RE.チートから始める異世界生活 RE.MAKE   作:灰鳥

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第六話 いざ王都へ

「もういいんですか?」

「うん…ありがと、レム」

彼女は、レムはそう言って傷を負った指をハンカチで拭う。かくいう俺はバクバク鳴って止まらない胸を沈めようと深く深呼吸している所だ。

「それでは、レムは仕事に戻ります」

「うん、また」

「はい、では」

レムはそう言って笑顔で俺の部屋から去っていく。ああやって最近はラムや俺の前だと結構笑うようになった、初めて見たレムの笑顔はそれはそれは眼福でしたとも。

「とにかく良かった、元気になって」

 

あれから二週間、あの後ロズワールを説得し、何かあれば俺も一緒に出ていくという条件をレムには内緒で取り付け、何とかレムをこの屋敷に残すことが出来た。

レムとの関係は以前とは見違えるほど良くなった、頻繁に話をするようにもなったし、レムがわざわざ部屋に会いに来てくれたりもする。そのせいでラムにえらく冷たい目で見られることもあるけど、それも愛だろう。

とにかく、一時的にではあるが確実にこの屋敷に平和が戻った。あわよくばこの平和がずっと続けば…なんて幻想を抱いていたり、でも幻想で終わらせない、だから今は備える。この平和という幻想を続ける為に必要な代償は全て俺が払う。

「よし…行くかな」

俺は立ち上がり、かけて合ったジャケットの袖に腕を通す。

「そういや、足治ったな」

今朝辺りからか、消えかかっていた足の違和感が完全に消えて、長かった松葉杖生活から解放された。念の為、ストレッチをして入念に足を動かす。

「さて…と」

俺は部屋の扉を開けて、廊下へと出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「王都?…何それどこ?」

あの後、ロズワールの号令で食事卓に集められたロズワール邸御一行、というかベアトリスもいるのかなんでだ。そうして言われた話が王都へ行くという話だった。

「王都も知らないなんて、ツキは本当に無能ね、無能極まりないわ」

「ここ来てからこの近辺出たことない奴にそれはあんまりじゃないかな?」

「レムもそれほど行ったことがある訳ではありませんので名前と見た目だけ知っているだけのようなものですし、着いたら実際ツバキくんと変わらないと思います」

「私今まで何度も王都には足を運んでるかーらね、でも今回は随分久しぶりだーよ」

「ごめんなさい、私も王都について何か知ってるって言われたら何も言えない…」

「僕も」

「べティーはそもそも行かないかしら」

「大丈夫なのこれ…」

不安すぎる、詳しい奴も久しぶりとか言い出すし不安すぎる。王都に行くこと自体に異論はないけど全員の知識量に関しては異論ある。

「少なくとも、私がいる限りは大丈夫だとは思うがーね」

「はぁ…で、何人ぐらいで行くんだ?」

「私と、君たち三人だ」

「つまり、ロズワールと俺とラムとレム?」

「私は…行かなくていいの?」

「エミリア様は御屋敷にお残りください、まだ時期は早いです」

「そう…なら、いい子でお留守番してる」

「リアの面倒はしょうがないから僕が見るよ」

「ありがと、パック」

「大丈夫か…」

「確かに大精霊様さえいればエミリア様の安全は保証されますし問題ないかと」

「ならいいけど…それで、いつ発つ?」

「明日の朝、準備をしておいてくれ、それとツバキくんには渡しておかなければならないものがある」

「俺…?」

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんだよ渡すものって」

「あぁ、これだよ」

レムとラムが各々の準備をする為別れたあと、俺はロズワールの部屋へと来ていた。

そうしてロズワールの要件の物を見せられた、見たところ黒い金属製の短い棒のような感じだ。どことなく、剣の柄のような感じがする。

「なんだこれ?」

「魔刃、と呼ばれる武器だ、動力源は魔力で、使用者の思うままに形状、強度、性質、全てを変えられる」

「へー…」

「試しに何かしてみたらどうだね」

「そうだな、よし」

俺は頭の中で柄から真っ直ぐ伸びる刀をイメージした。

すると、光の光刃がそこに出現した。

「便利なもんだな…」

「その短剣よりは随分とマシな武器だろう?」

「まぁ、だいぶマシになった」

俺はそこに加えて鞘を作り出し、腰に剣を据えた。

「その短剣はどうするつもりだい?預かるのであれば私が預かるが」

「いや、いいよ、持っとく」

「そうか、ではそれに加えてこれだ」

そう言ってロズワールが取り出したのは黒布のコートだった、そのコートには俺から見てもわかるように何か魔術的な細工が施してあった。

「なんだこれ?」

「流石に執事服のまま王都を出歩くのは目立つかーらね、それには人の視線を外す術式が入っている」

「なるほど…こいつはいいな、かっこいいし」

「そうかい?」

「いや俺がただ単に黒が好きなのもあるな…」

「そうかい、まぁ出発は明日の明朝だ、ゆっくりと準備するといい」

「つっても、俺はそんなに荷物がなぁ」

「王都には一週間ほどいるつもりだーからね、着替えや寝巻きを忘れず」

「修学旅行前の教師みたいなこと言うな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「またいるよこの人…ってなんか増えてる」

