憑依學園剣風帖(東京魔人学園剣風帖×クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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胎動5 完

時々辺りを伺うように見渡している緋勇が気になって声をかけた私は、裏密を酉の市に誘ったときに断られるついでに忠告されたことを知った。

 

「銀杏咲き乱れる秋の宵、相見える龍と鬼~。いずれも、その死をもってしか~、宿星の輪廻より解き放たれざる者なれば~。…心当たりがあるのなら~、用心と覚悟はしておいた方がいいかも~」

 

「ずっと考えてるんだけどさ、花園神社、銀杏が綺麗だよな」

 

「たしかに......」

 

私の知る流れだと竹の花から始まっていたのだが、龍山先生の邸宅は燃やされてしまい、今はない。それに九角の怨霊はこの前倒したはずだからまた現れるとは考えづらい。ゆえにここでなにかあるのは間違いないだろう。

 

「おーい、2人とも!おみくじひこうよ、おみくじ!」

 

桜井に呼ばれて、あわてて私たちは向かったのだった。巫女のアルバイトをしている雛乃によく振ったほうがいい結果が出ると言われて素直に応じた緋勇は大吉が出た。私も念入りにふってみる。

 

「わッ!!大凶!!まーちゃんまで大凶!?大丈夫??」

 

桜井が大仰に叫ぶものだから、さっきまで騒がれていた蓬莱寺まで覗きこんできた。ウッソだろお前、ここから大凶ってどんな流れだ!

 

十を生かして九に死す。絶望の淵より信じる道はひとつにあらず。一条の光見出し、新たなる境地、拓くべし。

 

「これどういう意味なんでしょう?」

 

「これは......いわゆる10回のうち9回は死を覚悟するような目に遭う、という意味ですね」

 

「うわあ」

 

「まーちゃん......」

 

「信じる道はひとつにあらず......解決方法はひとつではない......悪くは無いですね。視野を広くもてということでしょう。神社で起こることには、必ず何らかの啓示が含まれているものです。念のため、用心なさってくださいね。槙乃様も京一様も大凶は大凶でもこれから上り坂の大凶です。おみくじは現状を示しているといいますから、あとは運勢は登るだけですよ」

 

「あはは、ものはいいようですね。ありがとうございます」

 

私はおみくじを近くにあった結び場所に括りつけた。

 

「なんだ、この曲は?」

 

醍醐が足を止めた。縁日には似つかわしくない音楽が、どこからか流れてくる。桜井がその理由に思い当たって説明してくれた。

 

「ヒーローショーかッ!?そりゃあ案外、いいアイディアかもしれねェな!」

 

都心という場所柄か、神社としての荘厳さや重厚さなどのイメージの薄い処ではあったが、ここまで通俗的なイベントを平気で開催させてしまうとは俗物、流動、どこか旧くて、奇妙に新しくて、逞しさを感じさせるこの街らしい。

 

「なんなら、ひーちゃん、俺たちも観に行ってみるか?」

 

「そうだな、気になるし」

 

「へへへッ、お前もすっかりその気だなッ」

 

「やったー!いこいこ!」

 

桜井が喜び勇んで飛んでいった先にはかなり人が集まっていた。ご当地ヒーローのようである。

 

「───この世に悪がある限り!!」

 

「正義の祈りが我を呼ぶッ!!───」

 

古いTV番組のように陳腐な劇が繰り広げられる。ぱしん、と軽い衝撃が空気を伝わる。舞台に走る閃光は、中央でポーズを取る主役三人の辺りから生まれたようだ。カメラのフラッシュや、舞台の装置ではない。ほんの一瞬だが、あれは私達にはすっかり馴染みのものの《力》の発現によく似ていた。

 

私がそれを伝えると緋勇が声をかけようといったものだから、桜井以外はみんなちょっと引き気味だった。

 

ヒーローショーが終わり、楽屋を覗いてみるとやっぱりファンに間違われてしまった。

 

大宇宙戦隊コスモレンジャーの「自称」リーダーで熱血漢のコスモレッドこと紅井猛。野球部所属でバットとボールによる攻撃が得意。彼らは他の人みたいに怪しい力は無く、むしろ鍛え上げられた肉体が武器なので個々の能力はそんなに高くない。スーツも特別な能力がある訳でもない。彼らの真髄は《方陣》にあるのだ。

 

黒崎 隼人はコスモレンジャーのブラック担当だ。サッカー部所属でクールな人だけど会話するとちょっと熱くなったりする事もあって、そこいらへん

いかにもスーパー戦隊だ。サッカー部だけに蹴り技が多いですが、練馬ブラスターのような飛び道具系の技も一部あり。あと、行動力がサッカー部員だけにやたら高め。

 

