炎嗟の鬼   作:まっしゃー

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初めて小説を書いたので、意味のわからない場面や言葉の使い方が下手な部分が沢山あると思いますのでどんどん指摘してくださると嬉しいです。


プロローグ

 時は大正、当たり障りのない日々。朝起きては薪を割り、昼には割った薪を近くの村へ運び、割った薪と少量の銭を交換してもらいその銭で、茶碗いっぱいの飯と胡瓜の漬物を食べ味噌汁をのむ。昼から夕方にかけては古本屋で本を読みら困っている人いれば出来る限りの助けてあげる。暗くなる前には家に帰り、暗くなれば床に着く。そんな、同じような日々を一郎は過ごしていた。側から見れば、なんの変哲のない生活であるが面白味の欠ける生活でもある。しかしながら、親のいない一郎にとってはそれが当たり前だし、これからもずっと続いていくものだと思っていた。一郎にとってこの生活が一郎の全てだったのである。

 

 ある冬の日、いつものように薪を割っていた一郎のもとに女性がやってきた。

 「おはようございます。華一と申します。今回は一郎君にお願いをしにきました。」

一郎がいつもお世話になっているお食事処の女将さんであった。

 「わざわざこんな山奥にお越しいただきありがとうございます。お茶でも出しますのでどうぞお入りになってください。」

 女将さんが相手であったので一郎は華一のお願いを聞こうと思い、家へと案内した。

 

 一郎が華一にお茶を出し、ちゃぶ台の対面に座ったところ華一はぽつぽつと喋り始めた。

 「私にはちょうど一郎君ぐらいの歳の娘がいるのですけど、最近めっきり元気がなくなってしまいましたの。理由は分かっていまして、華一の親友だった子が突然と消えてしまいましたの。すぐに見つかると思っていたのですけど、居なくなってからもう随分と日にちが過ぎてしまい、それに伴って華一も塞ぎ込んでしまいましたの。」

そう言い、華代はお茶を一口飲んでから話を続けた。

「だから、もしよかったら一郎君が華一の友達になって欲しいの。新しい友達を作っても親友だった子のことは忘れるはずはないけれども、少しは元気になると思うの。だからお願いできるかしら?」

そう言ってまた、お茶を一口飲んだ。

これを聞いて、一郎が思ったことは疑問であった。何故、みすぼらしく、学も銭もなくつまらない子供に頼むのであろうと思っていたのであった。

「どうして俺なのでしょうか?きっと俺以外に華代さんを元気にできる人がいるはずです。俺みたいなつまらない人間が人を元気にさせることなんてできません。申し訳ございませんが、華一さんのお願いを叶えることができません。」

そう言って一郎は頭を深く下げた。きっと失望させてしまったのだろうと思い、華一の顔を覗き込んだ。しかしながら、一郎の考えとは真逆で華一は花のような笑顔を浮かべていた。

「やっぱり私の目に狂いはなかったわ。あなたはきっと華代を元気にしてくれる。さぁ、善は急げとも言いますし、今から行きましょう。」

そう言って華代はお茶を飲み干した。

 

 華一が経営しているお食事処を前に一郎は混乱の極みの最中にいた。俺のどこに華代を元気にさせる要素があるのかまた、なぜ自分はお食事処の前にいるのか、頭の中に浮かんでは留まり続ける疑問に対し、答えを出そうとして固まっている一郎に対して華一が声をかけた。

 「もう太陽も登りきってあったかくなってきましたし、ご飯を食べましょう。」

そう言って一郎の前にお茶碗一杯によそいだお米と胡瓜の漬物と味噌汁が乗ったお盆が置かれた。

 「いつも食べているのはこれであってたかしら。」

 それに対して一郎は肯定すると華代は満足そうな顔をして厨房へ消えていった。

 出されたものは食べねばならぬし、お腹も空いていた一郎は目の前のご飯を頬張った。

 

