隠されし上弦 -Relation Limit-   作:禍津日

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1話 召集

 ベンッ

 

 琵琶の耳障りな音色が耳を刺す。

 

 その瞬間、視界が無限城の一角へと変化する。

 

 ここに呼ばれたのは何年ぶりだろうか、私たち"隠・上弦の月"はそう簡単に召集がかかったりしない。私たちは基本"青い彼岸花"を探すために作られた存在であるからだ、血鬼術も"死なないように"とかなりの強さも誇っているが、鬼殺隊士に見つからないような行動が前提とされるため、あまり使用はしていなかった。

 

「……琵琶さん、今日はどのようなご要件で?」

 

「しばらくお待ちください。他の隠・上弦の月をお呼びしております」

 

 相変わらず喋り方がめんどくさい奴だな。と、腰に着けた瓢箪酒をグイッと飲む。やっぱ酒がないとやってられない。

 

「……この意味不明な時期に召集かぁ。嫌な予感しかしないねぇ」

 

 右目には"上弦"、左目には"隠壱"と刻まれた忌々しい瞳で琵琶さんの顔を見つめる。よくよく顔を覗くと、顔のデカすぎる瞳には"肆"という文字がチラッと見えた。あれ? 隠がないってことは、普通の上弦だよね……肆って半天狗じゃなかった?

 

「……全員、お呼び致しました」

 

 琵琶さんがそう言うので私は周囲を見渡す。右端の通路の角には、隠・上弦の参がいた。

 

「やっほ、相変わらずだね」

 

「ヒィ!!? な、なんだ壱か……てっきり無惨様かと」

 

「……いたら殺されるぞ、お前」

 

 隠・上弦の参は臆病だ、それも前世かららしい。無惨様から聞いた話だけどね、まあそんな事はどうでもいい。

 

「呼ばれた理由とか聞いてないの?」

 

「え、俺は壱が知ってる物かと」

 

「はぁ? 私が知るわけ……」

 

 と、私が言いかけた所で、その場所にその他の隠・上弦の月も次々と集まりだした。

 

「あら〜、壱久しぶりっ、元気してた?」

 

 まるで旧友見たいに喋り掛けてくる綺麗な衣服を着た隠・上弦の弐。私より前に上弦となっており、前は普通の上弦の月に就いていたという。

 

「ここはいい……下界ではね? 誰も僕の事に気づいてくれないんだ。おしゃべりがしたかったんだ……僕は」

 

 ゆっくりと悲しげに語る喪服のような物を着た隠・上弦の肆。

 

「ほほほっ、若いモンは元気があっていいのう、歳はとりたくないもんじゃ……」

 

 杖をつき、いかにも"もうすぐ私は死にますよ"感が強い老人である隠・上弦の伍。

 

「おじいちゃん……無理しないでね、まったく。あ、皆さん揃ってたんですね」

 

 ちょっと言葉遣いが固い小さな女の子である隠・上弦の陸。まあ、新人だし当然かもしれないが。

 

「で、弐か肆もなんで呼ばれたか知らないの? 伍と陸はまあ、当然として……」

 

「ほほほっ、信用されとらんのう」

 

「仕方ありませんよ……」

 

 弐と肆も知らないと言わんばかりに首と手を降る。じゃあ、なんの用なんだよ……。

 

「……皆様、無惨様がお見えです」

 

 !!

 

 その言葉を聞いた瞬間、私たち全員はガバッと膝をついてこうべを垂れる。その言葉を聞いただけで背筋が凍てついていくような錯覚に陥るから、大した物だ。

 

「何が"大した物"なんだ?」

 

 声でわかる、私たちの目の前にいるんだ。

 

「いや、別に悪い意味では無いですよ」

 

「……壱、貴様は何考えているのか本当に分からんな、まあいい。表の上弦が残り3体となった」

 

「……へえ」

 

「あらあら……優秀ねえ、最近の人間共は」

 

「ヒィィイ……っ!!」

 

「ふむ」

 

「ホッホホ、こりゃ何とも」

 

「珍しい事もあるんですね」

 

 ここにいる6体は全員驚きはした物の、さほど驚愕はしなかった。むしろ"何れそうなる"といった様な感覚だった。

 

「その報告だけです?」

 

 私は話を続けようとする。

 

「それだけでは無い。これより、新たに命を与える……」

 

 ゆっくり顔を伺った、相当怒っているように見える。

 

「ほほ、なんじゃろうのう」

 

「黙れ、今は私が喋っている」

 

 伍は喋ってないの気が済まないのか……私は伍に向かって、睨むような視線を送る。伍はその殺気を感じ取ったのか、頭を上下に2回揺らし、謝罪の意を表した。

 

「では、命を言い渡す」

 

 6体は静かにそれを承った。

 

 ――青い彼岸花は引き続き捜索、そして見つけた鬼殺隊士は殺せ

 




「ほほほっ、骨が折れるのう」

無惨様が居なくなると、皆静かに肩を下ろした。

「あ、圧迫感凄いですよ、おじいちゃん度胸あり過ぎですよ」

伍と陸は本当に仲がよい、私も時々羨ましく感じる程だ。

「じゃあ私は、引き続き花を生けてこようなかあ」

「おい弐、無惨様の命はどうした」

「え〜、だって私は弐、貴方は壱でしょ? まだ出しゃばる程じゃないよ、ふふっ。あ、琵琶のお嬢さん、私の部屋に飛ばしてくださいな」

ベンッ と、琵琶の音が鳴り、弐は私の目の前から姿を消す。私よりあいつの方が何考えているのか、分からないんじゃないだろうか……。

「さて……私は帰る。酒がまってるからな」

「もっと喋りたかったけどね、バイバイってね」

私は肆の見送りを受け、自分の持ち場へと帰還した。それにしても……これからは戦わなくちゃならないのか。そう思うと、なんだか私は面倒くさく思うと同時に、謎の幸福感に包まれた。
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