◇終 戦姫絶唱シンフォギアにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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第四十話 強くなるために必要な思いは

 キャロルと二課が戦っている最中、またそこに手を貸しているパヴァリア光明結社の存在。その更に裏で、パヴァリア光明結社のトップである統制局長がリディアンの地に足を踏み入れていた。

 これだけ水面下で複雑に絡み合っている組織と組織が出てきているのだ。表だけではなく裏でも複雑な鬩ぎ合いを行っている。二課という一組織だけで対処できる範疇を大きく逸脱していることは間違いない。

 

 キャロル・マールス・ディーンハイム、二課のシンフォギア、フィーネ、安心院なじみ、そしてパヴァリア光明結社。これだけの超常の存在たちが、同時期に同じ場所に集まるなんてことがありえるだろうか。いや、確実になんらかの手が加わっている。

 

「ねぇアダム? これから何をするの? 私久々に目覚めたんだし、アダムとデートしたいなぁ~!」

「いけないよ、今は。僕らにはあるからね、やらなければならないことが」

「ぶぅ~、アダムのいけずぅ! でもそんなところも好き!」

 

 パヴァリア光明結社の統制局長、アダム・ヴァイスハウプト。

 完成されたような美形を持ち、白い衣装に身を包んだ男だった。珱嗄も感じていたリディアンの緊張感をひしひしを受け止め、心地良さそうに笑みを浮かべている。

 そしてそんな彼の隣にいるのは、ガリィやファラ同様に自我を持った人形だった。オートスコアラーなのだろうが、ガリィ達よりも幾分人形らしい見た目をしており、間接が動く度にカシュンと音が鳴っている。アダムに対して非常に強い好意を抱いているのか、人形であるにも関わらず乙女チックな言動が目立っていた。

 

「もうすぐ訪れる、忌まわしきカストディアンに復讐する時が」

 

 空を見上げ、薄らと見える昼の月を睨みつけながらアダムは呟く。

 かつての先史文明時代、フィーネが本当の意味で生きていたその時代に、人類に統一言語や聖遺物という技術を与えたにも拘らず、最後は『バラルの呪詛』を施すことで人類を引き裂いた存在。

 人が神と崇め、そして恐れた存在である。

 

 アダム・ヴァイスハウプトはその身に積年の憎悪を滾らせながら、月から視線を切る。

 

「まもなくだよ、ティキ……出番は。必ず手に入れる、"神の力"」

 

 この物語における最後のピースが、リディアンに集まった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ガリィとファラ、二体のオートスコアラーを撃破するのであれば、クリス達の優位は盤石だった。

 『イグナイト』を纏った五人の装者がいる以上、二体にとって彼女たちの戦闘スキルが多少劣っていようと、その出力でゴリ押しされればひとたまりもないからだ。現にガリィもファラも徐々に追い詰められており、あとがない状況にいる。

 

 だがこの優位を形作っているのは間違いなく、雪音クリスだ。

 

 ガリィもファラも、クリスによる後方射撃に思うように動き回ることが出来ないでいる。行きたい場所に行かせない。不利な場所へ誘導する。少しの隙も的確に撃ち抜きにくる。そうしてあらゆる行動がクリス一人に制限させられていた。

 少し前であれば此処までの難敵だと思わなかったというのに、なにが彼女を変えたのかとすら思う。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

 ――――"HORIZON†SPEAR"

 

 マリアのアームドギアから放たれるエネルギー砲がガリィとファラの間に放たれ、溜まらず別々の方向へと飛び退く二体。

 だがその飛び退いた先には、それぞれ切歌と調が待ち構えている。大鎌に狙われるガリィと、丸鋸に囲まれるファラ。どちらも氷の盾と大剣でソレを防ぐが、そうして動きが止まったところにセレナが攻撃を仕掛ける。

 

 ――――"FAIRIAL†TRICK"

 

 二振りの短剣がファンネルの様に動き、それぞれ動きの止まった二体を狙い撃つ。

 ガリィは盾を展開しながら、片手で氷の剣を生み出し弾き返そうとするも――それに気を取られた瞬間、クリスの弾丸が氷の剣を持った腕を肘から撃ち抜いた。

 

「ッ!? アグッ……!!」

 

 驚愕する間もなく、セレナの短剣がガリィの胸に突き刺さる。

 

 またファラもその短剣を防ぐべく調の丸鋸を逸らし、短剣の方へと調を放り投げる。だが結果投げられた調の身体でクリスが隠れ、短剣を大剣で弾いた時、調の影に隠れて移動したクリスが背後からファラを撃ち抜いた。

 互いに致命的なパーツを打ち抜かれたのか、動きが緩慢になる。

 

 そしてその隙を見逃すほどクリス達も愚かではない。

 

