それは我らの憧れであった。   作:小池蒼司

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3.引き抜きとそれから

古森さんが卒業し、それと同時に席官についたという噂はすぐに広まった。

それが"十四番隊の"というのはきっと私しか知らないんだろうけど。

 

 

そして二年に進級してから暫く、私の元へ一人の女性が現れた。長い髪は濃い青から白へグラデーションがかっていて、左側の前髪に長く赤いメッシュが入っていた。それはそれは美しい女性であった。

 

その人は名を"浮竹鳬梅"と名乗ると一言「卒業したらうちに来なさい」とだけ口にした。

 

「は、はい!?」

 

彼女の着ている羽織には十四と文字が入っていて、瞬時に古森さんが話していた十四番隊の引き抜きだというのは理解した。

しかし、それが何故私に来たのかは分からない。困惑を隠せずにいると鳬梅さんは落ち着いた声色で「十四番隊で待っています」と微笑んだ。

 

「あ、の……どうして私なんでしょうか」

 

待たれても困るし。私は振り絞った声で何故私なのか問いた。

掠れた声は鳬梅さんの圧にやられてか、それとも緊張からか。

 

「子守りが得意そうだったから」

 

返ってきた答えは予想外の返事で拍子抜けした。

目をぱちくりさせると鳬梅さんはイタズラぽく笑い、その場から消えた。

 

 

それが"隊長"との初めての出会いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行けばいいんじゃね?」

 

もっちゃもっちゃと握り飯を頬張りながら他人事のように言うのは、朝長が私に対してそれほど興味がないからである。

昼休み、突然十四番隊隊長から声をかけられ引き抜きをされたと言う話を朝長にすると、軽い口調で返された。

これでも同期だし信頼しているから相談したのに、適当に答えるので呆れてしまう。

 

「十四番隊ってどんなところかわからないんだよ?」

「でも隊長直々にお誘いしてもらったんだろ」

「それは、そうだけど……」

「古森先輩も所属してるらしいじゃねーか、こんなこと滅多にないぞ」

 

悩むくらいなら決めちまえよ。朝長は二個目の握り飯を手に取り言った。

確かに言われる通り、こんな機会はなかなかない。子守りが得意そうという理由は置いておくにしろ、学院に在学中の身でありながらも隊長からお声がかかり、おいでと言って貰えたのだ。この上ない光栄なことである。

 

「古森先輩が席官についた話が本当なら、きっと十四番隊のだ。お前が十四番隊に入るなら上司って事だな」

「ちょっと、私が古森さんより下なの前提じゃないそれ」

「いやぁだってお前別に特別特出した才能とかないじゃん」

 

うぐ、と言葉に詰まり言い返すことは出来なかった。寧ろ確かに、と納得しかけてしまった。

朝長に言われると腹が立つが、朝長は白打に関しては特別成績がよかった。鬼道は苦手なものの、体術や剣術の腕は同期の中でもずば抜けていて、全てが平均の私に比べると出来が良すぎるのだ。

普段はおちゃらけていても戦闘になると人が変わったように活躍する。そんな奴だ。

 

「来週の実戦訓練で古森先輩が来るかもしれないって話言ったっけ」

「今初めて聞いた」

「おー、じゃあ今言った」

「……」

 

多少大雑把なところはあるが。

 

 

 




五條鳬梅……ごじょう かもめ

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