「何よそんなに面倒なものを見る目で見るなんて、ラムに恩義を感じていないのかしら」

「あのすいません、ラムも多少の恩義を俺に感じて貰えないでしょうか」

「却下よ、いえ拒否よ、やっぱりお断りよ」

「三回も言い換えるな」

「すいません、ツバキくん、お邪魔しています」

コートを持ち、何だか新品の鉛筆を買ってもらってウキウキな小学生のような気分で部屋に戻って扉を開けると、その気分は遠い彼方へ過ぎ去った。そこには怠惰な姉と、清純な妹がいた。怠惰なラムは例の如く朝整えたベットの上に寝転がっていた、レムは対照的に椅子に座ってこちらを見て微笑んでいる。レム可愛いマジ天使、お嫁さんにしたい。ていうか俺の部屋のプライバシーはどこ。

「ていうか2人とも準備がどうのは」

「明日の朝よ、今は昼よ、まだ時間はあるわ」

「レムは一通りやる事が終わってから準備したいと思います」

「レムのやることが終わってからってそれこそド深夜になるのでは…?」

「大丈夫です、姉様が手伝ってくれます」

「……そっか、なら安心」

「今の間は何かしら」

「そ、そんなことより何でここに?」

「昼下がりはやることないのよ」

「うん、それは知ってる」

「姉様がここへ行こうと言うので…すみません」

「なるほどラムが主犯か、答えの分かる推理ゲーほどつまんないもんは無いな」

「何を言っているのかしら」

「こっちの話、で、なんだってここに?」

「単純な話よ、王都での注意点よ」

「注意点?」

するとそこでラムの顔がおふざけ顔(無表情)から真面目顔(無表情)へと変わった。なお、体制はだらけたままなのであしからず。

真面目な話する時ぐらい起き上がってくれませんかね。

「ふたつあるわ、王都では目立ったことは起こさないようにすること」

「まぁ、それはなんとなくわかる」

「もうひとつは今回行く本当の目的になるのだけれど、ロズワール様からは聞いたかしら?」

「は?いや聞いてない」

「実は…今回、王選候補が一同に会す場で族が多数紛れ込んでいるとの情報がありまして」

「…なるほど、だからロズワールは…」

「エミリア様を行かせなかったのもそこにあるわ、あの方を危険に晒すわけには行かないから」

「それに…いえ、今回は王様からの勅命でレムたちは万が一の時のための対策として呼ばれています、本来ならば王選候補本人無しでの参加は出来ませんから」

「王からの勅命…ねぇ」

「それと、この件は他言無用でお願いします」

「それは分かる、て事は他の王選候補はこの事知ってたりする?」

「いえ、今回の件を知っているのはレム達だけです」

「なんで?」

「族の襲撃に見せかけて、自分以外の候補は殺す…そういう事があるかもしれないからでしょう」

「その場において信頼出来るやつ居ないじゃねぇか…」

「レム達との相談の時も周りに注意を払って下さい」

「ツキ、その低い頭脳で今の話が理解出来たかは定かではないけれど分かったかしら?」

「なんで罵倒したの」

「では、レムは仕事に戻ります」

「よし、手伝う」

「ラムも手伝うわ」

「…ちゃんと手伝うよな?」

「ラムとレムを寝不足にする訳にはいかないもの」

「自分入れなきゃかっこよかったなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌朝

 

「気をつけてね」

「あぁ、パックか」

出発前、馬車の点検をしていると後ろから声をかけられた。振り返るとそこには眠そうに目を擦るパックがいた。

「それと、作り方のレシピありがとツバキ」

「それレムだ、レムに言って」

「いやー、勢いよく任せてとは言ったけど僕とリアは料理はからっきしだからね」

「よく任せてって言えたな…」

「まぁそれはともかく、色々大変なんだって?」

「早速情報漏れてるがな…」

「まぁ僕が知ったところでどうなる事もないし」

「まぁ、なるようになるさ」

「君は君が守りたいものを守るんだよ?、そこに周りの状況とか与えられた役目とかは関係ないから」

「分かってる、いざとなったらあの二人だけは絶対に守る」

「ロズワールは含まないんだ…」

「守る必要ないだろ、あのバケモンは」

「随分と傷つくことを言ってくれるねーえ」

「黙ってろピエロ」

間延びしたイラつく声が後ろからしたので振り返るとそこにはロズワールがいた、早朝にも関わらずバッチリピエロなこだわりそこに痺れもしないし憧れもしない。強いて言えば別の意味で痺れる。

「なんだってこんな朝早くから」

「他の王選候補は皆、王都に拠点を置いているかーらね、我々は構想外という訳さ」

「何その田舎ポジ、あと言い方」

「我々が期待以上の働きをすれば王選のアピールにもなる、君には働いてもらうよ」

「俺はいざとなれば誰よりも優先してあの二人を守る」

「それで構わない、そうなれば君の判断に任せる」

「そうか…」

「よし、それではそろそろ行くとしよう」

「分かった、それじゃパック頼むぞ」

「任せてー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで前俺?」

「ラムは前が苦手だからよ」

「操舵できないよ俺?」

「レムがしますのでご安心ください」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、王都初陣
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