たまたま単行本読んで、たまたま出てきキャラに勝手に期待して、あまりの出番の無さに勝手にガッカリして、あまりの不憫さに胸打たれて、この短編を描きました。
楽しんでいただければ幸いです。

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鏑木さんの話し方については、若干男勝りな感じをイメージしました。
感想お願いいたします。


鏑木祥子が死ぬほど好きです。

皆さんは鏑木祥子というキャラクターを知っているだろうか。

遠月学園高等部2年生「遠月十傑評議会」の第五席。

身長163cm。3サイズはB79-W56-H84。好きなものは、アップルティー、テニス観戦。嫌いなものは、タバコの匂い、蜘蛛。

 

中枢美食機関(セントラル)発足後のサバイバルで十傑入りした生徒の一人であり、1年でもトップクラスの実力を持つ葉山アキラや現役の第六席の紀ノ国、第七席の叡山よりも上の第五席に配された。

そんな彼女であるが現在、、、、、、

 

目の前であられもない姿を晒している....。

 

これは1人の女性を愛しすぎている料理人の話である。

 

 

〜〜〜〜〜

「くっ...!この私があんな醜態を晒すとは...!」

 

「仕方ないよ。相手は元とはいえ十傑第三席"ラーメンマスター"女木島冬輔先輩なんだから。ほらっ、これ食べて元気出して」

 

涙目の彼女に、彼女の好物であるアップルティーを使ったパウンドケーキを勧める。

普段強気な言動が目立つ彼女だが、ショックなことがあると意外と脆いのだ。

 

「うぅ....グスッ....ありがとうぅ...たつみぃ...おいしぃ...」

 

トレードマークであるキャップを深く被り、泣きながら俺が作ったケーキを貪っている。

 

なんだこの可愛い生物は...。

中等部からの付き合いでこういう表情は何度も見ている(もちろん写真にも収めている)が、今回の食戟は相当ショックだったらしく、今までにないくらい落ち込んでいる。

 

ぶっちゃけ可愛い。死ぬほど興奮する。これは俺の脳内コレクションに保存だな。

 

まぁ、憧れの遠月十傑に選ばれた矢先に今回の惨敗である。こうなるのも仕方ない。

 

あの食戟の後、すぐに俺が彼女を抱え上げて会場から連れ出した。

周りがごちゃごちゃと騒いでいたが、関係ない。彼女のあんなあられもない姿を、いつまでも晒し続けるわけにはいかないのだ。

 

ぶっちゃけた話、あの状態の彼女を俺だけが堪能するためでもある。独り占めである。異論は認めない。

 

「っ....よし!落ち込むのはここまでだ!

すぐに反省会をしなくては!」

 

切り替えが早いのは彼女の長所である。

「いいね。じゃあ、俺もいつも通り手伝わせてもらうよ」

 

「いや、それには及ばない。というよりお前は2nd Boutに出場するつもりなんだろう?こんな所で油を売っていていいのか?」

 

そう、俺はこの後の連帯食戟に参加するつもりだ。単純な話、祥子の敵討ちがしたいのだ。

順番的には出場する可能性は高いが、さっきの3連敗を受けて十傑上位が選ばれる可能性もないわけではない。

結局は、先輩方のご指名待ちである。

 

「食戟については心配しなくていいよ。そんなことよりも、祥子と一緒にいる時間が減ることの方が問題だね」

 

「なっ///...お前はどうして恥ずかしげもなく、そんなことを言えるんだ...」

 

彼女が顔を赤くして、恥ずかしがっている。

何度も見ているが、全く飽きない。むしろもっと見たい。

 

さっき言った食戟について心配がないというのは嘘だ。あの反逆者たちは恐ろしいスピードで成長している。特に今年の1年はとんでもない奴ばかりである。神の舌に才場丈一郎の息子、スパイス貴公子にストーカーとなんとも曲者ばかり、、、

これだから"玉"って奴は困るんだ。

 

だけど、負けるつもりはない。俺なりに料理人としての意地がある。

 

それに、祥子と一緒にいるということは、

俺の料理にとって最も重要なことなのだから。

 

〜〜〜

 

第1カード

久我照紀 vs 司瑛士

0 ーーーーー 3

 

第2カード

女木島冬輔 vs 小林竜胆

0 ーーーーー 3

 

 

第3カード

美作昴 vs 日生 辰巳

0 ーーーーー3

 

「以上が今回の食戟の結果となります」

 

「どうだ!見たか反逆者共!お前らなんか十傑の敵じゃねぇんだよ!!」

 

審査が終わり、司会の麗ちゃんがそう告げる。

敵じゃないとは言っているが、それは先輩方だけで、正直こっちはギリギリだった。

美作昴...以前の彼とは全く異なっていた。

 

彼の並外れた観察眼・洞察力を生かした連帯食戟ならではの仲間のサポート。

加えて、瞬間的に相手の行動・思考を読み取って、自分の手元に再現するなんて....

