RE.チートから始める異世界生活 RE.MAKE   作:灰鳥

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第九話 不意

「うぉたぁ!?」

「ツバキくん!?」

「い、いや…大丈夫、ほんとに大丈夫」

「ラムは見たわよ、マヌケにも余所見して歩いてタンスの角に小指をぶつけたマヌケなツバキの姿を」

「マヌケって2回も言わんでいい」

「兄ちゃんってひょっとしてアホなん?」

「黙ってろリカード」

「あーそろそろ、話し合い始めてもいいかにゃー?」

あの後、レムさんに回復してもらったあと、ラムさんから失態をただ責める説教をみっちり受け、それを見ているリカードと獣耳の女の子に笑われ、達人風のおじさんには微笑ましい目で見られて、凄いいたたまれなくなっていた。

結果から言うと犠牲者はゼロ、怪我人は多少出たもののどちらも軽傷であり、防衛は無事成功。と言えたらいいのだが、どうもいい事ばかりではなく、少なからず逃げた者がいるようだ、だが長は捕まって現在厳重な警備の元、聴取という名の拷問を待っている。

それで今は、まぁ状況的に中止になってしまった催しは開催する訳にはいかないので、警備の為に呼ばれた俺たちははっきり言ってお役御免なのだが、そうもいかないらしい。

「えー、おっほん、それでは自己紹介から始めていいかにゃー?」

「にゃ?」

「ラム、触れるな」

「おう、ええで」

「レム達も構いません」

「何このホームルーム感」

「じゃあまずは私の名前はフェリス、クルシュ様に使えてまーす」

「ワイはリカード、お嬢に雇われとる傭兵や」

「ツバキ」

「ラム」

「レム達3人はロズワール様に仕えています」

「あれ?さっきのおじさんが居ない」

「あー、ヴィル爺?ヴィル爺はさっき戻ったよ」

「ヴィル爺か、ヴィルさんって呼ぼう」

「そう呼ぶ人初めて見た」

「さて、それじゃ自己紹介も済んだところで、まずはアイツらの概要を説明するよ」

「はい、どうぞ」

「分かんにゃい」

「可愛く言ってもダメだわ、…えほんとに?」

「うん、前科がある訳でも増してやこの国に住んでる人でもない、指名手配も何もされてない」

「なんだそりゃ…」

「それじゃ動機も分からへんな、まぁその辺は拷問でも何でもして吐かせりゃええんやが」

「でもみんなが倒した連中は目を覚ましたあと完全に黙秘してるらしいよ、聴取は全く意味ないって」

「この国に住んでいないなら他国の人間なのではないでしょうか?」

「名推理だけど、それはにゃいよ、他国の人間が王宮に入ったら例えお偉いさんでも結界でマークされて常に監視される、でも彼は監視されなかったから…」

「この国の人間、でも…」

「うん、一応調べたけど王宮の一室吹き飛ばすレベルの威力の魔法を持った賊なら必ず騎士達が張ってるはずだからかならずわかるはず」

「手詰まりじゃねえか」

「うん、だから何か拷問で吐いてくれるといいんだけど」

「じゃあもう解散で良くない?」

「そうだね、また何かあったら知らせるからとりあえず今はこれで、解散、またねー」

「おう、そや、兄ちゃん」

「なんだ?」

「今度、繁華街のいい姉ちゃんたちがいる…」

「その日知り合った奴を速攻誘うな」

「ダメです、レムが許しません」

「レム、行かないから、行かないから、その強すぎる手を離してくれ、いたたたたたたたたたたっ!!!???」

「レム、いいわよ、もっとやってやりなさい」

「鬼!鬼畜!」

「あら嬉しい、合ってるわね」

「くっそ…!レム!マジで!痛い!やめ…いたぁ!?」

「バイバーイツバキきゅん」

「きゅん!?」

「…っ!」

「レム!折れる!潰れる!」

「兄ちゃんも大変やなぁ」

「焚き付けた本人が何言って、うぉいたぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「刃先…折れちまったなぁ」

あれから数時間後、色々あって部屋で一人になってしまったのでソファに寝転び、刀身半分折れた短剣を抜き、それをぼーっと眺めながらそんな事を呟いた。

色々は色々なので深く詮索はしないように。

その後短剣を元に戻し、目を閉じて眠ろうとした時。

「っ…」

何か気配を感じた、こちらへ向けられた明らかな殺意を。

「外に出るか…」

ここで戦っては変に騒ぎになって余計に混乱が起きるだろう、恐らく明らかに俺個人への敵意だった。

相手がどこにいるかは不明だが、俺が狙いなら外で孤立した段階で襲ってくるはずだ。この周りには非戦闘員も含めて人が多少はいる、巻き込むのは避けた方がいい。

ドアを開けて、廊下を歩き、外の庭へと出る。

どこだ…どこにいる。

周りに人影はゼロ、だが気配だけがする、嫌な感じだ。

「出てこい…どこにいる」

魔力探知で気配を探る、反応は…。

「後ろ…!」

猛スピードで振り返りながら下がった、だが…遅すぎた。放たれたものは、俺の右肩を掠めて奥の花壇を破壊した。

「ぎっ…!」

折れた短剣を引き抜き、飛んできた方向を見ると、突如、右手の力が抜けてピクリとも動かなくなった。

「神経毒だ、並の人間ならば死んでいるところだが、流石といったところか…」

「お前は…」

先程倒し、今頃牢屋で拷問なりなんなりを受けているはずのあの男だった。男は腕にクロスボウのようなものを付けて、こちらへ照準を向けたままだ。男の顔は見えない、黒い布で目元以外をおおっているからだ。

