◇終 戦姫絶唱シンフォギアにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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第二十八話 交わる組織と組織

 銃声が連続して響く。

 大量の弾丸が絶え間なく射出され、その先で大量に立ちふさがるノイズを破壊していた。時には射出された瞬間に拡散する弾丸や、ミサイル、バズーカ砲弾など、飛び交う弾丸は種類豊富に辺り一面ばら撒かれる。空中をいくつもの閃光が彩り、破裂音と爆発音が現場に存在する唯一の音となっていた。

 

 そしてその中心にいるのは、深紅のアーマーを纏い、銀色の髪を靡かせる少女。

 

 聖遺物『イチイバル』を用いて作られた赤いシンフォギアを纏うのは、立花響を置いて現場に急行した雪音クリスだった。

 ズガガガガ、とまるでコンクリートを重機で砕くような音と共に全身から生み出された銃や砲弾を振り回す。周りに溢れるノイズ――否、アルカ・ノイズは着実にその数を減らしており、面での制圧力が高いクリスの攻撃が遺憾なく発揮された結果がそこにあった。

 周りに味方がおらず、フレンドリーファイアを気にしなくてもいいこと。

 立花響と共に姿を隠し、ノイズの出現のない期間を半ば休養に充てられたこと。

 その二つが相まって、彼女のコンディションは万全だった故に、アルカ・ノイズという新種のノイズが相手でも反撃を許さぬ掃討が出来ている。

 

「くそっ! キリがねぇ!」

 

 とはいえ、シンフォギアを纏っているからといってその力を永遠に使い続けることなど無理だ。弾丸を打てばそれだけ反動がクリスの身体に響く。シンフォギアによって反動も軽減されているが、それでもこのままでは彼女の体力もいずれ尽きてしまう。

 また、クリス自身も戦いの中でこのノイズたちが今までのノイズと違うことも気が付いていた。響の直感ではないが、アルカ・ノイズの持つ発光部位、生物や無機物問わず分解して赤い塵へと変えてしまうその解剖器官に危険信号が出ている。

 戦いの中で何度かその解剖器官での攻撃を受けそうになったが、最優先警戒対象においていたおかげでどうにか一撃も食らうことなく凌げていた。

 

 しかし、それでも集中力を切らせばいつノイズたちの攻撃に飲まれるか分からない状況は変わらない。一人では、訪れる限界を退けることが出来ないでいた。

 

「はぁぁあ!! もってけ、全部乗せだぁぁぁぁ!!!」

 

 じわじわとクリスの周囲を取り囲むノイズの輪が近づいてくる。

 それに対して全身からありったけの銃身を展開し、一気に撃ち放った。身体に一気に大量の反動が襲い掛かり、鈍い痛みとなって全身を軋ませる。スタミナがごそっと削られて、クリスの呼吸が乱れた。

 シンフォギアは歌と装者の感情によって出力を上げるもの。呼吸が乱れてしまえば、歌も乱れる。結果、一斉掃射を行ったクリスの歌が途切れてしまった。

 

「はぁっ……! はぁっ……!」

 

 乱れた呼吸をどうにか整えるために急いで息を吸い込むが、反動によって身体が素早く動かすことが出来ない。ふらつく足を踏ん張ってハンドガンを構えるも、ノイズの物量に対抗できるほどの弾幕は張れなかった。

 此処までかと思ったクリスだったが、その時ノイズたちの後方から斬撃の音が響く。

 

「何が……」

 

 一体何が来たのかと思いながら意識をそちらへと向けると、漆黒の何かがノイズたちを横一線に切り裂き消滅させた。

 周囲を取り囲んでいたノイズの一方向が一気に開ける。そこから現れたのは、漆黒のマントを身に纏いながらも、巨大な槍を携えた女性だった。

 

「シンフォギア……だと?」

「……まだ動けるかしら?」

「お前、何もんだ……」

「質問は後、動けるなら構えなさい……まずはこいつらを掃討するわよ」

 

