「はい、それは確実なんですね」
『えぇ、個人としてはありだけど、経営者としてはおかしいことよ。だから確定したら連絡して』
「ありがとうございます」
『貴方が色々と頑張ってるんだから、手伝えることがあるならね。それじゃチャオ』
電話を切り、僕はため息をついた。これで三船の廃部にするのは何とかなるけど…………
「あっちはどうなってるんだ?」
姉さんに聞いてみるか。そう思い、連絡してみた。
「そっちは大丈夫?」
『大丈夫じゃないよ……』
珍しい。姉さんが落ち込んでる。何かあったのか?
「何かあったの?」
『実は…………』
学校の屋上に行くと見覚えのある背中を見つけた。
「こんなところで何してるんだ?せつ菜」
「響くん…………」
僕はせつ菜の隣にいき、缶コーヒーを渡した。
「聞いたよ。同好会やめたって」
「…………みなさんに迷惑をかけてしまって…………みんなが私のために頑張ってくれているのは分かっています。ですがライブや打ち合わせなどが中途半端になってしまって…………」
だから生徒会長再選挙の間は辞めるのか…………
「別にお前は勝とうとしなくていいんじゃないのか?」
「えっ?」
せつ菜は僕にそんなことを言われるとは思っていなかったと言う顔をしていた。僕は気にせず話を続けた。
「お前の大好き、僕が守るから…………」
「で、でも」
「生徒会長の仕事が大好きならいい」
そう告げて、僕はその場から去ろうとしたけど
「缶コーヒー代、生徒会長になったら奢りってことにしてやるから」
「普通に奢りじゃないんですか?」
『とりあえず僕の方で何とかしてくれそうな人に頼んだよ』
「悪いな。にしてもお前の知りあい、色々とすごくないか」
『まぁ、僕の関係でね。あんまり知り合いたくはなかったけど、話をしたら協力してくれるって』
「ありがとうな」
電話を切り、僕は舞台の方を見た。今日は生徒会長再選挙の日、最後の討論が始まろうとしていた。
僕が進めている計画は順調だし、もう一つは必要なさそうだな。結弦に見なしてもらったけど…………
「みなさん、おはようございます。中川菜々です。最後の演説になりましたが、私の目標は、討論会の時と変わりません」
せつ菜の演説。大好きを大切にしたいと言うものだ。演説が終わり、拍手も凄いな。このままなら僕の計画は発動しなくて良さそうだな。
次の三船はみんなの成長に繋がるようにしていくもの。確かに必要なことだけど…………
「中川さんが掲げた公約は、ある側面では理想的ですが」
何だ?何を言おうとしているんだ?
三船は実現できれば、いいかもしれないと言うが、今のせつ菜では実現が出来ないと言い出した。
「中川さん、貴方の大好きは何ですか?生徒会の仕事が大好きと言えますか?答えはノーでしょう。彼女には大好きなことが他にあって、それを守るために自分の気持ちを殺して生徒会長になろうとしている。無理して生徒会の仕事をしようとしている」
こんな場面で言うことなのか?だとしたら…………
「その姿勢が理想と矛盾しているんです。そんなちぐはぐな気持ちで生徒会の仕事をしたところで、途中で破綻することが目に見えてます」
「そんな…………私は!生徒会の仕事が何より…………」
言い返せないのは、自分の中で迷っているからだろうな。
「中川さん、私の主張は間違っていますか?そこで断言できないことが、何よりの証拠です。私は生徒会長として学園のために働くことが、貴方の言葉を借りて言うのであれば、一番大好きなことと言えます。だからもう一度言います。貴方のプランは実現できません。絵に描いた餅、夢物語です。反論、できますか?」
三船の言っていることは間違っていない。間違っていないけど、やり方は間違っている。
例の計画はやるつもりはなかったけど、こんなことをされたら、やるしかないな。
友里side
せつ菜ちゃん、大丈夫かな?三船さんのあれはひどい。愛ちゃんもエマさんも他のみんなも怒ってる。でももう投票の…………
『それでは投票を…………えっ?分かりました。投票の時間ですが、今回の選挙管理委員会、委員長よりお話があります』
そう言えば委員長って誰なんだろう?確か委員会で選ぶとか聞いたけど…………
「どうも、委員長の夢咲響です」
まさかの響なんて…………だから手伝えないって…………
でも何をするつもり?
僕の登場で三船もせつ菜も驚いていた。まぁ、隠していたからね。
「二人とも素晴らしい演説でしたね。直ぐにでも投票を始めたいですが、三船さん、生徒会長再選挙の規約違反のため、選挙から降りてもらいます」
僕の発言で集まっていた生徒がざわついていた。
「どういうことですか!?」
三船は怒りをこもった感じだ。僕は事前に配布した規約書を見せた。
「生徒会長再選挙規約。禁止行為『いかなる状況下でも、妨害を行ったと委員長が判断した場合、選挙から降りてもらいます』って書いてあるぞ」
「そんな事…………」
「してないと言うのであれば、無駄だ。委員長の判断だからな」
「ですがそれでここにいる生徒が納得するんですか?私が言ったように中川さんが生徒会長になったとしても、彼女は中途半端に…………」
「だから規約書に書いてあるだろ『問題や不備があった際、投票は生徒全員が候補者となる』」
「生徒全員が候補者と言うことですか?」
「あぁ、因みにお前は降ろされてるから、候補者になれない。それも書いてある」
自分で作ったルール。上手く使えてるな。
「…………貴方はここまでして、中酸を守りたいのですか?」
三船は何かを言い出してきた。
「貴方の居場所を奪われたくないから、守りたいからこのようなことを…………」
「僕の居場所は関係ない。僕は…………」
僕はせつ菜を、しずくを、同好会のみんなを見た。僕が同好会でやるべき事…………
「僕の大好きな人の大好きな場所を守ることが僕のやるべき事であり、やりたいことだから」
「………………今回のこれでみんなに嫌われ、悪者にされてもですか?」
「それでも一緒にいてくれるって、いってくれた人がいるから大丈夫」
学校の屋上で一息をついた。流石に疲れた…………後で奏たちに連絡しないと……
「響くん」
「せつ菜、お疲れ様」
「響くんは、大好きな事を見つけたんだね」
「お前もな。それと生徒会長おめでとう。お前の仕事が中途半端にならないように僕もサポートするよ」
結果は聞いてないけど、きっとせつ菜が生徒会長になったんだろうな
「何を言ってるんですか?生徒会長は私じゃないです」
「ん?じゃあ誰が?」
「響くんですよ。三船さんに言った言葉がみんなに響いたみたいですからね。これから頑張って下さい。響生徒会長」
何か偉いことになった…………