以前の彼には見られなかった仲間への信頼と料理への情熱、そして何より類稀なる才能に甘えずひたむきに努力するその姿勢。

彼は将来とんでもない料理人になるかもね。

 

でも、、、足りない。

彼の料理と俺の料理には決定的に足りないものがある。それが今回の勝負を分けた。

というより相性かな?

 

「何故だ!?俺の周到なる追跡(パーフェクト・トレース)は完璧だった!

完全に相手の料理を再現し、アレンジを加え、一歩先を行っていたはずだ!」

 

「確かにあなたの皿は非常に素晴らしかったです。お題であるマグロをメインにし、それを引き立てるための工夫や技術がしっかりと伝わる力作であったと言えます。

一方、十傑である彼の皿からははっきりとしたイメージが感じられた。何のためにその皿を作っているのか、何を目的としているのか。そのイメージを鮮明に伝えるだけの想いが、彼の皿には宿っているのです。それこそが、今回の食戟の結果を分けたのです」

 

「そんな....馬鹿な...俺は完全に先輩の思考を読みきっていたのに...」

 

「美作くん」

膝をついて、崩れ落ちている彼に声を掛ける。

 

「っ...はい。なんですか日生先輩」

 

何を言われるのか不安になっているのか、警戒しているのか、少し不貞腐れながら聞いてくる。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。はじめましてだよね?俺は日生 辰巳。現遠月十傑の第十席だよ。よろしくね〜」

 

「えっ..?あっ...はい。よろしくお願いします?」

いきなり自己紹介されると思わなかったのか、少し面食らう美作くん。

 

「今回はお疲れ〜。俺も負けちゃうかもってヒヤヒヤしちゃったよ。でも勝てて良かったよ。負けたらどやされちゃうからね〜。

それで、今回の敗因だけど、、、分かる?」

 

「いえ...分かりません」

彼は悔しそうに答える。

 

「君は、俺の思考も手順も全部読み取ってたんでしょ?

それなら何を考えて料理してたか分かるんじゃないかな?」

 

「はい、分かりますよ。先輩が何のために...いや、"誰の為に"料理を作っていたのか」

 

「そういうことだよ。君は、俺の思考も手順も模倣出来た。でも、それは形を真似しているだけだ。

俺は"彼女"の為に料理を作っていたが、君は勝つ為に俺の動きと思考を模倣しただけだ。

同じ動作でも、決定的な違いが生まれる。料理なら尚更だよ。

君が本当に"彼女"を愛して料理をしていたなら、違う結果になっていたかもね。そんなことは許さないけど」

 

「あんた...どんだけその人のことが好きなんだよ。下手したら俺以上にストーカーなんじゃないか?」

 

「フッ...むしろ光栄だなぁ!彼女を俺以上に愛している人間など存在しない!いや!そんなものは俺が超えていくだけだね!.....急にごめんね笑

まぁ、何が言いたいかっていうと、技術も情熱もすごく大切なものだけど、それがどこを向いているか。それが1番大切だと思うよ。

お客さんのためなのか。自分のためなのか。それとも、好きな人のためなのか。

つまり...愛だよ!愛!彼女への無償の愛!

他の人は知らないけど俺の信念はそこにあるんだよ!

次はそれを考えてみるのも悪くないんじゃないのかな?

じゃあ、俺はこれで。みんな頑張ってね〜」

 

若干引いている美作くんを放置して、俺はその場を後にした。

向かう先は彼女の元だ。

 

〜〜〜

「久我先輩。なんなんですか。あの日生って人。俺全く知らなかったんっすけど。」

 

「幸平ちん...アイツについて知らないのも無理ないよ。食戟とか、全く興味がないやつだからね〜。でも、料理の腕については十傑クラスだよ。条件付きとはいえ、俺に勝ってるからね」

 

「えっ!?久我先輩、あの人に負けてるんっすか!?」

 

「だから条件付きって言ってるでしょ!!」

(まぁ、鏑木が負けた時点で出てくることは予想できたけど、相変わらずふざけた奴だな)

 

〜〜〜

 

一方その頃。

 

「ほら!祥子、君のために作った料理だ!

是非食べてくれ!」

 

「まっ、待ってくれ!今勧められると抵抗できない!」

 

「これを食べることで、さっき負けを振り切り、元気を取り戻すことが出来るはずだ!なんせ君の為を思って君の為に作った料理だからね!さぁ、食べてくれ!そして俺に君の笑顔を見せてくれ!」

 

「やめろぉぉぉぉぉぉ!」

 

その後鏑木祥子が本日2度目のあられもない姿を晒すことになったのは別の話。

 




日生 辰巳
遠月学園 2年生 現十傑第十席
鏑木祥子を好きすぎるオリ主。
彼女の料理を食べた後の顔を見るために、料理を極めている。
彼女にしか興味がないため、食戟も基本彼女としか行っていない。
だが、付き合ってはいない。

過去に食戟で久我に勝っているが、元々やる気がなく、鏑木を審査員の1人として置くことを条件に食戟を行った。

好きな人を神として崇めるとか、周りに愛することを強制したりはせず、自分が好きなら良いという考え。極端にした葉山みたいなもの。



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