◇終 戦姫絶唱シンフォギアにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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第三十一話 次の一手

 エルフナインとフィーネのタッグによってシンフォギアの強化改修プランが練り始められてから、三日。元々エルフナインの頭の中で構築されていたプランもあり、シンフォギアに組み込まれる聖遺物は『魔剣ダインスレイフの欠片』が使われることになった。

 プランネームは、『プロジェクト:イグナイト』。

 これは融合症例である立花響が度々見せた暴走状態の出力を、装者が理性的に制御できるようになる、という強化を目指したプランである。そのための『魔剣ダインスレイフの欠片』なのだ。

 この聖遺物は魔剣と名前が付いているように、ひとたび抜剣すると、犠牲者の血を啜るまでは鞘に収まらないとも記される曰くつきの一振りであり、極めて高い危険性を持つ呪いの剣だ。二人はこの聖遺物を使うことで、装者を強制的に暴走状態に持っていき、爆発的に出力を高めることが出来ると想定している。

 無論そのままなら立花響が見せたように理性のない暴走状態に陥ってしまうので、装者の理性を守るための制御装置(セーフティ)を設置する。

 

 結果、装者は暴走状態の爆発的な出力を得たまま、制御装置によって守られる理性によってそれを自分の意思で扱うことが出来るというわけだ。

 

 ただ、呪いの魔剣というだけあって、この強化によって実装される決戦機能『イグナイトモード』を扱うには装者の強い意思が必要だ。呪いの力に負ければ、心が折れて戦闘不能になってしまうだろう。

 

「今のクリスにそれを御せるだけのメンタルは期待できないわ」

 

 故に、フィーネはそこが一番の問題だと考えていた。

 エルフナインも二課の現状は聞いている。その上でフィーネの意見には賛成だった。

 

 現在二課の装者は全員精神的にかなり不安定な状態にある。この『イグナイトモード』を実装したとしても、彼女たちは間違いなく呪いに飲まれて戦闘不能になるだろう。

 そんな状況でわざわざ危険な機能を実装するのは自分たちの首を絞めるだけだ。

 

「現在二課に所属している装者は風鳴翼さんと雪音クリスさんのお二人だけ……その内動けるのは雪音クリスさんのみですから……ボクたちが慎重にならないといけません」

「そうね……これは『魔剣ダインスレイフの欠片』だけでは厳しいわ……だから、純粋に装者の力になるものが必要になる……ここは『デュランダル』も使いましょう」

「二つの聖遺物を組み合わせるんですか? ですがそれは……一歩間違えれば『デュランダル』のエネルギーが『ダインスレイフ』の呪いを強化してしまう可能性だってあります。そうなれば装者への負荷が甚大に……最悪絶唱の負荷以上のダメージを負いかねません!」

「元々聖遺物から作られているシンフォギアに別の聖遺物を組み合わせること自体初の試みよ。しかも相手は神以上の人外なんだから、こっちも相応のリスクを承知でやるしかない」

「……錬金術の基礎は理解、分解、再構築です。全ては対象物のあらゆる情報を解析して理解することから始まります。細かな部分まで徹底的に解析して、可能な限り安全なシステムを構築します!」

「ええ、人体と聖遺物の融合も不可能ではないと証明されているのだから、必ず方法はあるわ」

 

 フィーネの言葉を聞いて、エルフナインは彼女が何をしようとしているのかを察していた。つまり魔剣の呪いに対抗するため、『デュランダル』の"不滅不朽"の性質を利用して装者の精神を守るシステムを構築しようというのだ。

 だが元々無尽蔵のエネルギーを持つ聖遺物でもあり、その防御システムは魔剣による意図的な暴走すらも阻害してしまう可能性が高く、防御にある程度の穴を作ったとしてもそこから呪いが侵食して装者の精神を蝕む可能性も十分にある。最悪のケースは、そうして入り込んだ呪いが『デュランダル』のエネルギーを使って無限に膨れ上がり、装者に甚大なダメージを与えるかもしれないということだ。

 

 しかし上手くいけば『魔剣ダインスレイフの欠片』で手に入れた暴走出力を、『デュランダル』の性質で装者の精神を守ることで無制限に振るうことが可能となる。

 

 エルフナインはやるしか道がないことを理解し、即座にその解析とシステムの構築に取り掛かる。フィーネも同様にシンフォギアの改良のためのプログラムを組み始めた。

 

「時間がないのが、一番のネックね……」

「急ぎましょう……」

 

 それでも敵は待ってくれない。

 アルカ・ノイズが次に現れた時、解剖器官に対抗策を持たないシンフォギアでは一撃貰うだけで戦闘不能に陥ってしまう。

 

 二人の研究者は、募る焦りを抑えられなかった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 一方その頃、キャロル・マールス・ディーンハイムは拠点の玉座に座りながらオートスコアラー達と向かい合っていた。無論、球磨川もその場にいる。

 

「そろそろお前たちの出番だ。エルフナインも二課に潜り込ませた故、ドヴェルグ=ダインの遺産の呪われた戦慄もいずれ完成する。問題は装者の数が少ないことだったが、先のアルカ・ノイズの襲撃で思わぬ組織が出てきたからな……二課と協力関係を結ばせれば装者の数も問題なくなるだろう」

