「…朝か」
はて、結局昨日はいつ頃寝たかな。
そんなに遅くには寝てない気もする、何故ならすこぶる今日は体調がいい。寝る直前ぐらいまではなんか体の節々が痺れてたり痛かったりしたこともあったけれどもうそんなこともない。
とにかくベッドから出よう、そんで着替えて…とりあえず厨房かな?厨房行ってみよう。朝食を食べる人と食べないとではテストの点数はだいぶ違うらしいからね!、ここテストに出ます。出ないけど。
「着替えるか…」
ベッドから起き上がり、時計を確認する…よし、寝坊はしてない。そしてレムさんとラムさんに採寸して用意してもらった服に着替え俺は部屋をあとにした。
「ツーバキ君、ちょっといいかな?」
「伸ばすな、ちゃんと言え、で?なに」
朝食を作り、朝食を出し、洗濯とか朝にやる事を基本的に終わらせてレムさんとラムさんは庭の整備に必要な道具やら何やらを取ってくるから玄関前で待ってろと言われ、適当な柱にもたれ掛かり、待っているとラムさんとレムさんの2人ではなく、ロズワールがでてきた。
「君にこれを渡しておきたくてね、一応」
「なんだよ…、いやこれ」
「見ての通り、剣だ」
そこには指先から肘ぐらいまでの長さの鞘に収められた剣があった、その剣を受け取り、剣を抜くと剣の刀身が一瞬赤く光った。
「もっと長くて頑丈なものも用意できたのだがね、急造ゆえに使い勝手と頑丈さを重視したものを作らせたーよ」
「まぁ、確かに下手に長いやつより最初はこういうやつの方がいいか」
「どうやら、ちょうど良かったようだーね」
「でもよ、なんでこれを俺に?」
「なーに、ちょっとした護身用だーよ」
「護身用…ね」
どこか含みのあるロズワールの口調と言い草に少し疑いの目を向けるが現状何も起きていない以上、ロズワールを疑うのは筋違いだ。それに、まだなにか起きると決まったわけではない。
「ま、有難く受け取っとく」
俺は剣の鞘に着いている金具を左側のベルトに着ける、試しに右手で抜いて見て、素早く抜けるかを確かめると思ったよりも素早く抜けた。
「ツキ、いるの?いるなら来なさい」
「分かった、今行く」
そうして俺はロズワールに一瞥し、その場をあとにする。俺が扉に差し掛かった時、ロズワールが小声で何かを呟いていたような声が聞こえた気がした。
「ツキ、園芸はできる?」
「植えて育てたりなら家庭菜園でちょくちょくだけど…、木の葉とかを整えるまではやってねぇな…」
そもそも自宅の庭に木が生えてるなんて、今生で1回もない上にあって欲しくない。
「そう、では質問を変えるわ、彫刻とかそういうのは得意?」
「人並みには」
「そう、なら、レムの手本をよく見ておきなさい」
「さっきの質問なんだよ」
すると、レムさんは庭に並び立つ木の枝の乱れた部分を切り始めた。しばらくそれを続けていると気づけば木は綺麗な形に整えられていた。
「はえー…すっごい」
「ツキ、やりなさい」
「あのすいません、ハサミが二つしかないんですけどラムさんは何をなさるんでしょうか?」
「ラムは監督よ」
「姉様は切りそろえるのが下手なので形を見て揃っているかを判断するんです」
「下手なのかよ…」
凄いなんでそういう事をさも当然のように言えるんだこの人、よく言えば堂々としてるけど、ただ恥ずかしいだけだと思うんすよ。
「ツキ、これはそう難しくはないわ、要は慣れよ」
「自分出来ないのに難しくないとか言っちゃうのかよ…」
この人自分を顧みるとかないのかなほんとに。
とか言われつつ、渋々やり始めていくとまぁ楽しいもんだ。楽しいし何より感覚とかそういうのが結構鍛えられてる気がする。気がするだけだけど。
元々こういう整えたりするのは好きだった分モチベとかに関しては何ら問題ない、むしろ高いまである。
「…」
「あの露骨に機嫌悪そうにするのやめて」
「ツキ、そこがズレてるわ、あとそこも、あとあそこも」
「いやどこだよ…」
理不尽極まりないが、まぁこういう人なんだと納得するしかないのかせざるを得ないのか。
「お客様、終わりましたか?」
「一応、こっちは」
「分かりました、では次は薪の補充に行きます、着いてきてください」
「りょーかい、あのラムさん?後ろから小突くのやめて」
「えー…あのさ、薪だよね?」
「はい、薪です」
「こんなぶっといの薪で使うの?」
「太く頑丈な木は長持ちするのと、よく燃えるので切るのには手間はかかりますが、この屋敷には姉様とレムしかいなかったので」
「なるほど、効率的には時間かかってもこっちの方がいいわけだ」
目前にはさぞ立派な大木から切り落としたであろう、ぶっとい丸太があった。俺は丸太に触れ、感覚だけ確かめる。指先からでもその硬さが存分に伝わってくる。
「これ、簡単には切れないな」
「ツキ、木に魔力を流してみなさい」
「木に…魔力を?」
「指先から丸太へ、流し込むイメージをしなさい」
「わ、分かった…」
「集中、忘れないこと」
「よし…」
俺は言われた通り、集中し右手に魔力を流し込み指先から木の幹へ魔力を流し込む。すると、丸太のの中のあらゆる気配が感じ取れた。うちに潜む寄生虫や微生物、年輪の数なんかも。それと…。
