ダンジョンで自然軍と邂逅するのは間違っているだろうか 作:ClariSと苺の樹
「……んで、俺の入っているファミリアに入りたいのか?」
「はい!」
思わず声をかけてしまったベルと突拍子もないことを唐突に言われて困惑している黒翼の天使。一瞬気まずい空気が流れたがそこは社交性の高いベルで合った。すぐさま彼を座っていたベンチへ促し、そこで売っていたジャガ丸君(プレーン味)を二つ買い、彼の隣に座った。
「何故だ」
「はい?」
「何故俺のファミリアに入りたいと思う」
片手にジャガ丸君を持ち、一口一口ゆっくりと咀嚼しながらその少年はベルにファミリアに加入したい動機を訪ねた。
動機を聞かれたベルは少しだけ考えるように顔を下げたが、意を決したようにその口を開いた。
「……実は僕、さっきから色々なファミリアに行っては加入してほしいと頼んでいるのですが、どのファミリアも僕の事を一目見て、加入を断るのです。確かに僕は体は小さいし、決して強そうには見えないと思います。……だけども、僕にはこのオラリオで成し遂げたい大きな夢があるんです!」
「……」
「だから僕は諦めずオラリオへの加入のお願いを続けていこう、そう決意した時に貴方を見つけたんです」
「貴方の漆黒の翼からは誰にも縛られない自由を感じました。そしてその自由を背負っていくことのできる技量もです」
「……!」
「……すみません。急なお願いだってことも分かってはいるんです。けれども僕は貴方に、そして貴方のファミリアに興味があるんです。どうか僕を貴方のファミリアに入れてくれませんか!」
そう言って立ち上がったベルは勢いよく彼に向って頭を下げた。それを見た天使は悩む様にベルの事を見ている。
「……お前の言いたいことは分かった」
「という事は!?」
「だからと言ってウチはお前みたいな
「え……!?」
「悪いが他を当たるんだな。あと、ジャガ丸はうまかったぞ」
言いたいことは言い終わったのか、ベンチから立ち上がった彼はベルに目を向けることもなくそのまま立ち去ろうとしている。
「ま、待ってください!」
思わず手を伸ばしたベル。今まで話も聞かずに門前払いを受けていた彼にとって、目の前にいる同じ年齢くらいの天使は唯一話を聞いてくれた存在、ファミリアには入れて貰えなくてももっと話をしたかったのである。
しかし現実は無情、伸ばされた手に彼は気付くことなくそのまま細道に入っていく——
「こら、話はちゃんと最後まで聞きなさいっていつも言っているでしょ?」
事はなかった。いつの間にか現れた女性が彼の頭を思いきり叩いたからである。
「——っ! 痛ってぇな、何しやがんだ!」
「それはこっちのセリフよ、ブラピ。なんで何も話さずに立ち去ろうとしたのよ」
「……」
「ごめんね君。この子、誰にでもこうやって素っ気ない態度とって困らせるのよ」
腰にてを当ててやれやれと首を振っている彼女と頭を押さえてうずくまっている天使を見てベルは唖然としていた。
「さっき君がしていた話はこっそり聞いちゃったんだ。だから君の決意の強さを私は知っているけど……そのうえでやっぱり加入することは認められないかな」
「ど、どうしてですか……?」
「『ヒューマンはファミリアに入れない』」
「?」
「それが私たち【ナチュレ・ファミリア】の鉄則だからよ」
そう言って女性はじっとベルの眼を見つめた。
……綺麗な人に見つめられて少し照れてしまい顔をそむけてしまったのはご愛敬である。
この迷宮都市においてヒューマンとともに生活を送る神は多く存在し、その数だけ、ファミリアも存在している。ダンジョンで生計を立てる冒険者たちが憧れるメジャーなファミリアもあれば、あまりよく知られていないファミリアなど多種多様である。
例えば大手
そしてダンジョンにおいて最前線で体を張っている者たちとして語らなければならないファミリアは二つある。
一つ目は【ロキ・ファミリア】である。
小人族であるフィンを団長とし、七名の第一級冒険者たちと第二軍の中核メンバーで構成されたオラリオ最強ファミリアの一角である。特にLv.5であるアイズ・ヴァレンシュタインはオラリオ内において知らぬ者は居らぬほど前線で活躍している冒険者である。
そしてもう一つが【ナチュレ・ファミリア】である。
自然を司る神、ナチュレのもとに集った亜人達31名によって構成されたファミリア。小規模ではあるものの、各々が第一級冒険者ほどの実力を持っており、【ロキ・ファミリア】とは違った強さを誇っている。
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彼ら四人の幹部のもとにそれぞれ補佐が付き、各々課せられた任務を忠実にこなす軍隊の如きファミリアである。
「自己紹介が遅れたけど私の名前はエレカ・マグネクト。気軽にエレカって呼んでね」
「はぁ・・」
「そしてこっちの仏頂面な天使はブラックピット・リセブランス。こんな見た目でも貴方よりは長く生きているのよ?」
「・・ふん」
しかしながら主神であるナチュレは古くから大のヒューマン嫌いである事として知られていた。その為、このファミリアにはヒューマンが一人もいない。
ヒューマンが所属していないファミリアであることやそのダンジョン内での行動などから、他の冒険者からは『
「——というのがうちのファミリアなんだけど、理解した?」
「はい……」
恐らくは【ナチュレ・ファミリア】のエレカであろう女性に懇切丁寧にファミリア加入拒否について教えてもらったが、ベルからしてみればまた入れてもらえなかった……と、落ち込むこととなってしまったために周りの空気が少しどんよりとしている。流石のエレカもこれには対処できないようでどうすればいいものかとあたふたしている。
しかし彼、ブラックピットだけは何事にもとらわれる事なくいつもの様子でベルの前に立ち、その頭を小突いた。
「いてっ」
「いつまでそんなしけたツラしてんだ。俺たちのとこは無理だってわかったんだ。さっさと次のファミリアに行ったらどうだ」
「でも……」
「別に次のファミリアがダメだって決まった訳じゃない。もしかしたら俺たちのとこよりもいいヤツがたくさんいるかもしれない」
「……」
「……それでもどうしたらいいか分からなくなったときはな——」
そう言ってブラピは握りしめた拳をベルに突き出した。
「——俺達の所にいつでも来い。ここであったのも何かの縁だ。話くらいは聞いてやるよ」
「ブラックピットさん・・。いや、ブラピさん!」
「ブラピって言うな!」
こうしてベルは神ヘスティアと出会う以前に、彼ら【ナチュレ・ファミリア】の面々と知り合うこととなる。
これから事ある毎に彼等と関わりあって行くことは、まだ神すらも知らないであろう。
これでプロローグは終わり。
次から原作に突入していきますのでよろしくお願いします。