評決へ集え   作:COTOKITI JP

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Nobody want Peace.

〜side:レオナ〜

 

私は無線機に向かって必死に捲し立てる。

あの爆発が起きた瞬間、百期以上いた筈の大編隊はパッと見でも分かるぐらいに壊滅していた。

 

せめて自分の僚機の安否だけは確認したかったので、無線機を使ってザラ、キリエ、チカ、エンマ、ケイトへとひたすらに呼び掛けるが、聴こえてくるのはノイズばかりで何も聞こえない。

 

「クソっ!電波障害か!?」

 

舞い上がった紙屑の如く墜ちていく戦闘機だった残骸の中から目を皿にして探し続け、それはようやく見つかった。

 

どうやら爆心地から一番離れていたのは幸運にも私達だったらしく、あちこちを見渡すと合計で五機、僚機は全機生き残っていることが確認できた。

 

高度を私に合わせてきた僚機の内の一機、その中にいたザラは手信号で撤退を提案した。

 

それに私も手信号で答え、編隊を組みなおした後は即座にその場を離脱しようとした。

 

突如、真下から飛んで来た曳光弾の群れが先頭にいた私の機体を貫いた。

 

まるで三十ミリに撃ち抜かれたかのように左主翼に大穴が開き、そこから大量の燃料が噴き出した。

 

それならまだ良いが、問題は操縦席にまでその銃弾が被弾した事だ。

 

被弾した数発の内一発が操縦席を貫き、内部で炸裂したのだ。

 

「ぐうぅっ!?がァァァ!!」

 

突如としてやってくる左腕からの激痛、足元に垂れ落ちる大量の血液。

自分がどれ程の傷を負っているかなど明白であった。

 

今までに感じた事が無い程の激痛に、左腕を見遣ると、スロットルレバを握っていた左腕は銃弾の炸裂による破片であちこちの肉が抉れており、そこから大量出血を起こしていた。

 

《……ナ……!……レ……ナ!!……レオナ!!大丈夫!?》

 

どうやら通信が回復したらしく、ザラがこちらの無事を確認しようと叫んでいるのが聴こえた。

 

左腕はもう使えない。

だが敵に先手を打たれた時点で撤退も出来ない。

 

つまり、今私達に出来る唯一の事は……

 

「……大丈夫だ!まだ、戦える!」

 

戦う事だけだ。

 

◇◆◇◆◇◆◇

〜side:???〜

 

《あれ、珍しい。 メルツェルが一撃で敵機をやれないだなんて》

 

無線越しにイサオが本当に驚いているかのような声を上げている。

一方で俺はキャノピィを隔てて煙を上げる隼を見ながら僅かに顔を顰めた。

 

確かにあれは致命傷だ。

だが完全に撃破は出来ていない。

操舵関係が生きている以上、逃げられるかもしれない。

 

「機関砲がジャムを起こした。 モーターカノンと左主翼の方だ」

 

《あらら、ツイてないねえ》

 

「まぁいい、まだ右主翼に一丁と機首に二丁ある」

 

隼の編隊が散開したと同時に俺もエルロンを切り、先程撃った奴とは別の隼に斜め上から攻撃を加える。

 

相手の反応が良く、主翼の機関砲弾は躱されたが機首の機関砲弾は左主翼から尾翼にかけて数発命中した。

 

速度計は既に時速七百キロメートルを指していた。

速度に乗った機体を思い切り上に上げ、高度を取る。

 

速度性能の低い隼なら着いてくることは出来ないだろう。

これに着いてこれるのはアメリカかイギリス辺りの機体くらいしかいない。

少なくとも自分が知る限りでは。

 

最近ではジェット戦闘機の配備も他の所でされてきているようなのでいつ着いてこられるような奴が来ても良いように用心はしておいた方が良さそうだ。

 

 

そう考えればあの隼はやけに時代遅れな機体だ。

日本機乗りも見た事はあるがだいたい重武装、大馬力エンジンでパワーアップされた新型ばかりだった。

 

それ程に彼女等は金が無いのか、それともこの世界ではそれが当たり前なのか。

今はまだ理解には程遠い所だ。

 

「攻撃を仕掛ける。 イサオは後方の隼をやれ」

 

《了解!》

 

ある程度上昇したところで反転し、俺の部下を追っていた二機の隼へと機首を向ける。

 

角度的にも速度的にも充分に当てられる。

だがMG151が一丁しか使えないので弱点を正確に撃ち抜く必要がある。

 

操縦桿を握る手に力が入る。

大分距離が縮み、光学照準器の円の中に先頭の隼が収まった。

 

速度は更に上がり、隼とすれ違うのはほんの一秒足らずの時間だった。

 

しかし、二機の隼は驚くべき反応速度で俺達の攻撃を急旋回で回避した。

運動性能の優れた隼だからなせる技なのだろう。

 

《うわっ避けられた!さすが『コトブキ』だなあ》

 

「褒めてる暇があるなら反転して再攻撃するぞ」

 

操縦桿を斜め上に引き起こし、先程の二機を視界に捉える。

少しずつ高度を上げながら隼の腹に照準を合わせる。

 

あと三秒で撃とう。

 

 

豆粒ほどの大きさだった隼が次第に大きくなっていく

 

 

もう敵機は目と鼻の先だ、今撃っても多分当たる。

 

 

漸く発砲しようとした矢先に管制塔からの無線が入った。

 

《管制塔から全機へ、RTB。 繰り返す、目的は達成された。 全機帰還せよ》

 

淡々と告げる管制官の声を聴き、俺達は即座に反転して基地の方角へと離脱する。

 

編隊は素早く組み直され、役目を終えた迎撃隊は基地へと帰る。

 

敵機が追ってくる様子はない。

あれだけの損害を被れば当たり前だが。

 

俺は後ろを見つめるのをやめ、目先にある街へと視線を移した。

 

「世界は違えど、やる事は同じ……か」




またまた更新が遅れてしまった。
本作品ではなるべくマイナーな機体を主に出していきたいと思うのですが、もし意見や要望がありましたら感想にてお願い致します。

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