憑依學園剣風帖(東京魔人学園剣風帖×クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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魔獣行3

「大変よ、大変よォ~ッ!!ついに掴んだわよォ~ッ!!」

 

「おはようございます、アン子ちゃん。そんなに血相変えてどうしたんですか?」

 

「ふっふっふ、槙乃はなにが大変かわかるでしょ?」

 

「昨日お願いしてたやつですか?」

 

「そうそうそれよ!文京、中野、豊島区を挟んだあたりの調査。池袋界隈で突発性の精神障害がおきてるわ。そして、大型の獣に襲われたかのような猟奇殺人もね。被害者のほとんどが男性みたいだわ。前者は道を歩いている人が突然奇声を上げて暴れだしたり、手当たり次第に人を襲ったりするらしいのよ」

 

「突発性の発狂ですか......これも誰かの仕業ですかね?」

 

「多分ね。あたしたちは少なくてもそう見るべきだと思うわよ。実際、警察や医学の見地からは集団パニックだかヒステリーだか原因は解明できないときお決まりのやつになりそうだし。それにあたしが今1番興味があるのは、発狂状態に陥った人がみんな口を揃えていう言葉よ」

 

「なんていってるんですか?」

 

「体の奥底から自分を呼ぶなにかの声に応えた。ただ本能の赴くままに身を任せた。そういってるのよ」

 

「本能の赴くまま、か。まるで獣ですね」

 

「個人個人の人間性を突き詰めていくと、必ずなんらかの動物霊にたどりつくっていうからね。そういうのをアミニズムっていうのよ。つまり、この事件を引き起こしているやつには、人間の本能に訴えかける《力》がある。あるいは、人間の大元である動物霊を操る《力》がある。そんなところでしょうねッ」

 

「人を獣に戻す《力》......かあ」

 

「獣になっちゃえば、悩むことも辛いことも、なんにもなくなる。ただひたすらに、本能の赴くままだものね」

 

「おうおう、朝っぱらからなに物騒な話をしてんだ。混ぜろよ」

 

「おはよう、2人とも」

 

「おはようございます」

 

「おっはよー」

 

「まァ、そうはいっても男ってやつは誰しも獣になる瞬間ってのがあるけどな」

 

「獣じゃ甘いわ。はっきりいってケダモノよッ!特にアンタたちは修学旅行で───────」

 

「へっへ、なにいってんだよ、アン子。俺たちは部屋にいたぜ?なあ、ひーちゃん」

 

「そうだよ、冤罪は勘弁してくれよな、アン子」

 

「むむむ、おっかしいわねェ......たしかにあの時いた気がしたのよ......」

 

「それはさておきだ。なに話してたんだ?」

 

「実はですね、們天丸さんから聞いたんですが......」

 

私は緋勇たちに話し始めたのだった。

 

「あれは~、憑き物の仕業かもしれないわよ~」

 

私が話し終わる頃、顔を出したのは裏密だった。

 

「えっ」

 

「それはまさか」

 

「その憑き物を自在に操れるやつが豊島を往来する人々に獣をとりつかせているのか?」

 

「たぶんね~。人間の素を見抜き~、それに相応しい霊をつかせることが出来るのは~、太古に滅びた憑依師と呼ばれた人々だけよ~」

 

「憑依師......どこかで見た気がするわ。たしか、平安時代に活躍した呪術師よね」

 

「うふふ~、さすがは美里ちゃんね~。憑依師は常に己の周りに動物霊を漂わせていて~、好きな時、好きな場所へと飛ばせるというわ~。犯人はおそらく憑依師の系譜を継ぐもの~。して、豊島に渦巻く強大な怨念をその糧として、《将門公の結界》を封じる結界崩しを汚染して~、変質させようとしているんだわ~」

 

「《将門公の結界》を!」

 

「気をつけてね、槙乃ちゃ~ん。あァ、それから~、憑依師と接触する時には気をつけてね~。あまり感情を高ぶらせると、霊の進入を容易くするわよ~。死にたくなければ、平常心~。うふふ~。お土産楽しみにしてるわ~」

 

「お土産?」

 

「なんだそれは......」

 

「うふふ~、秘密~」

 

「お前と話してると意味もなく不吉になってくるな......」

 

「こらッ!!そんなこといったら心配してくれてるミサちゃんに失礼だぞ、京一ッ!」

 

