それは我らの憧れであった。   作:小池蒼司

5 / 8
5.運命られた変化。

 

"本日は真央霊術院にて特別授業がある。講師は十四番隊隊長浮竹鳬梅"

 

あのスカウトから一週間経ち、今日は朝長の言っていた古森さんと鳬梅隊長の授業、のはずだった。

 

あの鳬梅隊長が今日は授業をしてくれるんだ!、なんて思ったのは一瞬で、気付いたら私は虚討伐に駆り出されていた。

 

ーーなんで?

 

純粋に疑問だった。

授業開始直後、いきなり腕を掴まれたかと思えば高速で連れ出され、しかも「戦ってきなさい」と言われる。

 

ちょっと待て、とはさすがに隊長に言えないが、わけも分からずいきなり実戦。

院生は私だけ。

周りは皆立派な死神だらけで、何も出来ず、動けずにいた。

 

虚に圧倒されていたのか、と聞かれるとそれもあるが、私が1番圧倒されていたのは周りで一生懸命命をかけて戦う隊士達だった。

 

「危ない!」と言われた次の瞬間には私に虚の腕が向かってきていた。

 

助けてと言わんばかりに鳬梅隊長の方を一瞬見たが、動く気配はない。

 

ーー見捨てられた……?

 

「ねぇ貴女実戦経験は?」

 

黒髪の短い髪の女性が刀を握りしめて私の前に立った。私は涙目に首を振って浅打を握る。

 

「夜宵、ここは彼女に任せてあげなさい」

 

後ろから余裕そうな鳬梅隊長の声がして、戸惑いながらも女性は少し後ろに下がった。

私は斬魄刀にすらなりきれないただの浅打を握りしめて震えているだけだ。私に何を任せたというのだ。

 

(頑張れ私、大丈夫だ私ならできる……いややっぱり無理!!)

 

 

でもその時、私に声が聞こえた。

 

『力が欲しいか』

 

ーー力……?

 

『お前はここで死んでいいのか』

 

いやだ、死にたくない。だってまだ私にはやらなきゃいけない事が___

 

『ならば呼べ!!』

 

そして叫べ、と何かに言われた時、私は迷わず

「荒れろ!!"獰飆(どうひょう)"!」

と叫んでいた。

 

突如巻き起こった強い風共に倒れ、私の記憶はそこから先全く覚えていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

気がついた時には四番隊の病室(後から聞かされた)のベッドで寝ていた。

 

「気がつきましたか」

「えっと、貴方は…?」

 

視界には優しく微笑む女性。彼女は四番隊隊長の卯ノ花隊長だと名乗ると、

「調子はどうです?」

と優しく聞いた。

 

「あ、えと、全然元気です……」

 

不思議なくらいに元気だ。

……そうだ、私の浅打は、と思い周辺を見渡してみる。

察したのか卯ノ花隊長が浅打を持ってきてくれた、が。

 

「斬魄刀の解放、突然とはいえお見事でした」

「……すみません、私何も覚えてなくて」

 

斬魄刀の解放。そう言われてもピンと来なかった。布にくるまれた刀は布越しに傷んでいることが微かに分かる。

 

「まぁ無理もないでしょう。というか、元はと言えば貴方に罪はありませんからね…院には私から伝えておきます。明日には復帰出来るでしょう」

「え、あ、はい!ありがとうございます!」

 

思っていたより淡々としていて、あっという間に話は終わった。卯ノ花隊長は先程言った通り院に連絡や、仕事に行くのだろう。病室を出ていった。

 

 

 

ふと、あの時の声を思い出す。

 

『力が欲しいか』

 

あれは一体なんだったのだろうか____

 

 

 

「恵子!!!!!」

 

卯ノ花隊長と入れ替わりでやってきたのは朝長だった。

急いで駆け寄ってくる彼に、どうしたのその顔は、笑いかける。

なんでそんな泣きそうな顔をしているんだ

 

「全く無茶しやがって……!!無事でよかった……」

「あはは、見て、このとおり全然元気だよ〜!!」

 

私は腕を振り回す。

ほんとに不思議なくらいに元気なのだ。

 

良かった、と胸を撫で下ろす朝長。こんな焦った顔を見るのは初めてだ。

 

「ほんとにありがとう」

 

小さな声に、「おう」と聞こえて視界が霞んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。