という前書きを27日書きました。
「今日は随分晴れてるわね、昨日までは曇り続きだったのに」
「おー、まぁ確かに…」
あれから一週間経過した昼下がり、それまでの天気は曇っていたりどことなく不安定だったのが今日になって急に晴れ間がでてきた、今では雲ひとつない快晴である。こういう時って眠たくなるよね、特に隣にベッドでゴロゴロしてる人がいると。こっちは今真剣に勉強をしているのに、ほらあれだよ、勉強会開こうぜって言ったやつがそうそうに飽きてソシャゲし始めるやつ。まじそいつろくな奴じゃないからな。
「やっと安心して洗濯物を乾かせるわ、ツキ、乾かしてきなさい」
「ラムさんが行くんじゃないのね…」
「当たり前よ、ラムは今忙しいの」
「人の部屋のベッド占拠して悠々と本読んでるやつが言うセリフじゃないですねそれ」
「読み書きが分からないツキのためにこうして教えてあげているのだから、感謝して欲しいわね」
「さいですか、じゃ…行ってくるわ」
「どこに?」
「ラムさんが乾かして来いって言ったんでしょうが」
呆れながらも渋々、俺は部屋をあとにして洗濯カゴを持って洗濯物を干しに向かった。
そう言えば俺がここに運び込まれた時の服とかどこいったんだろ…、ここに来た時はなんかここの寝巻きみたいなやつ着せられてたし、ていうか俺誰に着替えさせられた?まさか…そうかロズワールだな、ロズワールだそうに決まってる間違いないそれ以外ありえないあって欲しくない。
ここに来た時の服は確か黒シャツと黒パーカーと黒目のジーンズだった気がする、ほんと黒好きだな○リトかよ。イ○リトでは無いぞ?決して、俺は謙虚に生きてる。出来ればあるなら手元に置いておきたい、ちょっとお気にだったし、ここの執事服も気に入ってはいるけどやはり寝る時は自分の服で寝たい、特にパーカー、あれがないと熟睡出来ない、爆睡は出来るけど熟睡が出来ない。いつも寝る時も出掛ける時も来てたオシャレなやつだから、朝起きてパーカーないと妙に違和感がある。
もしかしたらその辺に干してあったりするのかね、出来ればあってほしいなぁ…。
「…あれ?あれって…」
「…お客様」
洗濯物を干す物干し竿がかかった大きなベランダに持たれて風に当たっていたのはどうやらレムさんだったようだ。レムさんはこちらを見つけると少し怪訝そうにして、直ぐに外へと視線を戻して再び外を眺めていた。
「……」
「どうしたんですか?洗濯物を干しに来たんですよね?」
「…あ、うん」
今一瞬見とれてた…、そよ風に揺れたレムさんの髪は太陽の光に当てられてキラキラと輝いていて、洗濯物を干そうとそこに近づいて顔をちらりと伺うと天使がいた。いやそんなもんじゃない、女神です。
「っしょと…」
その後もチラと隣のレムさんの様子を伺いながら作業をしていた、互いに無言でレムさんはこちらを見向きもせずに外の景色を眺めている。
「……」
ただ、その目はどこか悲しげで寂しげだった。「何かあった?」と部外者が聞くわけにもいかず、俺はその場を黙って後にした。
「なにも…言わないんですね、お客様」
「あれ?エミリア様?それとパック」
「あ、ツバキだ」
「ツバキー、あれはどういうことかなぁ?」
「は?なに?」
「もうパック、ちゃんと説明しなきゃだめでしょ?」
俺がカゴを置いて自分の部屋へ戻ると扉がこちら側へ開いていて、そこから覗き込むような形でひょこっとしているエミリア様とパックがそこにはいた。
パックは「あなた、やってしまったねぇ…?」みたいな感じの顔をしている、なんだお前俺はお前の大好きな猫用の骨なんか食ってないぞ。ていうか骨は食わんぞ。
「えっと…俺の部屋になんかあんの?」
「えっとね…その、とりあえずそっとしてあげてね?」
「もう聞くだけじゃわかんないで見ますね」
そうやってエミリア様に少しどいてもらって自分の部屋へ入ると。
「スーッ…スーッ…」
「何やってんだこの人」
「その…怒らないであげて、ラムも疲れてたんだし…」
「それは知ってます、何もここで寝なくてもなぁ」
「起こして移動させるのかい?」
「起こしたら俺の上半身吹っ飛ぶくらい機嫌悪いラムさんが降臨するわ」
「随分毒々しい例えだね」
「まぁいいや、とにかく夕食まで時間があるから禁書庫にでも足を運んでみたらどうだ?」
