Fate/Grand Order 創造支配世界トータス 作:クロウド、
「ねぇ、マシュちゃん。南雲君ってカルデアにいる頃からあんな冷静沈着な感じだったの?」
話を終え、男子、女子それぞれの部屋へと帰る途中鈴が気になって何気なくマシュに尋ねた。
「いえ……その、今とは大分違いました」
マシュは思い出すように顎に指を当てた。
「カルデアにいた頃の先輩は……その、どちらかというと少し可愛らしい方でした」
ズガァンという音が四人の頭に鳴り響いた。それこそ、北欧の魔術『ガンド』を喰らったような擬音が響く。
あのハジメが可愛らしい? とてもじゃないが想像できなかった。
「サーヴァントの方たちと少しでも近い距離でいたいと必死になって話をふったり、逆に過保護なサーヴァントの方から甘やかされると顔を真っ赤にしたりして」
((((想像できないけど凄く見てみたい))))
若干、頬を染めながら懐かしむように話すマシュの様子から本気で当時のハジメの姿を見てみたいと思ってしまった四人。
だが、昔のことを思い出していたマシュの顔に陰りが現れる。
「ーーーカルデアにいた頃の先輩ならあんな過激な手は取らなかったでしょう。
口論程度にはなったでしょうが、あそこまで痛めつけるということはしなかったと思います」
「じゃあ、なんで?」
「先輩には余裕がないのだと思います」
「あれでっ!?」
マシュがポツリと漏らした声に、鈴が過剰に反応する。だが、あれだけ落ち着き払った態度で話をしていたハジメに余裕がないと言われて香織や雫、優香も目を剥いた。
「私達の旅、グランドオーダーはいつもカルデアのスタッフの皆さんやダ・ヴィンチちゃんのサポートがありましたが、今回はそれがない」
「だから……多少強引な手を使ってでも、光輝に自覚させたかった。無駄になったみたいだけど」
いつも、あったものが無くなる……。
その辛さと虚無感をハジメとマシュはよく知っている。実際、二人は大事な人を二人、ハジメの場合はさらにマシュを目の前で一度失っているのだから。
「ですが、それ以前から先輩の笑顔に陰りが見え始めたのは、カドックさんと初めてあった時からだったと思います」
「カドック?」
「私と同じ、元Aチームのメンバーの一人で最前線で人理修復をするはずだった人物です」
「それってもしかして……」
「はい……異聞帯を管理していた七人のクリプターの一人です」
ハジメに深い傷を作った異聞帯。それを生み出した人類史の裏切り者、クリプター。ハジメは彼らのことを悪くは言わなかったが雫達の彼らへの印象は最悪だった。
「それで、そのカドックって奴に何をされたの?」
「ロシアの異聞帯……"アナスタシア"で先輩はカドックさんにこう言われました」
『南雲ハジメ、なんで僕達の代わりに死ななかった?』
その時のカドック・ゼムルプスの言葉を一言一句間違えずマシュが伝えた瞬間、雫と香織の中で何かが切れた。
「なによ……それ……。」
「ふざけてるのかな?」
怒鳴り声を上げこそしないが、それは僅かな理性がそうさせているだけでそれ以外の心は怒りで真っ赤に染まる思いだった。
そこからマシュはその言葉の意味を話し始めた。
他のクリプターならもっと上手く人理を修復できたと、お前が自分達からカルデアという居場所を奪ったのだと。
カドックはハジメにそう言っていた。
「無茶苦茶ね……。」
「命がけで戦った南雲君があんまりだよ……。」
「あの頃は異聞帯の切除という使命があったので、それを深く考える余裕は私にも先輩にもありませんでした。ですが、あの世界でご両親の元に帰ってきてから……先輩がカルデアにいた頃以上に熱心に教わったときの魔術を練習したり、身体を鍛えたりし始めました」
マシュはいいはしないが、ハジメがそんなことを始めた理由は長い戦いの中、隣に立っていた彼女には言わずともわかっていた。
「多分……ご自分を責めていたんだと思います」
「ハジメ君が自分を責める理由なんてないっ……!」
香織は感情を押し殺しきれずに半分怒鳴り声のような声を出す。
マシュはそうやって本気でハジメを心配してくれる香織に何処か嬉しそうに頷いた。
「もちろん、私もそう思います。だけど先輩は自分にもっと力があれば、冷静な判断ができれば……もっと多くの人を救えたんじゃないかって思っているのかもしれません」
ハジメはあの言葉に一度心が折れかけた。第七特異点でギルガメッシュ王に『特異点で死んだものはそのまま死んだことになる。だからこそ、お前達は本当に多くの人間を救った』と言われ自分が間違えていないと思っていたハジメの心を抉るには十分すぎる言葉だった。
ハジメはカルデアに来るまで一般人だった。当然、魔術においてはカドック達エリートであるAチームが断然有能だ。だからこそ思ってしまった、
「ですが、当然私はそんなことを思ったことはありません。先輩の行動はその時の最善解だったと信じています」
「……うん、私もそうだと思うな」
「当然よ」