 ご飯を食べ終えた頃合いにまた、華代が戻ってきてこう言った。

 「華一は今奥の部屋で寝ているから、是非あって行って頂戴。」

自分には華一に対して何ができるか、いや、何もできないだろうな。などと考えながら渋々、華代の言葉に頷き、奥の部屋に行こうとしたところ華代が一郎に声をかけた。

 「一郎君は自分のことをつまらない人だと言っていますけど、私はそうは思いませんわ。だって、ご飯を食べてる時、すごく美味しそうに食べるんですもの。お話をする時もしっかり話す人の目を見て、しっかり言葉を聴こうとしてくれている。一郎君はもっと自分に自信を持ってもいいと思いますよ。」

 そう言って華代は仕事に戻っていった。

 その時、一郎の心の中にはほわほわとした温かいものが広がっていた。初めて経験したほわほわとした気持ちであったが、この気持ちに対して戸惑いはなくずっとこの気持ちに浸っていたいと思ったほどであったが、華代に言われたことを思い出した一郎は奥の部屋に歩みを進めた。

 

 「ごめんください。俺は華代さんに頼まれて参りました一郎と申します。もしよければお話でもしませんか?」

そう言い一郎は襖を叩いてみた。しかし、返事は一向に返ってこず、もう一度襖を叩いても同じ結果であった。会話すらできずに終わってしまうのかと思い、おろおろしている一郎の前の襖が突然開いた。

 「あなたが一郎ね!私が華一よ!よろしくね!」

 1日のうちにこんなに困惑する日はそうそうこないだろうと一郎は思った。華代から聞いた話では華一は塞ぎ込んでいて、それをなんとかするために俺はここに来たはずだ。そう思った一郎はありのままに思ったことを華一に聞いてみた。

 「失礼を承知で伺いたいのですが、どうして元気なのでしょうか。元気でいることはとても良いことだと思いますが華代さん曰く友達が居なくなってしまって塞ぎ込んでいるとお伺いしたのです。それを元気付けるために俺はここにきたのですが…。」

 そう言った一郎に対し華一はカラカラ笑いながら答えた。

 「あ、あれ全部嘘。一郎をここに呼び寄せるための嘘だったんだよ。」

「嘘とはどういうことでしょうか?俺はここに何をしに呼ばれたのですか?」

それに対して華一はことのあらましを話し始めた。

 曰く、この町の薪の供給は一郎一人でで行っていたとのこと。また一郎は、困っている人をよく助けていたし、礼儀も正しかった。しかしながら、親もいない上に1人で町から離れた場所に住んでいる一郎を思った町の人々が一郎を助けてあげたいと思い、なんとかしようと考えたのがこの嘘であった。華一は誰に対しても花のような笑顔を浮かべる町一番の可愛らしい娘であるしまた、一郎と年が近いと思われたので一郎の話し相手として選ばれたのであった。つまるところ、いつもつまらないように生きている一郎を助けるための町全体の嘘であったのだった。

 「これから一郎は私達と一緒に住むんだよ!それでもって、私たちと家族になるんだ!」

 そう言って華代は一郎の手を取ってこう続けた。

 「これから私達は家族だから敬語はなし!それに、ご飯も一緒に食べるし一緒にこの家に住むんだよ!じゃあ、そういう事で一郎の部屋の準備してくるから少し待ってて!」

そう言った華一はぱたぱたと部屋から出ていった。

 このことが強引であることは一郎自身、そう思っていたし一郎は家族になることに返事をしもていなかった。それ故に家族になるということも嘘ではないのかと、考えれば考えるほど、考えることが増えていってしまった。そのため、これからなるはずの家族というものから考えてみることにした。家族というものは存在していると漠然と知っている一郎ではあったがそれがどういうもので、どのような事を与えてくれるのかは見当もつかなかった。そのため心の中に未知への恐怖が広がり、一郎は地面がぐらぐらと揺れている感覚に陥った。普段怖いものを感じない一郎にとってそれは初めての恐怖の感情であった。

 