 ギギギ、と錆び付いた様に動きが悪くなった二体。そこへ迫るのは切歌と調の二人。

 ファラとガリィは最後の足掻きなのか、一瞬のアイコンタクトを交わしたのち、迫りくる切歌と調に対し、別々に踏み込んだ。ファラは調の前に、ガリィは切歌の前に。

 何をしようとしているのか分からなかったが、それでも好機と見た二人は止まらない。

 

「はぁぁぁああ!!」

「デェェェス!!」

 

 そして同時に振り下ろされた大鎌と丸鋸により、ガリィとファラは同時に両断された。

 

「――――まぁ、任務は達成ですし、良しとしましょう」

「アハッ☆」

 

 ファラとガリィが最後に笑みを浮かべ、機体が限界を迎えて爆発する。

 何かを成し遂げたような表情、そして不穏な言葉を残した二体に、クリス達は怪訝な顔をするが、それでもオートスコアラーを打倒したのには変わりない。今度は完全に破壊したのだから、ガリィの様に再度出てくることもないだろう。

 

 で、あれば。

 

「ふー……袋叩きみたいなもんだったが、一先ず勝利だな」

「そうね……彼女たちの言葉を信じるのなら、まだ二体のオートスコアラーがいるわけだし、敵の首魁も健在。まだまだ油断できないわ」

 

 クリスは大きく息を吐き出してギアを解除する。マリアたちも同様にギアを解除したが、今回はなんとか数の差で勝利出来ただけだ。仮に此処にクリスが居なければそれだけで戦況が崩れていた可能性は十分にあった。

 ともかく、二課と『F.I.S.』が同盟を組んで初の戦闘では勝利を収めることが出来たということが大事である。

 

 何故なら今回の戦いに勝利できたことは、突然に表れた世界を破壊しようとしている錬金術師に対し、自分たちの力は通用することの証明に他ならないからだ。

 装者の持つ素の出力は未だに未熟なままであるが、現時点でギアが引き出せる暴走出力を使いこなす『イグナイト』であれば、戦える。

 

「こちら現場、戦闘終了……帰還する」

『こちらでも確認した、全員怪我はないか?』

「とりあえずはな、早めに『イグナイト』で押し切ったのが効いたみたいだな」

『了解した。体内洗浄の準備は整っている、帰還次第医療ルームへ向かってくれ』

 

 通信を用いて弦十郎と連絡を取ったクリスは、二三言言葉を交わすと、マリア達に視線を送り、帰還を促す。マリア達も初の『イグナイト』起動により負荷は感じているのだろう、やや重たい身体を動かして帰路に着く。

 今回は勝った、だが次はどうなるか分からない。

 クリスは疲れを感じながら空に浮かぶ昼の月を見上げる。

 そして数秒掛けて息を吸い、大きく吐き出して歩き出した。

 

 戦いはまだ、始まったばかりである。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 クリス達が帰還し、体内洗浄を終えてから。

 既に馴染みとなった二課のミーティングルームにて今後の方針が会議されていた。前回のメンバーに加えて、エルフナインも会議に参加しており、今後のキャロルの動向に対する対策を練ることが本題である。

 

 このメンバーの中で唯一エルフナインだけが、キャロルに通ずる情報を持っている。なにせ元々は彼女の元からやってきたのだから、当然のことだ。

 

「まずは改めてキャロルの目的をお話しますね」

 

 故に、この会議で最初に口を開いたのはエルフナインだった。

 

「キャロルの目的は、この世界を分解し、その全てを識ること。その為にワールドデストラクターであるチフォージュ・シャトーを完成させようとしています」

「敵の戦力は?」

「キャロル自身の戦力はおそらく、現状の装者の皆さんが立ち向かっても太刀打ち出来るかどうかわからないほど高いです……あとは、ガリィとファラを撃破したことで残り二体のオートスコアラーがいます。どちらも戦闘においてはガリィやファラ以上の性能を備えているので、今回の様にはいかないと思います」

 

 エルフナインの説明に対してクリスが敵の戦力を問いかけると、エルフナインから出てきたのはあまり良くない情報だった。待ち構えている敵の強大さに、正直二課のピンチは未だに継続している。

 クリスと『F.I.S.』の装者の連携は未だ調整中であり、シンフォギアの機能やフォニックゲインの知識から出来そうなことは全てフィーネたちから上がってきているが、それもすぐさま出来るかと言えばそう簡単にはいかない。

 

 シンフォギアの機能の核は、やはり装者自身の歌から生み出されるフォニックゲインだ。その出力が低ければ、シンフォギアの真価は発揮できない。逆を言えば、フォニックゲインさえ高めることが出来れば出来ることは多いということだ。

 ならば、『歌』という観点からアプローチするのは当然のことである。

 

「装者同士のユニゾンであればフォニックゲインは飛躍的に高めることが出来ることは、切歌君と調君の例から確認出来ている。であれば、いかなる状況、どの組み合わせでもユニゾンして戦うことが出来るようにする必要があるな」