「うふふ~、心配とも期待ともいうわね~。頑張って~呪禁導師は、なかなかの強敵だわ~」

 

それが今回の敵である。現代利益追求の民間道教を源流としており、呪禁(じゅごん)という呪法と呪殺を得意とする。彼らが用いた呪術体系のひとつに厭味蟲毒(えんみこどく)があり、犬神作成の基本概念となった。

 

末裔の名は火怒呂丑光(ほどろ うしみつ)。

 

 

呪禁(じゅごん)とは、道教に由来する術(道術)で、呪文や太刀・杖刀を用いて邪気・獣類を制圧して害を退けるものである。

 

呪禁の中でも特に持禁(じきん)と呼ばれるものは、気を禁じて病気の原因となる怨気・鬼神の侵害を防ぎ、身体を固めて各種の災害を防止する役割があった。また、出産時にも呪禁が行われて母子の安産を図った。そのため、古代においては一種の病気治療の手段の1つとして考えられ、日本の律令制にも典薬寮に呪禁博士・呪禁師が設置された。

 

早い時期に呪禁に関する職制は衰微していき、同じく道術の要素を取り入れて占いなどにあたった陰陽道の役割拡大とともに、陰陽師が呪禁などによる病気平癒のための術を行使するようになった。

 

なお、呪禁職制衰退の背景には、奈良時代後期に続いた厭魅や蠱毒に関わる事件との関連も指摘されている。

 

呪禁師は道教の影響を受けて成立し、呪術によって病気の原因となる邪気を祓う治療などを行った。古くは仏教の祈祷と混同されて用いられた例もある

 

律令制においては呪禁も病気治療や安産のために欠かせないものとされ、呪禁師の中で優秀なものは呪禁博士(定員1名)に任ぜられ、呪禁生(定員6名)の育成に努めた。

 

だが、後に厭魅蠱毒事件の続発によって呪禁そのものが危険視されたこと、同様に道教の呪術を取り入れた陰陽道の台頭によって8世紀末頃には事実上廃止され、9世紀には呪禁師の制度自体が消滅した

 

 

蠱毒(こどく)とは、古代中国において用いられた呪術を言う。動物を使うもので、中国華南の少数民族の間で受け継がれている。

 

犬を使用した呪術である犬神、猫を使用した呪術である猫鬼などと並ぶ、動物を使った呪術の一種である。代表的な術式としてヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、勝ち残ったものが神霊となるためこれを祀る。この毒を採取して飲食物に混ぜ、人に害を加えたり、思い通りに福を得たり、富貴を図ったりする。人がこの毒に当たると、症状はさまざまであるが、一定期間のうちにその人は大抵死ぬとされている。

 

 

古代中国において、広く用いられていたとされる。どのくらい昔から用いられていたかは定かではないが、白川静など、古代における呪術の重要性を主張する漢字学者は、殷・周時代の甲骨文字から蠱毒の痕跡を読み取っている畜蠱(蠱の作り方)についての最も早い記録は、『隋書』地理志にある「五月五日に百種の虫を集め、大きなものは蛇、小さなものは虱と、併せて器の中に置き、互いに喰らわせ、最後の一種に残ったものを留める。蛇であれば蛇蠱、虱であれば虱蠱である。これを行って人を殺す。」といったものである。

 

中国の法令では、蠱毒を作って人を殺した場合あるいは殺そうとした場合、これらを教唆した場合には死刑にあたる旨の規定があり、『唐律疏議』巻18では絞首刑、『大明律』巻19、『大清律例』巻30では斬首刑となっている。

 

日本では、厭魅(えんみ)と並んで「蠱毒厭魅」として恐れられ、養老律令の中の「賊盗律」に記載があるように、厳しく禁止されていた。実際に処罰された例としては、769年に県犬養姉女らが不破内親王の命で蠱毒を行った罪によって流罪となったこと、772年に井上内親王が蠱毒の罪によって廃されたことなどが『続日本紀』に記されている。平安時代以降も、たびたび詔を出して禁止されている。

 

やかて陰陽師にとってかわられた一族なのだ。

 

「翡翠にも話は通してありますから、《将門公の結界》を抑えている雑司ヶ谷霊園、青山霊園、築地本願寺、谷中霊園、靖国神社を順番に調べてみましょう」

 

「《五色の摩尼》や《将門公の結界》も心配だな、みんなには近いところから回ってもらおうか」

 

「そうだね」

 

私達は頷いたのだった。

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