「ラムさん、レムさん、少し下がって…」
「何を…」
俺は腰の剣に手をかけ、剣を抜く。すると剣が一瞬赤く光り、刀身に赤い光の脈が走った。
その剣を構え、ゆっくりと大木に振り下ろす。すると少し遅れて大きな物音を立てて、木を乗せていた台から半分に切れた木の片方が転げ落ちた。
「あら、台ごと切って土下座するのを期待していたのに」
「そういう事言われるだろうから、慎重に切ったんです」
「今のどこで習ったんですか?」
ふとそちらを見ると、レムさんが不穏そうな視線をこちらへ向けて聞いてくる。
「6割くらいはラムさんとロズワールに教わった事で4割は自分」
「…そうですか」
「ツキ、これで終わりじゃないわよ、もっと細かく切りなさい」
「考えたらこの太い木を薪サイズに切るって面倒くさいっすね」
「つべこべ言わずにやりなさい」
「はいはい」
その後、切り終わる頃には俺は疲労困憊であった。
その後、普通に夜のご飯近くまでソファで熟睡だったそうな、ちなみに起きたらなんか顔に落書きされてた、犯人はヤス。
「ぐっ…いつっ…」
結局あの後、ラムさんに叩き起され顔を洗って落書きを消してこいと言われ、いや絶対あの人だろ。とにかくその後夕食を作ってその日にやる事色々終わらせてここにいる次第である。
「それにしても…」
『今の…どこで習ったんですか?』
あのレムさんの目、明らかに俺を警戒していた。いや多分何も今日からじゃない、昨日からずっと…。彼女が俺を警戒するのは当然だろう、屋敷に突如として居候している見ず知らずの他人、従者として警戒するのは至極当然当たり前だ。だが、そういう類の警戒ならラムさんだってしている、いやむしろ初日に関してはラムさんの方が警戒心が高かった。
おそらく昨日の夜で警戒心がだいぶ解かれたんだろうか、ラムに関しては警戒心をあまり見せなくなった。
だが、レムさんの警戒心はラムさんの警戒心とは根本的に違った。彼女のそれはラムさんの屋敷を守るを加えてそれ以上にラムさんを守るという警戒心を感じた。実際ラムさんと二人でいる事があったのは初日のロズワールに会いに行く時と、昨日の夜のみ。これだけ広い屋敷にもかかわらず分担せず、日中常に一緒に作業をしている。
どうにもレムはラムさんと俺が二人でいる状況を避けたがっているような気がする、理由は不明だが、時に異様なほど冷たい気配を感じることがあった。まだ気配というものに曖昧な部分もあるとは思うが、周囲に小範囲ではあるが微弱な魔力を放出することをこの二日でできるようになった、どうやらこれに気づいたのはロズワールとエミリア様の猫のみだった。ラムさんは多少の警戒はあったものの先程の夕食の時点ではほとんど皆無だった、ただレムさんに関して言えば俺に対する警戒心が減るどころか増えている。それこそ、ひとつでも怪しい動きを見せたら殺しにくるレベルで。
もし…もしだが、彼女が俺を殺そうとした時、俺は彼女を殺せるだろうか。
答えは否である。
「またこんなとこで、風邪引くわよ?」
「あいにくと馬鹿なもんで風邪は引かない主義だ」
ロズワール邸から少し歩いた川辺、そこには自分の身の丈の三分の一ほどある大きな岩が数多く点在していた。俺はその中の一つの岩に向かって剣を振っていた所、不意に後ろから声をかけられ振り返るとそこには昨日と同じくネグリジェのラムさんがいた。
「馬鹿は風邪引かない?笑わせないでツキはバカ以下なのだから風邪は引くわ」
「だったら余計引かないのでは…」
バカは風邪引かないのはルールに乗っ取ればバカ以下の人はバカ以下はインフルならないみたいな、語感悪っ…。
「ていうか、なんで昨日の今日とここに?」
「ラムはツキの監視役をロズワール様から仰せつかっているのだから、ツキが自分の部屋へ戻るのを確認するまでは寝れないのよ」
「なるほどね、勝手に監視されてたわけか」
「まぁそうね、それで、今日は何?」
「いや、剣に流す魔力を制御してもっと硬いものを切れるようにならないかなって…」
「それなら簡単よ、丸太に魔力を流す要領で剣にも魔力を流しなさい、ちゃんと制御してね」
言われた通り、丸太と同じ要領で剣に魔力を流す。すると剣の刀身に赤い光の脈が浮き出て、それが剣の隅々まで魔力を生き通らせる。
そして、両手でしっかりと握り、目前の岩へと振り下ろす。
すると太刀筋が光の帯を描き、目前の岩が真っ二つに割れた。
「はぇー…切れるもんだな」
「それじゃ、ラムはもう行くわ」
「早いな、例の如く監視だけか?」
「いえ、眠いからよ」
「おい従者…」
そう言ってラムさんはとっとと屋敷へともどっていった、フリーダムすぎるだろ、教えてくれる分には感謝してるけど。
「ほんとに…ったく」
自分は一体何を考えていたのだろう、前世…いや前の世界であんな人生歩んできて、この世界に来てまたひどい目に遭うなんて事あるわけない。ならば俺の前前世は余程の大悪党だったのだろう。
レムが、俺を殺す…いや、そんな事あるわけない。
けどもし…彼女が俺を殺すなら、俺は…。
「…姉様には、何もさせない、レムが…やらなきゃ」
足が痛てぇ