 桃色の髪を靡かせてクリスの傍へと近づいてきた女性は、槍を構えながらクリスに声を掛ける。敵かどうかはわからないが、どうやら助太刀にきたのだと理解したクリスは、空薬莢を弾き飛ばしてリロードした。

 質問も疑問も置いておいて、まずはこの状況をどうにかしなければならないのは確かなのだ。反動で痺れていた身体が、今のインターバルでどうにか動けるようになっているのを確認して、重くなった身体に再度鞭を打つ。

 

 そして見知らぬ装者の女性と即興で息を合わせ、新呼吸の後、メロディを紡ごうと口を開いた瞬間――

 

 

「ぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!」

 

 

 ―――野太い咆哮と共に周囲のノイズ達が紫色の閃光と共に一瞬で消え去った。

 正面からぶわっと襲い掛かってきた風圧に蹈鞴を踏むクリスと謎の女性だったが、ズドンという重たい音と共に目の前に着地した人影を見れば、何が起こったのかを理解できた。

 現れたのは、完全聖遺物『ネフシュタンの鎧』を纏った風鳴弦十郎だったからだ。

 

 完全聖遺物は起動してしまえば誰でもその超常の力を振るうことが出来る、規格外にして埒外の代物。であれば、フィーネの持っていた『ネフシュタンの鎧』を風鳴弦十郎が使うことも当然可能なのだ。

 

 とはいえ、その紫の結晶を繋いで形作られた鞭を振り回し、的確にノイズ達を全て消し去って見せるという離れ技。シンフォギア装者であるクリスたちが同じようにネフシュタンを纏ったところで出来るようなものではないが。

 

「無事か?」

「ハッ……生きちゃいるけどな」

「……」

 

 クリスとしては今まで身を隠していた相手に見つかったことでやや気まずい感覚ではあるが、どうにか助かったことを理解して身体にどっと疲労が圧し掛かってくるのを感じていた。逆に謎の女性に関しては無言で弦十郎の方を見ている。

 弦十郎は二人の無事を確認しながらも、見知らぬ装者がいることに警戒心を高めていた。球磨川禊の仲間であれば、只者ではないと思うからだ。

 

 しかも、『イチイバル』と『ガングニール』の反応を見て駆け付けたというのに、現れたのはクリスと響ではなく、クリスと見知らぬもう一人の『ガングニール』装者。

 内心は穏やかではない。

 

「それで、君は何者だ? そのシンフォギアは『ガングニール』だろう? まさか我々の知る『ガングニール』装者と別に、もう一人の装者がいるとは思わなかったが」

「……私は」

 

 弦十郎の問いかけに対し桃色の髪の女性は一歩前に出ると、凛とした表情のまま口を開いた。

 

「私の名前はマリア……貴方は二課の司令、風鳴弦十郎ね?」

「ああ、そうだ」

「であれば、この状況もモニターしているんでしょう? 私たちは『F.I.S.』――貴方達の組織にいる先史文明時代の巫女、フィーネを引き渡してもらいたい」

「……詳しいことは置いておいて、先のノイズは君達の仕業ではないと?」

「ええ、私たちは何の罪もない一般人の命を脅かすようなことはしないわ。偶々ノイズが発生していたから、助力に来ただけだもの」

 

 マリアと名乗った桃色の髪の女性は、シンフォギアを解除して普段着に戻って見せる。武装解除と攻撃の意識がないことを暗に示しているのだ。弦十郎もそれを見て両手に握っていた鞭から手を放した。

 ノイズが彼女たちの手によるものではないと証明されたわけではないが、それでも武装解除した相手に対して一方的に攻撃するようなことを、弦十郎はしない。

 

