メイくんのぼうけん。   作:ばなナイン

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おしごと‼︎‼︎‼︎ & After!

 

 

 

「この駅もすごいね〜!」

「うおーう! 全面ガラス張りだしー!」

「なんか外国の旅行番組でこんな駅見たことあるよな!」

「そうなの! この駅ってイギリスの『パティントン駅』かフランスの『北パリ駅』をモデルにしてるって聞いたことがあるの〜!」

 

「んも〜!もうこれだけでみんなとお別れなの〜〜!!もっと早く帰ってくればよかったー!!」

「ココアさん、それではこの方たちのバイトの意味がありません。このふたりはココアさんと

リゼさんのピンチヒッターなのですから」

「ああ! そしてその任務は十二分に果たされた! 我が部隊に所属していたら褒賞ものだぞ!!

ウム!」

「リゼ先輩....なんなら私が先輩の部隊に入隊しても....『ん?』! いいいイヤっ! ナンでもありません....! フウ....」

「もうすぐ夕暮れ! 駅の中の陽射しも様になってきたわね〜!」

「そうですね〜!「ウフフフフっ!!」」

 

わたし達『けいおん部!』の四人は、ここ『木組みの家と石畳みの道と野良うさぎの街』の喫茶店従業員の先輩方とともに、この『レンガとガラス張りの駅』のホームで別れを惜しんでいる。このガラス張りの天井からもやや傾いた陽の光が射し込んできていやが上にもお別れのシチュエーションを盛り上げているし、これから乗る列車も....ムギちゃんがこれに乗って帰りたがるのもわかるような何ともクラシックでメルヘンなデザインだし。

 

「皆さん、もうすぐお時間です。これをどうぞ」

「あ〜ありがとうっ! チノちゃんが淹れてくれたのー?」

「はい、帰りの列車の中で、と思いまして」

 

そういってチノちゃんはワタシに四人分のコーヒー紙パックを持たせてくれた。このコーヒーともお別れかー・・・・

 

「....ほら、リツ....私もこれ....お店のハーブ入りクッキーだけど....////」

「わ〜〜! いただきますうっ! キリマさんっ!! ありがてえ〜ことでゴザいますう〜!!」

「アナタの! ....そういうトコはTPOをわきまえなさいよね! ここならいいけど....お店で働く時はっ!! ....っ!....!!!」

「....えー....桐間さん....もう耳がタコなんですけどー....」

「それにっ! 仕事以外のときはっ! べつに敬語でなくたっていいのよ....私のことも『シャロ』....でいいんだし....////」

「あ〜らー! シャロちゃん三日目にしてやっとデレてきたのね〜!」

「....ち! ちがうわよっ!! チヤったら! もう..../////////!!」

 

リっあん達はリっあん達で進展があったのか? こういう別れの惜しみかたもあるんだねー....!

 

「はーい! 紬さん! これ、わたしが練り上げた羊羹! にこれも!」

「わー! ありがとうございますうー!!」

「んー? ムギちゃん? その冊子はー??」

「これー? これねー、『甘兎庵』のお品書きなのー!」

「でコレがね〜、その初心者用の解説書! これをよく読んでウチのメニューを研究して頂戴ね〜!」

「はい〜! 歌詞の参考にさせて頂きますー!! 「うふふ〜〜!!!」」

 

ムギムギちゃん達はあいも変わらずあのノリのままだった....こちらのムギちゃんが受けとったのは和菓子と? ああ、あの古典の教科書みたいなメニュー表と参考書ね....あれを歌詞にして歌うの? なんか百人一首の歌会みたいになるかもしれないけど....ウムム。

 

「ではっ! ミオ隊員! 三日の勤務、御苦労だった!!」

「はいいっ!! リゼ教官どのっ!! 教官どのの教えとこの拳銃は!

