて下さい。コーヒーをお淹れしますから」

 

二日目の午前中の部が一段落ついてワタシ達はいまカウンター席で休憩している。といってもお店まで一時休憩にするわけではないので、お客さんが来たらまた接客をするんだけど、昼食時の混雑にくらべたらそれほどでもないのでミオだけはとりあえず休ませておこう、てチノちゃんが気づかってくれたんだ。でも....

 

「もう二日目だというのに慣れないのは困りものです。ミオさん、皆さん『軽音部』とのことですが、そんなことで舞台に立てるのですか?」

 

「・・・・ ぶたい....あ〜〜っ!! そおだったー! ライブをするには人前で演奏しなくちゃならないんだ〜〜〜!! ....もう私、ここで○んでもイイ・・・・ ウウウっ!!!・・・・」

「ミオ〜! そんなオーバーなあっ!」

「ユイ〜っ! お前に私のベースあげるから代わりに舞台に立ってくれよ〜!! なんならボーカルもゆずるから〜〜!! ユ〜イーーっ!!!」

「えええ....ギターはどおなるのさー....!」

 

あああ・・・・ 思った以上に重症だあ....ここで接客のバイトをこなせるようになったらミオの

恥ずかしがり屋も少しはやわらぐ! というのもこのアルバイトの隠された理由だったのに....

 

「グスン....チノ....はまだ中学生なのに....よくこんな仕事が出来るな....ウン」

「....仕事だと割り切ってますから。それにこのお店はおじいちゃんが開いて切り盛りしていた

お店です。私としてはこの店の後を継いで盛り立てていきたいと思っています。できればあの

二人とも....」

「スゴイね〜チノちゃんっ! ワタシひとつ歳上なのにそこまで考えたことなかったよ〜!!」

「・・・・ お店があったからです。私もお店がなかったらミオさんのように....あ、ごめんなさい・・・・」

「・・・・ いや! いいんだ! そうだよな....あと明日でここも終りだけど、それまでにはなんとか....!」

「おお〜〜っ! ミオそのいきっ!」

 

《・・・・ カランカラン....!!》

 

「こんにちは〜〜。いらっしゃいますかーー?」

 

「ヒイイっ!!」

「ミオさんっ! ・・・・ あ、いらっしゃいませ、青山さん。いつもの席が空いています。

どうぞ。ユイさん、『ブルーマウンテン!』をひとつ」

「ハーイ! かしこまりましたー!!」

 

「ユイさん....? 新しい店員さんですかあ? あら! そこの方もですね〜。」

「ハーイっ! はじめまして!!」

「ははハイイっ!! こ、こんにちわっ! いらっしゃいませっ! おのみものはっ!!!・・・・」

「落ち着いて下さい。もうユイさんが淹れてくれてます」

「・・・・! ああぁ・・・・」

「ミオどのドンマイっ!」

「うん....」

 

 

「そうなのですかー。秋山さん、あがり症なのですねー、わかりますうー、かくゆうワタシも

そうなのですから〜!」

「・・・・ そそそうなのか....なんですか! やったぞユイっ! ここにもおなかまがいたっ!!」

「そうなんだっ! ミオ! よかったねーっ!」

「そんな話初耳です」

 

このお店の常連、『青山さん』というひととお話することになった。ムギちゃんと同じような色の髪をフワリと肩にかけさせていて、ものごしまでムギちゃんなみにホワ〜!(でも歳は二十代半ばくらい??)としたひとだからとても話しやすいし。

 

「ほら! よくゆうじゃないですかー! 揚がるときは周りのひとをキャベツかじゃがいも!

と思えばいいって〜!」

「それ、小学生のころリツに言われたことある....うん」

「そうだよっミオ! じゃあ練習! わたし達をジャガイモだと思って!!」

 

 

「じゃがいも....うん....じゃがいも....じゃがいも....ジャガイモ....んんん・・・・・・・・ 

 

じゃがいもが・・・・ ジャガイモが話かけてくる〜〜っ!! イヤ〜〜〜っ!!!・・・・」

 

 

「あらあら〜〜」

「うわ〜〜ダメなのっ?? ああ〜!!」

「もはやホラーですね」

「ハイ! キャベツとジャガイモの縄張り争いに巻き込まれる恥ずかしがり屋の少女の!