「と、いうかぁ~、ガリィ達が動く前に二課の状況って壊滅的じゃありませんでしたぁ?」

「挨拶とはいえまさか内部に侵入するとは思わなかったが、球磨川に情報収集させた結果、現状二課で使い物になるのは先のアルカ・ノイズの襲撃にも出てきた『イチイバル』の装者のみだろうな……余計なことをして装者を一人壊したようだしな」

「『あはは』『まさかあのくらいで壊れるなんて思わなかったんだよ』『ほら、だって正義の味方なワケじゃん?』『もっと骨があると思ったんだけど』『想像以上に脆い剣だったね』『ごめんごめん』」

 

 キャロルの目的はエルフナインが伝えた通り、チフォージュ・シャトーの完成。そのために必要なものを現在収集している最中ではあるが、そのためにはシンフォギア装者とオートスコアラー達の協力が必要だった。

 そしてその手段の一つが、エルフナインを使ったシンフォギアの改修。キャロルほどの錬金術師がみすみすエルフナインを逃すわけがない。そこにはきちんと理由があり、二課に『ドヴェルグ=ダインの遺産』を運ぶ意図があった。

 

 そしてシンフォギアを強化させ、呪われた戦慄を作り上げることがキャロルの目的。

 

 故に、球磨川が二課の中に現れたのは、装者の情報と二課の戦力を確認するためだったのだ。結果的に球磨川は風鳴翼を行動不能に追い込んでしまったので、キャロルの計画が頓挫するところだったのだが、『F.I.S.』の登場によって追い風になったのは嬉しい誤算である。

 

「ともかく、呪われた戦慄の完成とレイラインの解放が優先事項だ。ガリィ、次はお前がアルカ・ノイズと共に騒動を起こせ……そうすれば二課は『イチイバル』を、おそらく『F.I.S.』なる組織も出張ってくる。オレ達の力が脅威であると認識させれば、二課と『F.I.S.』なる組織の協力も確実なものにできるはずだ」

「了解です☆ ガリィに任せてくださぁいな♪」

 

 カランコロン、と音を鳴らしてバレリーナの様なポーズと共に了解の返事をする青いオートスコアラー、ガリィ。そんな彼女から視線を切り、他三体のオートスコアラーにも指示を下す。

 

「ミカはここで待機だ、レイアとファラはレイラインに関する情報を集めてこい……球磨川」

「『ん?』」

「ガリィに協力しろ。ある程度こちらが脅威だと思わせればいい。特に『F.I.S.』の方にだ……くれぐれも、装者を使い物にならない状態にするなよ」

「『了解したよ』『基本はガリィちゃんに任せればいいってことだね!』」

「ああ」

 

 赤い色のオートスコアラー、ミカは少し退屈そうな顔をし、黄色いオートスコアラーのレイラと緑色のオートスコアラーのファラは静かに頷いた。

 球磨川はガリィと同行するということで、球磨川の方はいつも通りヘラヘラ笑顔を浮かべながらそれに同意。だが何をやらかすかは分からないのが球磨川。そこはガリィが手綱を握れということだと察して、ガリィは嫌そうな顔をした。

 マスター故に文句は言えないものの、球磨川と一緒にいる役目は人形でも嫌らしい。

 

 するとキャロルが指示を出し終えたのを見計らって、球磨川が口を開いた。

 

「『そうそう』『キャロルちゃん』『ちょっといい?』」

「……なんだ?」

 

 球磨川が何か言う度碌なこと言わないので、キャロルは苦い表情をしたが、何か重要な報告かもしれないと思えば突っぱねることもできない。

 何かと聞けば、球磨川は続ける。

 

「『そろそろあっちの方がこっちに来るらしいから』『準備しておいた方がいいかも』」

「……そうか……全く、次から次へと……オレの方で準備しておく。具体的にどれくらいで到着するかはわかるか?」

「『まぁ』『一、二週間くらいなんじゃないかな?』『諸々回収するものもあるらしいし』」

「わかった」

 

 キャロルが頷いたのを見て、球磨川は伝えるものは伝えたとばかりに離れていく。ガリィの方へ行くのを見れば、指示したことはきっちりやるつもりらしい。

 やる気があるのかないのか分からない奴だと思うも、そもそも球磨川はキャロルの駒ではない。オートスコアラーと違って彼はキャロルの協力者であり、球磨川には球磨川の目的がある。

 

 キャロルは球磨川と行動を共にするようになった時のことを思い出し、大きく溜息をついた。

 

 神経が疲労するのを感じるが、やらなければならないことは多い。

 球磨川の相手をするのも一々神経を擦り減らしてしまうのだが、キャロルはキャロルでなさなければならないことがある。ここで立ち止まっているわけにはいかないのだ。

 

「はぁ……」

 

 気づけばミカを除いて他に誰もいなくなっている。

 必要な指示は受けたと判断してそれぞれ行動に移ったのだろう。ミカは台座でポーズを取ってじっとしているので、静かな空間がキャロルを包んでいた。

 

「……あと少しだ……頑張らないと……見ててね、パパ」

 

 先ほどまでの気丈な振舞いとは打って変わって、天井を仰ぎながらキャロルは柔らかい口調でそう呟いた。

 

 

 




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