必ずや部活動と演奏に活かしますうっ!!」

「いい心掛けだ! でも拳銃だけで本当にいいのか? 遠慮するな! この『G36KA2!』も持って行っても....!」

「....そそそそそソレはっ!! 今のジブンには荷が重すぎますうっ!!」

「....リゼさん、その機関銃をケースに入れて下さい。今のご時世、テロリストと間違えられますよ」

「....なにいテロリストっ!?! このワタシがこの銃でハチの巣! にしてくれるうっ!!!

《ガシャっ!!》」

「....ヒヤアっ!!」

「リゼさんっ!!」

「!....あ? あはは....」

 

コッチの『ダブルツインテール』の別れ方はー....ああミオどの教官殿に染まっちゃって....でも

少しは恐がりを克服したのかなー??

 

「....じゃあ、ユイちゃんっ! ハイこれ....今日一日だけだからねっ!!」

「....はい??」

「....ちょっとココアさん?」

 

そしてこのオレの前では....さっき逢ったばかりのココアさんがナゼか涙目でオレにチノちゃんを

押し付けてきた....ナニ?? 持って帰っちゃっていいの???

 

「....ちちちちちチガうの〜〜っ!! すこしだけ! わたしの『カワイイ妹!』を貸して

あげるのーーーっ!!」

「....ココアさん、私はココアさんから貸し借りされる様な妹になった憶えなんてありません。

でも、どうしても、というなら....《....ギュっ!....》」

「....へ? チノちゃんっ??」

 

....チノちゃんがオレに抱きついてきた....まあ....確かに、妹みたいだな....と思えば妹みたいだし....

でも憂とは違って頭がオラの胸のあたりに押しつけているし....て、ことは....

 

「....ん? ユイさん、これは....?」

「....いいいいイヤ? ナニ??」

 

....しまった! オイラのおムネはパッド入り!! 感触だってホンモノとは違うはず!! おい!

いままで女子たちに抱きつかれてきても身長が同じぐらいか高い子にしかされて無かったし!!

ここにきてオレの正体がバレてしまうというのかー!!?? わああ〜〜〜!!「ユイさん」

 

「....はっ! ハイ!!!」

「....ユイさんは....」

「....! ナンデショウ....!!」

「《....フっ!》お仲間ですねっ....♡《フフフんっ!!!》」

 

....そう言ってチノちゃんはワタシを見つめて笑顔でグっ! と親指を立ててくれましたとさ....

フウ〜〜〜....! 危なかったあ〜!!『FL△T!』おなかま! でよかった〜〜!!!

 

「チーノちゃん? お仲間ってな〜に??」

「ココアさんには関係ありません。私とユイさんだけの秘密です」

「《ガーーンっ!!!》....わたし! やっぱりイラナいコだ〜〜〜っ!! うわ〜〜〜ん!!!」

「おい! どうしたココアー!!」

「あらあら! またチノちゃんに勘当されちゃったのー??」

「チョっ! ココア! いいかげんにしなさいよー!!」

「....え、え〜とお....あははははあ〜〜〜....」

「ユイ....また気の抜けた笑い方を....」

「おっ! なんだー? 痴話げんかかあー!! ウリウリっ!!」

「うわあ! こんなに惜しまれちゃうなんて! ユイちゃんにんきもの〜!!」

「もう....////しょうがないユイさんとココアさんですね....!////」

 

こうして時はすぎ、我われ『軽音部!』四人組は列車に乗ってこの街を後にした。二泊三日の短いバイトだったけど楽しかったー!! これで少しはギター購入の足しになったし、部活動も本格的になってくる。あ、でも姉ちゃんと憂のおみやげ忘れてきちゃった....とくに姉ちゃんは連休中俺と離れることにそうとうゴネてたんだし、ああ、どうしたもんか....乗り換えの駅でそこの名物でも買って帰ろうかな....

