しずくから何があったのか話を聞くことになった。
「劇で今度ヒロイン役をやることになったんです」
「ヒロイン役を?おめでとう」
「ありがとうございます。でも練習していくうちに分からなくなってきたんです。どう演じればって…………」
役作りに苦戦しているって事か?でもしずくほどの役者なら…………
「好きな人といると言う事を演じる事が出来ないんです」
「演じるって事が出来ない?」
「はい、響くんと一緒にいるときの気持ちでやっても、どうしても演じきれないんです。私は役者失格でしょうか?」
どう答えればいいのかわからない。
しずくは好きと言う気持ちを演じる事が出来ない。
「なぁ、試しにやってみてくれないか」
「えっと…………」
「練習に付き合うよ」
実際にどんな感じなのか見てみたいし、見て、何か分かるかもしれない。
とは言え演劇は素人だから、上手くアドバイスが出来るかどうかだけど…………
「分かりました。響くんはじっと立っていて下さい」
しずくはゆっくり息を吐く。
「先輩、私は…………」
目を潤ませ、ゆっくり僕に身を寄せる。
「好きです。先輩の事が好きです」
目を閉じた。僕はそのまましずくにキスをした。
「ん」
唇を離すと、しずくは恥ずかしそうにしていた
「じっとしていてくださいと言ったのに」
「ごめん。でもしずく、うまいと思うよ」
「響くんとの前ですから、演じるのではなく、自然体のままでやったので」
だとしても演じるのは難しいのか。
「でも、もしかしたら何とかできるかもしれません」
何か掴めたのかな?だとしたらよかった
「応援してるから、頑張って」
「はい」
次の日、生徒会室でのんびりと作業していると、一人の女生徒が訪ねてきた。
「失礼します。私は演劇部部長の麻野です」
「夢咲です。えっと…………」
「ちょっとお願いしたいことがあるの。いいかしら?」
お願いしたいこと?何だろう?とりあえず付いていくことにした。
「と言うわけで、新しくヒロインの相手役の夢咲響くんを連れてきたわ」
「「はい?」」
演劇部の人が拍手を送る中、僕としずくは意味がわからないでいた。
「桜坂さんに話を聞いたら、それだったら彼を相手役にした方がいいと思ってね。協力してね」
「しずく、この人、押しが強いんだけど…………」
「一度決めたら、最後まで走り抜ける人ですから…………」
「生徒会として、協力してね。会長には頼んであるから」
いつの間に…………
ここで断ってもいいけど、しずくやせつ菜に迷惑がかかるから引き受けた方がいいかな
「分かりました。引き受けます」
「ありがとうね。これ台本だからしっかりね」