「加えてシンフォギアには約三億個にも上る機能制限が掛かっていて、これは装者の技量や戦闘スタイルによって段階的に解除されていくようになっているの。つまり貴女達の実力を底上げすることは最優先ね」

 

 この場にフィーネというシンフォギアを作り上げた専門家がいることは、二課にとって本当に幸いだっただろう。シンフォギアを纏って戦うにあたって、どのように何を伸ばすべきなのかを的確に指示できる人間なのだから。

 装者達は真剣にその話を受けて、深く頷く。

 すると今度はウェル博士が口を開いた。

 

「僕は今回『イグナイト』が着想を得たというギアの暴走状態について考えてみました。これを見てもらいましょうか」

 

 ウェル博士がそう言うと、モニターに立花響の暴走時の画像が映し出される。漆黒のオーラを身に纏い、まるで獣の様な姿へと変貌した状態だ。

 

「この暴走状態は装者自身が何らかの要因で負の感情が限界を迎えて増大し、制御不能になった場合に起こるものです。言い換えれば装者の歌がマイナスエネルギーとなるフォニックゲインを生み出した結果と言えます」

「まぁ、確かにそうだな」

「であれば、高レベルのフォニックゲインを生み出すことが出来れば、ギアは暴走状態とは真逆の高出力状態へと移行する可能性もありえます。それこそ、シンフォギアにはいくつもの機能制限が付いているわけですからね」

「!」

 

 ウェル博士は生物学に富んでおり、フィーネとは別で『LiNKER』をつくりあげ、ギアとの適合率を引き上げることに成功している。ならばギアとの適合率を引き上げ、その先にどのような変化が起こるのかを予想することは、彼にとって専門分野とも言えた。

 暴走状態があるのなら、暴走せずにその出力を引き出した状態だってあるはずだと考えたのだ。

 それは意図的に暴走状態を引き起こして制御する『イグナイト』とは全く逆。

 マイナスのエネルギーではなく、プラスのエネルギーでもってギアを進化させる考えた方である。

 

「なるほどな……どうなんだ、了子君」

「……確かに、ありえない話ではないわね。そもそも暴走状態ですら響ちゃんが居なければ発覚しなかったもの、その逆があってもおかしくない」

「……ウェル博士、その状態に移行するために必要なフォニックゲインを生み出すことは、現時点で可能だろうか?」

「無理、でしょうね。そもそもシンフォギアはあくまで聖遺物の力を引き出す手段であって、装者の意思が伴わなければ幾ら適合率が高かろうと、生み出されるフォニックゲインは底が知れます。大事なのは――」

 

 ウェル博士は装者達の方へと視線を向けて、

 

「――彼女たちが強い意思と、覚悟を持って戦うことです」

「強い意思と、覚悟……?」

「そちらにいる雪音クリスさんとの戦闘記録を見させていただきました。明らかに二課と敵対していた時と今では、戦闘時のポテンシャルに圧倒的な差があります。それほど時間が経っているわけでもないのに、何故此処までのパワーアップを果たしているのか、疑問に思いませんか?」

 

 確かに。弦十郎達もそれは疑問に思っていたことではあった。

 最初にガリィがアルカ・ノイズを率いて現れた時も、弦十郎はクリスの実力を鑑みて、『イグナイト』無しにノイズの掃討は難しいかと思っていた。にも拘らず、クリスは素の状態でアルカ・ノイズを掃討し、ガリィですら終盤まで『イグナイト』を使わずに戦ってみせた。これは予想外のことである。

 ウェル博士はこれに自分なりの結論を出していた。

 

「つまり、シンフォギアは装者自身の覚悟や意思の強さによって、強くも弱くもなるということです。雪音クリスさんには今、明確な覚悟がある……だから今回も二体のオートスコアラーに対して終始優位に立ちまわるだけの力を発揮出来た」

「ウェル博士に言われて僕も戦闘記録を確認しましたが、確かにクリスさんの通常戦闘時のフォニックゲイン値は、以前とは桁外れに上昇していました」

 

 ウェル博士の話に補足するようにエルフナインがモニターにデータを出す。そこにはクリスの生み出すフォニックゲイン値の比較があった。二課と敵対していた時と、今回の戦闘時、その値には明らかな差があり、これを偶然と片付けるにはあまりに高い上昇率であることが見て取れる。

 ウェル博士の論が間違っているとしても、装者の精神状態が生み出されるフォニックゲイン値に大きな影響を与えていることは疑いようもない。

 

「で、あれば、装者それぞれが高いフォニックゲインを生み出す方法はたった一つ」

「それは……?」

 

 ウェル博士も気分が乗ってきたのか、勿体ぶるように指を一本立てた。

 それに対して全員が興味を示しているのを確認してから、一瞬の間を置いてから高らかに言い放つ。

 

「―――つまり、"愛"ですよ!!!」

「何故そこで愛!!?」

 

 ウェル博士の出した答えに、マリアが勢いよく立ち上がりながらツッコミを入れた。

 

 

 




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