その宿命と克服に立ち向かうバイオレンスサスペンス大作! 浮かんできました〜!

ありがとうございますうーー!!」

「へ? なーに??」

「気にしないで下さい。この方の職業病です」

 

「じゃあじゃあ! そのジャガイモと闘ってみたらどうです〜? 参考になります〜!」

「じゃがいもと? マッシュポテトにするの??」

「喋るジャガイモとどう闘うんだよ〜〜!!」

「安心して下さい。これがあります」

 

ミオのあがり症克服のため、とうとうジャガイモとまで戦うことになってきた!

さてチノちゃん! どのような作戦!を立ててくれるというのかっ! ん? そ、それはっ!!

 

「....これ? て....っ!! ....ヒエ~ッっ!?!」

 

....わあ〜〜!!コレは!イタリア製拳銃の大ベストセラー!『ベレッタ92F2!!』だ〜!!

ナンでコンなものチノちゃんが〜??

 

「これは『例の』長期アルバイトの人から無理やり貸し与えられてしまったものです。

これをどうぞ。きっとお役にたてると思います」

 

チノちゃんナンてモノ!! こんなしゃれたお店でウエイターやってる中学三年生が持つもの

じゃない!! 貸してもらったって言ってたけど....こんなの持ってる中高生! ってどんなヤツ

なんだよっ!! ....てウチの高校にもおりましたよねー。飛行機乗って機関銃ブっぱなしてた

ヒトもいたし。『拳銃女子!』なんて層もあるのかなー??

 

「あらあら、これでジャガイモとどう闘うんですー??」

「ミオさん、裏庭にきてください。皆さんもどうぞ」

 

そして連れてこられたのはこの店の庭。表通りとは反対の洗濯物を干したりお花を植えたりする

ところかな。でここがあのジャガイモ! との決闘場所なわけね。

 

「これはイメージ療法みたいなものです。ようはひとに模したじゃがいもを克服すれば、大勢の

人前でも揚がらなくなるのではと思いました」

 

なーるほどー! それでこの場所で決着をつけるんだな! で? あいてのじゃがいもは?

 

「さすがに本物の喋るジャガイモを調達することは出来ませんが、代わりならだれでもOKで

しょう。ミオさん、これを」

「へ? なに??」

 

そう言ってチノちゃんはミオに拳銃を持たせて数メートル離れたとこに立ったんだけど....なに?

 

「さあミオさん、そのピストルで『この』ジャガイモを撃って下さい。遠慮はいりません。

どうぞ」

「・・・・ へええええ〜〜っ!!!」

「あらあら〜〜! 面白くなってきましたね〜!」

「ミオがチノちゃんを撃つのっ!!」

 

「心配ありません。それはモデルガンです。いわゆるサバゲー? 用のですね。空気圧縮? の銃とのことですからプラスチックの弾でも少しばかり痛いかもしれません....が、たいしたことはありません。どうぞ....私を撃って下さい」

 

「....チノちゃん、そんなあ....」

 

....チノちゃんなんてことっ!これもミオのことを想ってのことだろうけど....まだ出逢って二日しかたっていないのにこんなことまでしてくれるなんて!それに....チノちゃんだけにそんなこと....させるわけにいかないじゃんっ!....よしっ!!

 

「....そうだっ! ミオ! このワタシをジャガイモだと思って撃ってごらんっ! きっと恥ずかしがり屋もなくなるよっ!」

「....ユイさんっ?」

「おいユイまで!!」

「あーら〜! ユイさん!オトコらし〜ですう〜〜!」

「でででででも! ユイまで怪我をしたら・・・・」

 

「ミオっ! なにも心配いらないよっ! わたし! ミオはほんとはすごく強くてがんばり屋だって

こと知ってるから!! ベースだって昼休みのあいだに内緒で部室で練習してたんでしょっ? 放課後のお茶の時間に一人だけ練習してたらわたし達にわるいって気をつかってくれてたんだから!