 「改めて家族となりました。一郎と申します。不束者ですが末長くよろしくお願いします。」

 その一郎の言葉を音頭に晩餐が始まった。

 「こら!一郎、家族なんだから敬語はいらないんだよ!」

「そうよ。一郎君はこれから一緒に暮らしていくの。きっと楽しいこと、辛いこと色々なことがあると思うけど、それを一つ一つ吟味していくのよ。」

そう言って華一はお味噌汁が入ったお碗を一郎の前に置いた。一郎はお碗を受け取ってお味噌汁を飲んだ。

 

 「どうして一郎泣いているの?」

 

そう言われるまで一郎は自分が泣いていることに気づかなかった。

 「自分がどうして泣いているのかわかりません。だけど、いつも飲んでいる同じ味の味噌汁なのに暖かくて、暖かくて…」

蝋燭で照らされた一郎の顔は涙でぐしゃぐしゃであったが年相応のあどけない笑顔を浮かべていた。

 

 そこからの一郎の生活は矢継早と過ぎていった。朝は薪を割ることには変わりないが一郎の側には華代がいつもいるようになった。また、いつも一日一食であった一郎の食事事情にに対して喝を入れた華一が、しっかり三食分の食事を一郎に強引に食べさせた。そのおかげもあって細かった一郎の身体はみるみるのうちに大きくなっていき、今では健康体そのものであった。そんな当たり障りのない幸せな日々を一郎は好きであった。そうして、幸せの一つ一つを心に刻みながら過ごしていくうちに一郎が華代の家族になって五年がたった。

 

 「えー!一緒に行こうよ!」

太陽も西へ傾き、薄暗くなった町の中、華代の声が響いた。

 「だめだ。今から前の俺の家に戻って返ってくるだけでも一刻はかかるんだ。帰ってくる頃にはあたりは真っ暗で前にも進めないぞ。」

 そう言い一郎は荷物を背負った。

 「華一さん、今日はきっと帰ってこれないので向こうの家で寝ることにします。明日の早朝に帰ってくるので、朝ごはんをお願いします。」

「気をつけていってくるのよ。今夜は曇りだから月明かりを頼りにすることもできないし、決して無理しちゃいけないよ。」

「ありがとうございます。それではいってきます。」

「一郎!帰ってきたら約束守ってよね!」

 一郎は華代の言葉に頬を掻いてからうなずいた。

 

 一郎は道中に様々な思い出に浸っていた。5年前の今では家に帰ることに何も感情は湧かずただただ、歩みを進めているだけであった。しかし、華代と家族になってからはというもの少しでも一人でいる時間があると、寂しいような悲しいようなまるで世界の色が抜けていく様な感覚に陥るのだった。

 家族と言うものは様々な色を見せてくれる。それに彩られた人生というものはこうも素晴らしいものなのだと、一人この素晴らしい生活の余韻に浸っていた。

 また一郎にはしっかりと考えなければならないことがあった。それは華代との約束であった。

その約束とは、夫と妻の関係つまりは結婚しようとのことであった。一郎自身、華代は様々なものを与えてもらったし教えてもらっていた。また、この五年間ほとんど一緒に生活していたので自然と華代に対する恋心が芽生えていた。華代も一郎の事は弟の様な思いで接していたが、一郎の生まれ持った生真面目な性格や本の中で得た様々な知識を披露していくうちに自然と惚れていったのだという。そうやって両想いであると知ったのはつい最近のことであった。一郎は華代と結婚すること自体嬉しいことであり、結婚したいと思っていた。しかしながら、華代一家から様々なもらっている自分が華代自身をもらって良いものかとも思っていた。そのことを、華一に相談したら、堅物だなぁ、と笑われたのだが本人にとっては至って真剣なことであった。そうやって取り止めもないことを考えているうちに一郎の家についたのだった。

 

 「ただいま」

 家に着いた一郎は早速作業に取り掛かった。一郎が家に戻った理由と言うのはこれから本格的な冬が到来するため、薪をいつも以上に割らなければならなかった。そのため、少しでも多く割るために夜の内に一郎の家に来たのだった。一頻り薪を割り終えた一郎は湯を浴びて床に着いた。

