大江山の下っ端転生者   作:鬼怒藍落

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今回は短いです


七話

「うわ――――」

 

 都に入るとそこにあったのは人の群れだった。見渡す限りの人人人、恐らく今都にいる貴族全員が集まってるんじゃないかと思う程の人込み。護衛の武士や陰陽師もいて、俺はこの場にいるだけで体が震えてきた。

 俺と頭領は貴族に見えるように変化しており、並の陰陽師では見抜けぬ程に術をかけている。それに加えて頭領は、かなり成長した姿に化けており、京一と言える美女になっている。その所為で余計に注目を浴びていて俺のメンタルがかなり削られてしまう。

 

「む、何故こうも注目を浴びるのだ? まあよい土蛇、この先に織物と陶磁器が売っているそうだ。買いにゆくぞ」

 

 メンタルを削られている俺とは違うようで元気一杯な頭領は、俺の手を引きながら人込みの中に入って行った。店に着くとそこは貴族達で賑わっていた。店を見渡せば美しい織物や妖怪を模したような模様が入れられた織物もある。それを見た頭領は、これなら酒呑が喜ぶぞとはしゃぎ、幾つもの織物を買い占めてしまった。恨めしげな視線を送られたが、それを一切気にしない頭領には意味が無い。

 

「さて土蛇、次はどこに行く? 吾はどこでもよいのでな、土蛇の行きたい場所に行ってやろう」

「急にそう言われても困るぞ頭領、俺は都で行きたい所などあまり無い」

「それは困ったな、吾も都で遊べる場所など知らん――ふむぅ、ならば適当に回るとしようではないか」

「帰らないのか? 用も済んだし帰って酒呑様の為の宴の準備をすると思ってたんだが」

「それもそうだが、久しぶりに汝と出掛けているのだ。少しぐらい遊んでもよかろう」

 

 困ったな。そう返されると断れない。でもどうするか、遊べる場所なんて俺は知らないぞ……あぁもう、こうなったら勘で回ってやろう。頭領の頼みだ。都を探索し尽くしてやる。

 まずは頭領の好きな甘味がある店からだ。そう考え、頭領の手を引いて前に香子と行った甘味処に俺はやってきた。

 

「頭領、好きなだけ食べてくれ」

「了解だ土蛇、食べ尽くしてやろう!」

 

 で、その遊び尽くした俺達は途中で藤原の屋敷に足を運び、いく幾つかの名酒を譲り受けた頭領と一緒に大江山に帰ってきた。大江の山に帰った後は宴の準備をする事になり、山の妖怪達と日が暮れるまで山中を走り回っていた。無事に宴の準備を終え、この後は何事もなく酒呑様を迎えると思っていた中、事件が起こる。

 数時間前に酒呑様を迎えに行っていた星熊童子が傷だらけで大江山に飛んできたのだ。

 大江山の中でも一二を争う強さを持つ星熊が、こんな状態で飛んでくるという異常事態に俺の思考は凍る。そんな状況で冷静な頭領は、星熊の傷の手当てをしながら何があったのか聞き出していた。

 

「酒呑が土蜘蛛に捕まっただと!? どういう事だ星熊!」

 

 頭領のその問いに、星熊は途切れ途切れの言葉だがなんとか俺達に事の詳細を伝えてくれた。酒呑様を迎えに行く為に越後の国に星熊が行くと、彼女の住む山に蜘蛛の群れが現れ、瞬く間にそこに巨大な蜘蛛の巣を作ってしまったらしい。圧倒的な強さを持つ酒呑様も増え続ける蜘蛛の群れに徐々に押されていき、加勢した星熊も毒にやられた所で酒呑様に逃がされて今に至るらしい。

 

 その話を伝え終えた星熊は今までの疲れか、その場で倒れてしまった。幸い息はあるようだが、軽く調べてみたところ星熊を蝕んでいるこの毒は呪いを含んでいるようで、土蜘蛛を倒さない限り癒せないようだ。

 

「――――なぁ土蛇、越後に行くぞ」

 

 頭領は静かに怒っていた。口調は穏やかだが、怒りに呼応するように炎が溢れ、殺意を周りに撒き散らしている。

 

「了解だ頭領」

 

 そして、それは俺も同じだ。

 怒りが溢れる。俺の悪友と、頭領の親友を害した蜘蛛の妖怪に殺意を抱く。あぁ、駄目だコレは。我慢出来ない。

 

「出陣だお前達。吾らに喧嘩を売ったらどうなるか、骨の髄まで教えてやるぞ」

 

 悪いな太郎坊。昨夜の忠告、守れそうにない。

 

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