「今回の旅でそれを証明してみせます。南雲ハジメが最高のマスターであることを。あの人のサーヴァントとして」
「マシュちゃん張り切ってるわね」
フンスと珍しい擬音を鳴らして自信満々に宣言するマシュに優香が微笑ましいものを見たような顔になる。
しかし、そこへ鈴が無邪気な爆弾を投下した。
「ねぇねぇ、ところでマシュちゃんと南雲君ってどこまで進んでるの?」
「「「…………。」」」
「えっと、鈴さんどこまでとは?」
鈴の言葉の意味はなんとなくわかってはいるが、何故か問返してしまうマシュ。
「それはほら〜、恋人、的な? 男と女の仲、的な?」
かなり直球な質問、実はこの谷口鈴。脳みそはほぼエロオヤジと言っても過言ではない思考をしている。
「えっと、その……。」
「マシュちゃんはまだハジメ君とは恋人じゃないんだよね〜?」
もじもじするマシュの言葉を遮って香織が話に入ってきた。
「えっ? そうなのっ!? 一緒に住んでるのに!?」
「えっと……はい」
弱々しい声で鈴の驚愕の声に答えるマシュ。
お互い、異性として意識はしているのだが如何せんお互いにカルデアの皆が無事かわからない状況で自分達が幸せになる道を選ぶほど軽い思考はしていなかった。
真面目さが後ろ目に出た、というところだろう。
「じゃあ、カオリンの方はどうなの? 毎日のようにアタックしてるけど」
「……香織はハジメと会った日にいきなり告白して振られたのよ」
「「え、そうなの?」」
再び驚愕する鈴と今度は優香まで驚く。
そう、白崎香織ははっきり言ってハジメに一目惚れだった。
出会いは偶然で、ガラの悪い男達のズボンにたこ焼きをつけてしまった少年とそのおばあさんが絡まれており、おばあさんが危うく財布ごと渡そうとしたときに現れたのが我等がハジメなのだ。
ハジメは男達を、視界に入れると携帯を取り出して、
『すみません、警察ですか? 子供に手をあげようとしているガラの悪い男が今目の前にいるんですが』
通報するフリをして耳に携帯を当てたハジメの姿にガラの悪い男達は一目散に逃げていった。
怖くて何もできなかった香織はその時のハジメがなんの迷いもなくその行動に出た姿がとても強く見えた。
そして、その後おばあさんと少年から礼を言われているとき少年の頭を撫でて、
『いいかい? 今日は僕が助けてあげられたけど、これからは君がおばあさんを守ってあげるんだよ? どんな方法でもいい、男の子ならそれくらいはできるようになりなさい』
その時の優しい表情に香織は完全に一目惚れしたという。
そのまま、何処かのバーサーカーよろしく、
『好きです! 付き合ってください!』
とアタックしたが、
『えっと〜……ごめんなさい?』
当然バッサリ断られた。
が、乙女の恋とは凄まじいというが雫経由でハジメの素性を知り、中学卒業あたりから猛アタックが続いている。
「香織って思ってた以上に積極的なのね……。
でも、大丈夫? さっきの話でかなり差があることがわかったけど……。」
優香が心配そうに尋ねるが香織は寧ろ自信満々で、
「そんなことで諦めるなら二年もアタックしてないよ。マシュちゃんとハジメ君の間に絶対の絆があるとしても私は諦めたりしないよ」
「香織さん……。」
ライバルであると同時に仲のいい女友達だからこその距離感というものが二人の間にはあった。
「女の友情か〜、いいな〜。それじゃっ、今度は優香ちゃんとシズシズ!」
突然、話を振られて驚く優香と雫。
「私は別に南雲のことは男友達としか思ってないわよ……。」
「そうね、まあ……好きよ、私も」
「雫っ!?」
まさかの雫の告白に目を剥く優香。
「私は香織ほどハジメに積極的に迫る自身がなかったから殆ど諦めてたんだけどね……。二人を見てると、ちょっと羨ましくなっちゃって」
「シズシズは好きになったきっかけとかあるの?」
「……ハジメはいつでも私を女の子としてみてくれたから、かしらね? ごめんなさい、いつの間にか好きになってたっていうのが正直な話ね」
そう言って話す雫の顔はいつもの凛々しい女剣士ではなく、一人の純情な乙女の顔をしていた。
その意外な一面に親友であり幼なじみでもある香織ですら見惚れてしまう。
「もうっ、この話はおしまい! 明日から遠征なんだから、早く部屋に戻りましょう!」
そうやって無理矢理話を終わらせた雫は建物に戻っていく。それに続いて微笑まし気な雰囲気で四人もあとに続く。
願わくば、彼を心配してくれる彼女達と彼を支えてきたカルデアの者たちが出会えるようにと思うマシュだった。
感想、評価プリーズ!
マンドリカルドのクラスはどちらにしようか?スキルは特に変わりません、ステータスは上がります。
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デュランダルを持った状態のセイバー
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cmがカッコよかったライダー