隠されし上弦 -Relation Limit- 作:禍津日
最近の鬼殺隊士は馬鹿が多い。
相手が格上の相手だとしても、果敢に攻め頸を落とそうとする。
いったい何を考えているのだろうか……。
「これで16人目」
青い彼岸花は一向に見つからない、そもそも彼岸花という物自体がなかなか見当たらない物だろう、その中で青色の物を見つけろと考えると、もうそれは計算するのも面倒な確率となるだろう。
「そろそろ、隠れ家も変えた方がいいか」
そう、ここは私の隠れ家。朝や昼の間私が身を潜める場所。何故か知らんが、もう何処かの鬼殺隊士が嗅ぎつけたのだろうか? 考えられるとしたら柱か。なるほど、だから、こんなにも……
「……鬼殺隊士が多いってわけか」
背後から奇襲をかけた二人の鬼殺隊士の顔面を見えぬ速さで叩きつける。その衝撃で顔が破裂し、ただ残った身体は最高の味がする、顔は不味いからな。いや、鬼殺隊士自体が不味い代物か。
「……はあ」
「壱さんこんな所にいたんですか?」
「……壱と呼ぶな、面倒臭い。
「あー名前で呼んでくれた、嬉しいです」
隠・上弦の陸は、私に怖気付く事も無く近づいてくる、最初は嫌らしく思ったが、最近はそんなことも無かった。
だが、丁寧に振舞っている分、思考がわかりにくい。喋る言葉一つ一つの意図があまり見えてこない。
「こんだけの鬼殺隊士、1人でやったんですか」
「上弦なら、これくらい出来なきゃ行けない。だがあまり血鬼術は使いたくない、疲れるからね」
「まあそうですよね。自分はまだ血鬼術頼りなので、もう少し素で強くならなきゃ行けないんですけど」
「……別にお前は今のままでいいだろ」
そういって陸の頭をぽんぽんと叩く、すると陸は『えへへ』と照れながら笑った、こういう所だけは「人間ぽいな」と思っているが、それも陸のいい所なのだろう。無惨様がなかなか憎めない相手だといっていたのも、なぜだか容易にうなずける。
「……夜明けまでまだ時間ありますね」
「だな。新たな隠れ家でも探すか」
「あ、バレちゃったんですね。手伝いますよ」
「……助かる」
腰につけた瓢箪酒の残りをグイっと一気飲みし、陸と共に山を降りる。道中で数名の鬼殺隊士にも出くわしたが、まあ敵では無かった。
「でもなんか鬼殺隊士多くないですか?」
「……だな、私の隠れ家目当てだとしても、こんなに数が多いわけないだろうし、そもそも隠・上弦の月の存在が、鬼殺隊士に知られている筈ないだろう」
……っと、それを言い終えた時だった。
ドンッ
「痛っ」
前を見てなかったからか、一人の少年とぶつかってしまった。念の為、眼の数字を裏返して隠すと、陸もそれに続いた。
「す、すいません、これから義勇さんの所に行く所で……!!?」
その少年は後ずさって私たちの眼を見据えた。成程、気配は消せないということか、裏返していた眼を戻し、彼の顔を見る。それに彼の額についた痣、成程この子が前猗窩座がボソッといっていた……
「……竈門炭治郎か」
「へ?」
「俺を知ってる? その眼の数字……でも、なんか何時もと違うような」
やはり、隠・上弦の月については誰も認知していないのか、いや産屋敷の者なら既に認知しているのかもしれない。だが、何故公表しないのだろうか。
「確かに私達は鬼だし、あの方からも君たち鬼殺隊士を殺せとは言われてるけど、生憎今時間がなくてね……どうだろう、ここは見逃してもらえないかな? 君なら、今ここで戦ったら分が悪い事は分かるだろう?」
「くっ……」
私らみたいな鬼にも"覇気"というか、なんかそういう物があるのか?見るに少年は刀を持っていない、いや……だが服装は鬼殺隊士そのものだ。なんかの催しか? 知らんが。
「行くぞ……叢雲」
「あ、はいはいー」
私達は少年の横を通り過ぎた。その際、少年は私にしか聞こえない声でこう吐き捨てた。
「……次は斬る」と
私はふっと笑みを零した。今まで殺してきた鬼殺隊とは違う、そういう心音を彼は発していた。私は振り返らず、その少年に手を振り立ち去った。
「……あれは、本当に鬼なのか?」