コスモレンジャーのピンクは本郷 桃香。コスモレンジャーの紅一点で新体操部所属。他の2人に比べてちょっと弱めだけど、彼らがよく喧嘩するのをなだめるのは彼女の大事な役目。彼らコスモレンジャーの真価は方陣技にあり、3人揃ってのビッグバン・アタックが強力だ。

 

変身願望ではなく、ヒーロー願望なところが、前向きでいいと思う。前者と後者は微妙に違うのだ。ヒーローになりたいから変身するのでは無く、ヒーローになる、そのためには変身は不可欠という発想だ。

 

名前がベタだなとはいってはいけない。こちらの世界にも特撮はあるのでご両親が好きだったんだろうなと察してしまうが。

 

三人は、なかなか強烈なキャラクターだった。《力》が本気で自分がヒーローになったためだと信じていた。私達まで仲間かと勘違いして、ヒーローの名前を与えられそうになる。全力で拒否した蓬莱寺たちとは引き換えに緋勇はノリノリだった。

 

仲間にするか否かの話し合いは、緋勇以外はいまいち反応が悪く、さあ帰るかとなった矢先、悲鳴が聞こえた。いってみると人がみるみるうちに《鬼》になっていくではないか。

 

「ちょおッと待ったァッ!!」

 

「この世に悪がある限りッ!!」

 

「ぐ…おおォォおおオッ!!」

 

コスモレンジャーに囲まれた鬼が、苦しげな咆吼を上げた。紅井がポーズを決めた途端、烈しい光が紅井から放たれたのだ。

 

「正義の祈りが我を呼ぶ!!」

 

黒崎の身体から生じた光が、紅井のそれと融合する。

 

「愛と…!!」

 

桃香の光がそれに加わると、三人の足下にはっきりとした光の方陣が描き出された。光に押し潰されるようにして、鬼がまた膝をつく。それは、今までにも何度か目にした光景だった。

 

《方陣》は卓越した《氣》の持ち主が、近しい属性を持つ者同士協力して攻撃することにより、通常の何倍もの《力》が発現する現象を呼ぶのだ。《氣》をより高め、攻撃力が増す《場》が発生するとのことだったが、どういった原理なのかは解らない。彼らは少なくてもそれができるらしかった。

 

「勇気と!!」

 

「友情と!!」

 

安っぽいスーツと決めポーズが、彼らの体内から生じる光によって、神々しいまでに輝いた。

 

「みっつの心をひとつに合わせ…」

 

「今必殺の…ビッグバンアタック!!」

 

先ほどの舞台で聞いた古くさい決め台詞に、断末魔の悲鳴が重なる。やがて、その影が光と共に消え去る。

 

私達はぽかんとしているしかなかったのだった。

 

「WOWッ!素晴らしーネッ!!ボクも混ぜて欲しいヨッ!」

 

どうやら花園神社の酉の市は仲間たちも来ていたようで、駆けつけた仲間の中には食いついた人もいた。アランである。コスモレンジャーたちは大喜びだ。

 

「みんなッ、俺たちの新しい仲間だッ!!カモン!!」

 

「HAHAHA!!ボクが来たから、もう安心ネッ!!」

 

「よし、行くぞッ!!───────この世に悪がある限り!!」

 

「正義の祈りが我を呼ぶ!!」

 

「ラブ・アンド・ピース、守るタメ!!」

 

「四つの心をひとつにあわせ!!」

 

「今、必殺のメキシカン・ビッグバンアターック!!」

 

ふざけてるのに威力は《四神方陣》にひけをとらないものだから、蓬莱寺たちが固まっている。

 

「なんやなんや、おもろいもんしとるやん!」

 

「おおおッ!!ついにコスモレンジャーも5人の時代を迎えたか・・・頼りにしてるぞ、コスモブルー、コスモイエロー!!」

 

「よっしゃあッ!!・・・ッて・・・、イエローってわいのことかいな!?なんや、けったいなことになってもうたな」

 

「そして、ボクがブルー、ネ!!リューも、平和のために・・・スマイルネ!!」

 

「しゃーない、ここはひとつ、わいものったろッ!!」

 

「よ―しッ、行くぞッ!!───────大宇宙の名の下に!!」

 

「宇宙の平和、守るためッ!!」

 

「愛と―――!!」

 

「勇気と―――!!」

 

「フレンドシップ―――!!」

 

「五つの心をひとつにあわせッ!!」

 

「今こそ放て、絶対無敵の必殺技ッ!!」

 

「「「「「ビッグバンアタック・インターナショナル!!」」」」」

 

一瞬にして消滅した《鬼》たちに緋勇は目を輝かせている。

 

「よし、俺も!」

 

「ひーちゃんは俺たちと《方陣》あるからいいだろ!ほら、やるぜ醍醐」

 

「そうだな、負けていられない」

 

「えええッ!?グリーンやりたい!」

 

「ひーちゃん」

 

「龍麻」

 

「なんでお前ら、そんな対抗心もやしてんだよ、いきなりぃ!!」

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