「一先ず……はいそうですかってわけにはいかない。現状、我々には彼女の力が必要だからな」

「そう……まぁそうなると思っていたわ。なら、フィーネとの話し合いの場をセッティングしていただけるかしら?」

「それに応じる必要があるとでも?」

「あら? 応じた方がそっちにとっても都合が良いかもしれないわよ? 先のノイズ、明らかに意図的に出現させられている。こんな人通りの少ない場所に密集して現れるなんて、人を襲う存在がするかしら?」

「……」

「なんらかの意図があって出現させられていたのだとしたら、一度では終わらないわよ。その時、少しでも戦力があった方が多くの命を救えるでしょう?」

 

 マリアの言葉は否定できなかった。

 結果的に、ではあるが、今回のノイズの被害者は少ない。それも今までのノイズの犠牲者と比べても圧倒的に。マリアの言う通り、意図的に人通りの少ない場所にノイズを出現させた人物がいるのだとしたら、二度三度同様のノイズ出現があってもおかしくない。

 ましてアルカ・ノイズなんていう、今までのノイズと違う特殊なノイズなのだ。明らかに何者かの意図が隠されている。

 

「……ノイズ出現の際、君たちが助力してくれるということか?」

「ええ……それに、こちらのシンフォギア装者は私だけじゃない。私以外にも三人、シンフォギアを纏える装者を抱えているわ」

「装者が、四人……!?」

「この戦力は、喉から手が出るほど欲しい筈でしょう?」

「……わかった。会談の場は早急に用意しよう……但し、俺も同席させてもらう。そちらの戦力を確認する意味でも、そちらの装者も全員同席してもらえるか?」

「いいでしょう、元々そのつもりだったしね」

 

 シンフォギア装者、それは今の弦十郎にとって、二課にとって、まさに喉から手が出るほど欲しい戦力である。アルカ・ノイズという敵にだけではない、球磨川禊や安心院なじみという怪物を相手にする上で、戦力は多いに越したことはない。

 

 マリアは連絡先を書いたメモを弦十郎に手渡すと、用意が出来たらここに連絡するようにと告げて去っていく。

 マリアはシンフォギア装者ではあるが、今の段階で犯罪者ではない。強制的に連行することはできなかった。

 

「……さて、雪音クリス君」

「う……なんだよ」

 

 どさくさ紛れに逃げようとしていたクリスを、弦十郎は呼び止める。

 今までならシンフォギアによって向上した身体能力で逃げられたかもしれないが、現在は弦十郎も完全聖遺物を身に纏った状態だ。逃げようにも簡単に追いつかれることはクリスにも理解できている。なにせ一度は身に纏ったことのある代物なのだ、その効果の大きさは十分に身に染みているのだ。

 

「君は一緒に来てもらうぞ」

「……ちょっと待ってくれ、逃げたりしねぇから」

「響君のことが気になるなら安心してくれ……こんな状況だ、響君の方もこちらで保護する」

「チッ……把握済みってか、つくづく気に入らねぇな……おら、どこへでも連れてけよ」

 

 響のことが気になり、一度帰らせてもらおうと思ったクリスだったが、それも弦十郎の言葉で霧散する。

 自分たちの居場所も把握されていたのだと知って、心の中で唾を吐くクリス。シンフォギアを解除し、武装解除した状態で両手を前に出しながらそう言った。

 

 手錠はないが、弦十郎は大人しく従うクリスに頷きながら指令室に通信を送る。響の保護に人員を回すように言ったのだろう。

 

「こちらとしても状況が変わったのでな……心配するな、悪いようにはしない」

「どうだかな……」

 

 フィーネが仲間に加わっていることをどう説明すべきかと思いつつ、弦十郎はクリスを抱え上げた。『ネフシュタンの鎧』を身に着けている以上、抱えて駆けた方が早いと判断したからだ。

 クリスはもうどうにでもしろとばかりに何も言わなかったが、視線はずっと響のいる廃ビルの方へと向いていたのだった。

 

 




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