「なるほど…どうりで手応えがなかった訳だ」

あれだけの事ができる軍団の首領があんなにあっさり倒せる訳が無い、そう心のどこかで思っていたが、どうやら予感は的中したようだ。

「さて…どうする、貴様にできる事は何も無いぞ、貴様さえいなければ俺の計画は障害なしに進んだものを」

「それは残念だったな、俺がいる限りお前の計画は絶対に実行させない、内容は問わない」

「そうだな、だから今この場で殺してしまおうという訳だ」

「なるほど、だけどそう簡単に殺されてやるほど弱くはないぞ、俺は」

「平生のお前ならばそうであろう、だが、その神経毒を食らった状態で満足に抵抗ができるか?」

「…っち」

時間の経過とともに、神経毒は侵食しつつある、今も魔刃を地面に突き立て膝をついている状態だ。だが、手がない訳じゃない、確かに今の俺ならいとも簡単に殺されるだろう。だが、あいつがこの事態に気づいてないとは到底思わない。

「最後に言葉を残すとすれば何を言い残す」

「そうだな…」

だが、それではダメだ、奴は俺に注意を向けているように見えて、常に周りを警戒している、たとえ不意打ちを仕掛けたとしておそらく対応されるだろう。気づかれず、なおかつ、一撃で退かせるためにも、奴の気を逸らさなければ。だから…、

俺は突き刺した魔刃を地中から伸ばし、奴の下から突き出そうとした、しかし、不意はつけたものの、対応され躱される。

「遺言はそれでいいな…?」

「…今だ」

状況は完璧、奴は今俺以外を意識していない。いけるだろ、お前なら。

「ラム!」

「ウル・フーラ!」

風の刃が、俺の頭上を掠めて、奴に襲いかかった。凄まじい暴風と轟音の後、奴は姿を消した。

「全く、なんの警戒もせずに外へ出るなんて、気を抜くにも程々にしなさい」

「してたさ、その上で不意打ちを食らっただけだ」

「何の言い訳にもなっていないわよ、それにしても、随分あっさり引いたわね」

「狙いが分からん、狙いさえ分かればあとはどうにか…」

「ツキ、何か心当たりは?」

「その顔で言われるとまるで俺が狙われてるみたいな言い方ですね…」

「ラムに狙われるものなんて無いもの」

「言ってて悲しくなんねぇか」

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、牢屋は何故かもぬけの殻になっていて、誰一人としていなかった、看守が気絶させられていて、拷問中に幻術を使ったと見られている。つまるところ振り出しに戻ったというわけだ。拷問で何か話したという訳もなく、黙秘を続けたらしい。

だとしても妙に引っかかる、賊が入ることが分かっていた、にも関わらずその賊の正体は不明、狙いも不明。

ここには確かに、位が上の王族や、貴族、支配者層の人間がいるがそれらの命、誘拐が狙いなら、爆発を起こして派手にやるより、隠密に徹して秘密裏に、殺害、拉致が一番早い。

つまりアイツらが襲ってきたのは何か意味があったのだ、何かの陽動なのか、それとも何か確かめたい事があったのか。

ロズワールの言葉の真偽が気になる、あいつは賊の襲撃を事前に知っていたのだ、それはあの場にいた一部の、リカード、フェリス、ラム、レムなどの護衛の人間とその当人達。フェリス曰く、結界のマークを抜けるにはそれこそ内部に精通している人間でないと不可能らしい。

あれほどの大爆発を、大きな魔力反応無しに行える人間は限られている、にも関わらず、未だに絞りきれないのは、狙いが分からないからだ。

もしあの場にいた誰かの命が狙いならば、全員を襲う必要も無いし、護衛が無数にいるあの場で襲うのはデメリットの方が大きい。つまりあいつらには理由があったのだ、何か確認したいことがあった。それゆえのあの行動、あの場にいた人間の命が狙いではない、では身柄?。

それなら尚更、あの場で仕掛ける必要などない、ではなんだ、陽動?、いやこれも違う。あれほど大きな陽動が必要だというのなら、相応の大きな事が起きていてもおかしくない。そうならば、今の時点で起きていてそれに気づいていないのはおかしい。

つまり、あの瞬間にやった事は陽動目的ではないということだ、であれば、行動理由は大体絞れてくる。つまりあの場に置いて連中は何かを確かめたかったのだ、何かを確認するためにあの騒ぎを起こした。

もっともその何かが分からない以上はなんの進展も…。

ドゴォォン!!!!!!!

