憑依學園剣風帖(東京魔人学園剣風帖×クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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餓狼5

拳武館の人間だとわかった時点で顔パスなのか、監視カメラをものともしないで終電後の静まり返った地下鉄に降りていく壬生。そしてその後ろをついていく遠野。2人の足音だけが響いている。おそらく暗殺業でよく使う通路なのだろう、と思いながら、言外の圧力でカメラは撮るなといわれたので遠野は大人しくついていく。こんなことなら、天野記者が愛用してるペンに似せた録音機を買っておくんだったと場違いなことを考えているのだった。

 

「ここからどうする?」

 

「大丈夫、× × × 駅敷地内に入ったんだから、槙乃ならきっとあたし達に気づいてくれるわ。行きましょ」

 

訝しげな壬生だったが、遠野の言葉がうそではないと直ぐに知ることになる。

 

「アン子ちゃん!」

 

時須佐槙乃は壬生と遠野がいるところをすぐに探知してかけつけてくれたらしい。あまり時間はかからなかった。槙乃に抱きつかれた遠野は背中をさする。

 

「大丈夫ですか?アン子ちゃん!怪我は?」

 

「大丈夫、大丈夫、心配いらないわ。あいつら、龍麻君を殺すことにご熱心であたしはおびきだす餌でしかなかったみたいなのよ。だから捕まったままどっかの廃ビルに放置されてたみたいでね」

 

「よかった......ほんとによかったです、無事でよかった......」

 

「この人が助けてくれたのよ」

 

「ありがとうございますッ!アン子ちゃんを助けてくれて、本当にありがとうございました」

 

「僕は依頼を受けただけさ、遠野さんのね」

 

「えっ」

 

「龍麻君たちがあたしのせいで死んじゃったら嫌だから、連れてって。そういったのよ。あたしはたしかに《力》はないけど、それなら度胸で乗り切るしかないじゃない?何も出来なかったら、ほんとに槙乃たちと一緒にいられなくなっちゃうもの」

 

「アン子ちゃん......」

 

「たまには戦うところ、見せてよねッ!みんな、あたしのことが気がかりで全力出せないんだろうし、早く行きましょ!槙乃ッ!」

 

「君は時須佐槙乃さんだね?館長から話は聞いている。僕は壬生紅葉、拳武館の館長派の人間だといえばわかってくれると思う。遠野さんの話を聞くかぎり、だいぶ僕達のことを調べあげているようだし。うちの内部紛争に巻き込んでしまって、ほんとうにすまない。遠野さんは僕が護衛するから、案内してくれないだろうか」

 

「壬生君......わかりました。そこまでいうなら、ついてきてください!2人とも」

 

槙乃は元きた道を引き返しはじめる。壬生たちも後を追ったのだった。

 

 

 

 

「みんな、心配かけて本当にごめん!あたしなら無事よッ!こんなやつらのしちゃって!!」

 

「アン子!無事だったのか!」

 

遠野の無事がわかった瞬間、《如来眼》を頼りに槙乃を×××駅を索敵するために離脱させていた緋勇たちの士気が一気に向上した。

 

「よっしゃ、こうなりゃ話がはやいぜ。なァ、九角」

 

「あァ、時間稼ぎにちまちま膠着状態に持ち込まなくていいってなら、大歓迎だ」

 

口火をきったのは、ずっと前線で全力を出すことができず、燻っていた蓬莱寺と九角だった。

 

「陽光断ち割る鬼道の剣───────」

 

「暗転切り裂く無双の剣───────」

 

「「陰と陽の剣氣、今ここにまみえん!!」」

 

「「二天鬼王殺!!」」

 

一瞬にして拳武館の暗殺者たちが弾き飛ばされていく。

 

「だいたい、鬼勁だっけ?九角の戦い方横で見てるんだ、んなもん脅威でもなんでもねえよ!習得にはちと時間かかっちまったがな!襲撃されたとき見切れたんだ、出来ると思ったのに手間取っちまったぜ」

 