「禁書庫…そうだ!パック、行くよ!」
「元気だなぁ、癒される」
「そうだ、ツバキ、今朝べティーが暇が出来たら禁書庫に来るようにツバキにって」
「…そうか、会えたら伝えてくれ、明日でいいからって」
「まだ…飢えはあるのかい?」
「少しな…、でもまだベアトリスの魔術が効いてる分マシだ」
「大丈夫?無理しちゃダメだからね?」
「ありがとう、ほらエミリア様早く行かなきゃ」
そうしてエミリア様とパックはテトテト歩いてどこかへ消えていった、いやほんとにどこいった禁書庫の扉を一発で当てたのかすげえなおい。
とにもかくにもとりあえず扉を閉めて、俺は椅子に座って隣で眠るラムにブランケットをかける。
本当に気持ちよさそうに寝てるな…。視線を外して机に向かおうとしたその時。
「飢えってなんのこと?」
「起きてたのか…、ていうか聞いてたのか…」
「ええ」
「具体的にはいつから?」
「パ、パック?起こさない方がいいのかしら?」
「ん?それいつ?」
「ツキが来る前よ、起こす起こさないの話し声が大きくて、目が覚めてしまっていたわ」
「やろうあの猫精霊知ってて話振りやがったなぁぁぁ!!!」
なるほど、「やってしまったねぇ…」という顔ではなく「来てしまったねぇ…」ということかなるほどなるほど、今日のあいつの夕食に砂糖大量に入れとこ。
「それで説明してもらえるのかしら」
「説明させる気しかないですよね、めっちゃ顔怖いんですけど…」
「別に無理ならいいわよ、無理して聞いたりはしないから」
「…そうか」
「話してくれるの?」
「あのさ…俺」
「吸血鬼…かも」
「は?」
「確かに、太陽は大丈夫だし十字架は平気だしニンニクも平気だけど…」
「ラムが知る限り吸血鬼というのは光に弱く正に弱いという話を聞くけど」
「俺はその…難しいんだけど、肉体だけ吸血鬼のような感じらしくて…」
「それで、気づいたのはいつ?」
「四日前ぐらい…かな」
そう、違和感に気づいたのはその日は朝昼晩と結構な量を食べたのだが、お腹は膨れている、つまり食べ物に飢えている訳ではないのだが
その夜に俺は謎の飢餓症状に襲われた。このことを知ってるのは対処に当たったロズワールと禁書庫の精霊ベアトリス、そしてパックとエミリア様のみである、そして今、ラムさんに話したことで知っていないのはレムさんのみだが言う必要があったら言うぐらいでいいか。
ともかく、魔力が枯渇している訳でもなく、栄養分が足りていない訳でもない。ロズワールがしばらく俺の胸に手を触れ、考えていると目を開いてこういった。
「君、吸血鬼だーね」
「は?え?は?」
「なるほど飢餓状態というのは、血液の飢餓状態であったということか
…」
「そんなことより、問題はこいつをどうするかなのよ」
「そうだーね…少し待ってくれ確かここに」
「なんだよ?ていうかベアトリス、お前今夜の夕食のピーマン残したろ」
「ギク…」
「いいか?いくら精霊で寿命が長いとはいえ、400年で身長一センチも伸びないはどうかと思うぞ?いや別にベアトリスの食生活を変えろって言うわけじゃないけど…」
「とどのつまり、何が言いたいのよ」
「牛乳飲めるようになろうぜ」
「嫌なのよ!無理なのよ!」
「なんでミルクコーヒーは良くて牛乳はダメなん?」
「それとこれとは違うかしら!」
「いや、コーヒー入ってるか入ってないかの違いはぶっちゃけ関係ないぞ」
「少なくとも牛の乳をそのまま飲むなんてことはしたくないかしら!」
「何その無駄な潔癖症」
「なっ…!」
「あ、あった、これだ」
「おう…って何これ?赤い錠剤?」
見るとそこには粉末状のものを固形化させた俺たちの世界で言う錠剤に近いものがあった。
「これは長旅などに使う鉄分を補う薬だ、私は貧血を良く起こす身でね、遠征時には必ず服用している」
「ちょっと飲んでみていいか?」
「まず一粒飲んでみてくれ、飢えが消えたらそれで明日の同じ時間まで飢えが消えていたか教えてくれ」
なんだこれ…口に入れた瞬間少し舌に触れただけでなんか血の味がした…。ただ、確かに先程まであった、謎の飢えは消えて随分と楽になった。
「ふーっ…よし、治った」
「君には一箱渡しておく、これは一応血液型の適性がある、これは君のA型よりだ、誰かから吸血する手もあるが私はA型では無い」
「待て、この屋敷にA型っている?」