だから! ミオっ! あとはジャガイモをたおすことだよ!! そうすればわたし達! みんな同じ舞台に立てるんだから!!!」

 

 

 

「・・・・・・・・ ユイ・・・・・・・・・・・・っ!・・・・・・・・」

 

 

 

・・・・ それから少しばかりだれも話さなくなった。でも、みんなミオのこと見守ってる・・・・

 

・・・・・・・・ ミオが....ワタシにむかって構えたな・・・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・・・じゃあ、チノ、ユイ、、、うつぞ・・・・ 撃つぞ....撃つぞ....っ!・・・・

 

・・・・・・・・撃つぞおーーーー・・・・っ!!!・・・・・・・・!!・・・・・・・・」

 

 

 

《・・・・・・・・ パンっ! ・・・・ パンパパパパパンッっ!!!!・・・・・・・・》

 

 

 

・・・・・・・・ イタッっ....! おもわず目をつぶっちゃった....でも.... いたく....ない....? 発砲した音は聴こえたのに・・・・ ん・・・・?

 

 

 

「・・・・・・・・ あらあら・・・・・・・・」

「・・・・ ミオさん・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・わたし・・・・ 撃てない・・・・ うてないよ・・・・ たいせつな仲間をうつなんてできないっ!! ・・・・」

 

「・・・・・・・・ミオ・・・・・・・・」

 

 

 

ミオの持つ拳銃の銃口は自分の足元辺りに向けられていた。地面にむけて撃ってたのか・・・・

 

 

 

「・・・・ たとえモデルガンだってともだちには撃ちたくないんだっ! ・・・・・・・・

だから! あと半日! これからの時間と明日の昼までにちゃんとお客さまに向き合うから!

チノ....! さん....わたしをビシバシ鍛えて下さいっ!! おねがいしますっ!!!・・・・」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・ミオぉ・・・・《グス....!》・・・・」

「・・・・ ミオさん、私が浅はかでした。手っ取り早く解決できる方法だと思ったんです・・・・ ユイさんも・・・・ 巻き込んでしまってもうしわけありません・・・・」

『・・・・・・・・いや、チノのせいじゃない。ワシの入れ知恵じゃ。チノを許してやってくれんかのお?・・・・』

 

 

「・・・・ え?」

「・・・・ なにナニ? またチノちゃんの腹話術?? ....でもチノちゃんティッピーを頭に乗せてないよねー??」

「・・・・ あの声は....マスター! あの『白いお髭のマスター!』 ですよねっ!!・・・・」

「・・・・ ティッピー....余計なことです....」

 

・・・・ どこからか、『おじいちゃん』の声が聞こえてきた....家の中からかな....いくら腹話術だからといってもあんなところからチノちゃんの声を飛ばすことなんてできないだろうし....でも、

 

「・・・・ うん、そうだよな....チノは悪くない。自分の弱さを他人に頼っちゃだめなんだ....ユイ! コーヒーを淹れるのは任せた! この時間からは私が接客をする! チノ! どんどん私に指示してくれ! ....して下さい....!!」

「ハイィっ! ミオどの! りょうかいしましたあっ!!」

「わかりました。もうそろそろお客さんも増えるころです。ミオさん! ユイさん! いきますよっ」

「「りょうかいっ!!」」《ケイレイっ!!》

「わああ・・・・! なんか復活の儀式! みたいですね〜! これはいいものを取材させていただきましたーー!!」

 

 

《・・・・ カランカラン!》

『チノーー! お客さまだぞ〜〜〜!!!』

 

 

「「「「はーーーい!!!」」」....あらあら! わたしまでつられちゃって! ウフフっ!」

 

 

・・・・ こうして、ワタシとミオはお店の午後の部を陽が暮れるまで奮闘した。ミオはおっかなビックリでもちゃんと背筋を伸ばして接客してたし、わたしのコーヒーの腕前も時間が経つにつれてチノちゃんにほめられるようになった。そして、時間もすぎて・・・・

 

 

 

 

 

 

 

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