それはまるで幻想的だった。
夕日に照らされながら、彼女は真剣な表情で何かを演じていた。
僕はそんな彼女の姿に見とれていた。
彼女の演技が終わり、僕は拍手をしていた。
「あっ」
拍手に気がつき、彼女は僕に見られていたことを知り、恥ずかしそうにしていた。
「凄く良かったよ」
「えっと、貴方は…………」
「僕は夢咲響」
「私は…………」
目を覚まし、自分が見ていたのが夢だと気がついた。
「何だか懐かしい夢を見たような…………」
何年か前に出会った女の子の夢。あの子は……誰かに似てる気が…………
考えたけどよく思い出せない。ただ思うのはあの子は僕にとって初恋の女の子だ。
朝食を食べていると、チャイムがなった。時間的にはあの人だな
「おはよう、響くん」
「歩夢さん、おはようございます」
上原歩夢。僕と姉さんの幼馴染で、毎朝家に迎えに来てくれる。
何故か歩夢さんは不満そうな顔をしている。どうしたんだろう?
「あの何か?」
「昔みたいにお姉ちゃん呼びしないの?」
「ぶふっ!?」
飲んでいた牛乳を吹き出しそうになった。何で姉さんと同じ様な事を言うんだよ…………
「小さい頃は響くん、歩夢お姉ちゃんって、呼んでたのに…………」
「いや、それは…………その……」
「昔みたいに呼んで見て」
何でこう言うとき、押しが強いんだよ。と言うか断ったら、姉さんに何を言われるか……
「あ、歩夢お姉…………ちゃん」
「うん」
恥ずかしい……フッと視線に気がつき、振り向くと、姉さんがニヤニヤしていた。
「何?」
「ん~別に~」
何なんだ?一体……
お昼休み
学食に行こうとしていると、しずくが声をかけてきた
「夢咲くん、学食に行くの?」
「うん、そうだよ。しずくは?」
「私は……あのそういえば、何だか夢咲くん、疲れてるけど、どうしたの?」
「いや、実は……」
僕は朝の事を話した。何故か同好会の子達と遭遇することが多く、その度に下の名前で読んでほしいと言われる。
「愛さん、果林さん、彼方さん、エマさん、璃奈、かすみ…………何なんだろう…………」
「あぁ、それは…………」
「しずくは何か知ってるの?」
「はい」
事情知ってるみたいだな。聞くべきだけど、先ずはお昼を食べないと…………
「しずく、一緒にどう」
「えっ!?」
何故か顔を赤らめるしずく。どうしたんだろう?
しずくは顔を背けながら、一緒にお昼を食べることに了承するのであった。
お昼を食べながら、しずくに朝からの出来事を訪ねた
「実は、昨日……」
昨日?確か僕は用事があって、早めに帰ったんだっけ?
「かすみさんが夢咲くんの呼び方について疑問を感じたみたいで」
一日前
「弟さんは何で名字呼びなんでしょうか?」
「確かに気になるわね。せつ菜としずくは呼び捨てで、歩夢は名前呼びよね」
「ゆうっち、そこのところどうなの?」
「ん?響は基本的には一歩引くのよね。親しくなれば呼び捨てになるわよ」
「でも私はさん付けだよ?」
「あれは照れくさいみたいだね。昔みたいにお姉ちゃん呼びできなくって」
「確かに生徒会の時も、最初は名字で呼んでましたね。慣れてきて名前呼びしてくれるようになりましたけど」
「でも~折角だから名前で呼んでほしいよね~」
「うん、一緒にやっていくから、堅苦しいのはちょっと…………」
「それじゃ、明日はみんな、響に名前呼びしてもらえるように頼んでみよう。歩夢ちゃんは昔の呼び方でね」
「うん」
「と言うことがあって……」
「あの姉…………」
要するに姉さんの仕業か…………
確かに自分でもそう言うところがあるのは気がついていた。
気を使われたかな?あれでも?
「何でしずくの時は僕、普通に呼び捨てだったんだ?」
「えっ!?」
「話すようになったのも、頼まれ事したときからだし…………あれ?」
どうしてなのか考えてみた。何でだろう?
「…………あの、夢咲くん、あのね……」
「親しみやすかったからかな?」
僕がそう言うと何故かしずくはがっかりしていた。なんだ?どうしたんだ?
「夢咲くんがそう思うなら、そうじゃないのかな?」
「ん~そうなのかな?まぁいいや」
後で考えてみよう。それはそうと…………
「しずく、下の名前でいいよ」
「下の名前?」
「響でいいよ。みんなが名前で呼んでほしかったように、僕も名前で呼んでほしいから、まぁみんな、呼んでくれるし」
「…………分かった。ひ、響くん」
しずくにそう呼ばれて、何故か夢の女の子の事を思い出した。
どうしてだ?
「しずく、僕らって…………」
どこかで会ったことがないか聞こうとしたが、チャイムがなり、教室に戻らないと…………
「行こう、響くん」
「うん」
しずくside
彼は覚えているのかな?だからこそ、最初に会ったときに、私の事をしずくって呼んでくれたのかな?
でもあの時の事は話せないよ。約束だから…………
「演じなきゃ…………」