 夜になってしまうと様々なことを考えてしまう。今まで過ごしてきたこの幸せな日々は次の日には水疱に帰すのではないか、寝てしまったら夢に覚めてしまうのではないか、そんな恐怖が浮かんでは消えていく。

 何気ない幸せこそが真の幸せなのだと知った一郎はそれが消えてしまうことが何よりも恐怖であった。そうやって恐怖で怯えている一郎を助けていたのは華代であった。震えてる一郎を抱きしめては子守唄を歌っていたのだった。

(何を暗いことを考えている。幸せはこれまでも、これからも続いていくんだ。怯える必要はない。)

 華代の約束に決心がついた一郎は眠りについた。

 

幸せが壊れる時には血の匂いがする…

 

それは偶然であった。一度寝たら朝まで起きない一郎ではあったがその時だけは違った。虫の知らせと呼ぶべきか、それとも第六感が働いたと言うべきか、とにかく何か違ったのであった。

 (なんだこの胸騒ぎは、何か大切なものが消えていくというか、すり減っていくというか、とりあえず嫌な感覚だ!)

その時だった。町の方向から微かに流れてくる鉄の匂いを感じたのは。その瞬間、一郎は駆け出していた。この匂いがただの勘違いなら、心配性の一郎だと笑い話で済む。しかし、もし自分の考えていることが本当のことだとしたら…そう思うだけで胸が張り裂けそうになる。しかし、町についた時は全てが遅かった。町から漂う強烈な血の匂いは嫌でも一郎に、最悪な想像を考えさせる。華代や華一だけは無事であると、確証もないただの理想にすがりながら一郎は華代の家に向かった。

 

 一郎が家に着いた時、目にしたものは赤黒い球体であった。普段家にこんなものは置いてはいない。また、その球体から漂う強烈な匂いに一郎は吐き気を催した。そして一郎は気づいた。気づいてしまった。その球体の正体は人であると。その人は華代と華一が着ていた着物を着ていると…

 「嘘だ…違う…間違いだ…華代じゃない、こんなのは華代じゃない…」

頭の中で、言葉で、心で、この球体は華代達の成れの果てではないと否定する。そうやって、一人家の中、棒立ちでぶつぶつと呪文を唱える様に否定し続けた…

 

一刻ほど時間が過ぎた時、一郎の家の扉が開いた。そのとき、一郎は心から安堵した。この球体は俺の勘違いだと。華代達は今帰ってきたのだと、そう思いながら一郎は玄関を見た。そこに立っていたのは、華代でも華一でもない一人の男、少なくとも一郎は対面した人物を男の人だと思った。

 「ごめんください。華代と華一を知りませんか?家に帰ったはいいものの家には悪臭のするおかしな物があるし、華代と華一は見つからない。もし知っていたら教えて欲しいのですが…」

 「おめぇ、その華代とやら華一とやらは花柄の着物をきた女のことかぁ?」

 声から話しかけている相手は男だと判断した一郎は、相手の育ちの悪そうな言葉遣いと男から漂う悪臭に眉をしかめながら答えた。

 「そうです!二人は俺の家族なんです。もし見かけたら居場所を教えてください。」

 その言葉を聞いた男は肩を震わせながら、男に負けず劣らずの悪臭を放っている球体に指を指しながら答えた。

 「クキ、クキケケケケ そりゃ知ってるとも。そいつはぁ、これさぁ。これがお前が言ってた女どもだぁ。俺が食べやすい様にくるくると丸めてやったんだぁ。ギャーギャー喚いて最高に煩かったがなぁ。けどまぁ、それをそ思い出してこいつを食うのもまた美味なんだろうなぁ。」