「レムとラムの2人だが」
「ラムは嫌よ」
「いいよ、流石にまだ知り合って一週間の女の子に噛み付いて貰うのは俺もちょっと気が引ける」
「レムも嫌よ」
「だから大丈夫だって、しばらくはロズワールに貰ったやつで凌ぐから」
「そう…ならいいわ」
流石に女の子に貰うのはごめんこうむりたい、俺が嫌とかじゃなくて、多分相手が嫌だろうし。
「それで、ツキはどんなところが人とは違うのかしら?」
「えっと…魔力に加えて血というか鉄分が必要なのと、血さえあれば命に関わる傷は回復する、でも足の怪我とかは再生しずに痛みだけ消えるみたいな」
「なんだか随分めんどくさいわね」
「俺も最初聞いた時思ったよ、そんで…」
「レム?どうしたの?」
「エミリア様!?ち、違うんです!これは…その」
レムがツバキの部屋の扉に耳をつけて部屋の中のツバキとラムの会話を聞いていると、後ろからエミリアに声をかけられて思わず大きな声を出しそうになったが寸前でこらえる。
「話に入りたいんだったら入ればいいのに、でもラムとツバキってすっごく仲良しよね、いつも夜はツバキの特訓にラムは付き合ってあげてるもの」
「エミリア様…知ってたんですか?」
「だって、ほんとに毎日だもの、話し声で起きちゃう事もあるけど、窓の外で楽しそうにしてるの見てるといいなって」
そういって楽しげに笑うエミリアを見て、レムは少なからず自分に迷いが生じたのだろうか、少しくもった表情をした。
「レムはツバキの事…嫌い?」
「いえ…別にそういうわけでは」
「私は好きよ?料理は美味しいし、優しいし、たまにちょっと抜けてるけどね」
「それは…」
それは誰かさんにも言えることだと思うのですがという言葉をレムは押し留める。
「でもね、一人でいるあの子がたまにすごく不安で暗い表情をしてるの」
「え?」
「レムは…何か知らない?」
「いえ…特には」
「そっか…ありがとね」
そう言ってエミリアはその場をあとにした。
レムには悪い癖がある、一つは性格そのものがネガティブである事、次に自分にはラムしかいないと思っている事、そして最後に例えこの屋敷を追い出される結果になったとしてもラムだけは守るという事。
レムは、決めたのだ。
あの男を殺すと自分の迷いを押し殺して、感情を捨て去って。分かっている一度こんなことをしてしまえば自分はもうラムの隣に立つ資格なんて失うことは分かっている、ツノがある自分よりツノのないラムの方がずっと強い。だから自分のツノがなければ良かった、そう言っていつも自分を責め続けていた。
「…」
氷のような目をしたレムは部屋をあとにし、屋敷の外へと出る。
外へと向かう道中…。
「やぁレム、どこへ行くんだい?」
「少し…村の方まで」
「そうかい、気をつけてね」
すれ違う猫精霊はあえてその目に触れなかった、彼女は本気だ。どうあってもその決意は揺らぐことは無いだろう、百を救うために一を殺す、そういう人間は迷わない。
だから、自分がここで何を言っても意味が無いことを猫精霊は悟ったのだ。
結果は変えられない、変えられるとすればそれは彼女と当人だけだ。
ただ一つ、言えるとすればこれはどちらにとっても自分を殺すことになる、現に彼女は心を殺して決意を決めた。
「君に…彼女が救えるかな、ツバキ」
そう、猫精霊は呟いた。
「ツバキ君、新しい資料を見つけたのだが読むかい?」
「なんだ?また変な生態でもあんの?」
「そう、変な生態だ」
「変な生態なのかよ、またかよ」
そうしてロズワールの見せてくれた資料を見ていると、えーと…なになに、『一時的に自身の血液を摂取する事で治癒や戦闘力をあげることが出来る…。』何この身を切るというかなんかちょっと厨二くさいな。
ちょっと待ってなんか下に書いてあるな、『なお前述の補足として、自身ではなく他者でなおかつ異性である場合、魔術回路が一時的に活性化し、目覚しい変貌を遂げるであろう』何だこのハーレムバトル物にありそうな設定。
「めんどくせぇ…」
「確かに少しめんどくさいようだーね」
「それで、なんだったかな、用事というのは」
「あーそうそう、鉄分のあれある?なんか全部無くなっててだな…」
「…私の上げた箱には四十錠ほど入っていたはずだよ?」
「そうなんだよ…誰か持ってったのかなぁ、ラムとレムだったらあれだけどパックだったらなにこれ?って言って全部飲みそう」
