ラブオーズ!「Anything goes!『旅はまだ途中』」 作:ゆっくりシップ
これは1人の少年が運命という名の本編へと向かう数日前の出来事である。
別に全く筆が進まなくて最初の投稿から一ヶ月以上経ってしまったからお茶を濁しとこうとかそんなやましい気持ちは一切無い。
やましい気持ちは無いのだ......!
まぁ要するにーー
初回は主要キャラの説明回である。
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「ほら姉ちゃん起きて!練習遅れるぞ?」
「むぅ......おぶって?」
ここは虹ヶ咲学園の保健室、時間帯はちょうど放課後。
そして先程から保健室の質素なベッドで寝惚けているのは皆様ご存知虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバーである『近江彼方』。
そして彼方を揺さぶり、起こそうとしているのが今作の主人公にして彼方の弟。
『近江繋音(けいね)』である。
「そろそろライブだろ?しずく達も頑張ってたし」
「......よし、彼方ちゃんちょっと本気だす...!」
かっと目を見開いた姉に唖然としていると、視界には既に姉の姿は無く、薄い毛布がふわりと宙を舞っていた。
「はぁ......本気だしたらこんなに速いなら毎日本気だせばいいのに」
『お前も急げよ、マネージャーさん?』
「はいはい。わかってるよ......『啓太』」
空を見上げなにもない所に向け声を発している繋音。
そして彼は姉のあとを追い開いたままになっている保健室の扉を閉め、部室へと向かうのであった。
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場所は変わって時間も過ぎて、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部室。
練習を終えた彼女達が寛いだり談笑したりたまに枕だとかコッペパンとか色々なものが飛んだりしていた。
「『賢兎』部長ー!練習場の鍵返してきましたー!」
「むぅ......だから部長とか付けなくていいのに。ありがとうね繋音君、あっそれはあっちに置いといて」
そう言って微笑むのは『叶賢兎(けんと)』。
この虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部長である。
見た目は短めのツインテールにくりっとした目、そしてパステルカラーを好んだり一人称が私だったり声が高いなどの理由で女と間違われがちだがれっきとした男である。
実際繋音自身や他の面々も初めて会った時は制服が男用でなければ女性だと勘違いしていただろう。
「先輩も大変ですよねーこんな面々を纏めたり作詞とかもしてるのに内海とかにもよく手伝いに行ってますし」
「あはは、私が好きでしてるからね~楽しいよ。それにね、今度また曜ちゃんと遊ぶ約束したんだ~!」
「よかっ「へー......」ひぃ!?」
後ろから呪詛のようななにかを感じ思わず跳ね上がる繋音。
そこには虚ろな目をしてぶつぶつと呟いている賢兎の幼馴染である『上原歩夢』がこちらと言うより繋音の正面にいる賢兎を凝視していた。
「ふーん......曜ちゃんかぁ......あの子も邪魔しちゃうのかなぁ......」
「歩夢ちゃん?どうしたのそんな怖い顔して」
「(貴方のせいですよパイセン!!)おっおいかすかす......お前なんとかしろよ」
「はぁ!?やですよまだ死にたくないですよかすみんは!てかかすかすって言うな繋音!えーと、しっしず子、任せた!」
「えぇ!?先輩に任せとくのが一番じゃないかなぁ......?」
「私もそれでいいと思うな。寧ろ繋音がやるべき。 璃奈ちゃんボード『うんうん』」
「えっ」
繋音の体から大量の汗が溢れ出てくる。
先程撤退した地獄に自らの足で赴けと言っているのだ彼女は。
もしかしたらこの中で1番Sなのは璃奈かもしれない。
「鬼だ......璃奈が鬼だ......」
「あれ?そういえば彼方さん達は?」
「そっそうだ!せつ菜先輩達なら!」
「愛さん達なら練習終わったあと皆でケーキ食べに行ったよ?」
「えっ私初めて聞きましたけど......」
「えっ俺初めて聞いたんだけど......」
「あれ?しず子もあの時一緒にいたような......繋音は知らなくて当たり前ですよ更衣室で話してたんだから知ってたら逆に引く」
救いはないらしい。色々と。
スマホを確認すると確かに姉ちゃんからLI○Eが届いていた。
了解とだけ返信しておく。
「あ!そういえばあの時は演技の練習の事をずっと考えてて......」
「成程、だからしずくは知らなかったのか。でもなんでかすみんと璃奈は行かなかったんだ?」
「私はこの後少し用事があるから断ったんだけどかすみちゃんは?」
「ヴェ!?べっ別に繋音がぼっちだと可哀想だなとかしず子と二人きりになったらギャルゲ展開になりそうだなとか思ってませんけど?かすみんも用事あるんですよこの後!多分......」
「おっおう......なんでキレ気味なのかわかんないけど」
「......っ!!りな子ぉぉぉ!!」
「よしよし、馬鹿で鈍感な繋音が全部悪いから。 璃奈ちゃんボード『やれやれ』」
「完全に先輩と歩夢さんの事忘れてますね......あと私も」
「歩夢先輩をどうやって止めるかって話だったなそう言えば......」
「ぐすっ......繋音にキズモノにされた......これは特盛パフェを奢ってもらうしか......よよよ」
わざとらしくよよよと言いながら流れてもいない涙を拭うフリをするかすみ。
「まぁ......週末はライブだしな。肥ってもいいならそれくらい奢ってやるよ」
別に懐は寒くないしバイトしてる癖に金の使い道も特にない。
マネージャーなんだしこれでかすみの英気を養えるなら安いものだ。
「ほんとちょろいです......ってなんか思ってたリアクションと違う気がしますケド。かすみんはアイドルの中のアイドルだから肥らないんです!」
「はいはい、璃奈達はどうする?別に3人くらいなら問題ないけど」
「なら私もご一緒してもいいですか?」
「私はさっきも言ったけど用事があるから。3人で行ってらっしゃ~い。 璃奈ちゃんボード『にこにこ』」
「そっか。んじゃまた今度な。よし、それじゃあ『あちら』の邪魔したらあれだしさっさと退散するとしますかー」
そそくさと荷物を纏め部屋から出る4人。
部屋の中ではいまだに歩夢先輩の重い声と裏腹になにもわかってない賢兎先輩が頭の上に『?』マークを浮かべているが気にしない。
心の中で曜さんに黙祷を捧げると俺達は町へと歩きだした。
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「あれ?」
「どうかしましたか?」
「いや、なんか誰かに見られてたような......」
「繋音をストーキングする奴とかいませんよww」
「まぁそうだよな......」
何気ないいつも通りの日常にほんの少し陰る暗い欲の渦。
そしてそれが彼らの運命を少しずつ狂わせていく。
繋音が振り向いた道。その横にひっそりと在る路地裏で嗤う少女。
紫色の眼と髪の少女の足元に転がるのは銀色の小さなメダル達。
「ようやく見つけた♪待っててねお兄ちゃん♪」
繋がりは決して消えない。
例えそれが何百年経とうとそれを覚えているものがいる限り。
それが幸となるかは別だが。
1話なんです。軽く失踪してたけどこれが第1話なんです。