「だいたい拳武館で学ぶ武術は、緋勇んとこの武術を除けば《鬼道衆》に伝わる武術じゃねえか。特にそこの八剣右近、てめーの剣術は九角家につたわる剣術だ。本家にかなうと思ってんのか。生意気な野郎には現実ってもんを見せてやる」

 

九角はそうとう鬱憤が溜まっているようで、攻撃に容赦がなかった。

 

「よーし、まーちゃん。やってやろうぜ、鬼勁もどき出来るようになったしさ。九角との《方陣》ができんなら、俺とも出来るだろ」

 

「そんな軽いノリでいいんです?」

 

「物は試しだ。な?準備はいいか、愛ッ!」

 

「いきなりなんですか、もう。上等です、行きましょう。京君」

  

「「剣聖ッ!!阿修羅活殺陣ッ!!」」

 

そんな槙乃たちをみながら、壬生は龍麻に近づいた。

 

「僕は拳武館の壬生紅葉。館長派の人間なんだ。君が緋勇龍麻君だろう?」

 

「どうして俺を?」

 

「僕は館長の弟子でね、君が祖父から古武道を習ったように、僕も館長から古武道を習ったのさ。僕はどうやら館長から《宿星》を引き継いだらしくてね、その相対する陰の古武道を。君の話はいつも館長から聞いていたんだ。大切な親友の忘れ形見だとね」

 

「先生がそんなふうに......」

 

「ああ、君は自覚ないだろうから教えてあげよう。風祭家から免許皆伝して学校で教えることを許された人から無条件に教えてもらえる、気にかけてもらえる。八剣のような拳武館の連中が嫉妬するような境遇だ」

 

「そうなのか......」

 

「なにやら館長について八剣から適当なことを言われているようだから言わせてもらうが、君のよく知る館長が真の姿だ。間違いない。その動揺すら八剣たちのやっかみから来ているんだってことを覚えておいてくれ」

 

「壬生......」

 

「今回の事件は多忙を極める館長のフォローができなかった僕たちに少なからず責任があるんだ。拳武館の内部紛争に巻き込んでしまってすまない。ここからは僕も手伝わせてくれ」

 

「ああ、わかった。ありがとう」

 

「落ち着いたらでいいから、連絡してやってくれ。ほんとに心配していたから」

 

「今回の事件で久しぶりに連絡しようとはしたんだよ」

 

「そうなのか?行き違いがあったみたいだな、僕からも伝えておくよ」

 

「そうしてくれると助かるよ」

 

龍麻はようやく元気を取り戻した。声にハリが戻ってくる。

 

「早速だけど、紫暮とあのあたりを片付けてくれ。2人の《氣》は似てるから、きっと《方陣》ができる」

 

「《方陣》か......はじめてだ」

 

「そうか、なら俺が先導しよう。いくぞ、壬生」

 

「お手柔らかにお願いしますよ、紫暮さん」

 

「おうッ!!」

 

「僕の華麗な技を見せてあげますよ」

 

「ふんッ、行くぞ、壬生!!」

 

「はい」

 

「「必殺!!武神龍撃陣!!!!」」

 

初めてとは思えない程の阿吽の呼吸だった。仲間たちも次々と《方陣》を発動し、仕留め損なった暗殺者たちをここの技で撃破していく。みるみるうちに目減りしていく暗殺者たち。その合間をぬって進んでいった龍麻に壬生が続いていく。

 

「いくか。父さんと先生がやったかもしれない《方陣》なんだな」

 

「ああ、もちろん。僕達が引けを取る訳には行かないよ」

 

「わかってるさ」

 

「陰たるは、空昇る龍の爪」

 

「陽たるは、星閃く龍の牙」

 

「表裏の龍の技、見せてあげましょう......」

  

「「秘奥義・双龍螺旋脚!!」」

 

18年振りに陰陽にわかれた龍の名を持つ古武道がひとつとなり、《方陣》を形成する。八剣たちを巻き込んで高々と螺旋を描きながら舞い上がった闇の《方陣》が炸裂した。

 

八剣たちは地下鉄の天井に叩きつけられ、一気に落下していく。一瞬だった。

 

龍麻と壬生は互いに笑う。拳を打ち上ったその姿はかつての師匠たちに似ていた。

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