「ふむ…今のところ明日には来るだろうが、今日はなしで凌いでくれ」
「まぁ、耐えるわ」
「ところで最後に飲んだのはいつだい?」
「昨日の今頃だったかな…」
「そうか、まぁ頑張りたまえ」
「頑張るわ、…ていうか雨降ってきた?なんかさっきから外がザーザー言ってんだけど?」
「そのようだね、今朝まで晴れ間が出ていたのだが」
「荒れそうだな、天気」
「レムさんがいない?」
「そう、先程大精霊様が見かけたらしくて村の方に行くと」
「困ったわね、傘を持っていないだろうしラムは雨が苦手だから迎えに行けないし」
「苦手っておま…まぁ確かにこの時間帯に屋敷に誰もいないってのは夕食とか色々遅れるからな、探してくるから準備して待っててくれ」
「…大丈夫?」
「大丈夫、それに雨の日は魔獣も活発じゃないんだろ?それにこの時間帯はまだ魔獣は動いてないだろうしな」
「そう…気をつけて」
「おう、なんか珍しく心配してくれてるのな」
「いえ、ラムひとりで夕食は作れないもの」
「そう言えばそうでしたね…出来るだけはよ戻ってきます!」
そう言って雨の中傘をさして歩いていくツバキの後ろ姿を見てラムは。
「哀愁が凄いわね、有り金でも溶かしたのかしら」
「聞こえてんぞ!」
「…どこここ?」
あるある、人を探しに行って自分が迷子になる、それあるー?それなー?。ってんなこと言ってる場合じゃねえだろアホかァァァ!!!!、あかん、不安を紛らわすためにナチュラルハイになってしもうてる、落ち着くんや工藤!まずは素数を数えて…素数ってなんだ?。
あーもう!俺のバカ!ていうか数回しか行ったことない村なんて分かるわけねぇだろアホか!そんなんわかってたやろ!、やばいエセ関西人が。それにしたって森森森、これほんとに道あってんのかね、あってねぇから迷子なんだろ!ほんまか工藤!。
…そろそろ本気でどうしよう、また拾われるのか俺は…嫌すぎる。
「…どうすんべ」
…あれ?あれって…。
森の木々の隙間からレムの姿が見えた気がした、いや、レムさんだ…あの青い髪は。
「レムさんー!レムさんー!」
だが距離がある上に雨音でかき消されたのか、レムさんはそのまま歩いて行ってしまう。急いで追いかける、だがやはり聞こえていないのか止まりはしない。
「くっそ…、レムさんー!」
レムを追いかけているとそのうち見失って、岩場の何やら開けた場所に出た。
「くっそ、どこに…!」
辺りを見渡してもレムの姿はない、魔力探知で探ってもレムさんの姿は確認できない。
…だが、
上空から飛来する殺意には否が応にも気づいた。
足に魔力を回して、後ろに飛んで回避する、すると着地を狙って地面から氷が伸びる。その氷を腰に据えた短剣で、思いっきり突き刺し砕く。その場に氷が砕け散り、その氷の破片が自分の頬を掠り血が出る。
痛い…、足も痛いがそれ以上に意外と頬が痛い。
だが…それ以上に顔を上げた先にいた俺に殺意を向けたであろう人に俺は驚いた。
予感はあった、だがまさかと思った、殺意なんて言う具現化できない曖昧なものを信じている自分を疑った。どれだけ目をこすっても瞬きしても自分の目前の光景は覆らない。
「なんですか、生きてるんですか」
「生きてるよ…なんとかね」
「そうですか」
間髪入れずに次の攻撃を仕掛ける彼女は、その華奢な体躯には有り余るはずの鉄球を振りまわし、なんの躊躇もなくそれをこちらへ飛ばした。
短剣と全身に魔力をまわし、飛来した鉄球を受け止める。
すると鉄球は止まった、だがその隙に左に迫った彼女の左拳が俺の横腹を打ち抜く。俺は盛大に吹っ飛び、木に打ち付けられた。
意識が飛びそうになるのを何とかこらえ、俺は言われたことを思い出した。自分で自分の手の甲に傷をつけ、流れた血を口に流し込む。すると痛みは消えた、だが激しい頭痛が俺を襲った。
だが…それは二の次だ、今は目前に迫った命の危機を何とかせねば。
「理由も言わずにか…随分と急いでるんだな、レムさん」
「理由?そんなもの言う必要なんてないじゃないですか」
彼女はレムは氷のような瞳で俺を見つめてそう言った。
間に合わない予定でした、なぜ間に合ったからって?
どこにも行かなかったんだよ察しろよ
あと誕生日を迎えました、またひとつ歳をとりました。