「おい、てめぇふざけたことをぬかすなよ。今はお前なくだらない冗談を聞きたい気分じゃあないんだ。さっさと知っていることを喋ろ。」

 一郎喋りながら男に詰め寄った。

 暗闇で全貌がわからなかった男の細部が見える様になると、一郎は男の異形に気づかされた。

長く伸びた爪、額を突き破って飛び出ている角。瞳孔は縦に割れ眼球は血走っている。そして何よりも顔の口がある部分に口はなく、替わりに鳩尾からヘソまで縦に割れていてそこが口になっていた。

 「お前さん、気付いてんだろぉ。その丸いのがお前が言っていた女どもだって、安心しろよなぁ。あれを喰った後お前も一緒に喰ってやるからなぁ。これで一緒だろぉ。だからさぁ、いただきます。」

 そう言って男は球体に飛び込んでいった。パキパキ、くちゃくちゃと音が鳴る中、一郎の心は怒りの感情によって支配されていた。一郎はこの球体の存在を見たときに理解していたのだった。コレが華代と華一の成れの果てだと、それ故に汚らしく全身を赤黒く染めながら球体を食べているこの男に身を焦がす様な怒りが湧いたのであった。

一郎は台所に置いてあった包丁を男に気付かれない様に取りに行きいまだに食事に夢中になっている男の首を刺した。

 「痛ぇ!何すんだテメェ!もういい!先にテメェから喰ってやる!」

 男は一郎を蹴り飛ばした。男が放った蹴りで、一郎は壁突き破り外に吹っ飛ばされた。たった一撃の蹴りを貰った一郎の意識は朦朧とし、内臓を痛めたせいで吐血をしていた。しかしながら、一郎は目の前の男に対する殺意。その感情だけで体を動かしていた。

 「お前さん、体が丈夫だなぁ。普通ならこの一撃でみんな死んじまうんだけどなぁ。なあ、なるべく早く死んでくれよぉ。もうすぐ朝もきちまうしなぁ。」

 その言葉を聞いた一郎は逃げ出した。

 

 あいつはきっとこの町のみんなを全員殺しているだろう。それなのに朝が来るのが嫌だと言った。何か朝に不都合があるのだろう。また、あいつは人間なら死ぬ様な致命傷を負っても死ぬ様子がない。しかしながら痛みは感じていた。それならば、あいつを死ぬまで苦痛を味合わせてやればいい。一郎は男を殺すために走った。

 

 「かくれんぼはよぉ、もうおしまいにしようぜぇ。おれはなぁ、お腹がすいてんだよぉ。」

 「ああ、かくれんぼはもう終わりだ。」

あまりにも油断していたので男は背後から飛んでくる物を避けることができなかった。一郎が投げた壺であった。男は一郎に投げられたもののせいで全身が濡れていた。また、液体は水とは違いベトベトしていて、それが鬼をさらにイラつかせた。 男は目に見えぬ速さで一郎に近づき頭を両手で掴んだ。

 「てめぇ、本当に死にてぇみたいだなぁ。お前はただでは喰わねぇ。四肢をもぎ取ったあと内臓を引き摺り出して、苦痛を味合わせてから喰って

やるよぉ」

 下衆な笑みを浮かべ、そう言った男に対し、一郎は徐に懐からマッチ棒を取り出し火をつけた。

「お前、痛みを感じていたよな。どんだけ不死身でも痛いものはいたいよな。じゃあ、お前が死ぬまで燃やし続けたら死ぬまで苦痛でのたうちまわるんだよな。」

 そういうと、一郎はマッチの火を男につけた。たちまち、マッチの小さな火種は広がり男を焼き尽くした。

 「グギャァァァァ!アッアツイ!アァァァァァァ!!!」

「お前が死ぬまで俺はお前を離さない!お前は今!ここで無様にのたうちまわって死ぬんだ!」

一郎は男が逃げられない様に抱きついた。男の火が一郎を焼きつくす。男同様に一郎も激しい苦痛をが全身を襲う。真っ暗闇のなか、一郎と男を燃やしている炎は、自らの薪を灰にするまで燃え続けたら。その日も別段と変わらぬ大正の一日であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




炎嗟は怨嗟の鬼から来てます。
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