 

 

 

「....ほんとうにこのお金、使っちゃっていいの?」

「ああ! そのためのお金だからな」

「そおだぞーユイ! そしてその金を全部使っちまった以上! ....お前のカラダはわたしらの好きかってにさせてもらうことになるぞ〜!!」

「....ヒイイっ!!」

「....ってナンでミオが悲鳴をあげるのさー!!」

「....ばかリツ! ユイをおどすな〜!!《ポカポカっ!!》」

「ハイハイわかったわかった!!」

「うふふ! こうしてみんなで学校帰りも久しぶりね〜!」

「ウン! ここだっけ! はいってみよーっ!」

「「「お〜〜っ!!!」」」

 

連休が明けて久しぶりの帰り道、軽音部のみんなで前にギターを見てまわったあの楽器屋による

ことになった。さっそくこのアルバイトの給金でわたしのギターを買うことになったんだけど....

なんかわるいな....

 

「でもいいんじゃないかしら〜? 部の備品、ということにしておけば!」

「そうだそうだ! ついでにユイ! ....お前も生ケル我が部の備品にへと....!」

「....ゥキャ〜〜っ!!!《ボカボカボカっ!!!》」

「....おーいミオー....恐がりにしちゃホラー映画のシチュエーションよく憶えているよなー....」

「お前が無理やり見せるからだっ!!」

「アタシもアレ駄目....」

 

....オレもああゆうのコワいんだよなー....でもこの高校に入ってから妙な事が続いているのも

確かだけど。みんなもそうなのかな??

 

「このギターでいいかな?」

「『ストラト』だな。いい選択だぞ! ユイ!」

「よーしこれで決まったーっ!! 予算もピッタリだしー!」

「でもユイちゃん、ほんとうにこのギターでいいの?」

「うん....結局このギターの値段まで届かなかったし」

 

予算で買えるギターを手にしながらも、みんなの視線はあの『ギブソン・レスポール』に向かっている。わたしだけじゃない、みんなこの赤みを帯びた丸っこく人懐っこいギターになんか愛着を持ってるみたいなんだ。でもお金がなー....

 

「わたし、ちょっとレジに掛け合ってくるから〜! 待っててみんな!」

「ん? ムギー?」

「どおしちゃったのかなー? ムギちゃん」

「ああ?」

 

ムギちゃんがひとり、レジに向かって小走りをはじめた。かけ合うって? まさか値切るってこと??

 

「....どうしても駄目なのー?」

「....はあ、たとえ紬お嬢様でも....これは委託販売のビンテージ品なので、委託者の許可が

下りませんと....こちらで勝手に値を下げることは....すいませんっ!!」

「いえいえ! 無理言ってごめんなさいねー! わたしのワガママですから〜!」

 

なんかレジでこんな会話が聞こえてたけど....お嬢様? この店でも結構顔の効く凄い子だったの

かなー....でも本当はこんなことムギちゃんに求めてちゃいけないんだし。

 

「いいよ! ムギちゃんありがとう! わたし、これ買うから! 早くみんなで練習しよっ! ね?」

「うん! ユイちゃん! そうしよう! 明日から部室で練習ね〜!」

 

「・・・・ ユイさん....? 失礼ですが、皆さんはこの近くの高校の、

『軽音部』の方々でしょうか?」

 

「あ? はい、わたしも一応軽音部ですけど....?」

「お嬢様もですか! では、部長はたいなか....」

「へ?? あ、ハイハーイ! わ、た、し! が部長の『田井中 律!』でーす!!」

「....はい! わかりました! 少々お時間をいただけますか? 依頼主に確認しますから!」

「え? あ、ハーイ! お願いします〜! ・・・・ どおしちゃったんだろ? んー??」

「「「んー???」」」

 

えーとなにがおこったの? 店員さんがあわてて奥の事務室みたいなところへ駆けこんでいったし....この店でも顔の効くムギちゃんまで『???』な顔をさせているこの顛末、いったいどうなるんだろう?

 

 

 

 

 

 

 


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