「っ!なんだ!?」

不意にとてつもない振動と爆発音がした。それと同時に魔力の波によって、視界が歪み、頭痛が走る。

「ぐっ…ぐぉっ…ぎっ!」

何とか波を乗り越え、荒れた息を整える。

「俺はまだしも…ラムは」

ラムには角がない、故に魔力の生成は不可能であり、これの影響をモロに受ける。

俺はとにかく爆心地の方へと走った。

嫌な予感がした、とてつもなく嫌な予感が。

「レム…!」

もし彼女が襲われるようなことがあればレムは迷いなく盾となり自分を投げ出すだろう。

「くそっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、兄ちゃん!」

「リカード、無事か!」

「おうなんとか、お前さんも無事か!」

「レムとラムは?」

「いや見とらんが」

「くそ…、最悪だ」

「どないした、そんなに焦って」

それは考える前からずっと頭の中にあって、見なかったことにしてきた物、あるはずのないと思った可能性。だが、考えれば考えるほど、その可能性しか選択肢がないことに、嫌悪感を覚える。

「爆心地は!」

「いや、この先を行ったところ…」

「サンキュ!、リカード!ここは任せた!」

「お、おい!兄ちゃん!」

絶えたはずの鬼族の血、そして角を狙っている可能性、もしくは連中が…。

「魔女教徒…」

そう考えれば、全てに合点がいく、幻術に優れている点、あらゆる事に合点が行く。ならあるはずの最悪すらもように想像がつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っ!ラム!」

爆心地、そこは案の定レムやラムがいたとされる調理場、そしてそこにはレムの姿は無く、頭から血を流して倒れるラムの姿があった。

「おい…!ラム!」

起こして見ると出血は額からだった、無理やり鬼化して止めようとしたのか…。

「ツキ…、レムが…魔女に」

「分かってる、くそ…、っ!」

後ろから黒装束の男が現れ、ラムを連れ去ろうとするがラムを抱えて飛び上がり、屋敷の屋根へと登る。

「くそ…っ!、レムが…」

「ラムの…事は」

「んな事言ってられるか!」

現れたのは三人、屋根の上までも追ってくる。

「魔女教か…!」

何も話さず、ただこちらへ迫る魔女教徒。

「邪魔を…」

俺はラムを片手で抱える姿勢に変える、もう片方の手で刃を展開し、迫り来る3人を迎え撃つ。足に魔力をこめ、思いっきり飛び出す、刃をより大きく展開し三人まとめてぶった斬る。

ラムの千里眼があれば、レムの行方が分かるかもしれないが、今の状態では無理だ。

「フェリス…!」

彼女は回復術師だ、そんな彼女ならばラムをいち早く治せるだろう。

「ラム…すまん、少し急ぐから捕まってろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェリス!どこだー!フェリス!」

「おい兄ちゃん!無事か!」

しばらく屋根の上を飛び回っていると、下から声をかけられた、どうやら爆心地の大広間には多数のマナ酔いの被害者がおり、場は混沌としていた。

「リカード!?あっちは?」

「おう、全員ぶった切ってやったわ」

「そうか、ところでフェリスは?」

「ここだよー、今マナ酔いしてる人の処置中」

「すまんフェリス、大至急ラムを頼む!」

「え…この子…、うん、分かった」

「…っ!おい兄ちゃん、上!」

「っ!あれは…」

見るとそこには先程の黒装束の男が何か大きな術式を、展開していた。まさか…!。

「まずいよ、今さっきのがもう一発来たら最悪死人が出る…」

「リカード!俺を飛ばせ!」

「はぁ!?何を言うとるんや、死んでまうぞ!」

「ここで全滅するよかマシだ!、いいから早く!」

「…分かった!」

「ふたつに分断する、あとは任せた!」

オレはリカードの持つ大剣に足を乗せて、思いっきり勢いをつけて飛ぶ。黒装束の男が撃った術式はすぐに大きな透明な不気味な玉へとなった。俺は刃を展開し、今一度腕に指先に魔力を流し込み力を込める。

「…っ!おおぉぉぉぉぁぁぁぁぁ!!!!!!」

左上から右下へ、袈裟斬りにし、透明な玉が真っ二つに割れる。そしてその先にいた、黒装束に掴みかかり、そのまま地面へと落とす。

「リカード!ボーッとしない!」

「あ、あぁ!」

「ヴィル爺!お願い!」

「承知」

フェリスの号令とともに左右脇から獣人と老兵が飛び出す、獣人は豪快に、老兵はしなやかに、魔力のエネルギーの塊を切った。

 

「…うらァァァァァァ!!!!!」

空中で首根っこを掴み、そのまま地面に叩き付ける。地面は円形にひび割れ、黒装束は息絶えた。だが…恐らくこいつは。

「偽物、本物は違うか」

こいつは俺に対してクロスボウで攻撃を仕掛けた奴ではない。

「時間稼ぎ…!」

俺は左足で思いっきり地面を踏み砕いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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